■昨今の新型コロナへの政府の対応を見ると、
いつも以上に不満を感じる方も少なくないことでしょう。
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政治は国の運営であり、
病院運営の大きなヒントが得られますので、
前半は、昨今の政治を振り返り、
後半に、病院運営について述べています。
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早期にうまく対応を打ち出したり、
その後もITを駆使して感染拡大を防いだりと、
台湾はじめ諸外国の対応を見ると、
我が国の行政・立法が、
いかに普段から外国に学んでいないか、がわかります。
病院には、
BCPの計画策定を指示しているにも関わらず、
行政では
パンデミックへの対応策が講じられていないことが
浮き彫りになった一幕でもあります。
内閣・厚労省が、
早急に医療の専門家と相談して対策を講じていないこと、
さらには、
全国休校を要請したにも関わらず、
財務省とは相談ができていなかったことも
見えてきました。
官僚も国会も、満足に機能しているとは言えないでしょう。
元来、我が国では、憲法の柱の一つに
「民主主義」
があり、
みんなの力を出し合う建前があるにもかかわらず、
なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか?
■それは、民主主義の前提として、
「国民一人一人の意思を尊重する」
ことを基礎としているあまり、
「みんなで決めたことが何より大事」
という幻想に陥っているからです。
そのため、
特に日本では、
国民の代表者の集まりである国会に絶大な権限があります。
国会が内閣総理大臣を指名し、
その内閣総理大臣が最高裁場所長官を指名し、
結局、
三権分立といいながら、
国会が根となって行政・司法をコントロールできるようになっており、
三権は事実上、分立していないのが実情です。
国会が内閣不信任案を決議することもなく、
内閣は、実質、自由になっているのはそのためです。
国会と内閣が一体となって各省庁の官僚人事にも介入し、
先日来、
検事総長の人事にまで強権的に関与して
社会問題になっています。
さらに日本では、
裁判所は、訴訟において論点になったことしか判断しないので、
実質的には
「意見を言うだけ」
で、
内閣・国会は、耳を貸さないことがまかり通っています。
こうしてみると、
「みんなで決めたことが何より大事」
が間違いだと言うことがお判りでしょう。
そもそも、
- 誰もがみんなのことも考える
- 誰もが将来のことを考える
- 誰もがより良くなることを考える
- 誰もが責任を伴ってでも意思表示する
- 自分の利害を中心に考えるあまり他人をないがしろにすることもある
- 目先のことばかりが気になって将来のことを考えず場当り的に考えることもある
- より良くなってもならなくても自分の地位や利益を守ろうとする
- 自分が責任を負うことを避けて他人に決めてもらおうとする
……というのが人間の本当の性質ではないでしょうか。
したがって、
「みんなで決めたことが何より大事」
に陥ってはならない、ということが明らかでしょう。
では、どうするか?
「みんなで決めたことに対しても、
積極的にチェックすることが大事」
であるはずです。
現に、
ドイツでは憲法裁判所が、
訴訟がなくても積極的に違憲審査をしてゆくようにしていて、
二度と民主主義が暴走しないよう
「高度な民主主義」
へと進化しています。
第二次世界大戦で多くのユダヤ人を虐殺した歴史から学んで、
高度な民主主義に進んでいるのです。
■さて、ここからが本題です。
我が国においても、
「民主」をうたう組織がたくさんあり、
病院の中にもそうした思想のある組織があります。
ところが、そうした組織ほど、
民主主義を大事にするあまり、
残念ながら、
我が国の戦後の民主主義と同様に、
「みんなで決めたことが何より大事」
という前時代の民主主義に陥っている傾向が見られます。
本部組織の役員、支援団体、病院職員の意思を尊重しすぎて、
「みんながやると言うならやる」
「みんなが乗り気じゃないならやらない」
という決定をする傾向があるのです。
換言すれば、
「みんながやると言わないことは、やらない」
という気の遣いようだということです。
これでは抜本的な改革は、生まれようがありません。
そのため、
「茹でガエルになっている」
という声が組織内部からも上がっていると聞きます。
■上記のような「民主」をうたう病院にしろ、
それ以外の病院にしろ、
多くの組織が、
「みんなの意思を尊重しているのに、
茹でガエルになり、うまくいかない」
のは、なぜか?
それは、人間観を誤っているからです。
前述の通り、人間は、
- 自分の利害を中心に考えるあまり他人をないがしろにすることもある
- 目先のことばかりが気になって将来のことを考えず場当り的に考えることもある
- より良くなってもならなくても自分の地位や利益を守ろうとする
- 自分が責任を負うことを避けて他人に決めてもらおうとする
……という心理構造を前提としたうえで、
「この組織体質を変える」
ことを考えなければならないでしょう。
つまり、
みんなに意思表示をさせて、
その意思表示を尊重する前に、
まず先にやらなければならないことがあるのです。
それは、まず第一に、
- 誰もがみんなのことも考える
- 誰もが将来のことを考える
- 誰もがより良くなることを考える
- 誰もが責任を伴ってでも意思表示する
……という建設的な組織体質をつくることです。
建設的な組織体質を築いてからならば、
そんな建設的なみんなに意思表示をさせ、
それを尊重すれば、
正しい方向へ進むことが可能となります。
そのためには、
「日頃から、職員が視野を広く持つ」
ように促すことが必要です。
つねに全職員が
「他の病院はどうだろう?」
「他の業界はどうだろう?」
「今後の業界はどうだろう?」
そして、
「いまもっとできることはないか?」
「もっと患者さんのためにできることがないか?」
「もっと他の病院・施設と協力できることはないか?」
「もっと新しい地域医療を設計できないか?」
と、職員がいつも
考えたり、
話し合ったり、
チャレンジしたりすることが当り前の
組織体質をつくることです。
■一言で言えば、職員の多くが
「変えたいことなら山ほどありますよ」
とつねに思っている
「変わることが当り前の組織」
つまり
「自律進化組織」
としてゆくことが重要でしょう。
なにしろ、
国民医療費が膨張の一途をたどり、
高齢化率が高まる一方の中、
病院は減床や統廃合といった
再編を余儀なくされているのですから、
「昨日と同じで良い」
時代は終わっているのです。
「昨日と同じにしている組織は滅んでゆく」
時代になったのです。
「民主」をうたう病院にしろ、
そうでない病院にしろ、
一日も早く、茹でガエルを脱却し、
「自律進化組織づくり」
に着手されることをお勧めします。
職員のすべての意思表示を尊重するのは、
その後です。
とくに経営者・上層部の方々は、
現場に気を遣い過ぎてはなりません。
現場がどんなに抵抗を示しても、
「現場職員がみずから気づき考え話し合い改善し続ける
自律進化組織をつくる」
ことをお勧めします。
=”text-align: left;”>そのための最もシンプルな方法
「HIT-Bit」
の具体的な方法については、
また別の機会にお伝えします。