■階層別研修というラインナップを設けている研修会社が多々あり、

課長職、課長候補、主任職、主任候補、若手フォローアップ、新人フォローアップ、新人・・・と、

えらく細かく階層を分けて研修が作られていて

驚くことがあります。

 

研修会社が、

「社員を細かく分けて、きめ細かく教育した方が良いですよ」

と言って、

多くの研修商品を買わせようとして生み出したラインナップとしか考えられません。

 

というのも、

そんな提案をしている研修会社自身が、

自分たちが教えているように

本当に各階層が異なる立場で仕事をしているのか?

甚だ怪しいでしょう。

 

まさか、

「えーっと、この件は、課長じゃない、課長補佐にやってもらうべき仕事だ」

「しかし、こっちは、課長補佐ではない、係長だ」

「これこそ、副主任の仕事だ」

と話しているということはないでしょう。

 

研修会社が、

自社で実践されていないことを商品にして教えているとすれば、

そんな研修を受けることに意味があるのか疑問です。

 

■つまるところ、実際の現場で、

現実に必要なのは、

経営者・役員を除けば、大きく分ければ、

「中間管理職」と「一般職員」の2種類で充分でしょう。

 

というのも、

「管理職」として身につけなければならないことは、

どの階層であれ、

本質は同じだからです。

 

それは、

「管理能力」

ではありません。

 

正確に言うと、

「管理能力」

と呼ぶと、誤解を招くので、

その呼び方をやめた方が良い、という意味です。

 

管理能力と呼ばずに、

「部署自治能力」

と呼んだ方が良いのではないか、と考えています。

 

経営者のミッションが、

「自社がマーケットから認められるようにして存続すること」

であるのとパラレルに、

管理職のミッションは、

「自分の部署が、マーケットから認められるようにして存続すること」

と言えるでしょう。

 

部署にとってのマーケットは、

顧客などの市場も含まれますが、

もう一つは、組織(つまり経営者・上層部)も含まれます。

 

組織の経営者・上層部から、

「この部署は、よくやってくれている」

「この部署のみんなが大切だ」

「この部署は必要だ」

と認識してもらえるようにしなければ、

部署がなくなったり、

職員を入れ替えられたりしてしまい、

現状を存続することはできません。

 

昭和の時代は、頑張っていれば、報われるようになっていましたが、

令和の時代は、大企業も社会保障も、いつどうなるかわからない、

報われるとは限らない時代です。

 

先日は、

東京大学・上野千鶴子名誉教授が入学式祝辞で、

「社会は公正に評価してくれるものではありません」。

と話されていました。

 

確かに、

職場は学校ではなく、

上司は神様ではなく、

ひたむきに頑張ってさえいれば、適正に評価してもらえると思ったら大間違いで、

自分から伝えていないのに、わかってもらえるはずがないのです。

 

■したがって、これからの時代の管理職は、

自分の部署を守り、成長させ、表現することで、存続させてゆくことが求められるようになっているので、

「部署自治能力」

と呼んだ方が良いのではないか、と考えるのです。

 

部署自治能力には、これまでの管理能力と異なる3つの重要な領域があります。

それは以下の通りです。

  1. 部下に対する啓発力
  2. 上層部に対する釈明力
  3. 展開力

▶︎1. 部下に対する啓発力

 

これまでは、「部下育成力」と呼ばれていたことでしょう。

 

教育が前提となっている発想です。

 

しかし、これからは、

「管理職自身が教えるのではなく、部下に気づかせる」

ことが必要です。

 

なぜなら、

「上司に怒られるから直さなければいけない」

のは、昭和の時代でしか通用しない思考だからです。

 

これからの時代の管理職は、

部下職員に、

「社会の環境が求めるから変わらなければならない」

と感じてもらうため、

管理職自身が説明したり教育するのではなく、

社会の環境に部下を引き合わせる(マッチさせる)力が重要です。

 

そして、

それが実現し、

社会の環境から求められていると理解すれば、部下は、

二度と上司が注意しなくても、みずから変わり続けてくれるようになります。

 

▶︎2. 上層部への釈明力

 

これまでは、結果だけが求められてきましたが、

これからは、目先の数字だけではなく、

どのような取組をどれだけしているか?について釈明できなければ、

上層部には、現場の状況は伝わりません。

 

というのも、上層部からは、

「もっと危機感をもった動きを」

「もっと心に寄り添った対応を」

「もっと地域に向き合ったあり方を」

などと漠然とした指示が降りてくることが多々あるからです。

 

したがって、

「なにをどれだけ」

をみずから示すためには、目に見えないことを可視化して、

その進捗度を示すための

「価値基準設定力」

が必要となります。

 

「ものさし設定力」

と言っても良いでしょう。

 

「部下職員の意識を高める」

といったマインドの向上であれば、

「このような言動を、これくらいの頻度で引き出す」

「このようなチャレンジを、これくらいの頻度で実現する」

といったものさしになるでしょう。

 

こうした形のないことを、

言語化し、基準を設けること能力を持って、

上層部に対して釈明する能力が必要となります。

 

そうしなければ、変化の激しい状況を

上層部にわかってもらうことはできず、

結果となる数字だけですべてを判断されてしまいます。

 

▶︎3. 展開力

 

組織が成長してゆくためには、

各部署の管理職が、

自分の預かった部署を成長させることが前提条件となります。

 

上層部が見えない状況を判断し、

上層部が思いつかない答案を挙げて実践し、

上層部が予期しなかった成果を実現する能力、

すなわち

「展開力」

が重要となります。

 

これまでは、すべて上層部の指示に従っていれば良い時代でしたが、

これからの時代は、現場がみずから問題提起をし、改善提案をし、指示命令によらずに成長できなければ、

組織は成長することができません。

 

そもそも、管理職の最大のミッションは、

「上層部からの指示命令によらすに、

部下職員を巻き込んで、

みずから気づき考え話し合い成長してゆく」

部署の自律進化そのものでしょう。

 

与えられた業務をつつがなくこなすだけの管理職は、

これからの時代には必要とされません。

 

各部署に展開力がなければ、

変化の激しいこれからの時代の中で、組織全体が前進することはできないからです。

 

■世の中には、

「管理職研修」

「第2ステージ、第3ステージ」

などのさまざまな管理職向けのプログラムらしきものが多々ありますが、

これからの時代に即した、最も重要な内容が組み込まれているものは稀ではないでしょうか?

 

なぜなら、研修会社や主催者側も、

まだ昭和の時代の指示命令体質から変わることができていないため、

それらの会社などが組み立てる研修は、

必然的に、新しい発想にはなり得ないのです。

 

さて、

みなさんの現場では、

管理職教育の中に、

「部下に対する啓発力」(感じさせて悟らせる能力)

「上層部に対する釈明力」(価値基準を設定する能力)

「展開力」(自律的に進化する能力)

が組み込まれているでしょうか?

 

いますぐ確認してみてください。

 

もし組み込まれていなければ、

管理職の多くに、

・部下を活性化すること、

・可視化できないことに関する上層部への説明、

・部署独自の自律進化

……といった、重要なミッションが認識されていないかもしれません。

 

管理職教育の初歩の初歩、それが、

  1. 部下に対する啓発力
  2. 上層部に対する釈明力
  3. 展開力

……すなわち、「部署自治」がミッションです。