■患者サービス研究所は、

開設した当初、

主に接遇研修を提供していました。

 

当時、

医療機関において接遇研修が行われるようになり、

1990年代には、厚生労働省からも、

「医療もサービス業」

との号令と、

みなさんのご記憶にもある

「患者さんを様付けで呼ぶべき」

とのアナウンスがなされた後でした。

 

医療機関専門の接遇コンサルタントは稀で、

インターネット上で探しても

片手を満たさないほどでした。

 

そんな中、

それまで新入社員研修向けに行なっていたビジネスマナー研修をベースにしたものを、

「医療機関接遇コース」

「医療従事者向けマナー講座」

などと称して、

多くの研修会社が医療機関へ売り込んでいました。

 

笑顔の作り方については、

口角を上げて笑えるようになるため、

割り箸を咥えて練習をするというものもありました。

 

また、正しいお辞儀の仕方は、

上体を45度、前屈させるものであると教え、

受講者二人一組になって、

真横から45度になっているかを確認させるなどして

美しいお辞儀の仕方を叩き込むというものもありました。

 

そして、

言葉を発することとお辞儀をすることを同時に行うよりも、

言葉を発してからお辞儀をする方が、

丁寧な印象を与えるので、

「分離動作」

と呼ばれており、

その練習をするために、

受講者全員で、

「ありがとうございました」

と言ってからお辞儀をする、というトレーニングをするという場面も多々ありました。

 

しかし、当時から、

「医療現場で、満面の美しい笑顔が大事なのか?」

「むしろ不用意に笑うことがふさわしくない場面の方が多い」

という声がありました。

 

また、

「45度のお辞儀をする状況など、一年に一回もないのではないか」

という違和感を抱く医療従事者もたくさんありました。

 

分離動作の練習に至っては、

「医療機関で、ありがとうございました、ということは、むしろあってはならない」

という意見まであがりました。

 

しかし、ほとんどの研修会社は、

医療現場や患者心理を研究してあらたに商品開発をすることは

考えていませんでした。

 

既存のテキストを使い、

元客室乗務員などの講師に、

「例の研修をしてくれれば良い」

と伝えて務めさせた方が、コストがかからないからです。

 

■ビジネスマナーを教える研修会社が

医療業界に進出しようとするのはわかりますが、

既存のマナー研修をそのままタイトルだけを変えて持ち込んできたことは

あまりにも不誠実だと感じたものです。

 

まず、国民医療費が40兆円を超えるというこの時代では、

医療機関のお金は、

医療か、医療従事者か、患者さんのため、

本当に意味のあることに使われなければなりません。

 

医療現場にそぐわない研修をする

不誠実な研修会社が儲けてはならないと思うのです。

 

看護師紹介などの医療業界向け人材ビジネスが、

250億円市場だと報道されたことがありますが、

人材を右から左へ移すだけで、さらには

転職させた看護師に、数ヶ月経った頃に

再び

「そろそろ別の病院で務めたくないですか?」

と転職をそそのかしては、

紹介料を得るといった業者も少なくないことにも、

憤りを感じる方が多いのではないでしょうか。

 

なにより、接遇研修と称する研修を販売しても、

その結果、本当に良い接遇が実現されなければ、

患者さんにとっても得るものはありません。


しかも、患者さんの心に届かない接遇を

「これが正しい接遇。

忙しい時こそ心がけてやりなさい」

と教えることは、

医療従事者の方々に無用の負担を課し、

疲弊させる以外のなにものでもありません。

 

■そもそも、患者さんは、

口角を上げた笑顔も、

45度のお辞儀も、

「ありがとうございました」というお礼も、

望んではいないからです。

 

むしろ、

「そんなことに力を入れずに、誠実にやってほしい」

と願っているはずです。

 

たとえば、午前中の外来のごった返しているときに、

職員が、

口角を上げた笑顔で、

45度の丁寧なお辞儀をしてから

「ありがとうございました」と言って患者さんを見送ったら、

誰が、

「この病院でよかった」

「この職員でよかった」

と感じるでしょうか?

 

むしろ、

「わたしたち患者が願っているのは、そういうことじゃない」

「この病院はまったくわかっていない」

という不快感をもたらすだけでしょう。

 

にも関わらず、いまでも

「ビジネスマナーが接遇の基本」

といってはばからない研修会社がたくさんあります。

 

■本当に医療現場で求められている

「接遇」

とはどんな接遇なのか、考えさせられました。

 

ハッキリしていることは、

「形」を教える接遇ではない、ということでした。

 

なぜなら、

いくら「形」を教える研修を行なっても、

職員が、

「それを現場でぜひ活かそう!」

と思わなければ、

結局、現場で実践されず、なにひとつ変わらないからです。

 

■したがって、最も大切なのは、

「ぜひ、もっと患者さんに向き合いたい!」

というマインドを喚起することと言えるのではないでしょうか。

 

そして、職員が

「ぜひ、もっと患者さんに向き合いたい!」

と思えば、

高いお金を払って研修会社を使ったりしなくても、

いまどきは1,000円も出せば、

とてもわかりやすいビジネスマナーの本が容易に手に入るので、

形を学ぶことはいくらでもできるのです。

 

さらに、

一般の商業ビジネスにおける接客と、

医療現場の接遇との違いを踏まえつつも、

他業界の接遇の核心を、

医療現場向けに翻訳してくれるコンサルタントを

選ぶことをお勧めします。

 

具体的には、たとえば、

「患者接遇の基本は心に寄り添うこと、

すなわち、個別具体的な事情や思いに即して臨機応変に対応すること」

である一方、

「それによって、不公平ではないか、という苦情が生まれないようにする必要があること」

を、どのように解決するか?

といった問いに対して、

明確に答えることができるコンサルタントを使うということです。

 

みなさんが、

「臨機応変にするほど不公平とされるリスクが高まるが、どうすればよいのか?」

と質問したときに、

「それは、みなさんで決めてください」

という研修講師では、意味がないからです。

 

この問いに答えられない研修講師は、

ちょうど、

「ビジネスマナーで教える笑顔やお辞儀は、

多くの人に喜ばれる素晴らしい薬です。

ただし、医療現場では時には不快感を与える毒にもなります。

どんな時に薬となり、どんな時に毒となるかは、

説明できませんが、どうぞ使ってください」

と言っているようなもので、

そんな薬か毒かわからないものを手渡されても、

誰も受け取ることはできないでしょう。

 

「どんな時に薬となり、どんな時に毒となるか」

を明確に解説してもらえて初めて、薬として使うことができるので、

「では、受け取ろう」

ということになるのではないでしょうか。

 

■ビジネスマナーありき、

研修ありき、

という研修会社ではなく、

 

医療現場がどうなれば良いのか、

そのために必要な接遇とはどんなコミュニケーションなのか、

を探究している接遇コンサルタントを

見極めて使うことをお勧めします。