現場に対するその期待は、「願い」か? 「目標」か?

現場に対するその期待は、「願い」か? 「目標」か?

■経営者・上層部の方々が、

「職員が、こんな風になってくれたらいいんだけどなぁ」

という期待をするのは、もっともなことです。

 

ただし、その期待のうち、

「どこまでが、絶対に実現したいことなのか?」

「どこまでが、できれば実現したいことなのか?」

を明確にしておいた方が、

実現可能性が高まります。

 

たとえば、

「うちのスタッフは、みんな貸借と損益くらいは読めます」

と言える組織になることを期待している人もいるでしょう。

 

あるいは、

「うちの3年以上の外来スタッフは、みな手話ができます」

と言える組織になることを期待していることもあるかもしれません。

 

もしくは、

「うちの病院では、毎年、院内発表会があり、学会発表以上の内容だ」

と言える組織になることを期待することもあるでしょう。

 

■もし、それらが、

「そんな風になってくれたらステキ。

でも、それは組織が作為的に強要するものではない」

という期待であれば、

それは、あくまで、

「願い」

の域を出ません。

 

そのため、

さまざまな仕掛けによって、

そんな組織が実現することもあれば、

やがてもとに戻ってしまうこともあるでしょう。

 

一方、もし、それらが、

「何としても実現しなければならない」

という期待であれば、

そういう組織体質を、意図的・作為的に創ってゆく

「組織づくり」

として取り組むことが必要となります。

 

願っているだけでは、

実現できず、

もし実現できたとしても、やがてもとに戻ってしまうからです。

 

■もし、

「願い」

であれば、

表から裏から、人やタイミングを変えて呼びかけたり、

楽しそうなイベントを活かして関心を喚起したり、

寄せては返す波のように、

何度もなんども、

手を変え品を変え、

組織にアプローチし続けることになることを覚悟しましょう。

 

時には、

「みんな、帳簿の見方の勉強会をしませんか」

あるいは

「手話を学びたい人集まれ!サークルしよう」

と言ってくれる職員が登場するかもしれません。

 

もしくは、

「うちも学会並みの勉強会をしましょうよ!」

と呼びかけてくれる職員が現れることもあるでしょう。

 

しかし、それらは、

「組織がつくった仕組み」

ではなく、たまたま

「そういうことをしてくれる職員がいるから成り立つ」

という属人的な要素によるものにほかなりません。

 

このように自然発生するものは、

ほぼ自然消滅します。

 

盛り上がることもあれば、

やがて流行りが去ることもあるのです。

 

そして、自然消滅しそうになった時、

「組織がつくった仕組み」

ではない以上、

組織はどうすることもできないのです。

 

これが

「願い」

の限界です。

 

■一方、

「何としても実現しなければならない」

ということならば、

「組織づくり」

の一環として、

かならず実現するように仕組みを講じる必要があります。

 

どんなに

「指示命令になじまない」

「自主的に始まるのが理想」

「みずから実践する組織になってほしい」

「そんな価値観をもった職員たちになってほしい」

と願っていても、

願っているだけでは、

決して実現することはなく、

実現したとしても、もとに戻ってしまいますから、

 

それは、業務と同じ重さを持って取り組むよう、

▶︎明確に指示をし、

▶︎結果を検証すること

が必要不可欠です。

 

■というのも、

期待するような組織になってくれないのは、

必ずしも職員が

「そんな価値観をもっていないから」

ではないのです。

 

中には、

「経営者・上層部の呼びかけていることは本当に大事だと思う」

「そんな風にできたら素晴らしい病院になるに違いない」

「本当はそうしたい」

と思っている職員も少なくない、ということもあるからです。

 

では、なぜ実現しないのか?

 

それは、それ以上に担当する業務を優先しているからです。

 

業務として、

明示されており、

実践されているかどうかを緻密に検証されていることを、

どうしても優先せざるを得ないのはわかるでしょう。

 

そうすると、どうしても、

結果的に、業務だけに終始してしまい、

それ以上に期待されている部分については手が回らない、

ということが起きるのです。

 

みなさんの現場にも、

「帳簿くらい読めた方がいいよね」

と思っている職員はいるかもしれません。

 

「外来ではみんなが手話を使えたら、

どんなに患者さんを安心させてあげられることか」

と思い描いているスタッフもきっといるでしょう。

 

「できれば公の学会並みの発表会をみんなでできる病院にしたい」

と思っている好学的な職員もいるはずです。

 

しかし、

「できればやってほしい」

と願っているだけでは、

目先の業務に追われ、多忙を極めている現場スタッフの方々が

実践し続けることは極めて困難なのです。

 

なので、

「どうしても実現したい!」

ならば、

業務と同じように、

▶︎明確に指示をし、

▶︎結果を検証する

という「組織づくり」を実行されることをお勧めします。

 

■さて、みなさんは、いくつ、

「こんな病院になってほしい」

という期待を抱いているでしょうか?

 

そして、そのうちのどれが

「できれば実現したい」

という

「願い」

の対象なのか、

 

そして、どれが、

「絶対に実現する」

という

「組織づくり」

の対象なのか、

 

切り分けをされることをお勧めします。

 

そして、

「絶対に実現する」

べきことについては、

遠慮することなく、

「これを実現できなければ、評価に影響する」

と公言することが必要となるでしょう。p>

 

そして、そのように切り分けた方が、

期待されている現場職員の方々にとっても、

優先順位をつけて考えることができ、行動しやすくなることでしょう。