■ある病院でのこと。

 

院長先生、事務長と、話していた時のこと。

 

「これから減床してゆかなければならない」

というので、

 

「看護師の方々の退職を促してゆくことになるでしょうか」

と訊くと、

 

「その心配はない。

つねに一定のペースで退職してゆくので、

自然退職にまかせれば良いからだ」

 

「退職するたびにしていた欠員補充をしなければ、

自然に、適切な人数に減ってゆくということですか?」

 

「そう」

 

■この記事をご覧になっているみなさんは、

「なぜ、自然退職に任せるのか?」

と、この方々の考え方に違和感を持たれたことでしょう。

 

減床し、職員数も整理することは、

ある意味、

新しい組織体制を構築することです。

 

新しい組織体制を築くならば、

誰もが真剣に、

自分が思うような組織づくりとしようと思うことでしょう。

 

経営者・上層部の方々は、

減床・職員数の整理を

新しい組織づくりのチャンスとして

活かさない手はないのでないでしょうか?

 

シンプルに言えば、

減床・職員数の整理が済んだ時に、

「精鋭揃いの組織」

にしたいのか、

「難物揃いの組織」

になっても良いのか、

その選択をする、ということになるのです。

 

■自然退職が続く職場において、

「つねに古い人から辞めてゆく」

という職場は、まずないことは、みなさんもお心当たりがあるでしょう。

わたしは、

「人材の先入先出法」

と呼んでいますが、これは多数派ではありません。

 

退職が続く職場では、

たいてい、新しく入った人が定着せずに辞めてゆき、

古い職員ほど、残っている傾向があります。

「人材の後入先出法」

で、これが多く見受けられますね。

これは、大抵、

健全な組織体質づくりができていないことに起因します。

そうした組織では、

古い職員は幅を利かせているので、

本人たちは居心地がよく、

そこに入ってきた真面目な職員が、

自分のポリシーを抑えつけられてしまい、

辞めてしまうということが続いている

……というのが、典型的なパターンではないでしょうか。

 

みなさんも、

そんな現場をしばしば

目にしてこられたことでしょう。

 

ということは、

自然退職に任せるということは、

大抵の場合、

すっかり自分の流儀に凝り固まってしまっている、(いわゆるオツボナイズドされた)職員が主に残ること

を、意味するということです。

 

■一方、

「職員は減ったけれど、良い職員が残った」

という少数精鋭の病院にしたいならば、

減床を契機に、

組織再編完了時期までのプランをつくり、

計画的に組織づくりを進めてゆくことをお勧めします。

 

具体的には、改めて、

「人事評価制度」

をこの機に設けることでしょう。

 

そして、

「組織が職員にどんなはたらきを期待しているのか?」

を明示することです。

 

組織の運営とは、まさに

「選択と集中」

です。

 

職員の力を引き出すのも、

その職員の責任について、

本当に必要なことだけを「選択」してやり、

それ以外のことを徹底して排除し、

選りに選った担当業務に「集中」できるようにしてやることに尽きます。

 

選択が甘ければ、

職員は戸惑ってしまいます。

 

集中させなければ、

ロスが多いために職員はモチベーションが上がらず、

もちろん、

底力を発揮することはありません。

 

そこで、担当範囲を選択し、集中させるための

唯一最大の意思表示、それが

「人事評価制度」

です。

 

新しい人事評価制度によって、

組織が求める新しい価値観を表明することができるので、

「その価値観に合意した人にだけ残ってもらいたい」

と意思表示することが可能となります。

 

また、その制度に基づき、

働きぶりを評価し、

フィードバックすることで、

場合によっては、

「あなたがどんなにベテランであっても、今のままであれば、高く評価することはできない」

「新しく入った職員にも長く勤務してもらえるよう、経験豊富なあなたよりも高く評価することがある」

と、意思表示してゆくことが可能となります。

「この方針で勤務してもらうけれど、同意するか?」

と改めて組織の価値観を明示し、

それにコミットした職員だけで構成する組織を

新たに築くためのきっかけとして活かさなければなりません。

 

■いまの医療業界では、

遠い沖の白波のように見える外部環境が、

あっという間に砂浜にいるわたしたちのところまで到達し、

大きな波となって襲いかかってくることがあります。

 

厚生労働省によって

424病院リストが公表された例を挙げるまでもないでしょう。

 

減床・再編の波をかぶってからでは、

上層部は状況に追われるばかりで、

主体的な対処はできません。

現場においても、

有能な職員ほど安定した他の職場を求めて

離れていってしまうでしょう。

逆に、残るのは、

これから転職するなど考えられないと、

思っていたり、

思われている職員ばかりとなるでしょう。

 

それでも良い職員だけを残したいからと言って、

その時になって、自分の流儀に凝り固まってきまっている古い職員に

「実はあなたに辞めて欲しいと思っていたのだ」

と言ってみたところで、

納得して辞めてもらうことなどできません。

 

客観的な材料も、

時間的な猶予もなければ、

承服するはずがありません。

 

では、どうするか?

 

いまのうちから、

できるだけ速やかに、

(1)人事評価制度を設け、

(2)病院が求める人物像を明示し、

(3)評価制度に照らして評価を蓄積し、