■科学とは、結果から原因を明らかにし、原因から結果を生み出す作業と言えるでしょう。
 
たとえば、
石が光った原因を追究して放射線を発見し、いまは放射線を医療に利用しています。
 
また、
人間の細胞の成り立ちを追究してiPS細胞がつきとめられ、いまは再生医療が発展しています。
 
医療の世界における例には、枚挙にいとまがありません。
 
医学の進歩は、
まさに原因を明らかにして結果を生み出す作業の歴史だったと言えるでしょう。
 
■ところが、
身体のことは目に見えるためか、
誰もが結果から遡って原因から考えることに慣れています。
 
しかし、心のこととなると、
原因から考える習慣のある人は稀ではないでしょうか?
 
そのため、
「なぜ、こんなことになったのだ?!」
「信じられない」
と、多くの人が、日々、驚き、落胆し、嘆き、恨み、失望し、苦しんでいます。
 
その証拠に、何千年もの昔から、
人間の行なっていることに、
進歩がありません。
 
好きになって結婚しては傷つけあったり、
隣人と揉めたり、
富を巡って争い命を落としたり…、といったことを、
人間は、
これまでも続けてきて、
これからも続くことが、火を見るよりも明らかでしょう。

40年前には知り合うはずのなかった人同士が、
出会い系サイトで知り合っては、
殺したり殺されたりしている事態には、
悲しいというよりも、
もはや人類の愚かさを見せつけられる思いでしょう。
 
科学がこれほどまで発達しているにもかかわらず、
心理構造については、
原因を見極めて考えることがなく、
まったくといっていいほど、成長していません。
 
■とくに、人間関係となると、
夫婦、上司部下、恋人、近所、親子と無限の立場関係があり、
人間関係の摩擦には無数のバリエーションがあり、
もはや解決の方法は皆目見いだせる気がしない、
という人も少なくないでしょう。
 
しかし、人間関係の問題の本質は、
実はたった一つ、
「わかってもらえない」
という原因に尽きます。
 
自分の価値観をわかってもらえていたら、
その相手との人間関係に悩む理由がないでしょう。
 
では、自分をわかってもらえるためには、
どうすれば良いか?
 
まず自分が相手にとっての理解者になること、に尽きるのではないでしょうか?
 
人間関係に悩まなくなる方法として、
言葉の選び方や、
服装・立ち居振る舞いや、
表情の作り方、
傾聴のテクニックなど様々な技法が教えられていますが、
 
いくら学んだ所で、
そもそも相手を理解し応援しようという気持ちがなければ、
人間関係が良くなることがないのは、
原因から考える習慣がないためです。
 
また、良い関係性が瞬時に形成されることはありませんから、
場当たり的なテクニックで、
信頼関係が築けるはずもないのです。
 
■組織マネジメントも同じです。
 
組織のことを考える場合に、
とかく集団心理とか組織心理という言葉を使い、
人間の心理構造と別物のように言う人がいますが、
そんなことはありません。
 
単に
「自分一人が、多くの人に反対して、大きな責任を負いたくない」
という心理が、
集団の中では、迎合的な言動を生み出しやすい、
というだけの話にすぎません。
 
集団心理や組織心理が特殊なのではなく、
人間の心理構造をわかっていれば、
むしろ当然の結果であることがわかるでしょう。
 
こうしてみると、組織論においては、
いかに科学的なアプローチができていないか、が明確になるでしょう。
 
現実の社会や組織の中に、
「そこをうまくやるのが管理職だ」
「できる社員がいるんだから、できない者が悪い」
「自分たちで考えるべき」
「普段からの心がけが足りない」
といった、
精神論が、当り前のようにまかり通っている原因は、
実はここにあるのです。
 
■「なぜこんな結果になってしまうのか?」
という思いがある人は、
原因が見えていないか、
原因と結果の関係が見えていないということにほかなりません。
 
原因や因果関係が見えていれば、
「こういう結果になるのが当然だ」
と感じます。
 
誰もが、高いところで物を手放せば、地面に落ちるのを知っているように、
すべてが
「当然だ」
と感じます。
 
いちいち、驚き、落胆し、嘆き、恨み、失望し、苦しむ必要はありません。
 
■組織を良くするために、
「教育だ」
「研修だ」
「コーチングがいいらしい」
「NLPもどうか」
「目標管理制度を早くやろう」
「PDCAを回そう」
「ワークライフバランスを整えよう」
「福利厚生の充実を」
など、あれこれ施策を考える前に、
まず、
「本当の原因は何か?」
を見極めることをお勧めします。
 
結果を変えたいなら、
原因を変えなければならないからです。
 
本当の原因から変えない限り、
これからも、
「なぜうまくいかないのか?」
と、驚き、落胆し、嘆き、苦しむ結果になることが見えています。
 
■組織マネジメントにおいても、
最も重要なことは、
「目的」
を共有することから始めることに尽きます。
 
部下職員の一挙一動を促すのはなぜか?
その原因が「目的」です。
 
一方、その「結果」ばかりを要求している組織がいかに多いでしょうか?
 
それは手段に目を奪われることにしかなりません。
 
「来週から、こうしてもらわなきゃ」
「来月からは、あれを始めてもらう」
「来年は、これを進めていってもらうことになる」
……と、
「結果」ばかりが口から出てくるのではないでしょうか?
 
それを切り替えて、
常に、
その目的から話をする思考を
習慣にすることをお勧めします。