■いま、あらゆる医療現場では、

「お互いの意見に、どのように折り合いをつけるか?」

「どうすれば、お互いが同じ気持ちになれるか?」

「もっと密に連携できるか?」

という課題に直面していることでしょう。

 

いわゆる

「合意形成」

を必要とする場面が日々訪れているといえます。

 

■以前、ある大学の准教授が取り組んでいる

「医療機関における合意形成プログラム」

を紹介するというセミナーに参加しました。

 

合意形成のためにすることとは

・お互いに話をよく聞くこと

・互いに話しやすいよう安心安全な場にする

・何度も話し合う

・お互いの意見の背景を聞く

……とのこと。

 

それらをうまく行なうための手段として教えられたのが

・コーチングの初歩

・ファシリテーションの初歩

・NLPの初歩

……といった、いま広く知られているコミュニケーション術でした。

 

みなさんもご存知の通り、

これらのことは、医療現場ではすでに行なっていることばかりでしょう。

 

それでも、多職種や患者さん・ご家族が、それぞれの立場・価値観から話し合って、

一つの結論を導き出さなければならないからこそ求められているのが

「合意形成」

だったはずです。

 

■昨年は、コーチングのプロフェッショナルだという講師が開く

「合意形成のプロセスを学ぶ」

というワークショップに参加しました。

 

あるストーリーが書かれた文書を全員で読みます。

 

その題材は、ある満員電車の中、

ほんの5分ほどの間に、

Aさん、Bさん、Cさん…といった5人の乗客が

それぞれに抱く心理描写でした。

 

誰かに席を譲った人、

譲らなかった人、

それを見ているだけだった人、

そうしたことに気づかなかった人

 

そして、それぞれの立場から、

その他の登場人物に対して抱く考えや思いがあり、

また、

言葉や態度や行動に出さなくとも、

個々の中では、個人的な意地や恥、こだわり、無関心、その他の気がかりなどが交錯していたり、と

五人五様の心象風景を、

参加者は文書を通じて理解します。

 

そして、

「その5人のうちの誰の気持ちを最も理解できるか?」

各自で、登場人物5人の順位をつけます。

 

ここまでが準備であり、

いよいよグループ・ワークに入ります。

 

参加者が輪になって座って話し合い、

全員の総意で、

登場人物5人の順位を決めてゆくのです。

 

これが「合意形成のプロセス」というわけです。

 

ルールは、

「妥協は禁止」

納得ゆくまで議論して結論を出すこと、となっています。

 

しかし、みなさんもお気付きのことと思いますが、

参加者の価値観もまたそれぞれであり、

その価値観は、

これまでの人生経験における

大小さまざまな原体験によって形成されてきたものなので、

 

わずか1時間や2時間の議論で、

価値観が変わることはありません。

 

「ここは譲れない」

「こういうやり方は嫌い」

といった価値観の多くが、理屈ではないからです。

 

かくして、このグループ・ワークは、

「合意形成のプロセス」

を学ぶことはできず、

「合意形成はできないものだ」

ということを学ぶことにしかなりませんでした。

 

■以上の2つのケースのように、

「合意形成」

をうたうセミナーや研修がよくありますが、

結局

「合意形成できへんやないけ!」(なぜか関西弁)

となるものも珍しくないのです。

 

初歩的なコーチングやファシリテーションを学んだり、

単にディスカッションをさせるだけ、

というものであれば、改めて学べる知見は少ないことでしょう。

 

これらは、致命的な欠陥があるからです。

 

それは、

「その場の話し合いで合意形成しようとする

という横着な発想だから合意形成ができない」

からです。

 

その場の話し合いでわたしたちが共有できるのは、

理論やデータといった「客観情報」であり、

それらでは、感情を動かすことはできないのです。

 

「あなたの意見も一理ある。

でも、わたしは賛成できない」

ということになります。

 

■もちろん、現場の状況によって、

「その場の話し合いでなんとかしなければならない」

ということも少なくないでしょう。

 

しかし、

「本来は、何をどうすることで、合意形成が可能となる」

という、

その場の話し合いの枠にとらわれない

正しい基本型を知っておかなければ、

状況に応じた応用型をつくることもできません。

 

では、

本当に「合意形成」したいならばどうすればよいか?

 

その「基本型」とはどのようなものでしょうか?

 

詳細はいずれかの機会にお伝えすることとして、

ここではポイントをいくつか挙げておきます。

 

1.その場で合意形成しない

 

……会議や打ち合わせの場では、説明やデータといった客観情報しか共有できないからです。

 

要するに、事前の施策が重要であり、会議や打ち合わせの場では採決できるように、準備を整えておくことです。

 

2.説明しない

 

……客観情報を伝えても、相手の感情が動くことはないからです。

 

口頭で、相手を動かそうとすることほど、横着なことあはりません。

 

したがって、説明せずに伝わる方法を講じることです。

(その方法は、またいずれかの機会に)

 

他にも

 

3.快適に話し合える良い環境を用意する

 

4.必ず全員がすべての意見を言えるように進める

 

5.会議や打ち合わせでは、選択肢を挙げて選択するだけにする

 

……など、一般書にも書かれているポイントもたくさんありますが、

そのあたりは、一般書に任せておき、

ここでは一般書にないポイントをご紹介しました。

 

■ともあれ、

「合意形成できるよ」p>

という研修やセミナーがあった時、

「その場の話し合いでなんとかしようとする方法」

について学ぶだけのものか、

 

それとも、

本当に合意形成するための基本型を学べるものか、

を確認されることをお勧めします。

 

コーチングやファシリテーションやNLPといったコミュニケーション・テクニックを学ぶなら、

専門の団体で学んだ方が、本格的・実践的に学べるからです。

 

また、本当の「合意形成」の方法を学ぶなら、

コミュニケーション・テクニックではなく

上に挙げたポイントのように、

「コミュニケーションを設計する方法」

を学ばれることをお勧めします。

 

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