HOME > 心に響く接遇の方程式 Q&A

Q. 患者さんからのお心付けをお断りしても、患者さんの気持ちが済み、職員のモチベーションも上がる方法とは?

 
■医療現場の職員の方々から、こんなご質問をいただくことがあります。
 
 
「医療機関では、たいてい患者様からのお心づけをお断りしており、
当院でも同様ですが、
時には、手作りの煮物を持ってきて下さる方もあったりします。
あまり頑なにお断りするのは、
かえってさみしい思いをさせてしまうことにもなり、
また、失礼な気がします。 
どうすればよいのでしょうか?」
 
 
同じようにお困りの医療機関の方も多いのではないでしょうか?
 
 
もちろん、すでにお持ちくださった品物を、 
「受け取らない」
「持ち帰れ」 
と断固として突き返そうとして、押し問答をし過ぎれば、
確かにかえって非礼となるでしょう。
 
 
■そこで、なるべく受け取らないようにしつつ
 
患者様にお金をつかわせず、
それでいて患者様の気も済み、
医療機関の職員にも、その心が届き大きなモチベーションとなる
 
そんな対処の方法とは、どのようなものでしょうか?

 

A. 患者サービスのポイントは伝えること・伝わること

 


医療現場で、お心づけを持って来られるのは、
「自分だけを特別扱いして欲しい」
という方ばかりではありません。


「仕事とは言え、本当にお世話になったので」
と、素朴に感謝の気持ちを受け取って欲しいという想いであることも多々あります。


また、「お世話になるばかりでは心苦しい」
という呵責は、誰にとっても大きなストレスとなるもので、

医療現場に特有な傾向として、お世話になったと感じる患者さんほど、お礼を受け取ってもらえないことが、
精神衛生的にも好ましくない、ということも事実です。


患者さんがすでに手作りのお料理などを持ってきて下さった場合には、
さすがに受け取らざるを得ない時もあるかもしれませんが、
そんな時でも、こう言ってみてはいかがでしょうか?
 
 
「お気遣いありがとうございます。
ただ、もしできれば、お手紙をいただけませんでしょうか?
わたしたち医療従事者にとっては、食べ物やお金よりも、
なにより、みなさんの素朴なお声こそが何よりの元気のもとなのです」
 
 
■お菓子など食べ物をいただけば、それは
「115 号室の林さんからです」
とデスクの上に置かれ、いつの間にか消えてゆきますが、
 
お礼の手紙ならば、全員の眼につきやすいボードに掲示しておくことで、
貼られている限り、
その手紙は、毎日、医療現場で、職員全員に元気を与えてくれます。
 
「やってよかった。今日も頑張ろう」
という患者接遇へのモチベーションを職員に与え続けてくれるのです。
 
 
■もし、文中に職員の個人名が挙げられていれば、
当人にとっては、その手紙は一生の宝となるでしょう。
 
病院内で転属する際にも、また、異動先の医療機関でも、また掲示して励みにすることもできます。
 
 
■一方、患者さんにとっても、
お金がかからず、しかも、気持ちを伝えることができます。
 
 
また、手紙を渡した後、医療機関の職員の方々から口々に
「あたたかい手紙をありがとうございました」
「この仕事をしていて本当によかったです」
と述べられる機会があれば、
患者様もまた、
「もし次にお世話になるとしても、ぜひまたこの医療機関に来たい」
と思うことでしょう。
 
 
★ポイントは、「医療現場においては、ルールやマニュアルをどう守るか?ではなく、どうすれば患者さんの心に響き、職員の心に響くか?」です。


★また、お金やものを介さない方が、むしろ心が伝わるということもまた医療現場では、大切な、忘れてはならない原理です。
 

Q.  医療機関の接遇は、どこまでやれば良いのでしょうか? また、それは誰が決めるのでしょうか?

 
■先般、コンサルティングに伺った先の医療機関の接遇推進ご担当者様からこんなご質問 を受けました。
 

「接遇マナー研修もやってきました。
接遇マニュアルも作ってあります。
挨拶や笑顔も励行しています。
 
以前よりは、感じのよい対応をできるようになったと感じています。
それでも、クレームもなくなることはありませんし、 これで充分ということはありません。
 
なので、よりよく、もっとよく、とやってきたのですが、
ちかごろ、職員の間からは
 
『まだやるのか?』
『もういいんじゃないか?』
といった反発の空気が漂ってくるようになりました。
 
医療機関の場合、いったい接遇はどこまでやればよいのでしょうか?
また、それは誰が決めるのでしょうか?」


 
■今回のテーマは、
「医療機関の接遇は、どこまでやればよいのか? それは誰が決めるのか?」
です。
 

 
■ 多くの接遇コンサルタントやマナー講師は、
「接遇に、これで終わりということはありません。
また、医療現場では、接遇が良いかどうかを決めるのは患者さんです」
といった回答をしています?

ですが、それでは困りますね。

 
 
■なぜなら、接遇マナー研修を毎年行なっても、やがて知っていることばかりとなります。
それでも繰り返せば、職員の方々のモチベーションはむしろ下がってしまい ます。
 
むしろ、
「またマナーですか?」
と、不満が鬱積することすらあるでしょう。
 

これでは、医療という本来の業務にまで支障を来しかねず、本末転倒です。


接遇コンサルタントやマナー講師の中には、
「接遇は接遇道!
疲れても、決して顔に出さずに華麗に振る舞うのがプロです!
医療機関で働くからには、常に、患者さんに見られていることを忘れてはいけません」
と喝破する人もいます。
 

しかし、こうした考えは、医療現場には、ことさら馴染みません。

 
 
■医療現場ではたらく職員の方々の本音は、
 
「マナーの知識は身に付いた。
問題は、どうすれば、日々忙しい中でもぜひ実践したい、と思えるか、 そのポイントを知りたいということだ」
というところではないでしょうか?


つまり、接遇に対するモチベーションです。

 
しかし、多くの接遇コンサルタントやマナー講師は、ことごとく、モチベーションには言及していません。


たいてい、
「習慣にしてしまいましょう」
「心がけてやってみてください」
と、
「教えるだけ教えたので、後はみなさんで頑張ってください」
とばかりに、
モチベーションの向上は、現場のみなさん任せになっています。

 
 
■医療機関には、ホスピタリティ・マインドが無い人はまずいません。


みなさんが、医療従事者としての誇りを持ち、接遇についても
「心がけた方がいい」
ことは、(個々の温度差があるにせよ)百も承知です。
 
 
大切なのは、
「たいへんな医療現場で、実践したいと思えるカギ」
であるはずです。
 
 

■そこで、考えてみてください。
 
たとえば、一日めまぐるしく多くの患者さんの対応に忙殺された日の夕方に、ふと見ると、玄関から、荷物を両手に、出てゆく最後の患者さんの後ろ姿。

しばらく先のバス停まで荷物を持ってお送りするのも医療機関の接遇でしょう。

その時、医療従事者が、
「判ってはいるけど、今日は疲れているので勘弁して」
と思うか、
 
「ぜひ行って差し上げよう」
と思うか・・・。
 

その心の分岐点となるポイントは何でしょうか?
 

みなさんは、どのようにお考えになりますか?

A. 医療機関の接遇は誰のためか?に立ち返って見えて来ること

 


■多くの接遇コンサルタントやマナー講師は、
「患者満足度は患者が決めること」
という前提で説明することでしょう。


しかし、患者さんが決めるとなれば、
「医療機関では、どこまで接遇をやればよいか」
という問いに対する
「答えはない」
ということになります。


なぜなら、患者さんは毎日、無数に来院されるからです。
そして、医療機関が、そのすべての患者さんの満足を保証することは理論的に不可能だからです。
 
 
そこで、
「そもそも医療機関の接遇は誰のためか?」
に立ち返ってみる必要があるのです。
 
 
 
■患者サービス研究所は、根本的に、
「医療機関の接遇とは、職員の方々が、自分を擦り減らし、患者さんのために尽くすことであってはならない」
と考えます。
 
なぜなら、自己犠牲の上に行なう接遇は、続かないからです。


また、職員の方々が評価や報酬のためにする接遇は、どうしても、上司・同僚から見える部分においてのみ実践されることになります。
みなさんにもお心当たりがあることと思いますが、職員の裏表ある対応を、患者さんは敏感に感じ取ります。
つまり、表面的な接遇さえも台無しにするのです。
 
 
 
■そもそも、医療従事者の方々に、
「仕事をしていて最もやりがいを感じるのは?」
と質問すると、大抵、
「やはり、なんといっても患者さんから感謝された時です」
「患者さんの心から安心した表情を見ると、自分が元気になります」
といった答えが返ってきます。
 
多くの医療従事者の方が、ホスピタリティ・マインドが厚く、もともとは患者さんとの「心に響く瞬間」を大切にしている方々であるように見受けられます。
 
 
 
■とすれば、
「医療従事者自身が、患者さんとの「心に響く瞬間」によって、元気や勇気をもらうこと」
それが医療機関の接遇そのものと言えるのではないでしょうか。


決して、医療従事者の方々が自分を犠牲にして患者さんのために尽くすものであってはならないはずです。


やらされ感や義務感によっておこなう、心が向かない接遇は、患者さんにもそれが伝わります。


そして、同時に、職員にも、閉塞感を与え、疲弊を来たします。
そんな中で、患者さんに心からの安心を与え続ける対応が続くことはありません。
 
 
反対に、職員の方々が、患者さんとの「心に響く瞬間」を創ることによって
「今日も、やってよかった」
「明日もまたがんばろう」
と感じることができて、はじめて、
「職員が自ら続けたいと思い、また実際に続けることのできる健全な接遇」であると言えるでしょう。
 
 
 
■冒頭の問いに対する回答ですが、
 
「医療機関の接遇は、医療従事者一人ひとりが、
『自分がやってよかった、またやろう』
と思うまで実践すればよい」
と言えるでしょう。

 
すると、必然的に、充分に実践できたのかどうか、は、
「医療従事者一人ひとりが、自分自身で決める」
こととなります。
 
 
■接遇向上ご担当者が、
「いまの現場の接遇は、これでよいのか?」
と感じた時には、
 
「職員が接遇を楽しんでいるか?
職員が本来望んでいたホスピタリティの実現をできているか?」
というアングルで視ることです。
 
 
もし、不充分と感じるとき、
「どうすれば患者満足を上げられるか」
と考えると、職員をハンドリングすることになり、医療現場を疲弊させることにつながります。
 
反対に、
「どうすれば、職員が患者接遇を楽しめるか」
を探求すれば、健全な医療機関の接遇を実現することになるはずです。
 
 
 
★そもそも、人が、他者の評価に支配されるということは、常に責任と義務に追われ続け、
「これで終わりということがない」
ことを意味することでもあります。


医療機関の接遇が、患者さんによって採点されるとすれば、
永遠に満点がつかない以上、
職員の方々が、患者接遇を通じて疲弊するばかりとなってしまうのです。

 
★ぜひ、医療従事者の方々が、自分のために患者接遇を実践して、患者さんとの「心に響く瞬間」を創ることを通じて、大いに元気と勇気を得ることを願っています。

 

Q.  初めて来院した患者さんが、すでに、全面的に医師を信頼していたわけとは?

 
■その患者さんは、初めてそのクリニックに来院したのですが、
院長に会うなり、こう言いました。
 
「わたしのことは、すべて先生にお任せします」
 
初めて会ったにもかかわらず、全面的にその院長を信頼していたのです。
 
 
■その患者さんは、
この数年、体調が悪化し続けていたにも拘らず、
医師嫌いのあまり、誰に何と言われようと、断固として医者にかかることを拒み、
どこの病院にもかかっていなかったと言います。
 
その院長にも一度も会ったこともなかった患者さんが、
しかし、そのクリニックに初めて来院した時に、
すでに院長にすべてを委ねることに決めていたのです。
 
さて、なぜでしょうか?
 
 
■患者さんとの信頼関係を築くうえで、重要なヒントとなる側面があるので、この実話をご紹介してみました。
 
 
なお、その患者さんの奥様は、そのクリニックに定期的に通っていたことを参考情報としてお伝えしておきます。
 

A. 素朴な思いこそが、「あたたかい」と感じる瞬間を創る

 
 
 
■実は、院長は、かねがね奥様からこのように聞いていました。


「うちの人は頑固なもので、なかなか医者にかかりたがらないのです。
そのため、容態は確実に悪くなっているのですが」


そこで、院長はひとつのサポーターを持ちだしてきて、
「それならば、以前通院していた時は、こういうサポーターを使っていませんでしたか?」
 

「そういう話はありました。
でも、その矢先、その病院の先生が倒れられて、そのままになってしまったのです。
それ以来、お医者さんには診てもらっていません」


「では、これを貸しますから、つけてみるよう勧めてみてください。
少し楽になると思いますよ」


「でも、お代をお支払いしなければなりませんし、
診ていただいてもいないのに、申し訳がありません」
奥様はいったんお断りしましたが、
 

「新品じゃありませんから、どうぞ」
 
 
奥様から、特に良い報告もないまま、日が経ちました。
 
 
 
■それからしばらく経ったある時、また奥様が受診に来られた時のことです。


診察が済んでから、院長は、
 
「ご主人のことは心配ですね。
わたしも心配です。
よかったら、これを、ご主人に渡してください」
 
と、用意しておいた手紙を渡したのです。
 
 
 
■はたして、その2日後、奥様に伴われて、ご主人はついに来院されました。
 
 
そして、院長に会うなりこう言ったのです。
 
「わたしのことは、すべて先生にお任せします」
 
 
 
■患者さんの心をいっぺんに変えたその魔法のような手紙とは、どんな素晴らしいものだったのでしょうか?
 
 
実際は、その逆でした。
 
 
「奥様からご様子はお聞きしています。
診察してみなければ良くなるかは判りませんが、
放っておいて良くなることはありません。
一度、買い物のついでにでもお寄りになりませんか?
お待ちしております」
 
 
短く簡単な、しかし、あたかも家族に宛てて書いたような、とても素朴なものだったのです。
 
 
 
■患者さんにとってのオンリーワンになることは、
お金をかけたり施設・設備を整えることによってではありません。


むしろ、お金はかけなければかけないほど、あたたかい心が伝わるものです。


そして、患者さんとは、なによりも
あたたかい一言に救われる瞬間を求めている存在なのです。
 
 
 
★患者さんの心に響く、あたたかい瞬間を創ることは、難しいこととは限りません。


また、医療行為でなければならないというわけでもありません。


家族や親しい友人に、どのように接しているかを思い返してみれば、誰にでも、今日からすぐにできることが、たくさんあるのです。

 
 

Q.  患者さんに忘れ物をお返しして、思いのほか驚かれ、とても喜ばれた対応とは?

 
■ある医療機関で、わたしも関与した事例です。

ある日の17:30過ぎころ。

昼間に受診された患者さんから電話がかかってきました。

「院内に定期入れを忘れてしまったと思う。届いているか?」

医事課に届いておりましたので、応じた女性事務職員がそう告げると、

「これから受け取りに行きたい」
とのこと。

「18:00ごろまでは職員がおりますので、お越しください」
女性職員は電話に、こう続けました。

ややあって、さらに
「それ以降となりますと、お渡しできませんので、明日の診療時間中にお越しいただくことになります」
と応答しています。

どうやら、患者さんが
「今日は18:00頃には間に合わない」
とおっしゃっている模様。

そこで、わたしが代わって出ました。


■訊いてみると、その患者さんは、その医療機関の最寄駅から2つ隣の駅の近くにある 会社に勤務しているとのことでした。

終業時間が18:00なので、それから向かったのでは、当院に18:00に着く ことができません。

日中は、やむにやまれず受診したが、そう何度も仕事時間に抜け出すこともできないとのこと。

したがって、
「明日以降の診療時間中にお越しください」
というのも無理な話だったのです。


■忘れ物を郵送すれば、日にちがかかります。

特に、定期入れですから、患者さんのご不便が長引きます。

また、職員やわたしがシフトを抜けて届けてもらうなどすれば、業務に影響します。


■そこで、わたしたちが選んだのは、
(1) 職員に新たな負担をかけず、
(2) 業務にしわ寄せすることもなく、
(3) 定期入れを首尾よく患者様にお返しできて大変喜ばれ、
(4) お金も時間も技術も知識も資格も経験も必要ない
対応でした。
 
さて、みなさんは、どのような対応だったと思いますでしょうか?


A. 今日から誰でもできることが、目の前にある

 
 
 
■電話を受けて、わたしは、フロアにいる事務職員に、訊きました。
「みんなの中に、いつも2つ隣の○○駅を使って帰っている人はいる?」

数人の職員が手を挙げました。
 
「じゃ、今日とくに予定が無くてまっすぐ帰る人、
○○駅で改札越しに、患者さんにこの定期入れを渡してあげて欲しいんだけど、
お願いできるかな?」
 
「それなら、わたし持っていきますよ」
と申し出てくれる職員がいました。
 
「ありがとう」
 
そのあとは、電話をその職員に代わり、駅で連絡をとれるよう、病院が外出時用に備えている携帯電話の番号や時刻と場所を確認した上で、定期入れを持って行ってもらいました。
 
 
■翌朝、届けてくれた職員は、鼻息を荒くして報告してくれました。

「すごく喜ばれました!
患者さんはしきりに、『わざわざ届けていただいてありがとうございます』と言って、
感動されちゃいました。
全然わざわざじゃなかったんですけどネ」

普段の仕事でも見せないくらい嬉しそうな様子が印象的でした。
 
 
終業後、帰りがけに、帰路途上で忘れ物を渡すだけですから、誰にでもできることです。

費用も時間も技術も知識も資格も経験も要りません。

医療機関の業務にも負担を及ぼすことも一切ありません。

誰でも今日からできることです。
 
 
また、患者さんには、職員が私服だったためか、終業後にわざわざ時間を割き、足を延ばして届けてもらった、と、映ったようでした。
 
 
■なぜか、市役所でもデパートでも銀行でも、まして医療機関でも、こうしたことをしているということを聞いたことがありません。
 
しかし、自分が動ける時に忘れ物を届けるということは、みなさんも、友人や家族のためには、いつも、ごく自然にしていることと思います。
 
あまりに対照的ですが、
こうしてみると、もしも、みなさんが忘れ物をした立場ならば、
「出来ないことではないのに、なぜ、それくらいやってもらえないの?」
と、融通が利かないことを、むしろ不思議にさえ思うのではないでしょうか?
 
 
多くの企業が、ひごろ
「お客様のために」
「真心を大切にしています」
「お客様のお役に立ちたい」
「お客様の喜ぶ顔が見たい」
などと広告しているだけに、融通が利かない時、空々しさが引き立つように感じられます。
 
 
ぜひ、地域との結びつきが大切な医療業界から変えていってはいかがでしょうか?
 
 
 
■もうひとつ、さらに大きな収穫がありました。
 
定期入れを届けてくれた職員が、さきほどの報告の後、笑顔でこう言ったのです。
「今日も忘れ物があったら教えてくださいね」
 
「ありがとう、じゃ、その時はまた頼むよ」
「ありがとうございます!」
 
 
その職員にとっては、こうした
「やってよかった」
と感じる小さな、心あたたまる瞬間が、実は、
「ぜひまたやろう!」
という、患者サービスや接遇向上への最大のモチベーションとなっていました。
 
 
どんなに、接遇マナー研修で、
「きちんとした対応を心掛けましょう」
と、何十回、教わることよりも、

患者さんに
「わざわざ届けてもらえるとは思わなかった。本当に助かります。ありがとうございました!」
と、喜んでもらえる、「心に響く瞬間」を創ることの方が、
医療現場においては、何十倍も何百倍も、さらなる患者サービス・接遇向上の原動力となるのです。
 
 
患者さんにも喜ばれ、職員にもモチベーションをもたらしてくれるもの、
それが患者接遇です。
 
 
■また、このようなプライスレスな体験をできた職員は、そんな職場を大切に思うことでしょう。
 
もしも上席者が、
「うちでは、そういうことはしたことがないよ」
「何かあったらまずいから」
「余計なことはしなくていいからね」
といった考えしか持てなければ、医療現場に、プライスレスな「心に響く瞬間」が生まれることはありません。

また、そんな医療現場に、職員が
「お金よりも大切なことがある。
もっと患者さんに向き合いたい」
と、損得抜きで定着することはないのです。
 

「大事なのはお金だけじゃない。
お給料について欲を言えばきりが無いけど、
それよりも、かけがえのない心に響く体験があるから、ここが好きなんです」
みなさんの現場で職員がそう考えて仕事に臨んでくれるために最も重要なもの、
それが患者接遇です。

そして、職員が心に響く体験を創ることは、患者さんの心に響く瞬間を創ること、そのものです。
 

Q.  臨機応変な対応をしつつ、「不公平だ」というクレームを招かない方法とは?

 
■患者サービス研究所では、
「友人や家族に対してしているように、 出来る範囲で患者さんにもした方がよい」
と、お勧めしています。


その方が、あたたかさが感じられ、
また、ルール通りの接遇をしても、患者さんに癒しを与えることはできないからです。


そこで、医療現場の職員の方々から、以下のようなご質問をしばしばいただきます。


「Q.5の回答のように、たまたま都合がつく時に、忘れ物を患者さんのお宅に届けるのはよいですが、
 
一度やると、その後も
『なぜやってくれないのだ?』
とクレームされかねません。
 
また、
『知人の○○はやってもらったと聞いたが、なぜ、わたしにはやってくれな いのか?』
『不公平だ』
とクレームを言われることにもなるのではないか、と気になります。
 
どうしたらよいのでしょうか?」
 
 
■しかし、考えてみれば、みなさんが普段、臨機応変に対応されていることは、すなわち、画一的な対応をしないということです から、
実は、あたたかい対応を使用としている以上、常にこの危険をはらんでいるのです。


もし、この点をまだ解決していなかったとすれば、
臨機応変な対応は、これまで、思うようにできていなかった、ということかもしれません。
 
 
■臨機応変で、
融通が利き、
患者様にとってあたたかい、
愛され信頼され選ばれる医療機関となるための対応をするためにも、

そのことで患者様からクレームされないようにすることは、
初歩的なことでもあり、
しかも、同時に、きわめて重要な課題でもあります。
 
 
さて、医療現場においては、
どのようにすれば、
患者様に不満を与えることなく、
臨機応変な対応を実践してゆくことができるでしょうか?
 

A. クレーム回避のポイントはシンプル。
  「できる時はやりますから」

 
 
 
■答えはシンプルです。
 
「不公平だ」
という声はなぜ挙がるのでしょうか?
 
それは、患者さんが、
「これは、病院の職員が気を利かせてやってくれていることなのだ」
ということが判らずに、
 
「これは、この病院のルールとして必ずやってくれるサービスなのだ」
と、誤解しているからなのです。
 
 
■したがって、病院職員の方が、患者さんに、
「これは、ルールとして必ず行なうことではありませんよ。
時と場合と相手によって、やる場合とやらない場合があることですよ」
と明示しながら、実践するということです。
 
 
患者様に
「これは必ず行なうこと、これは必ずするわけではないこと」
と伝えていないため、
患者様は、判らず、
「なぜ?不公平では?」
と考えてしまうわけです。
 
 
 
■たとえば、みなさんが、マクドナルドやスターバックスで食事を済ませた後、トレーを片付けようとすると、店員さんが
「こちらでお受けします」
と受け取ってくれることもあり、
また、状況によっては受け取ってくれないこともあると思います。


しかし、みなさんが
「いつも受け取ってくれるのに、今日はなぜ受け取ってくれないのだ?」
とクレームすることはないでしょう。


それは、わたしたちが、
「これは、ルールとして必ず行なうことではない。
時と場合と相手によって、やる場合とやらない場合があることだ」
と、知っているからなのです。
 
 
 
■臨機応変に気を利かせた対応をする場合には、
「これは、ルールとして必ず行なうことではありませんよ。
時と場合と相手によって、やる場合とやらない場合があることですよ」
と伝えながら行なえばよいということになります。
 
 
ただし、
「普通、わたしはここを通ることはない」
「たまたまチャンスに恵まれた」
「いつもは、まずこのようなことをしない」
「本当にあなたは幸運だ」
などと、過度に説明するのは、恩着せがましくなりますから禁物です。
サラッと伝えるようにした方が良いでしょう。
 
 
 
■このようにお話すると、大抵の場合、医療現場の職員の方々からは、
「なるほど、そうしてみたいが、なかなかサラッと伝えるのは難しい。
いい方法はありませんか?」
と質問されます。
 
 
最も爽やかにうまく伝えるためには、
「できる時はやりますから、お気になさらないでくださいね」
と笑顔で言ってみるとよいでしょう。
 
 
「できる時はやりますからね」
は、みなさんも普段、何気なく口にしている言葉ではないでしょうか?


恩着せがましくなるのではないか、と心配する必要はありません。


むしろ、
「この職員の方は、ルールだからやるのではなく、出来るだけやろうと思ってくれているのだ」
というみなさんのあたたかい気持ちが、この一言で患者様に伝わることと思います。
 
 
また、患者様の肘のあたりを、そっと掌で触れながら言えば、
さらに親しい距離感を感じることができるのではないでしょうか。
 
 
ぜひ、自然体でやってみてください。
 
 

なお、このようにしても
「この間はやってくれたのに」
と無理を言う患者様はいるかもしれません。
このような方は、臨機応変な対応をしてもしなくても無理を言う方です。それを懸念して委縮するのではなく、臨機応変な対応によって喜んでいただけることに自信を持ってゆくことが大切ではないでしょうか。


★重要なのは、「患者さんは、医療機関や職員の方々に、公平を求めているわけではない」ということです。
 

Q. 患者さんに、一旦待合室から出て待っていただかなければならない時の対応とは?

 
■本項も、実際に医療機関であったケースです。


ある秋葉原のクリニックで行なわれていることです。


このクリニックは、年配の患者様も多く、
医療機関とは言え、朝の受付開始時間よりもはるかに早く訪れる患者さんがたくさんいます。


職員の方々は、寒い時期には患者さんたちを外でお待たせすることが忍びなく、
受付時間前に、みなさんを待合室にお通しすることにしました。
 
 
■ところが、待合室にお通しした後、
診療開始時刻が近づくと、

その直前に別のフロアで朝礼が行なわれることになっており、
その10分間は、待合室・検査室・受付カウンター・診察室などがあるフロアには職員が一人も残れません。

セキュリティや情報保護管理の観点から、患者さんだけにするわけにはゆかないため、

一度、患者さんに待合室から、一旦エレベーターホールに出ていただかなくてはならず、

その間、施錠したドアの前で待っていただかなければなりません。
 
 
■好意で、一旦、患者さんたちを中にお通しするものの、
朝礼中だけ、また一旦出ていただくのも心苦しく、

職員からは
 
「一旦出ていただくのは好ましくない。
どうしたものか」
という疑問の声が挙がりました。
 
 
■さて、ここで問題です。
 
このクリニックでは、果たして、一体どのようにしたでしょうか?
 
今回の問題は、クリニックが、この課題を
「患者さんとのあたたかい関係性を創るチャンスにした」ケースです。
 
 
(1) 毎日交替で、一人だけ朝礼を欠席して、待合室のフロアにいることに した。
(2) 全員が出勤時間を早めて、朝礼を済ませてからフロアを開け、患者さんを 中へお通しすることにした。
(3) 結局患者さんに、一旦エレベーターホールに出て10分間待っていただくこ とにした。
 
 
参考に申し上げますと、
このほか、
・いっそのこと、朝礼を廃止した
・いっそのこと、患者様をフロアにお通しすることをやめた
・いっそのこと、全員が診察フロアに来て朝礼をすることにした
・・・といった答案も考えられますが、これらは今回の正答ではありません。
 
さて、(1)、(2)、(3)のいずれでしょうか?
また、その理由は何でしょうか?
そして、みなさんならば、どのようになさいますか?


A. 患者さんと会話する機会を、大切な『想いを伝えるチャンス』にする。

 
 
 
■答えは、
(3) 結局患者様に、一旦エレベーターホールに出て10分間待っていただくこ とにした。
です。
 
 
この医療機関の現場を思い浮かべていただけると理由が判りやすくなります。

 
■一旦、待合室にお通しした患者さんたちに、 朝礼の時間になると職員がこう伝えることになります。


「これより、全職員の朝礼があるため、私ども職員はみんな席をはずさなければなりません。
そこで、たいへん恐れ入りますが、
10分間だけ、エレベーターホールでお待ちいただけますでしょうか。
どうか、よろしくお願いいたします」
 

大抵の場合、患者さんからの、
「あら、まだ準備が済んでなかったのね」
という声が聞かれたり、視線を感じたりしますので、


職員は、このように続けることになります。


「申し訳ございません。
寒い外でお待ちいただくのが心苦しくて、
少しでも早く、一旦、お入りいただくことにしているのですが…、
 
ただ、朝礼時間中だけは、このフロアをみなさん患者様だけにするわけにもゆかず、
ご協力をお願い致します。」
 
 
常連ではない患者さんからは、怪訝な表情をされますので、
毎日のように、この会話が交わされることになります。
 

しかし、こうした会話がなされるお蔭で、
一旦エレベーターホールに出ることに不満を抱いた患者さんたちも、
その会話があることによって、


「決してスマートではないけれど、このクリニックの人たちは、いろいろ考えてやってくれているのだ」
と、職員のあたたかさを感じることができるのです。
 
 
 
■大切なのは、会話が生まれることによって、
医療機関の職員の方々の
「患者さんのために、できることをしたい」
という想いが、患者さんに伝わるのです。
 
 
 
■もし、
 
朝礼が済み診療時間直前になるまで外で待っていただいたとしても、
「患者さんたちに待っていただくことを、職員はみんな本当は心苦しく思っている」
ということは、患者さんに一切伝わらないのです。

また、

全員がこれまでよりも出勤時間を早めて、
朝礼を済ませてから患者さんをフロアにお通しすることにしても、
わざわざ知らせない限り
「自分たちのためにクリニックの職員がシフトを繰り上げてくれた」
と患者さんが知ることはありません。
 
あるいは、

医療機関の職員の一人が朝礼を欠席して、黙ってフロアに残って準備作業をしていても、
「この医療機関の職員の人たちは、
本当は全員で朝礼をしたいのに、
なんとかやりくりして、わたしたちのために、一人が朝礼を欠席してくれているのだ」
と患者さんが感謝するきっかけもありません。
 
 
会話がなければ、患者さんには、職員の方々の思いやりの気持ちは伝わらないのです。


すると、患者さんたちからすれば、
「やってもらって当たり前」
と映り、

時として、診療時間前であっても、いつもの時間に開けていなければ、
「なぜだ」
と、クレームの原因になるなど、
普段、職員の方々が、好意で早い時間に開けていることがあだになってしまうことさえあるのです。
 
 
 
■ 注意してください。
 
 
医療現場では、どうしても、
「誰がどうするか、ルールを決めましょうよ」
という発想になりがちです。


それは、たいてい、
「患者様に余計な説明をしないで済むようにするためには?」
「患者様に誤解させないよう一律に伝えるには?」
「なにを掲示すればよいか?」
「なにを配ればよいか?」
といった、手間をかけない方法の追究になっています。
 
 
しかし、スマートに見せない方が、患者さんには、職員のみなさんの想いが伝わるものです。


また、手間をかけることが、患者さんとのあたたかい関係を創ります。
 
 
 
■以前、著書の中でも紹介しましたが、
 
リッツ・カールトン大阪では、駅から通じる地下道から、ホテルの地下フロア入口に入っても、 そこからロビーに行くまでの順路には、判りやすい表示をつけていません。
 
それは、

「ホテルマンが、お客様のお出迎えやお見送りをする際に、
お客様の荷物を持ってロビーと地下フロア入口の間をアテンドする手間が生まれ、
その間に、さまざまな会話をする(それによって、以後のサービスに活かす情報を収集する)ことができるようにするためなのだ」

と、ホテルマンの方から、まさにアテンドしながら聞かせてもらったことがあります。
 
 
 
■医療機関では、手間をかけられる時間帯や場面は限られていますので、
ホテルを真似る必要はありません。
 
 
できる時にできることをすればよいのです。


忙しい時間帯にまで、
「美しい立居振舞いをして欲しい」
と望んでいる患者さんはいません。


反対に、夕方の外来のように、少し落ち着いた時間帯にさえ
まばらにいる患者さんの前を、医師や看護師や事務職員や清掃担当者などが、
会釈もしないで何度も往復していれば、
「まったく患者のことを見ていない!」
とクレームになるのです。
 

できる時に、できることをしましょう。


そして、患者さんに、
「できる時にできることをしているんですよ」
という想いが伝わる会話をつくってみることです。
 
 
会話のないスマートなやり方よりも、あたたかいはずです。
 
 
わたしたちも、スマートであたたかさのない対応をしてもらって
ファンになることはありませんが、
 
想いが伝わってくる会話一つであたたかさを感じ、
「この人でよかった」
「ここなら安心して相談できそう」
という気持ちになることがあるのではないでしょうか。


★一般に、販売店や外食店では、混むほどに、売上が上がる一方、サービスは低下します。
これでは、来店客がクレームを言うのは当然です。
そのため、ビジネスマナーを教える接遇コンサルタントやマナー講師は、来店客を受け入れえる以上は、サービスが低下しないよう、
「どんなに混みあって、忙しくても、スマートに対応しなさい」
と、指導する、ということになるのです。

売上を優先し、サービスが低下することが、ブランドを傷つけかねない、と考える企業は、サービス低下の限界点を知っていて、入場制限をすることになります。
ディズニー・リゾートが入場制限しているのは、サービスが低下してブランドを損なうことがないよう徹底しているからなのです。

さて、その点、医療機関では、入場制限をしません。
厳密に言えば、苦しんでいる患者さんを締め出して入場制限することは、医療機関として相応しい対応ではない、とされています。
したがって、忙しくない時もあれば忙しくて手が回らない時もあるのが、医療現場なのです。
そして、それを、患者さんたちも、実は知っています。

医療現場における接遇は、できる時にできることをすればよいのです。
 

Q. 「医療もサービス業」といわれますが、医療現場にサービスは本当に必要でしょうか?

 
■医療現場の職員の方から
「患者さんから、病院もサービス業なんだから、もっとサービスしろ と言われることがある。
親切な対応をしたいとも思うが、 医療以外にまでサービスをしなければならないのでしょうか?」
と、質問されることが、よくあります。
 
■たしかに、医療機関は、
提供しているものが、物品ではないので、販売業ではありません。
 
検体検査の請負、清掃、システムのメンテナンスといった、
無形の業務を提供している点で、第三次産業であるという意味では、
「医療機関もまた、たしかにサービス業である」
ことに間違いはありません。
 
しかし、患者さんに対しては、医療以外の対応も必要であると感じます。
 
たしかに、思いやりやホスピタリティのある対応を 求められていることも事実であり、
それがサービス精神であるとも考えられます。
 
一方、
「サービス業だから」
といって、患者さんからのすべての要望に応じなければならないわけではないはずです。
 
 
■とは言うものの、
「ここまではやる。ここからはしない」
という線引きがハッキリせず、
自分の中でも、もどかしい思いをしている医療従事者の方も多いのではないでしょうか。
 
 
■世の中には、ホスピタリティを追究する学問があるようですが、


その多くにおいて、わたしが見るところ、
「サービス」についても
「ホスピタリティ」についても
医療現場において価値のある明確な違いや意味の説明が なされていないように思われます。


そこで医療機関の職員の方々の精神衛生のためにも、
医療現場における
「サービス」

「ホスピタリティ」
が何かについて明確にしておきたいと思います。
 

■さて、サービスとホスピタリティは
(1) サービスが、ホスピタリティを含んでいる
(2) ホスピタリティが、サービスを含んでいる
(3) サービスとホスピタリティは一部が重なり合う
(4) サービスとホスピタリティは全く重なり合わない
のいずれでしょうか?


A. サービスはSlave(奴隷)の心、
  ホスピタリティはHost(楽しんでもてなす迎える側)の心

 
 
 
■「サービス」は、
Slave(奴隷)と語源を同じくし、
日本語では、奉仕する、給仕する、仕える、と訳されます。


つまり、主従関係における「従」の立場でなければならない、ということです。


自分の気持ちがどうあるかとは関係なく、
主人に従わなければならない義務を負わされた立場です。
 
 
■一方、
「ホスピタリティ」は、
Guest(客人)を迎えるHost(主人)のもてなす気持ちです。


つまり、主客の関係における「主」の立場の気持ち、ということです。
 
 
どうしたら相手が喜んでくれるかを、
誰に求められることがなくとも、
喜んで、楽しんで考え実践する立場です。
 
 
 
■接遇応対は、する人の気持ちが向いていなければ、
行き届いたあたたかいものが生まれることはありません。
 
また、それが継続することはさらにありません。
 
 
 
■したがって、医療機関では職員が、
気持ちが向いた、あたたかい、気持ちの通う接遇応対を実現するために必要なのは、
客人をどう喜ばせるかを楽しむ心のような
「ホスピタリティ」であるということが明らかでしょう。
 
 
また、医療機関の職員の方々が、
奴隷が、自分の心を押し殺して、主人に尽くす心のような
「サービス」であってはならないということも言えるのです。


常に安全・正確・迅速を求められ、
さらに常に精度の向上を求められている医療現場の職員の方々が、
自分の心を押し殺して主人に尽くすようなサービスを
続けることなど、不可能なことは明らかだからです。



■したがって、設問の答えは、論理必然的に、
(4) サービスとホスピタリティは全く重なり合わない
となるのです。
 
 
 
■多くのホスピタリティ研究の学者たちが、サービスとホスピタリティの関係について、
(1)~(3)のように説明するのは、
ビジネスのシーンにおいて、
顧客をどう喜ばせるかを心から楽しむ、具体的・実践的な方法を知る人が
ほとんどいないということの現れかも知れません。
 
 
 
■医療現場において、患者さんに心からの安心と癒しを提供する接遇応対の
具体的・実践的な方法は、接遇マナーでもなければ、マニュアルでもありません。
 
 
 
■「医療もサービス業なんだから、もっとサービスしろ」
という人がいたら、
「そういうサービスは、医療機関の職務にありません。
ただ、安心と癒しを提供し、あたたかいもてなしをしたいと思うだけです」
と答えて良いのです。


★医療機関で「おもてなし」という言葉をつくことも危険です。
おもてなしという言葉には、相手をお客様扱いするニュアンスが感じられるからです。たとえば、自分の家族を「おもてなしする」ということはないでしょう。
医療現場では、患者さんをお客様扱いすれば、さまざまな要望を聞いてもらえるものという誤解を招きかねません。
ビジネスマナーの分野から来た接遇コンサルタントやマナー講師に振り回されないようにしてください。
 
 
□なお、当・患者サービス研究所は、より多くの方々に検索していただけるよう、便宜的に一般用語である「患者サービス」という言葉を使用しております。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
 

Q. どんなに忙しい医療現場でも、必ず1日1人のファンを創る方法とは?

 
■医療現場において、接遇向上のために、ルールを定めて実践してもらおうとすると、
職員の方々の間から、しばしば、
「ただでさえ業務に追われているのに、これ以上手厚い対応はできません」
「もう一人、職員がいればもう少し出来るかも知れませんが」
「もっと良いシステムが入れば、人手を接遇に割けると思います」
といった、反発の声が聞こえてきます。
 
確かに、普段から正確・迅速を求められている医療現場の職員の方々には、
いま以上に接遇にパワーを向ける余裕などないと感じられるのも
無理はないことなのかも知れません。
 
 
■しかし、医療機関においては、実際に業務の負担が軽減されても、必ずしも接遇が向上しているとは限りません。
 
とは言うものの、必ず実践するルールを決めるのも、医療現場においては難しいのも事実です。
 
なぜなら、各セクションには、様々な事情があり、できる時もできない時もあります。
そこで
「できるだけやろう」
というルールとなりがちですが、それは
「できなければやらなくてもよい」
ことを意味するために、結果的にあってなきがごとしのルールとなってしま う、というわけです。
 
 
■そんな中、ある民間病院で、
「これだけは必ずやろう」
と決めて、実践していることがあります。
 
この手法もまた、時間も費用も技術も知識も経験も資格も要りません。
新入職員でも、今日からできることです。
 
もちろん、その病院だけが特殊な条件を備えているわけでもなく、
みなさんの現場でも実践できる方法だと思います。
 
そして、1日に1人ずつ、その病院のファンを創る方法です。
 
1日1人ファンが生まれれば、1年で250人のファンが生まれるという素晴らしい方法です。
 
システマチックに
「これだけは必ずやろう」
と決めたルールですが、決して紋切り型ではなく、患者様からも
「気持ちがほっとしましたよ」
「それがきっかけで親しくなれました」
といった声が実際に寄せられています。
 
 
■さて、この病院が行なっている
どんなに患者様で混み合う忙しい医療機関でも、
誰でも簡単に実践でき、
患者様からも喜ばれ、
あたたかい医療機関となることができて、
1日1人のファンが必ず生まれる方法とは何でしょうか?
 

A. 最後の一人の患者様と一緒に歩くとき、あたたかい時間が生まれる

 
 
 
■どんなに忙しい現場でも、患者様が一人しかいない、空いている時間が、必ず1日に1回あります。
 
お察しの通り、それは、その日の最後の患者様だけになった時ですね。
 
 
 
■すべての患者様に同じ対応をすることは、難しいですから、
できる時にできることをやってゆけばよいと考えれば、
患者様が、最後のお一人になった時こそ、最も手厚い対応をすることができるチャンスである、
というわけです。
 
 
 
■そこで、その日の最後の患者様に対しては、
 
事務職員が会計をした後、外来玄関まで、アテンドして見送ってはいかがでしょう。
 
あるいは、荷物をお持ちして、表通りまで(もしくは近くなら駅やバス停まで)ご一緒してはいかがでしょう?
 
 
黙って、お荷物を持って、
「さあ、お荷物をお持ちしますよ。そこまでご一緒します」
と笑顔で言ってみてください。
 
 
歩きながら、
「寒くなりましたから、お風邪をひかれませんようにしてくださいね」
「今日もお待たせして、済みませんでした。お気をつけてお帰り下さいね」
などと、なにか言葉を交わすことになります。
 
 
そして、患者様は、驚き、申し訳なさそうになさいますが、最後には、たいてい、
「済みませんでした、ありがとうございます」
と、深々と頭を下げてくださいます。
 
 
「いいえ、わたしもご一緒できてよかったです」
患者様とのふれあいで、職員のほうも心があたたまります。
 
 
■できるのは、事務職員だけではありません。
 
看護師、検査技師ほかあらゆる職員の方々にも同じことができます。
 
最後の患者様だけは、自分の受け持ちを終えたら、患者様をアテンドして、次の窓口までお連れすればよいのです。
その道々で、患者様とぜひいろいろなお話をしてください。
 
 
 
「こんなに行く先々で、各職員から声をかけられ、丁寧に案内してもらうことは、かつてない!」
と驚き、感動し、みなさんの医療機関に大きな安心感と信頼を抱くことでしょう。
 
 
なぜなら、そんな医療機関はまだほとんど存在しないからです。
 
 
 
■どんなに患者様が多くて忙しい現場でも、最後のお一人になら出来ないはずはありません。
 
出来ない理由はあるでしょうか?
 
ぜひ明日からでも実践してみてください。
 
毎日、1人づつ、みなさんの医療機関のファンが生まれてゆくはずです。
 

Q. クレームを訴えた患者さんをファンにするために、必ず行なっていることとは?

 
■クレーム対応で、
「検討します」
「徹底します」
「気をつけます」
「頑張ります」
といった漠然とした答えほど空々しいものはありません。対話になっていないからです。
 
 
■また、苦言には
「一理ある」
と思えるものも少なくありません。
 
クレームが、現場にとっては貴重な助言でもあるということも多いのです。
 
 
■そこで、患者サービス研究所では、医療現場でクレームがあった場合、
その対応において、必ず行なっていることがあります。
 
それは、クレームを申し出てきた患者様が、
さらに現場のファンになってくれるとともに、
職員にとってもモチベーションが上がることです。
 
 
概ねご不満をお聴きしたうえで、
「たいへん申し訳ございません。このたびは、ご助言をくださり、ありがとうございました」
と頭を下げると、患者様が
「どうにかしてもらえるといいんですがね。お願いしますよ」
などと言いながら去ろうとします。
 
その時、患者様に対して、どのようにすることにしているでしょうか?
 
※なお、患者様が感情的なままである場合にはしません。むしろ、お怒りが収束に向かっている時ほど、頭を下げて終わりにせずに行なっていることがあります。 


A. さらなるご指摘、ご助言をお聴きすることで
  「当事者(一緒に医療機関を創る頼もしいファン)」になっていただく

 
 
 
■クレームをいただいたまま患者様を帰してしまうと、
患者様と医療機関との位置関係は、指摘をする側と謝る側のままです。
次に会った時も、頭を下げるところから始まることになってしまうのです。
 
 
これを、現場へのあたたかい助言をしてくださる側と、
そのご意見を改善に活かしてさらに良い医療機関を創る側といった
対等なパートナーとしての位置関係に変えて、話を終えることで、
永く、健全な関係性を築くことができるのです。
 
 
 
■そこで、
「では、同じことがないよう、お願いしますよ」
などと言いながら患者様が去ろうとするとき、こう言います。
 
 
「今回は、ご助言をありがとうございました。
もしお差支えなければ、そんな鋭いご視点から、他にお気付きの点がございましたら、
ぜひお聞かせ願えませんでしょうか?
今後の改善に活かしたいと思います」
 
 
 
具体的に質問すると、より良い意見をお聞かせいただくことができます。
 
たとえば、
「看護師のご対応は適切でしたか?」
「待合室の環境はいかがでしたか?」
というように。
 
 
 
■もし、こちら側の姿勢が伝わり、
「この点は悪くなかったよ。問題ないね」
「看護師さんは、忙しそうな感じを受けたかなぁ」
といった回答があるなどして、好意的な意見が聞ける様子であれば、さらに訊きます。
 
 
「今日ご案内しました受付の対応はいかがでしたでしょうか?
最初に患者様と接する窓口ですので、
職員なりには明るい対応を心がけているつもりなのですが」
 
「医師の説明は判りやすかったでしょうか?
また、多くの患者様を診察するため、どうしてもスピーディーになりがちですが、
ご不快な点はありませんでしたでしょうか?」
 
 
さりげなく、
「職員はできるかぎりのことをやっているのだ」
ということを伝えながら、対話をするようにしています。
 
 
 
■やがて普通の会話の雰囲気になった時には、
必ず、お褒めの言葉もいただくことにしています。
鋭い指摘をする患者様から、お褒めの言葉があるということは、
職員の方々にとっては大きなモチベーションにもなりうるからです。
 
職員の方々に元気や勇気をもたらす、願ってもないチャンスなのです。
 
 
「よろしければ、良かった点もお聞かせ願えませんでしょうか?
いま頂戴したご指摘とあわせて、
患者様の声として、ぜひ職員に伝えたいと思います。
 
さきほどのご指摘のような鋭いご意見とともに
お褒めのお言葉もいただけると、
職員にも大いに説得力があり、さらにご期待にお応えしたいという意欲が高まります」
 
 
 
■このように、
現場の良い点や、職員の姿勢、ご指摘を現場に反映したいことなどにフォーカスした話を
することによって、
クレームを下さった患者様にとっても、医療機関が
「助言を無駄にしないよう真面目に考えてくれる」
「話せる医療機関」
という存在になります。
 
 
 
■こうしたプロセスによって、
患者様もまた、一緒にこの医療機関の現場を良くすることについて相談する
パートナー、当事者となるのです。
 
 
このような当事者化によって、医療機関に愛着を持っていただくことが
なにより、患者様にファンになっていただくきわめて有効な方法です。
 
 
 
■このような、パートナー・当事者になっていただければ、
このお話の最後も、次にお会いする時にも、
「申し訳ございませんでした」
と言わなければならない上下の位置関係ではありません。
 
このお話の最後も、次にお会いする時にも、
「ありがとうございました」
となり、互いに協力する対等の位置関係となるのです。
 
 
 
■クレーム対応のポイントの一つとして、
話が終わったらクレーム者を帰してしまうのではなく、
「言いたい事をすべて訴えてもらって、言い残させない」
という鉄則があります。
 
 
その意味でも、クレームそのもの以外の周辺についても質問するなどして、
言い残すことがないよう、すべてお聞きするということは意味があります。
 
 
 
■このように、クレームも、患者様との距離を縮める
またとないコミュニケーションのチャンスなのです。
 
そのままお帰りいただいてはいけません。
ぜひファンになっていただきましょう。
 

Q. 患者満足度を向上するためには、職員満足度の向上は必要不可欠か?

 
■一般に、
「顧客満足度(CS)を上げるためには、 従業員満足度(ES)が高い方がよい」
といわれることがあります。
 
たとえば、従業員が給与に不満を持っていては、意欲的に働けず、
顧客に喜ばれるようなサービスができないかもしれません。
 
 
また、たしかに、従業員が仕事に満足していれば、
心にもゆとりを持つことができ、顧客にも気持ちを向けて対応できるかも 知れません。
 
 
 
■もしも、CSを向上するために、ESの向上が
「必要条件である」
とすれば、患者サービスを向上するためには、
医療機関は、職員の方々の満足度を高めることに 力を尽くすことが不可欠となります。
 
 
その場合には、職員にとって、いかなる満足が、患者満足度の向上に寄与するのか、
についても明らかにする必要があります。
 
 
一方、単に、CSを向上した方が、ESを向上しやすい
「傾向がある」
ということであれば、
職員満足度は、できれば向上した方が良いという程度だということになります。
 
 
 
■さて、
患者満足度(CS)と職員満足度(ES)は、
必ず比例するのでしょうか?
 
 
それとも、比例する傾向があるにすぎないのでしょうか? 
 
 
それによっては、今後、
「患者サービスを向上するためには、職員の満足度を第一に考えることが必要なのか?」
つまり、
「職員のモチベーションを向上するプログラムが必要不可欠なのか?」
という問題の答えが180度変わってくることになります。


A. 「あたたかい対応」をしたいと思う職員の満足は、
  あたたかい瞬間を創り、患者様にとっての満足そのものとなる。

 
 
 
■かなり以前になりますが、こんなことがありました。
私は、大阪に講演に行った際に泊まったホテルに、折りたたみの傘を忘れてしまいました。
東京に着いた頃、ホテルから携帯に電話がありました。
安物ではありますが、
「お送りしますよ」
とのご好意に甘えて、お願いしました。
 
数日後、定型の封筒が手元に届きました。
無造作に折りたたまれ、まとまらない生地をストラップで留めた傘が出てきました。
届けてくれるだけでもありがたいことだと感じたものです。
 
 
 
■またあるとき、あるレストランで、ネクタイピンを忘れてしまいました。
その席で、新しいネクタイピンをプレゼントされた際に、
それまで着けていたものを外してしまったのです。
翌日、やはり携帯に電話があり、送ってくれる、とのことでしたので、
やはり安物でしたが、今回もついお願いしてしまいました。
 
数日後、やはり定型の封筒が手元に届きました。
 
ところが、開けると、さらに透明の袋にネクタイピンが入れられ、
その口は、お洒落なリボンの複雑な飾り結びで閉じられていました。
ネクタイピンには、不思議なことに指紋がなく、
どうやらレストランの従業員はピカピカに磨いてから、梱包してくれていたのでした。
そして、封筒の中には、一枚の簡単なメッセージカードが同封されていたのです。
 
そこには、
「このたびは、当店をご利用下さりありがとうございました。
また、このようにお便りの機会をいただけましたことも、
何かの縁と、喜んでおります。ありがとうございます。
ぜひまたお越しいただけますことをスタッフ一同、お待ちしております」
と、書かれていました。
 
 
 
■もうお判りでしょう。
 
レストランのような対応は、マニュアルがあっても、できるものではありません。
なぜなら、いくらでも手を抜くことができるからです。
 
それは、手を抜いても、
「なぜ手紙がないのだ?」「なぜ磨いてないのだ?」
などとお客様がクレームすることはないため、
従業員同士では、証拠が残らないことから、容易に想像がつきます。
 
 
では、なにが、レストランの従業員に、
このような手間のかかった対応をさせたのでしょうか?
 
 
 
■それは、
「お客様とのコミュニケーションを大切にしたい」
と考え、お役に立てることを喜んでしようとするモチベーションにほかなりません。
 
 
 
■はっきりと判ることは、
「モチベーションがなければ決して、あたたかい対応は生まれない」
ということです。
 
 
「感じがいいね」
と言われる表面的な対応なら、マナーやマニュアルで実現できます。
 
 
しかし、
「あたたかい人だね」
「気持ちが嬉しいね」
と言われるような、ふれあいに満ちたあたたかい医療機関、
愛され信頼され選ばれる医療機関となるような対応を実現するには、
「ぜひ、そうしたい」
と、職員自身もそのことに喜びを感じる価値観が不可欠なのです。
 
 
本当にあたたかい対応を創り、愛され信頼され選ばれる医療機関を創るためには、
いわゆるマナー研修やマニュアルではなく、
どのようなねらいで構成された研修や取組が必要なのか、明らかです。
 
 
 
■「あたたかい対応をすることが自分の喜びだ」
という職員が、その職員満足度を向上すればするほど、それはそのまま
「この人はあたたかいね」
という患者満足度を向上することにもなるのです。
 
 
「本物の、あたたかい対応」
を追究されているみなさんにとっては、
患者満足度の向上にとって、職員満足度の向上は必要不可欠なものであると
言ってよいでしょう。
 
 
 
■そして、その価値観を伝え、モチベーションを高める取組を実現して下さい。
そのとき、職員の方々は、誰が見ていなくても、自ら進んで
考え、工夫して、あたたかい対応を実践されるのです。
 
 
そして、そうした対応にふれたとき、患者様は、
「ここでよかった」
とあたたかさを感じることができ、
そんな医療機関をどこよりも癒され安心できる医療機関だと感じることになるのです。
 

Q. 職員から小さな疑問が上がった時にどうするか?あたたかい医療機関を創るために絶対に必要な価値観が判る

 
■折りたたみ傘はどうしていますか?
もちろん、みなさんの医療機関を訪れる来院者様の傘です。
 
たいてい
「そういえば、どうしてもらっていましたっけ…」
「それぞれ持って歩いているのでは?」
という反応が返ってきます。
 
 
■こうした気づきは、ちょうどこの時期入ってくる 新入職員の方々の方が、感じているはずですね。 そんな、ごく小さな事柄です。
 
 
■そこで、問題です。
小さなことですが、すぐには解決策が出ないとして、
みなさんが、あたたかい医療機関を目指す場合、
このように小さな疑問が、職員から上がった時には、
どのように反応することがあたたかい組織風土づくりにつながるでしょうか?
 
次の選択肢から選んでください。
 

  1. 解決策が出なくても、「たしかにそうだな、どうにかしたいよね」と答える。 
  2. いい解決策がない場合には、「いい方法がなくて困っているけど、仕方ないよね」と結論を伝える。 
  3. 「そういう小さなことは気にしなくていいよ」と、もっと大きな問 題や日常のなすべき業務に関心を向けさせる。 
  4. 解決策が出ない場合、「いい指摘だね。いい方法が見つかったら、また教えてくれないか?」と、問題提起した職員に検討を促す。 

 
 
■実は、この設問は、
あたたかい医療機関づくりができるか、できないか、を明確に分ける、
分水嶺となる、重要な価値観が判る問題です。 


A. どんなに小さな価値観も尊重するが
  あたたかい医療機関を創るための第一歩!

 
 
 
■あたたかい医療機関を創るためには、定型的な対応では不可能です。
 
むしろ、どこまで患者様それぞれの固有の事情に応じた個別の対応ができるか、が重要となります。
 
すなえわち、
「パーソナル・サービス」
です。
 
 
患者サービス研究所で、マナーや接遇マニュアルを重視していない理由もそこにあります。
 
 
 
■では、何が大切なのか?
 
 
あたたかい医療機関を創るために必要なのは、
「すべての気づきを大切にすること」
です。
 
 
接遇向上は、たとえしなくても、たちまち事故やトラブルを生むことはありません。
 
また、現場の状況は、大抵の場合、理由があってそうなっているのです。
 
 
とすると、どうしても経験の長い職員ほど、
「以前、クレームがあって変えたので、これでいいの」
「特に問題が起こっているのでなければ、これでいいんじゃない?」
と片付けてしまいがちです。
 
 
あたたかい医療機関を創るのであれば、気づきがなければ向上はありません。
 
 
新しい職員の小さな気づきのように、素朴な疑問や小さな気づきこそが、
むしろ組織を改善してゆく上では、貴重な指摘であることが多いのです。
 
 
 
■新旧の職員が、上下の別なく、
どんなに小さな意見も自由に交わせること。
 
 
これが、あたたかい医療機関となるための、絶対条件なのです。
 
 
 
■というわけで、設問の回答は、
 
1.解決策が出なくても、「たしかにそうだな、どうにかしたいよね」と答える。
 
です。
 
 
 
■解決策は、たとえキャリアのある職員にも出せないことはあります。
 
 
しかし、「解決策がないことは、問題がないことではない」のです。
 
 
解決策が出て来るまで、焦ったり諦めたりする必要はありませんが、
決して忘れてはなりません。
 
 
いつか、なにかの拍子で、
「こうしてみよう!」
という答案が出て来ることはあるのですから。
 
 
 
■したがって、
 
2.いい解決策がない場合には、「いい方法がなくて困っているけど、仕方ないよね」と結論を伝える。
と、
3.「そういう小さなことは気にしなくていいよ」と、もっと大きな問 題や日常のなすべき業務に関心を向けさせる。
は、問題がなかったことにしてしまうので、不正解。
 
4.解決策が出ない場合、「いい指摘だね。いい方法が見つかったら、また教えてくれないか?」と、問題提起した職員に検討を促す。
は、職員からの意見を出にくくしてしまうので、不正解となります。 
 
 
このような応じ方では、職員の方々から意見が出にくくなるので、
パーソナル・サービスを探究して、
あたたかい医療機関を創ってゆくことは、決してできません。
 
 
 
■どんなに小さな疑問に肯定的に応じる、
そうした組織風土となって初めて、
 
「そこまで患者の事を考えてくれるのか!」
「あなたでよかった」
「ここだから、なんでも相談できる」
と、患者様から言われるような、あたたかい医療機関となることができるのです。
 
 
今回の問いは、
「あたたかい医療機関を創ることができるか、できないか」
を浮き彫りにする重要な設問である、というのは、こうした意味からなのです。
 

Q. 研修や教育をしてもマナーが徹底されない時、どうすれば「あたたかい医療機関」づくりができるか?

 
■いわゆる接遇マナー研修は、何度もする必要はありません。
なぜなら、内容はおおむね決まったものだからです。
 
 
もちろん、極めようと思えば奥が深く、
お辞儀や姿勢だけでも、2時間では習得できないでしょう。
 
 
正しい言葉遣いや発声・発音・滑舌となれば、
日常の中での繰り返しのトレーニングが必要です。
 
 
 
■ところが、研修に割ける時間にも限界があり、
完全に身につけ、日々の現場での実践に反映することは難しいのが現状です。
 
 
まして、その習慣が持続することは言うまでもなくさらに難しいことです。
 
 
 
■そこで、とかく現場では、
「教わった以上は、なんとかマナーを励行できないか」
という悩みを抱くにいたります。
 
 
 
■そこで問題です。
 
 
接遇マナーが思うように徹底されない場合、
どのようにすることが、あたたかい医療機関づくりをする上では よいでしょうか?
以下の選択しの中から選んでください。
 
1.接遇マナーが浸透し、実践されるまで、研修を定期的に行なう。
2.こまかな項目も網羅した接遇マニュアルを作り、携帯させる。
3.接遇委員がチェックリストで、できているかを評価する。
4.月間の接遇標語を定めて提示することで徹底する。
5.職員から歓迎されないので、マナーをうるさく言わないことにする。
 
 
■この設問は、実は、
あたたかい医療機関づくりをするうえでの最も重要な点が判っていると、
とても素直に答えが出る問題です。 
 

A.「あたたかい接遇」の本質

 
 
 
■結論から言えば、
5.職員から歓迎されないので、マナーをうるさく言わないことにする。
ですね。
 
 
これまでお伝えしてきたように、
 
瞬間的に気持ちの良い対応は、マナーを学べば可能ですが、
 
「あなたでよかった」
「ここだから安心して相談できる」
と患者様に感じていただけるような
「あたたかい対応」
は、職員の方々の
 
「ぜひ、そうしたい!」
 
というモチベーションが必要不可欠です。
 
 
 
■学校の校則と同じで、
守るメリット、守らないデメリットが判らないのに
「守れ」
と押し付けられることは、精神衛生的にもよくありません。
 
 
また、禁煙やダイエットのように、続けたいと思っていることすら続かないのですから、
人から「守れ」と言われたことが、続くはずがありません。
 
 
 
■したがって、マナーが浸透しない場合、
マナーを強調して、空気を悪くしてしまうのではなく、
マナーをうるさく言わない方が、むしろ良いのです。
 
 
では、どうすればよいか?
 
 
職員の方々が、
「やってよかった!ぜひまたやりたい!」
と思う瞬間をプロモーションすることです。
 
 
■その具体的な方法を明確にして
安定的・継続的・信頼できる患者サービスを実現する
『伝説の医療機関づくり』
 
 
ぜひお取組みいただきたく思います。
ご一報いただければ、みなさまの現場の状況にあった情報提供をさせていただきます。
 
 
ご意見・ご要望・お問合せなどはこちらへ
いつでもお申し付けください。
 
 
 
※「本質」とは、それが欠けていると成立しない部分、と定義できるでしょうか。
 患者サービス研究所では、
 「あたたかい接遇」の「本質」とは、職員の方々の「モチベーション」である、
 と考えています。
 したがって、患者サービス研究所における、すべての施策の原点には、
 「モチベーションなきところに、あたたかい接遇は存在しない」
 という考えが前提にあります。
 
 日々多忙で疲弊しがちな、医療現場の職員の方々に、
 「毎日大変だけど、なんとかあたたかい対応を実現したいね」
 という「接遇に対するモチベーション」を持ってもらうための
 明らかな回答を提示している接遇コンサルタントを探されることをお勧めします。

 

Q. 個別対応を必要としない大多数の患者さんと、臨機応変な対応が必要な患者さんとでは、どちらに対する接遇を、先に向上するべきか?

 
■先般、現場のご担当者から、
 
「柔軟で臨機応変な対応をしろと言いますが、
臨機応変な対応を求められるのは、ごく一部の患者様です。
 
特に、ことさらの質問やクレームがあるわけではなく、
個別対応を必要とされないまま、つつがなく来院され、帰って行かれる
ほとんどの患者様に対する接遇こそ、
 
まず、必要なのではないでしょうか?」
 
との質問をいただきました。
 
 
■院内の接遇向上に取り組まれているみなさんは、
いかがお考えになりますでしょうか?
 
 
1.個別対応が必要としない大多数の患者さんへの接遇を先に向上するべき
2.臨機応変な個別対応を要する患者さんへの接遇を先に向上するべき
 
 
愛され信頼され選ばれる組織風土づくりを実現する場合、 どちらが効果的でしょうか? 
 
 
■この設問もまた、
あたたかい医療機関づくりをするうえでは、
極めて重要な点を踏まえると、とても素直に答えが出る問題です。 
 

A.「あたたかい接遇」を創るために絶対に必要なもの

 
 
 
■こたえは、ズバリ、
2.臨機応変な個別対応を要する患者様への接遇を先に向上するべき
です。
 
 
 
■理由はシンプルです。
「あたたかい接遇」を創るためには、職員のモチベーションが必要不可欠です。
 
 
 
■多くの接遇コンサルタントは、マナーやマニュアル、行動基準作成、コミュニケーション研修、ロールプレイングなどを、
「これが大事だ」
と言って扱っています。
 
 
つまり、
「個別対応を必要としない大多数の患者様への接遇を先に向上するべき」
というわけです。
 
 
そこで、お尋ねしたいと思います。
 
 
「そうしたことによって、職員のモチベーションが向上しましたか?」
と。
 
 
平たく言えば、
「やっていて面白いのか?」
ということです。
 
 
人は、自分がしたいと思わなければ、
小さなことでさえも、なかなか続けることは出来ません。
禁煙、ダイエット、しかりです。
 
 
 
■たとえば、
物や方向を指し示すときは手指を揃えて伸ばす
エレベーターでは、職員が先に乗り、ボタン操作を行ない、最後に降りる
廊下ですれ違うときには、必ず職員が患者様に道を譲る
などのマナーや行動基準を決めて実践しても、
 
 
それによって、患者様が、
「あなたでよかった」
「ここだから安心して何でも相談できる」
と、心からの安心と癒しを感じることはありません。
まして、患者様と職員の間にエモーショナル・ヒットが生まれることはありません。
 
 
ということは、
マナーや行動基準を決めて実践しても、
職員にとって
「やってよかった!またやろう!」
というより良い接遇へのモチベーションが醸成されることは、ないのです。
 
 
 
■反対に、患者様に、
「あなたでよかった!」
「この人は判ってくれる!」
と感じていただけるのは、
 
まさに、
「臨機応変な個別対応を要する患者様への接遇」
を実践した時です。
 
 
そういった対応によってこそ、エモーショナル・ヒットが生まれ、
職員の方々にも、
「やってよかった!またやろう!」
というより良い接遇へのモチベーションが醸成されるのです。
 
 
そのモチベーションが醸成された職員の方々は、自然に、
「何か力になれることはないか」
「どこかに役に立てるチャンスがないか」
と、
「個別対応を必要としない大多数の患者様」
に対してまでも、関心と意欲が高まり、やがてさらに細やかな対応を工夫し実践するようになります。
 
 
 
■こうしたモチベーションこそが「あたたかい接遇」には必要不可欠です。
 
 
マナーやマニュアル、行動基準には、
エモーショナル・ヒットを創る要素がないため、
モチベーションを醸成することができないのです。
 
 
 
■まず、エモーショナル・ヒットを創りましょう。
 
では、どうすれば、エモーショナル・ヒットを創れるのか?
 
 
その回答は、今後、CDセミナー等でお伝えすることを考えています。
 
 
 
※エモーショナル・ヒット:心あたたまる瞬間の総称(ほっこりした、というようなちょっといい話から、思わず胸が熱くなる魂に響く瞬間まで)
 
 

Q.クレームがあっても反省しなくてよい接遇とは?

 
■患者様から、
「この人でよかった」
「ここだから安心して相談できる」
「あたたかい医療機関だ」
と感じていただける医療機関では、職員の方々が、積極的に進んで患者様に声をかけるなどして、コミュニケーションを図っています。
 
 
■一方、
「そんな風にしてみたいが・・・」
という医療機関のご担当者様からは、
「患者様とのやりとりが増えるということは、
同時に、クレームを受ける機会も増えることになるのではないか」
といったご相談を受けることもあります。
 
 
■もちろん、職員の方から積極的に患者様に声をかければ、
患者様からクレームを切り出される前に対話が出来るので、
やりとりの回数におけるクレームの件数の割合は、間違いなく低下します。
 
しかし、対話そのものが増えれば、
言われなくても良いことを言われかねないリスクも確実に増えます。
 
ところが、すべてのクレームを
『言われなくてもよかったはずのクレーム』
と、恐れるのは間違いです。
 
そこで、今回は、クレームを受けた場合の 部内での消化の仕方について、
一緒に考えたいと思います。
 
 
■以下のクレームを、
 ●反省し二度と繰り返さないように注意しなければならないもの
と、
 ●気にしなくて良いもの
とに分けてください。
 
1.待合室の様子を確認した上で、待っている患者さんに、温度設定が適切かと訊いたら、「寒い」と怒られた。
2.脚の不自由な患者さんをアテンドしようとしたら、「余計なお世話だ」と怒られた。
3.予約時間を過ぎても待たせている患者さんに、急患があった事情を説明してお詫びしたところ、不快感を示された。
4.廊下で患者さんから呼び止められ質問されたが、医師への確認を要すると答えた態度が悪かったため、対応が悪いと指摘された。
5.夜間の救急外来の患者さんが帰られるので、タクシーを読んで差し上げた方が良いか訊いたら、「そんな金は払えない」とご立腹された。
 
 
■クレームを受けた場合に、
2つのどちらに分類するかによって、
あたたかい医療機関を創ることができるか できないか、大きく結果が異なります。


A.「クレームに萎縮することなくTRYすること」

 
 
 
■こたえは、こうです。
 
「●反省し二度と繰り返さないように注意しなければならないもの」
は、
 
「4.廊下で患者様から呼び止められ質問されたが、医師への確認を要すると答えた態度が悪かったため、対応が悪いと指摘された。」
です。
 
 
そして、4以外は、すべて、
「●気にしなくて良いもの」
です。
 
 
 
■あたたかい医療機関となるためには、自発的・積極的に患者様とのコミュニケーションを創ることが必要不可欠です。
 
 
とは言うものの、相手も人間ですから、必ずしも喜ばれるとは限りません。
良かれと思ってしたことでも、思わぬクレームが返ってくることもあります。
 
 
ところが、思わぬクレームを恐れていては、必要最低限の対応だけをすることとなり、
それはすわち、紋切り型の冷たい対応をすることとなってしまうのです。
 
 
 
■したがって、あたたかい接遇を実現するためには、
「TRYすること」
が必要不可欠である、と言えるでしょう。
 
 
 
■クレームの中でも、
 
「行動しなかったことで生じたクレーム」は、
反省した方がよいでしょう。
 
 
一方、
「良かれと思ってしたこと」へのクレームは、
二度と起こらないように反省する必要はありません。
 
 
むしろ、お互いに
「TRYしたことを誇りにしよう。
これに懲りることなく、
これからも、積極的にこちらから患者様に働きかけよう」
と、さらなるあたたかな接遇を促すことが大切です。
 
 
 
■前向きな対応に対するクレームに萎縮することなく、
TRYすること。
 
組織がそれをためらうようになった時、
あたたかい接遇は、その現場から姿を一切消してしまうのです。
 

Q. 「老いる」ことの本質的・根源的な苦悩とは?

 
■患者様の中には、高齢の方もいらっしゃいます。
また、福祉施設では、まさに対象は高齢の方々です。
 
そうした高齢者の、身体にどのような性質・特徴があり、どのように対処すればよいか?
といった医学的研究はすでになされています。
 
 
■一方、
「老いることへの不安、恐怖、悲しみ」といった心理の本質については、
どのように説明されているでしょうか?
 
「身体が言うことを聞かなくなる」
「怪我をしやすい」
「病気になりやすい」
「怪我や病気が治りにくい」
といったことへの不安もあることと思いますが、
これらは、むしろ身体の問題であって、
「老いる」 ことの本質的・根源的な苦悩ではとは言えません。
 
 
■つまり、実際に高齢にならなくとも、
「老いれば、 たとえ、身体が壮健であっても、 必ず、このような苦悩が待っている」
と判る苦悩、
それが、
「老いる」ことの本質的・根源的な苦悩である、ということが出来るでしょう。
 
 
■さて、そこで質問です。
高齢者の方が抱く、
「老いる」ことの本質的・根源的な苦悩が浮き彫りになる場面は、
次のうちのどの気持ちを抱いた時でしょうか?
 
 
1.お互い80代の友人同士で、また来年、旅行に行けるか判らない。
2.銀行などからお金を貸してもらえなくなって来た。
3.最近、孫も顔を見せなくなってきた。
4.世話の焼ける子供が、気を使ってお金を借りにさえ来なくなった。
5.「いつまでも元気で長生きを」という不可能な社交辞令を聞かされる。
 
 
■高齢者の方々の本質的・根源的な「老いる」苦悩は、
高齢にならなければ、判りにくいものでしょう。
 
しかし、本質的・根源的だからこそ、踏まえて接しなければ、大きく相手を傷つけてしまうことになります。 
 

A.「貢献」が「生きる安心感」をつくる

 
 
 
■こたえは、
『4. 世話の焼ける子供が、気を使ってお金を借りにさえ来なくなった』
です。
 
 
人は、他人との関係性の中でしか、生きてゆけない「社会的動物」と言われます。
また、そのことを、本能的に理解していることが、様々な面で見受けられます。
 
同様に、人は、
「要求しているばかりでは、他人との関係性を維持できない」
ということも悟っています。
 
 
それは、
「人に貢献していなければ、関係性を維持することはできない」
ことを意味しているのです。
 
 
みなさんも、日頃、
人に「負担をかける」一方では、よい関係を維持できなくなる、と感じ、
機会を見て、反対に役に立てることはないか、と考えているのではないでしょうか?
 
 
■すなわち、「貢献」が、
この世に存在できるための「生存ビザ」であると、
人は本能的に知っているのです。
 
 
すなわち、
「負担をかける」= 生きた心地がしない
「人に貢献する」= 生きる安心感を得ることが出来る
という心理が働く傾向があるということです。
 
 
 
■このことを前提とすると、
「振り込め詐欺」の被害が後を絶たない原因が判るのではないでしょうか?
 
 
単に判断能力が低下して騙されてしまうだけではなく、
数少ない「貢献する」機会が訪れ、
この世に生きる安心感を感じたい一心で、振り込んでしまう心理が作用しているからこそ、
被害が減らないのではないでしょうか。
 
 
 
■また、何ら貢献できることがなくなった患者様や利用者様には、
この世に生きる安心感を感じることはできないのでしょうか?
 
 
これは、「老いる」ことの本能的・根源的な苦悩と言えるでしょう。
 
 
いくら、口頭で
「大丈夫ですよ」
「少しでも元気になりましょうね」
と言われても、
「負担をかける一方」であることには変わりないからです。
 
 
そこで、ケアする側が、ケアを通じて、成長することです。
そして、
「ケアを通じて、成長できました。ありがとうございます」
という心からの感謝の気持ちを伝えてゆきましょう。
 
 
他人のケアを必要とする患者様・利用者様にしかできない
「貢献」
が、紛れもなく、そこにあるのですから。
 
 
「貢献できた!」
「良い関係性の中で、まだ安心して生きられる」
と、安心して生きてもらえるようにすることが、
精神衛生的にも健全な時間を提供することになります。
 

Q. 研修実施後アンケートを見せて、「良いコンサルタント」を見抜く方法とは?

 
■みなさんが、コンサルタントに研修を依頼するとき、
受講した職員の方々を対象に、
「研修実施後アンケート」を行なうことと思います。
 
 
その多くは、
「この研修は、わかりやすかったですか?」
「この研修は、役に立ちそうでしたか?」
「この研修は、疑問に答えるものでしたか?」
といった問いに、5段階評価で答える、という
スタイルのものが一般的のようです。
 
 
また、回答が集まると、集計し、グラフや表にしたものを、
回覧するなどして周知している模様です。
 
 
ごく普通に見られるパターンですが、
本当は、こうしたアンケートならば、行なわない方がよいのです。
 
 
 
■ところで、
みなさんがコンサルタントを選ぶときに、
こうしたアンケートの用紙を見せることによって、コンサルタントの反応から
「良いコンサルタント」
かどうかを、見抜くことが可能です。
 
 
 
■このアンケート用紙で、コンサルタントの、どのような重要な点を
見極めることができるのでしょうか?
 
 
1.コンサルタントが、現場に役立つよう研修の内容を考えているかどうか?
2.コンサルタントが、判りやすく楽しい話し方を心がけているかどうか?
3.コンサルタントが、研修後に効果が現れることを願っているかどうか?
4.コンサルタントが、研修後に効果が持続することを願っているかどうか?
5.コンサルタントが、研修にとどまらず改善に真剣に望んでいるかどうか?
 
 
コンサルタントを選ぶとき、最も大きな手がかりとなるはずです。


A.「良いコンサルタント」とは?

 
 
 
■患者サービス向上のための研修を依頼するとき、
前述のアンケート用紙をコンサルタントに見せてください。
 
 
「こんなアンケートなら、やらない方がいい」
と教えてくれるコンサルタントほど、
研修後にわたってまで、組織風土を築くことを、
真剣に考えてくれているはずです。
 
 
 
■そもそも、理想的な、
患者サービスを向上するための研修とは、
どのような研修でしょうか?
 
 
それは、
「形は学ぶが、融通が利かない」
「理論は学ぶがモチベーションは上がらない」
「知識は身につくが、勤務中には忙しくて実行できるとは思えない」
といったことになる研修ではないはずです。
 
 
反対に、
「職員一人ひとりが、患者サービスを、楽しんで工夫し実践する」組織風土を
創るうえで価値のある研修ではないでしょうか?
 
 
 
■ 医療機関・福祉施設に限らず、
どんな職場においても、
上司が部下に話して組織風土が創られるならば、
苦労はありません。
 
 
また、 1回、2~5時間ほどの研修で、組織風土を創ることは不可能です。
 
 
とすれば、
「研修は、ゴールではない」
ということになります。
 
 
むしろ、
「研修は、スタートライン」
であるはずです。
 
 
■となると、
前述したアンケートの、
 
「この研修は、わかりやすかったですか?」
「この研修は、役に立ちそうでしたか?」
「この研修は、疑問に答えるものでしたか?」
 
といった、研修を論評するようなアンケートは、
「こんな研修を催させていただきましたが、お気に召しましたか?」と
受講した職員の方々に
ご機嫌を伺うようなもので、意味がありません。
 
 
こうした質問をされることによって、職員は、むしろ傍観者となってしまいます。
 
 
研修に満点をつけない余地を職員に与えることで、
「だから、わたしたちは、全部を実践できない」
「だから、この職場では実践は難しい」
「だから、実践するだけのモチベーションにはならなかった」
と、職員に逃げ道を与えるアンケートでもあるのです。
 
 
こうしたご機嫌伺いのようなアンケートなら、
やればやるほど傍観者化して逃げ道を与えるので、
「やらない方がよい」
ということになるのです。
 
 
 
■受講された方々には、研修で学んだことを、
「いつから実践するか」
「どのように実践するか」
「そのために何が必要か」
と、実際の行動に反映することを考えていただくことが、
最も重要であるはずです。
 
 
研修後こそ、職員は、受講によって、行動の当事者になってもらわなければ
意味がありません。
 
 
 
■つまり、設問の答えは、
・・・上述のようなアンケート用紙を見せることで、
『5.コンサルタントが、研修にとどまらず改善に真剣に望んでいるかどうか?』
が判る・・・です。
 
 
本当に組織風土を変えることまでも、
自らのミッションとして臨んでいるコンサルタントであれば、
 
アンケートでは、
「今後、どんな風に実践したい」
「それは、個人でか、セクションでか、組織全体でか?」
「そのためには、どんな阻害要因を取り除かねばならないか?」
「そのために、自分ができることはなにか?」
「いつから可能か?いつまでに可能か?」
といったことを、問うことによって、
漠然としたモチベーションを、より具体化し行動して欲しい、と考えるはずです。
 
 
講義に自信のないコンサルタントほど、
受講者からの採点にも寛大ですが、
 
その態度は、
 
受講者に採点してもらうことが、
しなくてもよいご機嫌伺いとなり、
職員を傍観者化してしまうというマイナス効果以外に
意味を持たないことを、
知らない・・・・・・と、自白していると言えるでしょう。
 
 
 
■もちろん、研修が、現場に準拠したもので、わかりやすく、
効果が生まれるものであることは重要です。
 
1回の研修を務めることを、
自分のミッションであると思っているコンサルタントにとっては、
そうしたことが第一義となるでしょう。
 
したがって、研修がゴールとなってしまうのです。
 
 
 
■しかし、本当に、価値観を変え(厳密には変えるのではなく喚起するのですが)、
職員一人ひとりが、楽しんで工夫し、実践するカルチャーを創ることが
ミッションである・・・・・・と、考えているコンサルタントほど、
 
研修後の行動を重視しています。
 
研修はスタートラインであって、
本当のゴールは、この後の組織・職員の取組によって決まると、認識しているからです。
 
 
 
■繰り返しになりますが、
患者サービス向上のための研修を依頼するとき、
前述のアンケート用紙をコンサルタントに見せてください。
 
 
「こんなアンケートなら、やらない方がいい」
と教えてくれるコンサルタントほど、
研修後にわたってまで、組織風土を築くことを、
真剣に考えてくれているはずです。
 
 
「こんなアンケートは意味がない。
もっと職員に行動を促すアンケートにしましょう。
そして、組織がそれをしっかりと見届け、牽引しましょう」
などということは、
 
 
後々まで面倒を背負いたくない、と考えているコンサルタントには、
自分の首を絞めることになり、
とても言えないのです。
 
 

Q. 「現場が忙しすぎるから」か?、「ホスピタリティが足りないから」か? スタッフの接遇が向上しない理由を見極める簡単な方法とは?

 
■しばしば、接遇ご担当者の方々から、
 
「さまざまな接遇テクニックや対話の方法などを学ぶが、
職員からは、
『現場は忙しくて、とてもそこまでできません』
と反論される。
忙しい現場でも活用できるテクニックはないか?」
 
と、お問合せをいただくことがあります。
 
 
 
■たしかに、午前中の忙しさがピークの時には、
すべての職員が血相をかえて動き回っていて、
 
「笑顔も出ません」
というのもよく判ります。
 
 
 
■しかし、患者様にあたたかい対応を実現できていないのは、
ホスピタリティ(患者様を心からお迎えする気持ち)があるのに
忙しいためなのか?
あるいは、実は職員の中にホスピタリティが乏しいからなのか?
 
 
それがハッキリと判るポイントがあります。


A.これでホスピタリティが測れる。「ホスピタリティ・メーター」

 
 
 
■接遇向上のために、何らかのルールを決めようとすると、
とかく、現場職員の方々は、忙しい時間帯の状況を想定して、
「とても無理」
「そんな余裕が無いのは、見れば判るでしょう」
という反応をしがちです。
 
 
■しかし、ホスピタリティがある組織では、
「接遇向上になるなら、なんとかできないか?」
と職員が悩んでくれます。
 
 
そして、
「常にルールを守ることはできないけれど、
できる時間帯だけ、やってみるということでどうでしょう?」
と前向きな提案をしてくれます。
 
 
果たして、午後の後半から、診療時間終了ごろまでの
やや余裕のある時間帯だけでも、
患者様のためのより良い対応を実践することができるのです。
 
 
 
■接遇のルールは、
なにも、決めたら常に実践しなければならない、というものではありません。
 
 
どんな時も、誰に対しても、同じように
守り続けなければならない、というのは、固定観念です。
 
 
できる時に実践し、できない時には、本来業務を優先すればよいのです。
 
 
 
■もともとホスピタリティある組織では、
「できる時だけでも、やってみようよ!」
と前向きです。
 
 
多忙ではない時間帯があるにも関わらず、
「現場は多忙だから、そんなの無理に決まっている!」
という反応がある組織は、
「多忙」を口実にしているだけで、
もともとホスピタリティが乏しいことを現しています。
 
 
 
■そこで、「ホスピタリティ・メーター」です。
 
本当にホスピタリティがあるのか?
実はホスピタリティがないのか?
を明確に見極めるには、
 
比較的忙しくない時間帯を見ることです。
 
 
忙しい時間帯でもなく、
少しなりとも余裕があるのに、
「カウンターから一歩も出ない」
「ロビーに出て、患者様に声をかけない」
「廊下や玄関で患者様に挨拶も会釈もしない」
「エレベーターでも、パネルの操作を患者様にさせている」
などは、
ひとえにホスピタリティがない証拠です。
 
 
ホスピタリティを測定するには、
このように現場を見れば、一目瞭然です。
 
 
 
■もし、みなさんの現場で、
最も忙しい時間帯でないにも関わらず、
職員の方々の関心が患者様に向いていない、
ホスピタリティの乏しい状況が見受けられた場合には、
 
 
ぜひ、警告してください。
 
「忙しい時間帯は、
患者様も、丁寧な対応を期待できない、と
状況を理解してくださっている。
クレームが生じるのは、
丁寧な対応をできる時間帯なのに、丁寧な対応をしてもらえない時、
できる対応をしてもらえない時である」
 
と。
 
 
 
■忙しい時間帯に、職員が、廊下を足早に歩きながら、
すれちがいざまに患者様に
「放射線科なら、ここをまっすぐ行けば突き当たりだから。
ごめんね、今日は話せなくて」
と言ってくれる様子は、
言葉遣いが馴れ馴れしくても、
患者様にとっては、
「仕方ないか」
と思えるはずです。
 
 
一方、さして忙しくない時間帯に、職員が
「では、このファイルを持って、放射線科にいらしてください。
こちらを直進して突き当たりになります」
と、遠くを指差しながら、
「後は自分で行ってみて」
とばかりに、反対方向へゆっくりと歩いてゆけば、
たとえ、どんなに言葉遣いが丁寧であろうと、
患者様には、
「そんなにゆとりがあるなら、方向を指差すだけでなく、
もう少し、目印の見えるところまで案内してくれても
いいのではないか」
と不親切に感じられることでしょう。
 
 
 
■「できるはずのことを、してくれない」
これが、クレームを生む一つの原因です。
 
 
ホスピタリティが乏しい現場では、
こうしたクレームの危険をたくさんはらんでいるというわけです。
 
 
忙しくない時間帯に現場を見てください。
それが、ホスピタリティ・メーターです。
 
 
 
■ホスピタリティが乏しい組織では、
職員の方々の、患者様に対する関心を喚起する必要があります。
 
 
それが、「伝説の病院」「あたたかい組織」の風土を創る第一歩です。
 
 
その手法については、
機会があれば、またお伝えしたいと思います。
 

Q. 地域密着型の心あたたまる医療機関を創る上で、「コンシェルジュ」の導入をどう考えるべきか?

 
■昨今、しばしば
「接遇向上のために、 コンシェルジュを置くことを 検討している」
という話を聞きます。
 
みなさんが、
患者サービスを充実し、接遇を向上して、心あたたまる医療機関を創る上で、
コンシェルジュの導入を検討されるのであれば、
 
その前に、必ず、考えておかなければならないことがあります。
 
 
■そもそも、 多くの地域密着型の医療機関において、
心あたたまる医療機関を創るにあたり、
コンシェルジュについては、
以下のうち、どのように考えたらよいでしょうか?

 
1.専任のコンシェルジュを配置する
2.専従のコンシェルジュ・チームを設置する
3.職員の数名を兼任のコンシェルジュとして配置する
4.コンシェルジュを配置しない
 

この設問は、 選択によっては、 地域密着型の医療機関において 心あたたまる医療機関を創ることができなくなることにもなる、 極めて重要なものです。 
 

A.「当院では、全職員がコンシェルジュです」

 
 
 
■結論から申し上げると、回答は、
「4.コンシェルジュを配置しない」
です。
 
 
なぜなら、コンシェルジュを置くことは、
心あたたまる瞬間が生まれることを妨げてしまうからです。
 
 
 
■イメージしてみてください。
たとえば、一泊5万円もするような立派なホテルで、
「楽しく過ごすにはどうしたらいいか?」
と、コンシェルジュデスクに相談したとします。
 
 
ところが、
コンシェルジュが、さして提案してくれなかったらどうでしょうか?
「宿泊費は高いのに、サービスはお粗末だ」
と感じることでしょう。
 
 
また、もし、コンシェルジュが良い提案をしてくれたとしたらどうでしょうか?
「高いお金を払った甲斐があった」
と感じることでしょう。
 
 
それは、
「コンシェルジュを置いている以上、
わたしたちの払った料金で、賄われているのだから
しっかりと、サービスして欲しい」
という心理の現われです。
 
 
つまり、支払いの対価として、
「サービスしてもらって当り前だ」
という意識があるということなのです。
 
 
 
■医療機関でも同じことになります。
 
コンシェルジュが配置されているのを見て、
「相当な無理をしてサービスをしてくれている」
と考えてくれる患者様はわずかです。
 
むしろ、
「病院もこれくらいの余裕はあるのか」
と理解する人の方が多いことでしょう。
 
 
そんな、
「コンシェルジュを利用して当り前」
と考えている患者様に、サービスを尽くしても、
「あたたかい!」
と感じてもらうことはできません。
コンシェルジュ自身も、
「感謝されて良かった!」
とやりがいや誇りを感じることはできません。
 
 
 
■一方、コンシェルジュがいなければ、
職員の方々が、担当業務の合間を縫って患者様のサーブをすることになります。
 
 
むしろ、そんな職員の方々が無理をしてくれた方が、
患者様には
「申し訳ない。ありがたい」
と心あたたまる瞬間になるのです。
 
 
それはそのまま、感謝され喜ばれることで、
職員の方々のやりがいと誇りになります。
 
 
 
■コンシェルジュを配置するということは、
◇患者様にとっては、心あたたまる瞬間がなくなり、
◇コンシェルジュ自身にとっては、やりがいと誇りを感じられず、
◇他の職員にとっては、心あたたまる瞬間を創るチャンスが奪われる
ということを意味するのです。
 
誰も幸福になりません。
 
 
最も大きな損失は、
接遇を向上する上で、職員の方々の最大の原動力となる
「心あたたまる瞬間を創るチャンス」
が奪われてしまうことです。
 
 
これでは、心あたたまる医療機関になることはできません。
 
 
 
■もし、組織全体で患者様の手助けをしたいと考えることができるのであれば、
「当院では、全職員がコンシェルジュ(または患者サービス係)です。
お気軽にお声をおかけください。」
と壁に掲示したいところです。
 
 
それが出来る組織であれば、
充分、伝説の医療機関となることでしょう。
 
 
 
なお、主に遠来の患者様が一縷の望みをかけて来院されるような医療機関では、ホテルのようにコンシェルジュを置いて対応する方が、あるいは安心感を与えられるかも知れません。そのため設問の表現を「地域密着型の医療機関では」とさせていただきました。 
 
 

Q. 「爽やかなのに、あたたかくない」対応に陥らない方法とは?

 
■あるクリニックの医師の対応は、
いわゆる接遇マナーとしては、
お手本と言っていいような振舞いで、
大変さわやかに感じられました。
 
 
 
■しかし、
ある意味でこれほど患者に向き合っているのにも関わらず、
「あたたかい先生だ」
とは感じられませんでした。
 
 
「あたたかい」
と感じられる対応をするには、
患者様に、以下のうち どのように感じてもらうようにすることが
必要でしょうか?
 
 
1.気遣いがあって親切だなぁ
2.仕事熱心な人だなぁ
3.医師として責任感があるなぁ
4.自分のことを考えてくれるなぁ
5.きっとマジメな人柄なんだなぁ
 
 
■また、 患者様が
「あたたかい」
と感じるためには、どうすればよいのでしょうか?
 
 

A.「あたたかい」とは「自分を見守ってくれている」という安心感から生まれる

 
 
 
■回答は、
「4.自分のことを考えてくれるなぁ」
です。
 
 
商業ビジネスの購買者・利用客ならば、
4以外でも、一定の満足感があるので、
「あたたかい」
と感じられなくても、さほど問題にはならないでしょう。
 
 
 
■ここで、患者様の心の奥に、どんな心理が存在するのか?
患者心理と購買者心理との違いを考えてみます。
 
 
 
■多くの接遇コンサルタントは、しばしば
「患者様は不安なんです。
だから、気配り、思いやり、声がけが大事です」
という説明をします。
 
 
しかし、漠然とした「不安」という理解では、
その対処も「優しく」という漠然とした態度になってしまいます。
 
 
 
■まず、患者様はなぜ来院するのか?
根本的な動機から考えることが大切です。
 
 
目的は、
「苦痛や不安を取り除いて欲しい」
に尽きるでしょう。
 
 
購買者は、目当ての店が閉まっていれば他の店にしたり、
目当ての映画が上映されていなかったりしても、水族館に代えたり、
柔軟にイベントを変えます。
 
 
つまり、患者心理の特徴は、
第一に、「目的が明確である」
ということです。
 
 
 
■次に、その明確な目的が果たされるのか?という点ですが、
「治るのか、治らないのか?」
「どれくらい日数がかかるのか?」
「完全に苦痛が消えるのか?」
「治療や検査にはどんな苦痛を伴うのか?」
といったことが不明確なのが、医療です。
 
 
購買者は、ほとんどの場合、
商品が自分の望むものかどうかは、その場でわかります。
それを、買うのか買わないのか、
完全にその決定権を持っています。
気に入らなければ、店を出ることも自由なのです。
 
 
つまり、患者心理の第二の特徴は、
苦痛や不安を取り除くという目的を達成するまでの
「決定権がない」
ということです。
 
 
 
■「目的が明確であるにも関わらず、
どのように対処するかの決定権がない」
 
こんな不自由なことは、一般の購買行動の中にはありません。
 
これが、患者心理と購買者心理の最も大きな違いだと言えるかもしません。
 
 
 
■したがって、患者様の要望は、
「苦痛や不安を取り除くという目的に適した対応をして欲しいが、
ゴールやプロセスが判らない」
つまり、
「自分のために最善を尽くして欲しい」
と表現することができるでしょう。
 
 
そして、ゴールにもプロセスにも決定権がない以上、
「最善」のためには、
せめて、現状を的確かつ充分に把握してもらわなければなりません。
 
 
言い換えれば、
患者様は、その最大の心理として、
「自分をしっかりと見守ってくれていること」
を望んでいる、ということになります。
 
 
 
■どんなサプライズも、キャンペーン企画も、アニバーサリープレゼントも、
購買者・利用客にとっては嬉しいものであっても、
患者様には嬉しくはありません。
 
 
望んでいるのは、パーソナルな対応だからです。
 
 
パーソナルな対応をしてもらった時こそ、
「自分を見てくれている」
と感じ、癒され、安心できるのです。
 
 
 
■だから、マナーが、どんなに正しく、
教科書どおりの美しいものであったとしても、
患者様の心には響くことはないのです。
 
 
 
■患者様に
「あたたかい」
と感じてもらうためには、
どうすればよいか、
これでお判りでしょう。
 
 
マナーやルール、マニュアル、標語、チェックリストではありません。
それらによらない対応こそが、
「あたたかい」医療機関を創る方法なのです。
 
 

Q. 患者満足度調査の本当の意味とは?

 
■大手コンサルティング会社には、
依頼をすると、院内のリサーチをしてくれて、
分厚い報告書を成果物として提出するというところもあるようです。


リサーチ型のコンサルタントが、改善支援はあまりしないのは、
責任を負えないから、という理由もあります。


とは言え、そうした報告書から、
結局是正したのは、
「トイレの個室で、非常ボタンの位置を変えただけだった」
という話まであります。


改善は大切ですが、
こうした依頼が、あまりに高い買い物となってしまうこともあるのです。



■また、患者満足度の向上に取り組む中で、
「患者満足度調査」
を実施されている医療機関も数多くあります。


費用はさほどかかりませんので、
コンサルタントに高い費用を支払ってリサーチをしてもらうよりも、良い方法です。


では、この満足度調査の結果の活用方法として、
あたたかい医療機関を創る上で、
必ず行わなければならないものは 次のうちのどれでしょうか?

 
1.アンケートを集計して、表やグラフにして職員に配信する。
2.同じく集計結果を、職員に回覧する。
3.同じく集計結果を、院内(外来など)に掲示する。
4.指摘のあった事項について、関係部署に指示して是正させる。
5.指摘のあった事項のうち、是正できることについて職員間で話し合う。
6.指摘のあった事項のうち、是正できないことについて職員間で話し合う。
 
 

A.アンケート調査とは、コミュニケーションの補完である 

 
 

■そもそも、日ごろ、患者様から
「ちょっと、これどうにかならない?無理だったらいいわ」
「あれはわかりにくいよ。不親切だなぁ。なんとかなる?面倒かけるね」
そんなご要望やご指摘、ご助言を職員が聞くことができていれば、
このようなアンケート調査はする必要がありません。


つまり、アンケート調査は、
患者様と職員におけるコミュニケーションの隙間を埋める補完の役割であるはずです。


大事なのは、どのように患者様とのコミュニケーションを厚くするか、ということです。



■まず第一に、言われたことをすべて是正することが良いことなのではないのです。

一部の意見をもとに、是正しても、
意見を挙げた方は、感謝するというよりも、
「正しくなかったものが正しくなった」
と感じるでしょう。

また、意見を挙げなかったが同じように感じていた、という方も
感謝するというよりも、
「あ、直ったのか。やっと気づいたのか」
と、感じるでしょう。



■第二に、調査の結果、挙がった要望に答えられなくてもよいのです。

物理的に不可能、
費用がかかりすぎる、
いまは人手が無い、
新棟建設までは環境的に無理、
などの事情があるなら、どんな背景で無理なのかを伝えれば、
患者様もわかってくれるのです。



■つまり、要望を挙げてもらい、その要望を叶えることそのものには
あまり意味が無いとういことです。


むしろ、患者様とのより多くの対話につながることが
もっとも重要な調査の価値です。



■その意味では、
「ご指摘のとおり、是正いたしました」
とスマートに対処してみせることは、コミュニケーションになりません。


むしろ、是正できないようなご意見やご要望こそが、
病院側の状況(というよりも想い)を知ってもらうことを通じて、
コミュニケーションを創ってゆくチャンスであると言うことができます。



■ご意見・ご要望に対して、是正できない場合、
どのように回答しているでしょうか?


是正できないご意見・ご要望の方が多いかもしれません。
しかし、実はそれらに反応しないことの方が、失うものが大きいのです。


「意見を挙げてほしいと言うから挙げたのに、是正もされない」
「そればかりか、何の説明もない」
「検討するものは検討中と言われるが、
却下するものには、その事情説明がない」

このように感じさせてしまっては、
二度と調査に協力して、ご意見・ご要望を挙げてくださることはないでしょう。



■目指したのとは反対に、
コミュニケーションを、自ら断つ結果となってしまうのです。


そこで、上記の設問の解答は、
6.指摘のあった事項のうち、是正できないことについて職員間で話し合う。
を正答とさせていただきます。



■是正できないことについては、
しっかりと状況を説明すれば、病院側の事情も判り、
患者様に誠意も伝わるので、
これまで以上のファンになってくれるはずです。


是正できないからといって、
反応しなければ、患者様は
「二度と回答してやるものか」
という思いを抱き、離れていってしまいます。


とりもなおさず、挙がったご意見・ご要望をどうするかではなく、
調査の目的がコミュニケーションであるということを
忘れないことです。


そうすれば、ご意見・ご要望に適う是正ができてもできなくても
ファンが増えるのです。
 

Q. 患者さんとの距離をグッと縮める表現とは?

 
■地域に根差した、ほとんどの医療機関では、
職員が患者さんを見かけて、

「あら、最近見ないから、心配してたわよ!
ま、しょっちゅう来られても心配だけどネ!
ところで、今日はどうしたのよ?」

といった、冗談まじりながら思いやりのこもった声をかける、
そんな風土の方が、
望まれているように感じます。


そして、そんなやりとりは、
いわゆる接遇マナーを何十年学んでも 出てくることはありません。



■さて、またまた問題です。

もし、まだ職員との間に、あたたかな関係性がない患者さんが、
きちんと通院しなかったら、
以下のうち、どう話すと、
より患者さんの心に響く(可能性が高い)でしょうか?

 
1.先生から、必ず通うように言われているんでしょう?
2.悪くなってからじゃ、治すのにも時間がかかるんですよ。
3.忘れてしまったの?治すために通っているんでしょ。ダメじゃない。
4.家や職場で急変して何かあったらと思うと心配ですよ。
5.準備して待っていたんですよ。ちゃんと来てくれなきゃ困ります。
 

どれも、気持ちを込めて読めば、心に響きそうです。
どれも、厳しい口調で読めば、冷たく聞こえます。


考える上でのポイントは、一つだけ、性質が異なるセリフがある ということです。




A.「親身」とは、家族にするようにすること

 
 

■決定的に違うのは、4です。
なぜなら、もっとも職務上の責任から遠いので、
家族からのような言葉であり、
それは親身な言葉であるということもできるのです。


1と3と5は、医療機関本位の表現。
2もまた、医療者としての視点。


■上司と部下の間でも、立場を離れた会話の方が、
距離を縮めてくれる効果があります。

販売者も、購入者に対して立場を離れた対応をした方が、
信頼関係を築きやすいという傾向があります。


立場を離れ、ビジネスと関係のないところで役に立とうとすることは
純粋な思いやりが存在することを現すからです。


医療者も、患者さんに対して立場を離れた会話をした方が
純粋な思いやりで接していることが伝わります。



■「家や職場で急変して、何かあったらどうするの?」
というような、
立場を離れた言葉のやり取りを心がけている医療機関では、
患者さんは、
「その時はその時さ」
と照れるようにして笑って帰りましたが、
翌週からは来るようになり、
来れない時にはきちんと連絡を寄越すようになった、
というケースが生まれた、と言います。



■いわゆる接遇マナーでは、
「たいへん恐れ入りますが、次回以降は、お忘れにならないようお気をつけださい」
というような会話が正しいとされるのかも知れません。


こうした接遇マナーによって、上記のような関係性をつくることは 難しいことでしょう。
 

Q. 専門職は、接遇において互いに「協力」できないのか?

 
■時折、現場ご担当者から、

「医療機関は、専門職の集まりなので、
それぞれの専門業務を、責任を持って果たすことには
たけているが、
部署を超えて、互いに協力することができない」

ということをお聞きすることがあります。


いわゆる、セクショナリズムです。



■本来の責務である医療行為でさえ、
互いに協力することがないとすれば、


まして、本来の責務ではない接遇については、
なおさら、互いに協力することは考えられないのも
無理ありません。



■では、

それぞれの担当業務を果たすという意識が強いことと、
互いに協力しあえない、ということは、
専門職の集まりである医療機関にとって、
変えることのできない宿命なのでしょうか?


決して、変えることができないものなのでしょうか?



A.「協力」とは、同じ方向を向いていること

 
 

■もし、仮に、
院内に暴漢が躍り込んできたとしましょう。

医師や看護師、技師、事務職員が、
「治安は、守衛の仕事だから」
と、
どんなに窮迫の危険があっても動かない、
ということがあるでしょうか?


守衛がいなかったり、
警察が到着しなければ、
職員のみなさんが、
できる限りのことをして、
来院者の方々の生命身体の安全を守ろうとすることでしょう。


その時、
職員の方々は、一致団結して、協力しているはずです。



■もうお判りのことと思います。


共通の目的があれば、
職制などを、みずから超えて協力するようになるのです。



営利企業においても、
これまでにない大量注文が入って、
「このオーダーに応えれば、次のボーナスは3倍になる!」
となれば、

日ごろ仲の悪い製造部と営業部も、
喜んで協力するでしょう。

営業部はせっかくの受注を台無しにすまいと、
かいがいしく製造部をお手伝いし、

製造部は、いつもなら無理な納期をはねつけても、
今回ばかりは、みな総出で残業して頑張るでしょう。



■医療機関の接遇においても、同じです。

わたしたちが、
誰の、何のために、接遇をしているのか?

目的が明確であれば、互いに協力することになるのです。



「医師がダメと言ったらダメ。
それを患者に説明するのが事務の仕事だろう」

「この書類は、他の業務に優先してでも、
5日以内に記載していただかないと困ります。
7日以内に自治体に提出しますので」

それぞれの主張のあいては、他部門かも知れませんが、
さらにその先で困っているのは患者様やご家族である、
ということがわかれば、
「協力」する意味が感じられてくるはずです。



■接遇においても、職制や部署を超えて、協力することは、

その「目的」を明確にし、共有することで、可能となります。
 

Q. お呼びしても姿が見えない患者さんを後回しにしてクレームになった時の、心あたたまる対応とは?

 
ある市民病院でのこと。

夜間救急外来の時間に来院された患者さんの一人が、手続を済ませた事務職員が呼んでも、受付の前に現れませんでした。

何度か呼んでも現れないので、やや混み合い始めていたため、やむなく他の患者さんから先に診察室へ案内していたところ、

やがてその患者さんが現れて、
「そこにいたのに、なぜ呼ばれずに、後回しにされるのだ?」
と苦情を言ってきました。


ここで、職員の方が、
「何度かお呼びしたのですが、いらっしゃらなかったので他の患者さんから先にご案内させていただきました。
申し訳ございませんでした」
と、答えたことで、

かえって患者さんの機嫌を害し、クレームが大きくなったとのことです。


受付カウンターから死角の位置にもソファはあり、ソファまでは職員も確認しに行きましたが、
さらに角を曲がった先の、ベンチが並んでいるところまでは見に行かなかったかもしれないと言います。

ともあれ、患者さんがどこにいて、何をしていたのかは判りません。
それでも患者さんは怒っています。

職員が
「こっちは悪くない。通常通りに業務を行なっているだけだ」
という態度で返答したということですから、クレームが大きくなるのは当然でしょう。



■さて、ここで、問題です。

患者さんが、
「まだ呼ばれてない。なぜ他の患者さんが先で自分が後回しになっているのだ?」
と訴えてきた時、職員の方々は、どのような対応をすればよかったでしょうか?

次の中から選んでください。

① ひたすらお詫びする
② お詫びしつつも、隙を見て、何度も呼んだことを釈明する
③ とりあえず今後は呼んだのが聞こえる範囲で待つように注意する
④ 逆ギレする

A.視点のヒントは、「家族だったら」

 
 

■患者サービス研究所の答案は、
④ 逆ギレする
です。

しかし、「何について」逆ギレするのか?が重要です。
また、逆ギレするためには、事前にやっておくべきこともあります。


■もし受診されるのがご家族で、わたしたちが付き添いだったらどうでしょうか?

夜間の病院にわざわざ行くくらいですから、それ相応に具合が悪くいはずです。
それなのに、受付後、姿が見えなかったら、それは心配なことでしょう。

可能な限り、院内を探して回るでしょう。

トイレで倒れてはいないだろうか?

トイレの帰りに院内で迷って、どこかでうずくまっているのではないか?

場所が判らず階段を使った際に、転んでしまったのではないか?

具合が悪いことで判断を誤り、家に忘れ物をとりに向かってしまったのでは?


そこへ本人が戻ってきたら、まずはホッと胸を撫で下ろことでしょう。
「無事で本当に良かった!」
と。


そして、
「なんで後回しなのだ」
と怒っている元気な様子を見て、まずは安心してから、

「なんで勝手に姿を消したのだ?!」
と、事情を聞きつつも、逆ギレしても良いはずです。


■というわけで、
「なぜ勝手に姿を消したのだ?!
心配したじゃないか!」
という意味で、逆ギレした方が、

逆ギレもせずにお詫びしてしまうよりも、

みなさんが、親身に、真剣に、誠実に、患者さんを想い、家族のように接する気持ちで対応してくれていたことが、患者さんに伝わるのです。


なお、そのためには、事前に、
トイレ、待合スペースの奥、階段のすぐ上・すぐ下、玄関先などを、実際に行って確認しておくことが必要です。

というより、家族だったらしているはずです。


■もしかしたら、
「業務が立て込んでいて、できない」
という言い分があるでしょうか?


しかし、万一、患者さんがトイレや階段、エレベーター内といった院内や、玄関先などの院周で倒れていて、意識を失うなどしていたら、
「病院なのに、どうして?」
と迫られることにもなるでしょう。


もしも、そのために患者さんが亡くなりでもすれば、責任を問われることにさえなりかねませんから、
自己防衛のためにも、どんなに忙しくても、できる限りは、患者さんを探さなければならないのかも知れません。


もちろん、家族であれば、
「勝手に帰ったのかも」
などと、探さずに済ませることはありません。
 

Q. 「当院は初めてですか?」がクレームに。では、どうすれば良かったのか?

 
■ある病院の外来受付でのこと。
 
 
「あのぅ、すみませn…」
と訪れた患者さんに、
 
「はい、当院初めてですか?」
と事務職員が聞きました。
 
 
確かに、業務を行なう上では、初診かどうかの確認は必要です。


しかし、この対応が事務的に感じられるのは、なぜでしょうか?


それは、
この時点で、この事務職員が、この患者さんに発した言葉は、
100%、全部が
「自分の業務のこと」
つまり、まさに読んで字のごとく、
「事務的内容だったから」
に、ほかなりません。


■現場では、こうした対応が、しばしばクレームを招いています。


しかし、職員の方は、
「なぜクレームを言われなければならないのか?」
判らないでしょう。


的確、迅速に、業務をしようとしていて、
それこそが、患者さんが望んでいる通りの手続きだと考えているからです。


しかし、患者さんには、
「業務のことが最優先で、わたしのことなど眼中にもない」
と映るのは、当然のことなのです。


■そこで、問題です。


その職員から、
「では、いったい私は、どうすれば良かったんですか?」
と訊かれたら、みなさんは、どう説明しますか?


A.実践できていますか?「家族のように接する接遇」

 
 
 
■シンプルな問題です。
 
 
想像してみてください。
 
 
もし、
「あのぅ、すみません…」
と訪ねてきたのが、自分の家族や友人だったら、まずどんな言葉が口をついて出てくるでしょうか?
 
 
おそらく、第一声は、
「どうしたの?」
ではないでしょうか?
 
 
「実は、このところ、ずっと胃が重くて…」
あるいは、
「どうも頭痛がひどくて…」
といった答えが返ってくれば、
 
 
次に口から出るのは、たいてい、
「いつから?」
ではないでしょうか?
 
 
もちろん、午前中の、戦場のような外来で、常にそんなやりとりをしている暇はありません。
 
 
それにしても、
「当院初めてですか?」
だけで済ませることはないでしょう。
 
 
 
■もうおわかりでしょう。
 
 
それは、100%、全部が、
「相手を心配し、思いやること」
です。
 
 
みなさんの気遣いは、間違いなく、
「わたしのことを気にかけてくれている」
と、相手に伝わっているはずです。
 
 
100%、全部が、自分の業務のことなのか?
それとも、
100%、全部が、相手への心配や思いやりなのか?

この違いは、患者さんにとって
まったく逆のことです。
 
 
みなさんの病院が、患者さんにとって、
冷たい病院なのか、
あたたかい病院なのか、を
くっきりと分けることになるのです。
 
 
「この病院はあたたかい」
「あなたでよかった」
と患者さんが感じる病院を目指すならば、
 
相手が、自分の家族や友人だったら、自分はどう振る舞うか?を考えれば
おのずと、答えが出てくるのです。


マナーを学ぶよりも、
「どう振る舞うか?」
を考え、話し合い、バリエーションを探究してみてください。
 

Q. 上司として部下に代わってクレーム対応する時の、最初のひとこと

 
■みなさんは、部下が
「クレームです。
上のものを出せ、と譲りません。
対応をお願いできますでしょうか?」
と、申し出てきたとき、どのように対処するでしょうか?

 
部下と患者さんの、どちらが正しいにせよ、
上司として対応することが必要であると判断されるケースであると仮定してください。

 
■さて、部下に代わって対応する時、
患者さんに向けて、どのように応じるのが最も良いでしょうか?
 
 
以下の4つのうちから選んでください。
 
 
(1)「部下から話を聞きました。このたびは、たいへん申し訳ございませんでした」
 
(2)「たいへん申し訳ございませんでした。つきましては、お詫びの上、このように改めたいと思いますが、いかがでしょうか?」
 
(3)「お待たせしました。とにかく、早くお話を承るべきかと思い、参りました。どのようなことでしょうか?」
 
(4)「部下から話を聞きました。ご事情は、〜〜このようなことと報告を受けてておりますが、間違いないでしょうか?」
 
なお、ここで「申し訳ございませんでした」と告げているのは、
患者さんに誤解や不安・不快を与える結果となってしまっていることに対して、
「心苦しい」
という意味であり、計測に落ち度を認めているという意味ではありません。
 

A.患者さんの心を正確に、早く受け止めること

 
 
まず、
(1)の
「部下から話を聞きました。
このたびは、たいへん申し訳ございませんでした」
は、具体的な対応策を提示していないことが、危険です。
 
 
「申し訳ございません」
という言葉だけでで乗り切ろうとする魂胆が見え隠れすると、却ってこじれます。
 
 
謝るだけの対処ほど楽なことはありません。
 
 
しかも、部下が誤ったのと、何も変わるところがありません。
 
 
つまり、患者さんは、
「上司が出て来たなら、何らかの回答を示せ。
こどもの遣いじゃあるまいし」
と考えているということです。
 
 
(2)の「たいへん申し訳ございませんでした。
つきましては、お詫びの上、このように改めたいと思いますが、いかがでしょうか?」
は、答案を示している点で、(1)よりも良い対応です。
 
 
ただし、患者さんは、
「部下では話を理解できないから、上司と話したい」
という理由もあって、上司を呼び出していることもあります。
 
 
つまり、吐き出したい感情がまだあるかも知れず、それを受け止めないために、患者さんの気持ちがおさまらない、という恐れがあります。
 
 
患者さんに、感情を吐き出してもらう機会を与えなければ、せっかくの提案も、受け入れてもらえなくなる可能性があります。
 
 
(3)の
「お待たせしました。とにかく、早くお話を承るべきかと思い、参りました。
どのようなことでしょうか?」
は、非常に危険です。
 
 
患者さんは、どんなに話しても部下が理解しないから、上司を呼んだのであって、
上司に代わって、また一から状況説明なども含めて、話さなければならない、となると、
不快感が増長することは明らかでしょう。
 
 
部下は、上司に
「クレームです。お願いします」
とだけ言い、
上司も
「わかった」
と出てきた様子が、想像に易く、
まったく患者さんの心に目が向いていないことが感じられることも、クレームをいっそう大きなものにします。
 
 
また、大きな問題であると認識していれば、簡単な申し送りで移管することなどないはずです。
 
 
モノを手渡すような軽々しい扱いであることが、患者さんの逆鱗に触れる恐れがあるのです。
 
 
一から話をしてもらうことが、感情を吐き出してもらうことになる場合もありますが、そうするかしないかは、患者さんの自由です。
 
 
それを無視して、改めて話を聞こうとしなかったり、改めて話をせざるを得なくしたり、
患者さんの意思を忖度せず、一方的に進めようとすることが、極めて危険なのです。
 
 
 
■というわけで、(4)の、
「部下から話を聞きました。ご事情はこのようなことと報告を受けておりますが、
間違いないでしょうか?」
が、これらの中では、最も望ましい対応であると言えます。
 
 
問題の大きさを理解し、しっかりと部下との間で話をしてきたことがうかがえます。
 
 
また、「間違いないでしょうか?」と、
さらに感情を吐き出す余地を提示しています。
 
 
その必要があれば、患者さんは、改めて話をすることができ、
その必要がなければ、患者さんは、
「その理解で間違いない」
と答えれば済みます。
 
 
なお、患者さんが
「その理解で間違いない」
と答えた場合には、
「ついては、このように改めたいと考えております」
という何らかの回答を用意しておくことが必要です。
 
 
「やはりそうでしたか。どうしましょう?」
と、その場で考え始めたのでは、患者さんは、
「この上司も話にならない」
と感じ、
「もっと上の者を出せ」
と要望される危険があります。