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リッツ・カールトンに学ぶ

 
先日、リッツ・カールトン主催で行われたホスピタリティのセミナー『レジェンダリー・サービス@リッツ・カールトン東京』に参加してきました。医療機関に応用できるサービスの真髄をみなさんと共有したいと思います。

※なお、このコーナーでは、リッツ・カールトンのマインドを医療機関の組織づくりに活かすために、セミナーの趣旨を解析しておりますが、セミナー固有のコンテンツを転載しているものではありません。ご了承ください。 
 
 

Vol.1 「ワオ・ストーリー」とは

 
 リッツカールトンには、感動のサービスが語り継がれています。それは、お客様に話すためのものではありません。
「ぜひ自分もお客様の役に立ちたい」
「ぜひまた他のお客様にもサービスしたい」
と、社員がサービスに心を向ける最大のモチベーションは、お客様の喜びの声です。
 そんなお客様の喜びの声をリッツ・カールトンは大切にし、蓄積し、全世界の社員で共有しているのです。それが「ワオ・ストーリー」です。



◆書店には、ホテルやディズニーランドなどに関連した
「感動のサービス」
「伝説のサービス」
といった本が氾濫していますが、医療機関の心のサービスをテーマにした本はほとんどありません。


他業界のサービスは、医療機関には関係ない、という方もあります。


たしかに、外来患者様にお誕生ケーキを出したり、5万人目の患者様ですと祝われても、患者様は
「来たくて来たのではないのだから祝福するな」
と不愉快に思うでしょう。



◆しかし、人は
「心の伝わる瞬間を求めている」
「心温まる瞬間を求めている」
ことに違いはないでしょう。


そして、大きな不安で心細い気持ちの患者様こそ、そうした瞬間に救われるのではないでしょうか。


そう考えると、実は、前述の本の中には、多くの医療機関に応用できる、学べるものがあるとも言えるのです。



◆そこで、今回から、何回かに渡って、リッツ・セミナーで学んだ収穫を、みなさんと共有したいと考えました。


よろしければ、現場の患者サービス向上の参考にしていただきたいと思います。



ことに、患者サービスに大きな関心をお持ちになっているみなさまであれば、いわゆるお辞儀や笑顔といった形式的な研修・教育以上に、まずは、価値観や文化の醸成、その実践者であるホテルなどのホスピタリティも重要であることをご存知のことと思い、ご報告させていただきます。



◆まず、今回は、セミナーで語られていた一つ、
「ワオ・ストーリー」
ということについてお伝えします。


リッツ・カールトン・ホテルでは、お客様に喜ばれた感動のエピソードを
「ワオ・ストーリー」
と呼んで大切にしています。


まさに、お客様に
「ワオ!」
と言って喜び、感動していただけたという心温まるシーンです。


ワオ・ストーリーは、日々、世界中のリッツ・カールトン・ホテルで生まれ、世界中のリッツ・カールトン・ホテルに配信されています。


そして、1日3回のシフト交替の際に行なう朝礼・昼礼・夕礼では、そんなワオ・ストーリーの一部が従業員に紹介されています。


それが、従業員にとって、リッツのサービスの在り方、価値観、魅力を伝え、サービスに対するモチベーションの向上に大きく寄与しているのです。


リッツには、数多くの伝説のワオ・ストーリーがあります。


これは、多くの書籍で語られ、枚挙にいとまがありませんので、ここではいくつかの紹介とさせていただきます。



◆一般には感動的なサービスですが、リッツではもはや標準的なサービスとして知られているものを一つ。


もし、みなさんが、ニューヨークのリッツ・カールトン・ホテルを利用したとき、固い枕に変えて欲しいと頼んだとします。


次に、モスクワのリッツ・カールトン・ホテルに泊まったら、そこには、固い枕が用意されているはずです。



◆あるお客様が誕生日のお祝いにリッツ・カールトン・ホテルを利用することが判り、部屋中をたくさんの風船などで飾りつけ、お祝いのメッセージを書いたケーキをお届けした、という話もありました。


リッツでは珍しくないエピソードかもしれません。



◆リッツ・カールトン・ホテル東京でのこと。

ある外国人客が、自分の携帯電話に合う充電器を購入したいと希望しました。

もちろん外国メーカーのものでした。

コンシェルジュが日本のオフィスに電話をしたところ、充電器の販売は日本では行なっていない、と断られました。

コンシェルジュは、その旨を説明してお客様に理解してもらおうと考えました。

しかし、再度メーカーに電話をして、いかにお客様が困っているかを説明したところ、特別に1台だけ、販売していただけることになったのです。



◆さて、医療機関では、ワオと驚きとともに喜ぶようなサービスは必要ないかもしれません。


しかし、ここで学ぶべき重要なことがあります。


それは、
「お客様が今なにを求めているのか」
を知り、思いを共有している心が、お客様に感動を与えているということです。


ビックリさせようとしなくてもよいのです。



◆「気持ちを判ってくれた」
と感じた時、人は自然に、心が熱くなるのです。


「心が伝わった」


そんな心温まる瞬間が求められているのは、医療機関も同じはずです。


それが、医療機関におけるサービス向上の大きなヒントとなるのではないでしょうか。
 
 

リッツ・カールトンに学ぶ

 
先日、リッツ・カールトン主催で行われたホスピタリティのセミナー『レジェンダリー・サービス@リッツ・カールトン東京』に参加してきました。医療機関に応用できるサービスの真髄をみなさんと共有したいと思います。

※なお、このコーナーでは、リッツ・カールトンのマインドを医療機関の組織づくりに活かすために、セミナーの趣旨を解析しておりますが、セミナー固有のコンテンツを転載しているものではありません。ご了承ください。 
 
 

Vol.2 「問題解決」とは

 
 
 リッツ・カールトンでは、お客様の問題解決を第一のテーマとしています。
 リッツ・カールトンでは、社員は、お客様からクレームや要望を受けた時、
「どのように、その声を治めるか」
ではなく、
「どのようにお客様にとっての問題を解決するか」
を考えることが正しいとされています。
 有名な話ですが、たとえば、リッツでは、満室の日に予約の要望があった時、お客様のご予算・ご要望をお聞きして、近隣のホテルに問い合わせて、予約をしてさしあげることが普通です。



◆今回は「問題解決」ということについてお伝えします。


リッツ・カールトンでは、従業員が
「お客様対応」
ということよりも、
「問題解決」
にフォーカスしている、というお話です。



◆たとえば、一般には、もしお客様からのわがままな要望やクレームがあった時に、どう断るか、どう自分で解決してもらうか、どうクレームを言わないようにさせるか、を考えがちではないでしょうか。


しかし、これは問題の押し付け合いとなり、対立関係となります。


これでは、心の通じる心温まるサービスになるはずがありません。


従業員にも苦痛でしかないでしょう。



◆一方、リッツの従業員は、お客様からの無理な要望やクレームがあった時、
「そのお客様の問題をお客様と共に解決すること」
にフォーカスします。


協働関係です。


一緒に問題を解決しようとするからお客様から感謝され、従業員にやりがいと誇りが生れるのです。



◆たとえば、こんな話もあります。


リッツ・カールトン・ホテルでは、予約の問い合わせに対して満室だった場合、お客様のご要望・条件をお聞きして、他のホテルの手配をしてくれるということが当り前となっています。



◆医療機関の場合、長時間待たせるよりも、近隣の他の医療機関を紹介したり移送する方が患者様にとってよいならばそうしよう、という思いやりがあってもよいはずです。


むしろ患者様の身を案ずるならば、そうすることが医療従事者の使命かもしれません。


そんな風に考え行動している医療機関があるでしょうか?



◆患者様と一緒に考える
「問題解決」。


これだけでも、心温まる医療機関になるための大きなヒントの一つではないでしょうか。
 
 

リッツ・カールトンに学ぶ

 
先日、リッツ・カールトン主催で行われたホスピタリティのセミナー『レジェンダリー・サービス@リッツ・カールトン東京』に参加してきました。医療機関に応用できるサービスの真髄をみなさんと共有したいと思います。

※なお、このコーナーでは、リッツ・カールトンのマインドを医療機関の組織づくりに活かすために、セミナーの趣旨を解析しておりますが、セミナー固有のコンテンツを転載しているものではありません。ご了承ください。 
 
 

Vol.3 「エンパワーメント」とは

 
 リッツ・カールトンでは、一つ一つの問題解決において、あるいはお客様の満足度を向上するためには、そのつど上席者の許可を得ずに行動できることになっています。
 
 それを、権限委譲すなわち「エンパワーメント」と言います。
 リッツの有名なエンパワーメントの一つには、一人の従業員は2000ドルまでお客様サービスのために、自分の判断で支出することができる、というルールがあります。
 しかし、従業員は、お金を使わないことの方がお客様の心に訴えることも知っています。
 わたしの部屋の担当者にインタビューしたところ、お誕生日に泊まってくださったお客様には、手作りでHappyBirthdayという切り抜きを用意し、ベッドの上に飾ってお迎えし喜ばれた、と話してくれました。現金が置いてあるよりも、何倍も温かい心が伝わってきます。こうしたサービスも従業員一人一人が自由に実践することができる、それがエンパワーメントです。
 たとえば、医療機関ではどのような応用ができるかについては、『患者サービス経営』ページ(制作中)でご紹介する予定です。



◆リッツ・カールトン・ホテルが、伝説のサービスを実現している仕掛けのひとつとして、
「エンパワーメント」
という仕組みがあります。


ここの言葉は有名なので、ご存知の方もあることと思います。



◆たとえば、海外のリゾート地のあるリッツ・カールトン・ホテルで、こんなサービスがあったと言います。


ある夕方、ホテルのプライベートビーチ。


ビーチチェアを片付けようとしていたホテルマンに、ある男性客が
「ひとつだけイスを残しておいて欲しい」
と頼みました。


ホテルマンが事情を訊くと、
「今日、交際している女性に、このビーチでプロポーズをしたいのだ」
ということでした。


そこでそのホテルマンは、こうしました。


男性が片膝を立てて女性にプロポーズできるようシートを敷き、イスとテーブルを整えました。


果たしてプロポーズのとき、ホテルマン自身も普段のリゾートスタイルから、タキシードに着替えてサーブし、自ら用意したワインを持参して、そのシーンの二人を祝福したのです。


自分たちのためにここまでしてくれるホテルマンの優しい心が伝わってきますね。



◆こうしたサービスは、一般には、従業員が独断ではできないでしょう。


しかし、リッツでは、すべての従業員が、お客様のために必要だと感じたとき、上司に判断を仰がずに、2000ドルまでの経費を使えることになっています。


このような権限委譲が
「エンパワーメント」
と呼ばれるものです。



◆しかし、さらに大切なことは、すべての従業員が、
「本当に喜ばれるのは、お金をかけることではなく、お金をかけずに(心を砕いて)するサービスである」
ということを理解していることです。



◆ところで、わたしは、セミナーの前日に会場でもあるリッツ・カールトン・ホテル東京泊まり、この機会にさらに勉強したいと思って、部屋まで案内してくれたフロント係の女性にインタビューしました。


これまでに、どんなサービスをしたか、訊いたのです。


お誕生日に泊まられるお客様があったので、その日は、紙を
「○○様 HappyBirthday」
と切り抜いてベッドの上に飾ってお客様を迎えたことがある、と話してくれました。


控え室で、ひとりお客様を思って、紙を切ってくれている姿が想像すると、なぜか自分までがわくわくします。


仮に現金が部屋に置かれているよりも、こうした自分のためだけにしてくれる心遣いこそが、心に残ります。



◆リッツは、お金を使わずに喜ばれることが美徳である、とも言っています。


一方で、権限委譲によって、従業員のサービスマインドを口だけでなく実質的にもバックアップしているのです。


そして、それは従業員に
「信頼されているのだ」
という大きな誇りとモチベーションを与える意味があるのだという説明もありました。



◆「エンパワーメント」
とは
「従業員が2000ドル使ってもいい仕組みだ」
と誤解されていることがあります。


本当の意味は、上司に判断を仰がずに、自分が
「サービスをしたい」
と思ったときに、自分の信じるように行動させてもらえる仕組みだということです。


リッツ・カールトン・ホテル大阪では、老眼鏡を忘れて帰ったお客様に届けるため、従業員が、その日のうちに新幹線で東京まで赴いたという話もあります。



◆医療機関の場合、東京-大阪は難しいとしても、忘れ物を届けるために、隣町までバスで行ってくることくらいは、上司に断らなくても職員の判断でできることではないでしょうか。


そして、自分で思い立って届け、患者様に喜ばれた時、職員は必ず誇りとやりがいを感じるはずです。


さらに、それを自分に任せてくれる職場が、プライスレスな体験をできる素晴らしいステージであると感じるでしょう。


みなさんの現場でも、今日からできることではないでしょうか。
 

リッツ・カールトンに学ぶ

 
先日、リッツ・カールトン主催で行われたホスピタリティのセミナー『レジェンダリー・サービス@リッツ・カールトン東京』に参加してきました。医療機関に応用できるサービスの真髄をみなさんと共有したいと思います。

※なお、このコーナーでは、リッツ・カールトンのマインドを医療機関の組織づくりに活かすために、セミナーの趣旨を解析しておりますが、セミナー固有のコンテンツを転載しているものではありません。ご了承ください。 
 
 

Vol.4 「ラテラル・サービス」とは

 
  リッツ・カールトンでは、職員間の協力関係も「ラテラル・サービス」と呼んで、重要視しています。

とかく自分の目の前のお客様に喜ばれたいために、同僚にしわよせを及ぼすことになりかねません。

しかし、リッツがそうならないのは、職員が、同僚に協力することもまた、同僚の先にいるお客様へのサービスの一部を担う大切なミッションであると知っているからです。

この結果、職員同士の人間関係も良好となります。また、職員同士の人間関係が良好になることによって、お客様へのサービスがさらに向上するのです。

サービスを向上することは、論理必然的に、職員同士の関係を向上することそのものなのだということができるのです。



◆リッツ・カールトン・ホテルでは、従業員一人ひとりが、自分の信じるようにお客様サービスに心を砕き、力を尽くします。


そうすることでお客様の喜ぶ顔が見たいからです。


そこで、必然的に必要になるのが、職員相互の協力関係です。


たとえば、

「お客様からのご要望があったので、買物に行って来なければならない」

という従業員がいた時に、周囲のメンバーが、

「現場を離れられると困るからやめて」

「わたしだって買物に行ってあげたいのに」

といった反応であれば、お互いにのびのびとサービスに臨むことはできないからです。


こうした時でも、お互いに快く助け合う関係性を、リッツでは

「ラテラル・サービス」

と言って重んじています。


Lateralとは、横断的な、側面的な、という意味です。



◆そこで多くの方の疑問となるのが、

「お客様第一に考えれば、現場を離れなければならないこともあり、全員がそうしていては、現場が成り立たないのではないか」

ということです。


お互いの協力が大事だ。

頼まれたら快く協力しよう。

しかし、やりすぎは良くない。

自分だけお客様から喜ばれて、他の従業員に迷惑をかけてはならない。

では、その限度は、だれがどのように決めているのか?


セミナーでも、その質問がありました。


はたして、従業員の方から出た回答は、

「ラテラル・サービスと言って、お互いに協力し合う文化があることだ」

というものでした。


スッキリしませんね。



◆ここでわたしなりに分析してみたところ、このラテラル・サービスの意味は、

「従業員同士の助け合いも大事だ」

という程度のものではないということが浮き彫りになります。


ズバリ、

「従業員同士のサービスは、お客様へのサービスと同等に大事だ」

という意味であるとの結論に至りました。



◆「仲間のやりたいサービスよりも、自分のやりたいサービスを優先してよい」

という考えでは、結局自分のサービスしか実践しないことになります。


できるときには助けるが、できないときには助けない。


暇な人はいないから、忙しいと言えば常に忙しい。


結局、できるときなどない、ということになります。



◆とすれば、

「仲間がやろうとするサービスもまた、リッツがリッツのお客様のためにやろうとするサービスである」

という考え方が、価値観のバランスするところだということになるでしょう。



◆さらに、論理必然的には、

「仲間から喜ばれることは、お客様に喜ばれることと同じ素晴らしいことだ」

という価値観に通じます。


リッツの素晴らしいところは、仲間の要望とお客様の要望に優劣をつけないということです。


自分の目の前のお客様も、自分の仲間も、同じだけ大切なサービスの対象なのです。


だから、自分の担当するお客様ばかりに没頭することもありません。


仲間から頼まれたとき、協力を厭うこともありません。


リッツの従業員にとっては、お客様から喜んでもらうことも、仲間から喜んでもらうことも、同じように嬉しいことなのです。



◆まさに、同僚に協力することも、お客様にサービスするのと同じ、サービスなのです。


ラテラル・サービスとは、まさにお客様に対するサービスと同じ重要なサービス、重要な職務、同じ価値だということなのです。


お客様から喜ばれれば、また、お客様に力を尽くしたいと思うでしょう。



◆では、なぜ、同僚にも同じように力を尽くしたいと思えるのでしょうか?


いくつかの仕掛けがあるようですが、セミナーでは、そのうちの一つ、

「ファーストクラスカード」

が紹介されていました。


いわば、従業員同士の「サンキューカード」です。


「~~の時に、協力してくれてありがとう!」

「~~のサービスはすばらしかったよ!」

といった、従業員が互いに称え、感謝する時に所定のカードにメッセージを記載して渡すというツールです。


そういえば、あるホテルでは、お客様からのお褒めの言葉はピンクレター、クレームはブルーレターといった2種類の用紙に書いていただくという話を聞いたことがあります。


リッツでは、いわば、従業員同士のピンクレターだけを活用していると言えます。



◆褒める、感謝する、認める、敬意をはらう、大切に思う。


互いにそうした気持ちを表明しているからこそ、お客様に喜ばれたいのと同じくらい、仲間にも喜ばれたいと心から思えるのです。



◆セミナーでは、コンシェルジュからこんな話が披露されました。


ある国賓が泊まり、これから帰国するというときに、

「あと3時間で日本を発つので、それまでに6000ドル分のキットカットを用意して欲しい」

と、要望しました。


しかも、リンゴ味などの期間限定のものでした。


コンシェルジュは、製造元に電話をして、卸先を聞きましたが、一箇所で全部を調達することはできません。


そこで、セクションを超えて従業員に頼んだところ、皆がいくつもの卸先に手分けをして商品を買い求めに行き、全部には満たなかったものの、トラック一台のキットカットを用意してお客様にお渡しできたという実話です。



◆医療機関においても、職員同士で、

「ありがとう」

「助かったよ」

「患者様が感謝していたよ」

「いつでも力になるぞ」

といったメッセージを日頃から交換することは可能なはずです。


まずは、サンキューカードを取り入れてみてはいかがでしょうか。


また、ご意見箱に入れられる患者様からのクレームは、院長に直行したり、回覧されたりしますが、それ以上に、患者様からのお褒めや感謝のお声を聞くためのご意見用紙を用意して、むしろお褒めや感謝のお声を積極的に回覧してはいかがでしょうか。


「わたしも、患者様からそんな風に喜ばれたい。

そのためには、みんなにも協力してもらいたい。

そのためには、わたしもみんなに協力したい」


そう思える仕組みが、ほかにもたくさんあるはずです。



◆モチベーションはコミュニケーションによって創られます。


ぜひ、患者様からのプラスのメッセージを職員へ。


職員のプラスのメッセージを職員へ。


上司から部下へ、同僚同士で、異なるセクション同士で。


家庭では家族同士で。


コミュニケーションを創りだしてみてください。



◆「プラスのコミュニケーションをどうすれば創りだせるか」

について、患者サービス研究所は、

「モチベーション工学」

という領域で、研究していますので、別の機会にご紹介したいと思います。
 

リッツ・カールトンに学ぶ

 
先日、リッツ・カールトン主催で行われたホスピタリティのセミナー『レジェンダリー・サービス@リッツ・カールトン東京』に参加してきました。医療機関に応用できるサービスの真髄をみなさんと共有したいと思います。

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Vol.5 「クレド」(理念カード)の正体とは?

 
リッツ・カールトンでは、無形のサービス・マインドを最上の商品にしています。そのために、社員の価値観や行動習慣を醸成することに成功しているのです。多くの組織では、基本理念や行動基準を策定していますが、企業風土をつくることには非常に苦労しています。これは、医療機関であっても例外ではないでしょう。
本講では、リッツ・カールトンが、社員の価値観や行動週間を確実に醸成する秘密に迫りたいと思います。



◆これまでにお伝えしてきましたように、リッツ・カールトン・ホテルでは、従業員一人ひとりが、自分の信じるようにお客様サービスに心を砕き、力を尽くします。


そのためには、接遇マニュアルは足枷にしかなりません。


ルールを守れば紋切り型の対応となってしまうからです。


しかし、職員が自分勝手に振舞っていても、組織文化にはならず、サービスをブランドにまですることはできません。


やはり、積極的に
「これが組織の価値観だ」
というものを発信する必要があります。


その手法として、リッツ・カールトンが開発したものとして有名なのが、組織の価値観を箇条書きにした
「クレドカード」
というものです。


クレドカードは、リッツ・カールトンについて語られる多くの書籍でも紹介され、また、カードという判りやすい物なので、有名です。


17条からなり、日々、従業員が振り返るというもので、企業のみならず、医療機関にも採用したところがあります。



◆しかし、組織の価値観を箇条書きにしたものと言えば、いわゆる社訓をオフィスの高いところに掲示して、朝、社員全員で唱和する、という光景が浮かびます。


しかし、崇高な理念も、読むだけでは行動につながりません。


まして、価値観を統一して、
「うちは、みんながこんな価値判断をする医療機関です」
といったブランドを築くことはできません。


理念を名刺大のカードに印刷し、職員全員に配って、肌身離さず携行するよう、名札ケースに入れさせた、という病院もあります。


これでは、読むことすらなくなり、完全に理念を形骸化してしまいます。



◆ここまででお察しいただけたように、実は大切なのは、理念がカードになっているといった形ではなく、どのようにして理念を従業員の価値観に浸透させるかということなのです。


3年前、まだ東京にリッツ・カールトン・ホテルがなかったころ、大阪のリッツを訪ね、ホテルマンに
「クレドの理念をどのように従業員の価値観に浸透させているのか」
訊いたことがあります。



◆リッツでは、3交替制のため、朝・昼・夕の交替時に朝礼のようなミーティングを行い、そこでクレドについて話し合うのだということでした。


そのミーティングは
「ラインナップ」
と呼ばれ、主任・リーダー格のラインナップ・リーダーが進行を務めて、時にはクレドの条項について話し合ったり、世界各地にあるリッツ・カールトン・ホテルで生まれた「ワオ・ストーリー」(感動的なサービス事例)が報告されたりするのだ、ということでした。


「このラインナップこそが、理念に魂を吹き込む秘密だ」
「多くの企業が、朝礼時に社訓を唱和しても一向に組織が変わらない。これこそが、リッツ・カールトンを活きた組織にするマジックだ」
と思い、ラインナップの見学を希望しましたが、その時は叶いませんでした。


価値観の醸成は、子育て同様、簡単に済ませることができるものではなく、日々のたゆまぬ語りあいによって実現するものです。


それに気づいて、企業の中には、朝礼を毎日30分もやっているところさえあります。


そして、それはそれで、組織風土の向上に、大きな効果を発揮していると言います。



◆先日参加したレジェンダリー・サービス・セミナーでは、リッツ・カールトン・ホテル東京に勤務するリーダー格職員が、ラインナップを実演して見せてくれました。



◆実演の際のテーマは、職員同士、必ず相手の目を見てにっこり笑いながら
「ありがとう」
を言うと気持ちいいよ、ということ。


それを伝えるために、リーダーはメンバーと一緒に、お皿の受け渡しをするロールプレイングを、行います。


みなさんも、朝礼で、職員の方々と、このロールプレイングをやってみてください。


受け渡しするのは、書類でも結構です。


やってみていただければ判りますが、リーダーが熱くつぶらな瞳といつにない笑顔で、相手の目を覗き込みながら、さわやかに
「ありがとう!」
と何度も言っていると、自然にその場の空気が和んでしまうのです。


そして、そこにいるメンバーがみな、なんだか心明るくなり、
「ぜひこんな風にやっていきたい」
と自然に思えるようになることでしょう。


そこには、理念を唱和するような閉塞感や、やらされ感はありません。



◆リッツ・カールトンには、こんな熱く頼もしいリーダーがたくさんいます。


そして、明るく楽しく熱いラインナップが、組織の理念に沿って、毎日3回必ず行われているのです。



◆医療機関においては、リーダーが、まず組織の価値観をしっかりと体得することです。


校長先生の考えがいかに素晴らしくとも、生徒を日々指導する担任の先生がそれを伝えられなければ、決して生徒がよくなることはありません。


組織を活かすのは、リーダーです。



◆患者サービス研究所でも、一般職員向けと、リーダー向けの2回の研修を実施していただくよう提案しています。


すなわち、一般職員には
「ぜひ患者様に安心と癒しを提供したくなる」
患者サービス研修です。


リーダー・管理職には、一般職員が創意工夫し、のびのびと患者サービスを実践できる環境を創るための、組織づくり研修です。



◆みなさんの医療機関には、各セクションに、明るく頼もしい熱いリーダーがいますか?
 

リッツ・カールトンに学ぶ

 
先日、リッツ・カールトン主催で行われたホスピタリティのセミナー『レジェンダリー・サービス@リッツ・カールトン東京』に参加してきました。医療機関に応用できるサービスの真髄をみなさんと共有したいと思います。

※なお、このコーナーでは、リッツ・カールトンのマインドを医療機関の組織づくりに活かすために、セミナーの趣旨を解析しておりますが、セミナー固有のコンテンツを転載しているものではありません。ご了承ください。 
 
 

Vol.6 リッツ・カールトンの「コミュニケーション能力」

 
◆医療機関で直接患者様と接する職種と言えば、受付・会計事務、看護師、医師などが代表的です。


事務職員は、「病院の顔」であるとも言われています。


◆一方、患者様と直接に接することができない職種は、次のような問題を抱えていると考えられます。

第一に、患者様からの反応が得られにくいので、患者様が求める的を射たサービスをしにくい。

第二に、患者様からの反応が届きにくいので、喜ばれる体験に基づくモチベーションの向上を図りにくい。

では、患者様との接点が少ないコ・メディカルは、患者様に的を射たサービスを提供できず、患者様とのコミュニケーションを創れないためにモチベーションが上がらないままでよいのでしょうか。


◆実は、そんなコ・メディカルの方々にも、患者様とのコミュニケーションを図る方法はたくさんあるのです。


そのヒントとなる一例が、リッツ・カールトン・ホテルにありました。それが以下の写真です。

 


◆これは、客室のデスクの上に置かれていたものです。


ひとつは、メッセージカードです(右)。


もう一つは、香り袋でした(左)。


少なくとも、わたしの使わせていただいた部屋以上のクラスの部屋には、このような手書きのメッセージが宿泊客を出迎えてくれたものと思います。


そして、このメッセージは、ご覧のとおり、
「ハウス・キーピング・チーム」
と書いてあります。



◆ハウス・キーピング担当者が、お客様とコミュニケーションをとることなど、普通のホテルなら考えにくいことでしょう。


医療機関でも、清掃員、調理師、滅菌室担当が患者様と直接コミュニケーションをとることはほぼないでしょう。


とすれば、せっかく医療職でありながら、患者様からの感謝の声、安心や癒しの笑顔を見ることもなく、モチベーションが上がりにくいことと考えられます。



◆しかし、このリッツ・カールトンのメッセージカードに学べることがあるのではないでしょうか。


普段、患者様と接する機会がほとんどない職種の方々にも、患者様とのコミュニケーションを創る方法はあるのです。



◆そして、コミュニケーションを試み続けることによって、やがて患者様との対話が始まり、よりよい患者サービスが実現され、患者様に喜ばれることで職員にも大きなやりがいと誇りを創ることは可能なことなのです。
 
 
 

患者さんから愛される癒しの空間
えばら駅毎整形外科醫院 ホスピタリティの真髄

 
 これが、えばら駅前整形外科醫院の名物のひとつ。駄菓子屋さんコーナー。
 業者さんなどは、「院長の趣味ですか?」と訊き、院長も笑いながら「そんなところです」と答えています。
 しかし実は、「心温まる」医療機関を創るために心を砕いてつくられたものでした。

 
 

Vol.1 「心が明るくなる」環境づくり

 
 リハビリテーション室に入ると、最初に目に入るのが、正面に開ける「えばら雑貨店」。
 くもりガラスの戸には、関節のあるネジをまっすぐに入れて閉めるカギが付いています。
 右手の棚には、昭和初期にはまだ高級品だった重厚感のある扇風機。
 だれもが思わず駈け寄りたくなります。そして、だれもが思わず駄菓子を手に取りたくなります。そして、ここでは、院長やスタッフが必ず「さあ、どうぞ」と笑顔で駄菓子を手渡してくれるのです。
 

 目を左に向ければ、奥にはリハビリテーション機器が並び、それを取り囲むのは、昭和30年代の路地裏の風景です。

 天井には青空。トタンの壁が続き、その先には、民家の軒がつき出しています。窓の奥からは室内の団欒が聞こえてきそうな温かな照明が漏れています。
 「こんな光景の中にいた頃、自分はどんな子供だったか、どんなことをして遊んでいたか、家族団欒ではどんな話をしていたか」自然に思いをはせ、心が明るくなります。
 アメニティという言葉では表せない、心温まる環境です。
 

◆まず、ご覧ください。


えばら駅前整形外科醫院の内部はこんな風になっています。


昭和30年代の下町の路地をイメージした内装です。 



◆ご覧のように、院内の一角には、なんと駄菓子屋さん(コーナー)があります。


梅ジャムや、リリアン、メンコ、酢イカ、あんず飴などなど、昔なつかしい駄菓子やおもちゃが並び、見た人は思わずわくわくしてしまいます。


もちろん、初めて来院したすべての方々が驚き、目を輝かせます。


院長は、来院された方々を、置いてあるお菓子をみずから手渡して歓迎します。



◆特徴的なのは、院長が先頭に立って、患者様とのコミュニケーションをとっていることです。 


診察室でも、リハビリテーションルームでも、できるかぎり患者様と話しています。



◆患者様に共通する気持ちとして代表的なのが、 

「本当にこの薬でよいのか?」 

「本当にこの痛みを伴う処置が必要なのか?」

「本当に他の方法はないのか?」 

といった不安心理です。 


その核心は、

「本当にこの病院でよいのか?」

という気持ちであり、

「本当にこの医師に任せて大丈夫なのか?」 

という不安です。 


この不安を最小限にするためにできることとは、

「医師やスタッフに、なんでも言えること、なんでも訊けること」

にほかなりません。



◆そして、患者様がなんでも言える、なんでも訊ける環境を創るために必要なことは、とりもなおさず、医師やスタッフと患者様がコミュニケーションによって心理的にも近い存在になることです。



◆実は、院長が、患者様との心の距離を縮めるために創ったのが駄菓子店の内装だったのです。 


「子供のころを思い出すわ」 

「見てるだけでも楽しいね」

そんな風に言う患者様の表情を見て、院長は、

「よかったら持って帰って。どうぞ、どうぞ」 

と駄菓子を手渡します。


もらう方も、つい照れ笑いしてしまいます。



◆しかも、心が明るくなることがポイントなのです。


待合室にテレビや雑誌を置いて、気を紛らわせていただくようにしている医療機関はたくさんありますが、このように患者様の心を明るくさせる仕掛けを実現しているところは少ないのではないでしょうか。 


もちろん、心を明るくする仕掛けとは、こうした内装などの費用を要するものばかりではありません。 


今回は判りやすい一例として、えばら駅前整形外科醫院のケースをあげさせていただきましたが、工夫次第で、さまざまな方法を講じることができます。


心が明るくなり、医師やスタッフとのコミュニケーションもとれる、 そんな仕組みを創り出す医療機関が、患者様や地域から愛され勝ち残るのではないでしょうか。 
 
 

患者さんから愛される癒しの空間
えばら駅毎整形外科醫院 ホスピタリティの真髄

 
 これが、えばら駅前整形外科醫院の名物のひとつ。駄菓子屋さんコーナー。
 業者さんなどは、「院長の趣味ですか?」と訊き、院長も笑いながら「そんなところです」と答えています。
 しかし実は、「心温まる」医療機関を創るために心を砕いてつくられたものでした。

 

Vol.2 会う前の患者さんとの関係性づくり

 
◆えばら駅前整形外科醫院は、商店街の中にあり、町内の方々が誰でも知っている
「地域に密着する」
を超えて
「地域の一部化する」
診療所です。


1回が百円から数百円の処置を、常連患者様が、毎日のように受けに来る、そんな場所です。


ひところ、
「医療機関がお年寄りのサロンになっている」
と、問題視された時期があります。


通ってくる患者さん同士が
「最近、○○さんのご主人の姿が来てないようだけど、どこか具合が悪いのかね?」


具合が悪いから医療機関に来ているはずが、来ないことで心配する、というサロン化を風刺した笑い話があったものです。



◆ところが、えばら駅前整形外科醫院では、サロン化もあながち笑い話ではなく、むしろ大切なことである、ということが判ります。


なぜなら、ここでは、患者様が、家では家族への気兼ねがあって出てきたり、毎日少しは外に出て来ること、診療所で同じような患者さんとふれあうこと、院長やスタッフと胸襟を開いて話すことで、精神衛生的にも癒されリフレッシュできるからなのです。


患者様が集う場になってもよいのではないでしょうか。


それが、患者様の心の健康に良いのならば、素晴らしいことなのではないでしょうか。



◆院長はいつも言います。


「来てくれる患者さんはまだいい。
だれにも手を借りられず、金銭面での相談に乗ってもらえる人もなく、家で悩んでいる患者さんはたくさんいる。
そんな人たちの力にもならなければ」


と。



▼そんなある日、毎日通ってくる女性の患者様と話をしていて、院長は、その患者様のご主人も腰を悪くして長くわずらっていることを聞きました。


ご主人が、
「以前かかっていた医者が閉院してしまい、新しいところで診てもらうのも気が進まない」
と言って、どこにも通わず、わずらい悩んでいることを知り、院長は、その患者様に、ご主人と来院されるよう勧めました。


「わたしも、一緒に来ようと言ってるんですけど、どうも気乗りしないみたいで」


という患者様に、院長は提案しました。


「○○さん、ご主人にサポーターを貸してあげるから、しばらく使ってみて。
以前にご主人が使っていたのと同じタイプのがあるから。
それで調子が良くなったら、ご主人とおいでよ。」


「それじゃ、先生に迷惑をかけちゃうから、申し訳ないわ。
お金、払います」


「お金はいらないから、気にしないで。
やっぱり医者にかかるのは抵抗があるものだからね。
ご主人に気が向いたら来てって伝えてね。
はい、サポーター」



◆こんなかたちで医師から親身に心をかけてもらえれば、患者様は


「いつまでも自分に甘えてはいられない。
一度ちゃんと診てもらおう」


と、気持ちが向くことでしょう。


診てもらうならば、当然、そのように気持ちを導いてくれた医師に診て欲しいところです。


こうして、院長は、会う前に患者様との関係づくりをしたのです。



◆この醫院には、前号でお伝えした通り、心を明るくする仕掛けがあります。 
そして、心を前向きにする仕掛けもまたあったのです。



◆そんな院長やスタッフの人柄のおかげか、早くもファンが増えています。


ある患者様は、


「今日は忙しいから受診しないけど、これみなさんで食べて」


と旅行土産を届けてくれます。


またある患者様は、


「わたしたち常連同士が楽しそうにしゃべっていると、新しい患者さんに気の毒でしょ。
だから、新しい患者さんがいらしたら、ちょっと静かにしなきゃね」


と、醫院がより多くの患者様から愛されるよう、気遣いをしてくれます。



◆それは、院長やスタッフが、患者様の心と向き合っているからではないでしょうか。


禁煙やメタボリック対策のポスターを貼るだけでなく、患者様の心に訴える方法を講じることができるのだということを知らされました。


また、患者様を愛することが、愛される医療機関になる前提なのかもしれないと、実感させられたように思います。

 

心を見つめる病院の姿
真生会富山病院 ホスピタリティの真髄

 
 富山県にあるこの病院では、「病巣を相手にする」のでもなく、「身体を相手にする」のでもなく、何よりも「患者さんの心を見つめている」様子が。随所に感じられます。
 似て非なる患者サービスの実践例もありますが、ここでは、この病院が「心を見つめている」ことが判る取組に焦点を当てて、ご紹介します。

 

Vol.1 「心を明るくする(1) 化粧品コーナー」

 
【化粧品が充実している売店】
 
 左の写真は、この病院内に設置してある売店の入口です。ご覧ください。
 
 パーテーションを挟んで洗面台の右隣にある商品棚は、ご覧の通り、棚ひとつが、まるまる化粧品で占められています。上部の一段は、横一列に口紅がズラリと並んでいるのが見えます。とても病院の中とは思えない鮮やかな一角となっています。
 病院内の売店で、これほど化粧品コーナーが充実しているところはないのではないでしょうか。
 
 たいていの場合の売店では、タオル、パジャマ、紙おむつ、ティシュペーパーといった最低限の生活必需品で占められているのが実状です。
 
 ところが、この病院では、まず化粧品棚が目に飛び込んでくるのです。綺麗に装うことを忘れたり、あきらめていた女性の患者さんも、思わず目が輝くのではないでしょうか。そして、パッと心が明るくなるはずです。この病院では「心を明るくする」ことにフォーカスしているということが判ります。
 
 殺伐とした環境では、治るものも治りません。なぜ治さなければならないのか、希望すら見失いかねないのです。
 「心を明るくする」ことに心を砕く、そんな医療機関がもっと増えても良いのではないでしょうか。
 

心を見つめる病院の姿
真生会富山病院 ホスピタリティの真髄

 
 富山県にあるこの病院では、「病巣を相手にする」のでもなく、「身体を相手にする」のでもなく、何よりも「患者さんの心を見つめている」様子が。随所に感じられます。
 似て非なる患者サービスの実践例もありますが、ここでは、この病院が「心を見つめている」ことが判る取組に焦点を当てて、ご紹介します。

 
 

Vol.2 「心配りを組織風土とする実例」

 
【待ち時間を自由にする】

まず、右の写真は、
「受付から診察までの間、外出してもいいですよ」
というお知らせです。


たいていの場合、院内で待っていただきますが、患者様は、トイレや電話のためのわずかな離席でも、
「その間に呼ばれて、後回しにされたら困る」
との心配からためらい、拘束されてしまうことになります。


その時間を自由な時間にしようという発想を実現したのが、この
「お電話でのお呼び出し」
です。


近所の書店や喫茶店で過ごすこともできます。


いったん帰宅して、洗濯物を取り込んでくることもできます。


長ければ数時間という待ち時間を、拘束するのか、自由にするのか、によって、患者様にとっては、体調にも精神衛生にも大きな違いが生まれることでしょう。
 



【リーフを持ち帰れるようにする】


左の写真は、受付時間や診療時間の変更についてのお知らせです。


掲示しておくだけでなく、小さなプリントを作って置いておき、患者様が持って帰れるようにしています。


来院される患者様にとって、メモを書いたり、覚えて帰ることは負担となります。


まして、具合が悪くて来院されていますから、気持ちにもゆとりがないことが多いでしょう。


したがって、お知らせは、できる限りこのように持って帰れるようにしておくことが、患者様に親切な、望ましい配慮だと言えるでしょう。


時間の変更をきちんと伝えることは、窓口に対するトラブル防止にも直結しますが、このほか、最寄りのバス停の時刻表、タクシー会社の電話番号、医療相談室の受付時間・電話番号なども、プリントにして持ち帰れるようにしておくとよいでしょう。


また、写真の事例のように、読み手を配慮して、大きなハッキリとした字で書いておくことも細かな心遣いです。
 



【インターネットを使えるコーナー】


さらに、この真生会富山病院では、次の写真のように、インターネットを利用できる環境もあります。


仕事を持っている人にとっては、今やインターネットは生活必需品です。


患者様にとっても、インターネットが使えることはとても助かることです。
 



◆今回は、
「親切」
な仕組みを紹介しましたが、前回お伝えしたように、もともと患者様の心にフォーカスした病院だからこそ、こうした親切にも、温かみが感じられることを忘れてはならないと思います。


ハードが整っていても、対応一つで台無しになることも、忘れてはなりません。


「時間変更のプリントがもう無いのですが、いただけますか?」
「インターネットを使わせてもらいたいのですが」
といった患者様のお申し出にも、
「たいへん失礼いたしました。
すぐに用意いたしますので、
そちらにお掛けになってお待ちください」
と、笑顔で爽やかに対応してこそ、患者様にとって
「頼りになる」
「安心できる」
「癒される」
病院となるのです。
 
 

心を見つめる病院の姿
真生会富山病院 ホスピタリティの真髄

 
 富山県にあるこの病院では、「病巣を相手にする」のでもなく、「身体を相手にする」のでもなく、何よりも「患者さんの心を見つめている」様子が。随所に感じられます。
 似て非なる患者サービスの実践例もありますが、ここでは、この病院が「心を見つめている」ことが判る取組に焦点を当てて、ご紹介します。

 

Vol.3 「心を明るくする(2) 川柳」

 
【① ご意見箱の設置の仕方】

 左の写真は、この病院内に設置してあるご意見箱コーナーです。ご覧ください。

◆一見、投票所のようですが、これまでに見たことのない「患者様にとってゆっくりと気兼ねなく書くことができる書きやすい環境」が整っています。

 第一に、きちんと、ご意見用紙と筆記用具が整っています。「ご意見をお聞かせ下さい」とお願いしているからには、書きやすい環境が整っていなければなりません。
 ところが、これができていない病院様が非常に多いのが実状です。下の写真をぜひ、ご覧ください。


◆みなさんは、どのような点にお気づきでしょうか?
 

 ◆右の写真は、ある大学病院の外来総合ロビーの様子です。正面玄関を入ってきた患者様は、右手から現れます。奥のテーブルは、初診患者様に初診カードを書いていただくためのものです。さらに左手に進むと、初診受付があります。


 柱の手前にあるのが、ご意見用紙(緑色のケース)と、ご意見箱(下の木箱)です。

 みなさんはすでにお気づきのことと思いますが、ここで意見を書こうと思っても書けないのです。筆記用具や書台がないからです。また、初診カードの書台で書こうとすれば、奥の初診受付から、職員が見ている、というわけです。

 ちなみに、この大学病院では、午前中の混雑時には、案内係の看護師さんがちょうどこのご意見箱の向かいに立つことになっているのです。
 

【 心を明るくする仕掛け  「川柳」 】 

 

【② 心にフォーカスする】

◆さて、いよいよ真生会富山病院様の素晴らしい点をご紹介します。前出のご意見箱コーナーの正面に掲示してあるポスターの写真をご覧ください。
 

 
◆この掲示には、実は、このように書いてあるのです。
 
川柳募集中
待ち時間改善のとりくみの一つとして、「待ち時間に関する川柳」を募集しています。みなさまの率直なご意見やアイデアを川柳でご自由におよせください。*作品は院内に掲示させていただく場合がございます。その場合はペンネームだけを書かせていただきます。なお、ご意見でもけっこうです。
 
◆待ち時間に、この掲示を見たら、どう思うでしょうか?
「どれ、一句ひねってみようか・・・」と、気持ちが剥きやすいことでしょう。そして、ああでもない、こうでもない、と思わず笑いながら頭をひねっている時間は、間違いなく楽しい時間になっているはずです。
 
◆この施策の素晴らしいところは、待っている患者さんの「心が明るくなる仕掛け」であるという点です。
 
◆院内に書籍コーナーやテレビ、熱帯魚のいる水槽などを設置している医療機関はたくさんあります。アメニティとしては大切な取り組みだと思います。
 
 ところが、ごく自然に「ひとつやってみよう」と思わせ、楽しみながら川柳づくりをしてしまうようになっているこの仕掛けは、まさに「患者さんの心にフォーカスしている」からこそなせる業ではないでしょうか。
 
◆また、これに応募されたたくさんの川柳が、バインダーに収められて、近くに置いてありました。病院帰りに孫の顔を見にゆくのを楽しみに待っている、といった微笑ましい作品がたくさん置いてあり、それを読んでいるだけでも、充分待ち時間が楽しくなります。
 
「もうちょっと読んでいたい」
とさえ思ってしまうくらいなのです。
 
 そして、自分と同じように待ち時間を楽しみながら過ごす患者さんの声に触れることで、川柳を通じたコミュニケーションにもなっているのです。
 
 お金をかけて熱帯魚や大画面テレビを置かなくとも、患者さんの心を明るくし、待ち時間を精神的に健康な時間にする方法があるということではないでしょうか。
 
◆しばしば医療機関から、
「患者サービスのためには何を置いたらいいですか?」
「待ち時間対策にはどんなシステムがいいでしょうか?」
と問い合わせをいただきますが、モノにフォーカスするのではなく、患者さんの心にフォーカスすることこそが大切であり、同時に費用をかけずに済む方法を見出すポイントであると言えるでしょう。
 
 

Stabucks Coffee ホスピタリティの真髄

 
ルールによらずにホスピタリティを実現する!
Starbucksに学ぶホスピタリティの真髄

ファンも多く、たくさんの本も出されている「スターバックス・コーヒー・ジャパン」。
確かに、他のカフェと比較しても、店員さんの対応は心地よく、環境も快適。それはなぜか?
mixiにもFacebookにもファンページがつくられています。なぜ、多くのファンに愛されているのか?
価格は、決して安くはありません。いまどきの牛丼よりもコーヒー一杯が高いのです。
それでも愛される理由に迫ります。

このページで、みなさまの現場に応用できるホスピタリティの真髄をみなさんと共有したいと思い、掲載しました。どうぞお立ち寄りください。
 

Vol.1 スタッフのアイディアが実践されるカルチャー

 
スターバックスでは、社員であれ、アルバイトであれ、自由に意見が言えるカルチャーが築かれています。

 たとえば、店頭に、『世界で一つだけのメニューを一緒に作りませんか?』という、ショップからお客さんへの呼びかけのプリントをおいています。お客さんが自由に手にして帰れるようになっています。

 スターバックスでは、お客さんが、「牛乳の代わりに豆乳にする」などといった自分なりのアレンジメニューを作って楽しむことができます(多くが50円程度のオプション)。

 ある日、このショップでは最初、
「店員から、わたしのお気に入りのアレンジをお客さんに紹介して、試してもらうなどして、楽しんでもらおう」
という話になりました。

 ところが、店員さんの一人が、
「せっかくやるなら、ぜひお客さんにも参加してもらって、一緒に楽しんだらどうか?」
と提案したのです。

 そこで、「あなたのお気に入りを教えて」という呼びかけになったということです。
 この「お気に入りのアレンジを紹介していみませんか?」というイベントは、このショップのストア・マネージャー(店長)によれば、他のショップで行なわれた例は知る限りでは無いそうです。

 一人ひとりのメンバーが、自由にアイディアを出し、柔軟に実行される。それが、スターバックスのカルチャーなのです。


■では、どのようにすれば、メンバーが自由にアイディアを出し、柔軟に実行されるカルチャーは作られるのでしょうか?
そのカルチャーを醸成している仕組みを、次の機会にご紹介します。
 

Stabucks Coffee ホスピタリティの真髄

 
ルールによらずにホスピタリティを実現する!
Starbucksに学ぶホスピタリティの真髄

ファンも多く、たくさんの本も出されている「スターバックス・コーヒー・ジャパン」。
確かに、他のカフェと比較しても、店員さんの対応は心地よく、環境も快適。それはなぜか?
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価格は、決して安くはありません。いまどきの牛丼よりもコーヒー一杯が高いのです。
それでも愛される理由に迫ります。

このページで、みなさまの現場に応用できるホスピタリティの真髄をみなさんと共有したいと思い、掲載しました。どうぞお立ち寄りください。
 

Vol.2 スタッフがのびのびとアイディアを出すカルチャー

 

■ホスピタリティを向上する条件として、
「小さな気づきや提案を、否定せずに大切にし合う」
ということが必要となります。

 なぜなら、
「そんなことは、必要ない」「そこまでやるのはやりすぎだ」「そこまでやらなくていい」
と、互いの価値観を片付けあっていると、
最後に残るのは、自分たちのビジネスにとって必要な業務だけとなってしまうからです。

 そして、自分たちにとって必要なことしかしない組織や人が、周囲から愛されることはないからです。

 むしろ、
「そんな細かなところまで気づくことが素晴らしい」
「もっとできることがあったね。発見してくれてありがとう」
というように、
「小さな気づきや提案を美徳とする」
風土が重要となるのです。

 費用や手間などの事情を考えて、
「できるかできないか」
を検討したり、時期や優先順位を決めるのは、その後でよいのです。
気づいたり提案がなければ、それすらも始まらないのですから。


■そんな、小さな気づきや提案を言いやすい環境であるためには、
そもそも、日頃から職員が互いに認め合う習慣がなければなりません。

「大概のことは、まずは聞いてもらえる」
と、お互いを認め合い、尊重する環境がなければ、
小さなことほど、批判や反論が恐くて、言えないからです。

 認め合うことを、「承認」「レコグニッション」とも呼びます。

 リッツ・カールトンでは、従業員が、
「ファーストクラス・カード」というサンクス・カードを
互いのナイスプレーを賞賛したり、自分への協力に感謝したりするときに、
メッセージを書いて渡します。

 それが、評価報酬に反映する仕組みもあります。


■さて、さらに一歩進んでいたのが、スターバックスです。
 ここでは、カードは、すでに5種類用意されています。
 そのそれぞれに、意味合いがあるのです。
 それが、下の画像です。

 
 


 
 



 上段左から、
1.INVOLVED ・・・「参加する」店に、会社に、地域社会に
2.WELCOMING ・・・「歓迎する」どんな人でも親しみを感じられるように
3.KNOWLEDGEABLE ・・・「豊富な知識を備える」自分の仕事を愛し、他の人と仕事の知識をシェアする
4.CONSIDERATE ・・・「思いやりを持つ」自分自身を大切にし、互いに気を配り、環境を慈しむ
5.GENUINE ・・・「心を込めて」接する、発見する、対応する
そして、右下「THANK YOU」は、5枚のカード共通の裏面です(現物は、名刺と同じくらいの厚さで、サイズは名刺より一回り小さいもの)。

 従業員は、この5つのうちの、どのナイスプレーだったかによって、カードを選び、
裏面にメッセージを書いて相手に渡すのです。

 スターバックスでは、各従業員に、これらの理念とその具体的な内容を書かれた手帳が渡されています。その手帳は、制服であるグリーンのエプロンにちなんで、GAB(Green Apron Book)と名付けられています。
 そのGABを実践するためのカード、という意味で、上にご紹介したカードは、GABカードと呼ばれています。



■この仕組みの画期的なところは、
「会社が、この5つの理念を大事にしている」
ということを、会社が社員に伝えるのではなく、


社員が、常に意識し、気持ちよく、認め合う中で、
社員同士が、この5つの理念を楽しく啓発しあう状況が構築されているということです。



 多くの企業では、社是社訓を、上から下へ伝えています。
 その反面、その理念を実践していてもいなくても、
誰からも日常業務の中で評価されるということがありません。


 一方、スターバックスのこの仕組みは、
社員同士が、楽しく具体的な理念を伝え合い、その実践を承認し合う、という、
リッツカールトンにさえもない、素晴らしいものです。


 なお、このカードを何枚もらったから給与が上がる、という制度にはなっていないそうで、
それでも、
「もらうことが、嬉しいものなんですよ!」
と店員さんが言うように、次への大きなモチベーションを生み出していることもまた、効果を実証しています。



■このような、カードが飛び交う職場ならば、
自ずと、社員同士が、小さなアイディアや意見をのびのびと言える環境であることが
想像できるでしょう。


 なぜなら、従業員がみな、
「基本的に、人として周囲から認められている」
と、普段から体感しているからです。



■なお、カードの文面で、興味深い点がいくつかありましたので、追記しておきます。

(1)まず、
CONSIDERATE「思いやりを持つ」のカードは、
”Take care of yourself” から始まっています。
思いやりと言いつつ、「まず自分を大切に」と呼びかけているのです。

「本当のホスピタリティは、自分が楽しんでいなければ実現できない」
ということを知っている企業なのだということが、ここでハッキリと判ります。

医療機関・福祉施設で、なによりも
「まず、自分自身を大切に」
とうたっているところがあるでしょうか?

(2)もうひとつ、
GENUINE「心を込めて」のカードには、
”Connect, discover, respond"とあります。

「まず接しなさい(Connect)、
そして、何ができるかを発見しなさい(discover)、
そして、それに答えなさい(respond)」
それが、心を込めた対応をする方法である、と教えてくれています。

 つまり、オーダーを聞いて対応することは、
発見がありませんから(求められたことをするだけなので)、
スターバックスが期待する「心を込めた対応」ではない、と明言している、というわけです。

 ちょうど、わたしたちが、記憶に残る先生を思い浮かべるとき、
教科書の内容を教えてくれた先生が挙がるのではなく、
授業以外で面倒を観てくれた先生ほど、心の通じた先生として、印象に残っている、
というのと同じ価値観があるのではないでしょうか。



■こうしたカードを渡しあう仕組みは、医療機関・福祉施設の現場には馴染みにくいと思います。

しかし、この事例は、1泊あるいはそれ以上の寝食を提供するホテルではありません。

たかだか、ほんの数分でコーヒーを提供するカフェで、
ここまで、ホスピタリティを探求しているのです。


このことは、
カフェやホテル以上に、患者様や利用者様とのかかわりが深い医療機関・福祉施設にとって、
参考になる点も大いにあり、
また、「ホスピタリティあふれるあたたかい組織」を創る上での励みともなることではないでしょうか。



■形はどうあれ、ホスピタリティを向上するには、
1.小さな気づきや提案を、のびのびと言える環境を創ること
が必要であり、

そのためには、
2.日頃から、「基本的に、人として周囲から認められている」ことを体感できる環境
を創ればよい、ということが言えるのではないでしょうか。


みなさんなら、どのようなスタイルをお考えになりますか?
患者サービス研究所でも、医療機関・福祉施設の現場に相応しいスタイルを企画・構成しています。
 

Stabucks Coffee ホスピタリティの真髄

 
ルールによらずにホスピタリティを実現する!
Starbucksに学ぶホスピタリティの真髄

ファンも多く、たくさんの本も出されている「スターバックス・コーヒー・ジャパン」。
確かに、他のカフェと比較しても、店員さんの対応は心地よく、環境も快適。それはなぜか?
mixiにもFacebookにもファンページがつくられています。なぜ、多くのファンに愛されているのか?
価格は、決して安くはありません。いまどきの牛丼よりもコーヒー一杯が高いのです。
それでも愛される理由に迫ります。

このページで、みなさまの現場に応用できるホスピタリティの真髄をみなさんと共有したいと思い、掲載しました。どうぞお立ち寄りください。
 

Vol.3 スタッフがのびのびと来店客とコミュニケーションを交わすカルチャー

 
■スターバックス・コーヒーには、熱烈なファンという人たちが存在します。
たしかに、「スタッフは、みな感じが良い」と、誰もが感じるでしょう。

もちろん、「そんな、あたたかいショップで働きたい!」と入社してくる人たちが多いので、そんなあたたかいショップになっているとも考えられます。

しかし、考えてみてください。
多くの企業、店舗、医療機関に共通することですが、
最初は、「お客さんや社会の役に立ちたい」という夢を抱いて就職してきたスタッフも、やがて仕事をこなすことに精一杯になり、眼が死んでゆき、「お客さんの役に立ちたい」という夢を忘れてしまう、ということが、
多くの現場で起きています。

■つまり、スタッフ任せにしていても、決してあたたかい組織風土が生まれることも、維持されることもないのです。

そして、スタッフが、信じる通りに、言いたいことを言い、実践したいように実践できる環境がなければ、スタッフのやりがいは失われてゆくのです。
それは、ホスピタリティが失われるということでもあります。

■ところで、スターバックス・コーヒーでは、少なくとも一つ、スタッフが「自分の信じる通りに、言いたいこと言い、実践したいように実践できる」ことがあります。
たとえば、スターバックス・コーヒーでは、飲み物を紙のカップで提供することができる場合、それとなく、スタッフが、メッセージを書いてくれることがあるのです。
これは、みなさんも経験があるのではないでしょうか。

例えば、紙のカップの側面に、「就活 Fight!」とメッセージを書いて渡す、というメッセージです。何度か通って利用していた、リクルートスーツの学生に、スタッフがエールを送ってくれたと言います。

保守的な現場では、
「不公平だとクレームされたらどうするのか?」
「全員に書いてあげることができないから、やるべきではないのではないか」
「必ずしも喜ばれるとは限らない」
「そんなメッセージに意味があるのか?」
といった、否定的な発想がいくらでも飛び出すことでしょう。

しかし、こんなことで、
不公平だというクレームになることもなければ、
出来る時だけすればよいことであり、
喜ばれなさそうだったら、しなければよいことであり、
業務以外のコミュニケーションこそが、あたたかい関係性を創るという大きな意味があるのです。

それなのに、同じようなことを実践しているところはありません。
医療機関では、「患者さんには、家族に接するように接しましょう」とうたっているところもあります。
それはまさに、このような素朴なコミュニケーションを意味しているのではないでしょうか?
もしそうでないとすれば、その病院のいう「家族に接するように接する」とは、どんな言動のことなのか、判りません。
 
 
  ■これは、別の店舗、別の機会に、スタッフが書いてくれたメッセージです。さりげないメッセージが心をあたたかくしてくれます。
 
職員が、自分が信じる通りに、言いたいことを言い、実践したいように実践できる環境があって、初めてあたたかい接遇が実現するのです。
「あれはダメ、これはダメ、ああしろ、こうしろ」と強制され、萎縮しかねない環境では、決してあたたかい瞬間は生まれません。
 
そして、それは、まったく難しいことではありません。
家族や友人にするようにする、極めて素朴で単純なことです。
 
実践しない理由があるでしょうか?
 

コーヒーショップが「期待を超越する」理念を実現する時!
TULLY'S COFFEE ホスピタリティの真髄

 
スターバックスと並んで、アメリカから来たコーヒーショップである「タリーズ・コーヒー」
ホスピタリティの観点からは、ドトール、カフェ・ド・クリエ、ベローチェ、エクセシオール・カフェなどとは一線を画した、顧客対応の教育を徹底している様子がうかがえるショップであると、みなさんも日頃感じておられることでしょう。
その秘密の一つを明らかにしましょう。
 

スタッフがのびのびと行動することを美徳とする基本理念とは?

 
 タリーズコーヒーの基本理念の一つに、
『お客様の期待を超越する』
という一項があることをご存知でしょうか?

 とても好感のもてるサービスだったために、スタッフの方に訊いたところ、教えてくれました。いまは、同社のホームページにも掲載されています。
 一般に言われる、「顧客の期待を、サービスが上回れば、感動を与えるはずである」という考え方が前提かも知れません。(医療機関では、やみくもに患者さんの期待を超えようとしても、かえって苦情を生むことになるので、そのまま導入することはできません。医療業界向けの翻訳をしていただく必要があります。この点は、このホームページやメールマガジンで様々な角度から詳説していますので、参考にしていただけると嬉しいです)。

 この、タリーズコーヒーの「お客様の期待を超越する」という理念は、ちょうどリッツ・カールトンの「お客様のニーズの先読みをしよう」という理念に通じます。

 これが実現できるためには、2つの要件が満たされなければなりません。それは、
①スタッフが、「期待を超えたサービスとは何か」という引き出しを持っていること
②そして、スタッフが、それをのびのびと行動に移すことができる環境があること
です。

 さて、「期待を超越する」とは、具体的にどんなことでしょうか?
 「医療現場では難しい」と、思いますか?

 しかし、ある意味では、コーヒーショップの方が難しいとも言えます。なぜなら、
・来店客とは、主にコーヒーを購入する際にしかコミュニケーションが持てない
・来店客は、「これが欲しい」というニーズが満たされすれば、とくに他に困っていることがない
・来店客のID(名前などの個人情報)をとれないので、売買以外のコミュニケーションをとりにくい
という状況だからです。

 「期待を超越しなさいと言われても無理だ」と思えば、無理でしょう。

■ところが、こんな体験をしました。

札幌でのことです。
あるビルの地下1階にあるタリーズコーヒーで作業をした後、用事があったため、

トレーを返却した際に、近くにいたスタッフの女性(おそらく大学生くらい)に
「ここから、JRタワーに行くには、どのような道順になるか、教えてもらえますか?」
と訊くと、
「この目の前の通りを直進すると、大戸屋がありまして、さらに直進すると階段が見えてくるので・・・」

札幌は地下道が張り巡らされていて、かなり広い範囲で、地上に上がらなくても駅まで行けるようになっていて雪国ならではの便利さがあります。

反面、地下道は似たような景色が続くので、方角も見失いやすく、目印も遠くからは見えないという不便さもあります。

地上の道路と同様、地下道も碁盤の目のように整備されているため、辿り着いて見れば、シンプルな道順だったということもあります。

スタッフの女性も一生懸命に説明してくれたので
「ありがとうございますだいたい判りました。行ってみますね」
と言って話を終え、
5メートルほどの距離にあるトイレに寄ってから、教えてもらった通りに出ようとしたところ、
背後から
「お客様!」
と呼び止める声がありました。

さきほどの女性スタッフが、
「上手に書けなかったんですけど」
と言いながら、JRタワーまでの道順を手書きしておいた紙片を差し出してくれたのです。

碁盤の目のような地下道なので、方角と曲がり角だけ判れば辿り着くため、距離感こそ書かれていませんでしたが、10分もかからなかったので、着くまでに負担は感じませんでした。
 
  手書きの方が、なぜか、あたたかい気持ちになるものです。パターン化した対応ではないからでしょうか。それが、この写真です(おそらくレジスター用のロール紙、幅4センチメートル弱です)。

また、話し終えて
「行ってみますね」
と別れたわたしが、一旦トイレに向かったのを見ていなければ、その女性スタッフが地図を書いて待つという行動はなかったはずです。

■あたたかい接遇とは
「できることをみずから気づき、工夫し、実践する」創造的なことです。

そして、創造的なことである以上、本人が「そうしたい」というモチベーションがなければ、絶対に成立しないのです。

しかし、もう伝わったことと思いますが、「期待を超越する」ということは、実は難しいことばかりではないということです。
知識も技術も資格も経験も費用も時間もかかりません。
自分の友人や家族にするのと同じことをするだけで良いのです。

みなさんの現場でも、
「家族に接するように、患者さんやご家族にも接しよう」
とうたっているのではないでしょうか。

それがそのまま、「期待を超越する」ことでもあるのです。
いかがですか?
今日からできるのではないでしょうか。

■もう一つ、この女性スタッフが、一旦、フロアの整備の手を留めて地図を書くといったことを、のびのびとすることができる環境であることも必要不可欠な前提条件です。
こうした環境を醸成するには、まさに患者サービス研究所が、セミナー、コンサルティング、接遇委員のための勉強会などで、みなさんと学んでいる
『組織風土の創り方』
が必要となります。