「相談に乗れば部下から信頼される」の間違い

「相談に乗れば部下から信頼される」の間違い

■管理職の方々から、

「いつも部下の相談に乗ってやっているのに

なぜか、良い関係にならない」

という声をよく聞きます。

 

昨今は、サーバント・リーダーという言葉もあるようで、

「上司は部下の相談に乗れ」

と、リーダーシップ書にも書かれいます。

 

しかし、それなのに、

感謝されることもなく、

信頼されることもなく、

人望が厚くなるということもない、という傾向があるのです。

 

それはなぜでしょうか?

 

■そもそも、部下の上司に対する本音はこうです。

 

「この仕事は、

あなたから指示があってやっているのだから、

自分が困った時には、相談に乗ってくれて当たり前」

 

そして、それは正しいのです。

 

上司としては、

「この仕事を進めなければならない」

そして、

「部下に指示をしてやってもらっている」

なので、

「部下が困ったら相談に乗るのは当たり前」

 

なぜなら、

「相談に乗るのは、

自分の果たさなければならない仕事を進めるためだから」

 

この構造を見た時、

部下が感謝する筋合いではないこともわかります。

 

■30年前までの、前時代のように、

部下が、

「ここで、この上司に育ててもらわなければ

自分は食べてゆけない」

と考える人ばかりならば、

上司は、仕事さえ教えていれば感謝されていました。

 

「この仕事をなんとか身につけたい」

と考える部下にとっては、

仕事を教えてくれる上司の存在は、まさに感謝の対象だからです。

 

しかし、こんにちは、

そう考える部下ばかりではありません。

 

■では、どうすれば、

部下との良い関係をつくることができるのでしょうか?

 

そもそも、

仕事上で力になってやっても、

必ずしも良い関係にならないのは、

「組織や上司の価値観の実現に、部下が組み込まれている」

という構造になっているからです。

 

したがって、

良い関係性を築くためには、

その反対に、

「部下本人の価値観の実現に、上司が力を貸す」

という構造になることであり、

それは、必ずしも仕事上に限らず力になってやる、ということになるでしょう。

 

■仕事に関わらないところで、

力になってくれる上司だったら、

部下は

「利用されている」

とも

「組織や上司の都合に組み込まれている」

とも思うことはありません。

 

むしろ

「この人は、本当に自分に味方してくれる人だ」

と感じるのです。

 

その時、そう感じた部下は、

「この人には、力になりたい」

と素直に心から思えるはずです。

それは、自分自身が部下の立場になってみれば

納得ゆくのではないでしょうか。

 

「ただ相談に乗れば部下から信頼される」

のではありません。

 

上司として重要なのは、自分が

「どんなことで、部下の相談に乗っているのか?」

を意図しておくことでしょう。

 

■なお、だからと言って、

「きみ、仕事以外でぼくに味方になって欲しいことはないか?」

と単刀直入に聞けば、

かえって気持ち悪がられるので気をつけましょう。

 

ではどうすればよいか?

 

どんなに不器用な上司でも部下の価値観を引き出し、

力になってあげることができる

シンプルな方法については、

普段のコンサルティングの中でお伝えしていますが、

いずれここでもご紹介できれば嬉しいです。

 

■もちろん、仕事上の相談に乗っていれば

良い関係を築ける部下もいないわけではないことを付記しておきます。

 

ただし、その場合、

部下もまた上司を

「仕事上の存在」

上司との関係を

「契約関係」

としか見ていないことが多いでしょう。