本当の成長は、外圧的動機がなければ生まれない。

本当の成長は、外圧的動機がなければ生まれない。

■多くのコンサルタントが、

「職員に話し合いをさせれば、前向きな良い意見が出る」

「それこそが、自分たちの意思なので、強いモチベーションになる」

と言っています。

 

そう考えている経営者や上層部も、少なくないことでしょう。

 

これは、

「内発的動機を引き出すことに徹すれば、

充分、前向きな行動を引き出せる」

という考え方ですが、

本当にそうでしょうか?

 

経営者・上層部が

部下職員に外圧的動機を持たせる必要は

ないのでしょうか?

 

実は、経営者・上層部が

外圧を及ぼすことをしたがらないために、

「内発的動機を引き出すだけで充分」

という考え方を採っているケースもよく見受けられます。

 

しかし、これは

「ここまで成長してほしい」

と意思表示をする責任を放棄していることを意味しています。

 

みずから話し合い、

「ここまで成長したいです」

とみずから宣言させて、

現場職員に責任を押し付けている結果です。

 

現場に宣言させたなら、

経営者・上層部は、押し付けなくて良いので、

「嫌われずに済む」

ということです。

 

しかし、本当にそれで大きな成長を遂げることができるでしょうか?

 

答えはNoです。

 

■以前勤務していた会社でのこと。

 

その部署は、

正職員は、課長1名、主任2名、その他が6名、

その正職員が、非常勤で職人肌の年配職員が数十名の方々の力を借りて、部署を運営する組織でした。

 

ある時、人事異動が発表されました。

 

課長1名と主任2名が、他の部署へ転勤し、

新卒社員2名が新たに赴任する、というものでした。

 

非常勤の方々の方がキャリアが長く、

若い正職員が、その協力を得て、うまく運営できるかといえば、

誰もが

「無理だ」

と感じていました。

 

正職員は、互いに協力して、さまざまに対策を講じ、

結局、

無事に部署を運営することができるようになり、

大きな成長を遂げたのです。

 

このような成長を遂げるためのチャレンジを、

職員本人たちがみずから言い出すことができるか?

ということを想像してみれば

もうお分かりでしょう。

 

みなさんなら、

「わたしたち、かならず成長するよう頑張るので、

課長と主任を外して、

わたしたちに、運営を任せてもらえないでしょうか?」

と言えるでしょうか?

 

「かならず成長してみせる」

という責任を負ってまで、言い出せる職員など、まずいない、ということです。

 

さりとて、経営者・上層部もまた、

そんな大胆なチャレンジの責任を負うことが恐いので、

「みんなが言うなら、やってほしい」

と逃げ腰になってしまうことが多いのです。

 

■しかし、考えてみれば、

「無理をしてでも成長したい。

責任を負ってでもチャレンジしたい」

という殊勝な人は、なかなかいません。

 

もしコンサルタントが企画した研修で、

「わたしたちは、ここまでやります!」

と内発的動機を引き出したとしても、

それは、

「話し合うように言われたから話し合い、

発表するように言われたから発表した」

に過ぎず、

純粋な内発的な動機ではありません。

 

そもそも、

自分の手で自分の首を絞めても死なないのと同じように、

驚くような成長を遂げるために自分自身に大きな負荷をかけることなど、できようはずもないのです。

 

こうして考えてみれば、

もし経営者・上層部が

「本当に組織に成長してほしい」

と考えるならば、

毅然として

「ここまで成長してもらいたい」

と意思表示することが不可欠だと言うことがお分かりでしょう。

 

嫌われてでもきちんと方向性を指し示し、

本当の意味で組織や部下職員を守ってやるためには、

「職員が話し合って決めたのだから、きっとやってくれるだろう」

と遠慮していてはならず、

「きみたちが何と言っても、ここまで成長してほしいのだ」

と明確に意思表示することです。

 

■そうした働きかけがなければ、

過分な責任を負いたくないのは現場職員も同じことで、

「できる範囲で頑張ります」

という、

自然体とほぼ代わり映えのしない取組しか、現場からは生まれません。

 

もし組織を成長させたいならば、

負荷をかけてください。

 

もしくは、現場職員が、

「負荷がかかってでも成長しなければならない」

と感じさせましょう。

 

なお、重要なのは、

「そのために、何をどこまれやるか?」

という具体的な言動については、介入しないことです。

 

もはや、

「内発的動機が大事」

などと言って、

経営者・上層部が、成長の責任を回避してはいられない時代なのです。

 

現場が成長することを願ったり祈ったりしていても、

成長することはありません。

 

毅然とした態度で、

外圧的動機を持たせるようにしましょう。

 

「なんとしてでも、現場をここまで成長させなければならない」

と、明確なゴールを示してください。

 

でなければ、現場の職員は、

目先の業務をこなすという責任を果たすことで、つねに精一杯なのですから。

 

その様子は、

経営者・上層坊のみなさんが、

すでに日頃見て、ご存知なはずです。

 

■厳密に言うと、この記事のタイトルのように、

「本当の成長は、外圧的動機がなければ生まれない」

かというと、そんなことはなく、

内発的動機から生まれることもあります。

 

しかし、それはそんな殊勝な職員がいた場合に限った

稀なケースです。

 

殊勝な人の存在を当てにすることは、

属人経営と言って、

組織づくりとは言えません。

 

そもそも、

内発的動機は、継続しにくいという致命的な問題があるのです。

 

みなさんも、自分一人で始めたことを

習慣にして長く続けることが、至難の技だということをご存知でしょう。

 

なので、

「本当の成長は、外圧的動機がなければ生まれない」

と割り切った前提のもとで、

組織づくりをすることが現実的なのだということが言えるでしょう。