■経営者からすると、

「ある部署が硬直して、思うように動かない」

ということがあります。

 

また、職員からすると、

「上層部によって、理不尽なことが行なわれて困る」

ということがあります。

 

そして、それは大抵、

「あの職員が問題児だ」

「あの人が身勝手にやっているからだ」

と、人に原因があると捉えているのではないでしょうか?

 

しかし、

組織運営の観点から言えば、

「人のせい」

にしていては、問題は解決できません。

 

なぜなら、

人はさまざまな価値観を持っているものであり、

今後も同じような人が入ってくる可能性があるからです。

 

その都度、

「困った」

「あの職員のせいだ」

と悩んでいては、組織は良くなりません。

 

また、今いる職員も、

何らかの原因で、問題児化することもあるのです。

 

このように属人的な要因に原因があると

結論してしまうと、

解決する方法がありません。

 

そうしているうちに、

現場の雰囲気が悪くなったり、

コミュニケーションが希薄になったり、

あるいは、理不尽なことが行なわれることで、

職員のモチベーションが下がって、

退職が続くようになってしまいます。

 

■そして、時々

「あの職員には手を焼いているんだよ」

「あの部署は以前からこうなんだ」

と、その状態のまま、

1年も2年も悩み続けている現場がありますが、

これではもはや、

組織運営ができているとは言えません。

 

その部署が充分に生産性を発揮できない中、

職員に問題が感じられているならば、

組織は適切な手を打たなければならなず、

1年も2年も是正できないのは、

もはや組織づくりを放棄しているのと同じなのです。


いつまでも上層部が介入せず、

そうなっている現場も珍しくはありませんが、

職務放棄と言わざるを得ません。


その被害で多くの職員が苦悩したり、

モチベーションや生産性を下げ、

退職と補充を繰り返すなど

しているのですから。

 

■ただし、こうした問題を、

「属人的な要因」

が原因だと考えてしまうと、

「その人を矯正する」

という発想になってしまうことでしょう。

 

しかし、

「属人的な要因」をもった人は、

これからも入職してくる可能性があります。

 

また、これまでそうでなかった幹部職員が、

役員間のパワーバランスが変わったことで、

急に変異して「属人的な要因」を見せるようになることも

あります。

 

これまでの役員がいなくなった途端、

幹部の一人が、自分勝手なことをやりだした、

といったケースを、

ご存知の方も少なくないのではないでしょうか。

 

その時に、

「この人は、どのように矯正すればよいのか?」

と考えることは得策ではありません。

 

なぜなら、

問題児はそれぞれ異なる個性を持ち、

その個性に応じた矯正方法を講じようとすれば、

キリがないからです。

 

それよりも、

どんな問題児が現れても、

それを受け付けない職場環境をつくる発想を

持つ方がよいのです。

 

これはちょうど、

風邪を惹いた時に、

その時々の異なる個性を持った雑菌に効く薬を

探しても、

雑菌の種類は無数にあるのですから

キリがないのと同じです。

 

それよりも、

どんな雑菌が襲ってきても、

それを撥ねつけられるようにする発想を

持つ方が良いでしょう。

 

みなさんも、日々、

「風邪を惹いて苦しまないようにするためには、

風邪を惹かない頑健な身体をつくる」

ようにしているのではないでしょうか。

 

では、組織づくりの場合、

風邪を惹かない頑健な身体をつくるとは、

どういうことでしょうか?

 

どうすれば、

個々の職員の属人的な要因にとらわれず、

そすいた要因を撥ねつける組織体質をつくることができるのでしょうか?

 

普段やっつけている雑菌が風邪に進行してしまうのは、

雑菌にとって、

喉や鼻といった粘膜が居心地がよく、

のびのびと増殖してしまうからです。

 

同様に、属人的な要因を持つ職員が問題児化してしまうのは、

彼らにとって、

居心地が良い環境があり、

のびのびと増長してしまうからです。

 

その、

「居心地の良い環境」

とは多くの場合、

「密室」

だと考えられます。

 

人間にとって、

密室ほど、気楽に過ごせる場所はないでしょう。

 

物的環境という意味での密室なら、

誰にも見られないので、

靴下を脱ぐのも、

おやつを食べながら作業するのも自由にできます。

 

そんな状況にいると

人は誰でも自分勝手なことを始めてしまうものです。

 

職場においては、

そんな空間に収まってしまうことは

あまりできないものでしょう。

 

ということは、

職場でよく見受けられるのは、

「人的環境という意味での密室」

の方なのです。

 

つまり、

  • その人だけで決めてしまう
  • その人しか知らない情報がある
  • その人だけのルールがある
  • その人だけが決裁する

といったように、他の役員や職員が

関与していない、あるいは関与できない状況のことです。

 

そんな状況にいると

人は誰でも自分勝手なことを始めてしまうものです。

 

いじめ

体罰

DV

幼児虐待

セクハラ

パワハラ

……などなど、

密室になると、強者が弱者を追い詰める傾向があるのが

人間の恐ろしいところです。

 

人はそれぞれ

「自分は正しい」

と考えていることもあり、

なおさら歯止めが効かず、

エスカレートしてしまうことがあるのです。

 

そして、ある時、

密室の壁が剥がれて、衆人の眼さらされた時、

世間から、

「非常識だ」

「ひどい」

と非難を浴びるまで、

自分の姿に気づかないということがあります。


そして、その時、世間から

「お山の大将だ」

「裸の王様だ」

と非難されます。


時々

「裸の大将だ」

と間違えがちで、

和んでしまうので気をつけましょう。


密室で暴走した例が、

以前テレビを賑わせた、

日大アメリカンフットボール部の暴行問題や

日本アマチュアレスリング協会の恣意的判定などです。

 

密室ではダメになる性質を持っているのが人間だ

と、自戒しておいた方が良いでしょう。

 

人は密室という居心地の良い所にいることは、

雑菌が粘膜という居心地の良い所にいることだ、と

考えておいた方が良いでしょう。

 

■では、どうすれば良いか?

 

雑菌が風邪に進行しないよう、

粘膜という居心地の良いところに居させないのと

同じように、

職員が問題化しないよう、

密室という居心地の良いところに居させないことです。

 

物的環境という意味での密室というよりも、

重要なのは、

人的環境という意味での密室に居させない、

ということです。

 

シンプルに言えば、

「すべてガラス張りにする」

ということに尽きます。

 

すなわち、原則として、

  • つねに誰もが見にこれる。
  • つねに誰もが関与できる。
  • つねに誰もが情報を得ることができる。
  • つねに誰もが周囲の職員の話を聞くことができる。

……というルールにしてしまうということです。

 

■この公開化を行なうと、

以下のような、

密室化による問題が予防・解消できることでしょう。

 

密室化による問題の典型例は、

主に以下のようなものです。

 

1. 時間や権限の私物化が発生する。

  • 自分の仕事を他人に見せないので周囲が困る。
  • セクハラ・パワハラが起こる。
  • 利権や地位に固執。
  • 仲の良い仲間だけが良い思いをする。
  • などなど……。

2. マイルール、ローカルルールつくりたい放題。

  • その結果、本人たちに都合の良いルールがどんどんつくられる。
  • この業務はこの病棟ではやりません
  • この作業はわたしたちはやりません
  • 有給休暇の希望はわたしたちが先に出す
  • などなど……。

3. 外部と戦わない

最大の問題は、視野が狭くなることです。

  • 本当の敵は、病院の外部環境であるにも関わらず、
  • 内部で派閥争いをする
  • 弱者に矛先が向いた場合にはいじめ
  • 上司に矛先を向けて新しいことを拒む
  • 人事評価に抵抗する
  • などなど……。
■上記のような症状の気配が見受けられたら、
それは、
「密室」
という問題児化の温床を与えてしまっているから
と考えられます。
 
一刻も早く、
公開化することをお勧めします。
 
「あなたの部署を公開化する」
という介入では角が立つことが多いでしょうから、
「組織全体のことを職員全員が自分事としてとらえられるように」
といった大義をもって進めると良いでしょう。
 
また、
「密室になると暴走するのが人間だ。
そんな自分たちを自分たちでうまくコントロールできるように、
公開化を原則としよう」
と、
わたしなら明言して進めます。