■全国規模の団体や、公立病院・公的病院などは、
法人本部、または経営本部といった本部機構なるものがあり、
本部が企画する研修が行なわれていることでしょう。

が、現場で働いているみなさんは、
疑問を感じることもあるのではないでしょうか?

なお、本稿で課題としているのは、
新人研修、管理職研修、主任研修、階層別研修といった組織論(コミュニケーション、モチベーション、リーダーシップ、ホスピタリティ、人事評価など)をテーマとした研修です。

医療技術に関する研修は含まれていません。

■まず、本部は、年間計画を立てて、
それに基づいて実施していますが、
現場に対する遠慮が大きく働いているのが実情です。

相談に伺った際に、
「現場の声を聞いていますか?」
と尋ねると、大雑把な回答しか返って来ないことが多い傾向があります。

組織が大きい場合、
傘下に病院ほか医療機関がいくつもあるためか、
本部研修担当者が、
各現場に足を運んで聞いて回るということはほぼありません。

なので、
どうしても大雑把な要望しか伝えられないということになるのでしょう。

しかし、それでは、
本当に現場の要望に沿った研修は構成できません。

ところが、
そこに問題を感じることなく、
進めてしまう担当が非常に多く見受けられます。

言ってみれば、
「消化試合化している」
ということです。

まして、研修の効果測定をしたり、
実施後のフォローをすることは、ますますできません。

現場に負担をかけることがはばかられるからです。

せいぜい、参加者から後日レポートを出してもらう、という程度でしょうか。

新人研修にいたっては、
本来、
「上席者や先輩職員がどのように指導しているか?」
を確認しなければいけないところですが、
上席者や先輩職員の手を煩わせてはいけないので、
大抵、そんなことはしません。

つまり、研修で教えたことが、
現場で実践されているか?
現場に浸透しているか?
半年後にも、行動が続いているか?
などを検証することなど、ほぼないのです。

ある大都市自治体の病院経営本部から
問い合わせを受けて訪問した際も、同様でした。

わずか擁しているのは4病院でしたが。

■一方、現場である病院から依頼を受けて相談することもあり、
そこで本部主催の研修についての話を聞くことがありますが、
大抵、

「本部からは、希望を聞かれることはあるが、
もっと抜本的に変えて欲しいと言っても、
それは変えてもらうことはできない」


「言ってもムダ」

「役員研修に行ってみたら、
なんでこの内容?ということもあるが、
首脳部の方々が話を決めるので、誰も変えられない」

……ということがしばしばあります。

多くは
「研修内容は悪くはないが、
現場で活かされているかといえば、そうでもない」
という状況のように感じられます。

■その研修に参加している職員は、
「忙しい中、参加させられている」
という不満があることもありますが、
結果的には、息抜きになっているということもあるようです。

教わったことを現場で実践することを強要されず、
実践の様子を報告したり、
成果を上げたりすることを強要されないことを、
最初からわかっているので、

参加者の意識としては、
「参考に聞く」
という程度になっているケースが多々あります。

「学んだつもり」
「刺激を受けたはず」
「何か身についているのではないか」

これでは、現場が変わることがないのは、当然でしょう。

つまり、
「文化講演会化している」
ということです。

■このように、
現場と別に本部がある場合には、
実戦的でない研修が消化試合や文化講演会のように
疑問もなく行なわれる傾向があるのです。

本部は、
「現場から、あの研修はダメだったと言われたくない」
という思いから、
どうしても、
現場の負担にならないように遠慮します。

そのため、
事前の取材や、事後のフォローをしようとしないのも、
無理ありません。

一方、現場は、
「本部に申し入れをすれば、どう思われるか判らない」
という思いから、
抜本的な改善の要望はあげられない傾向があります。

また、
「口を出したためにあれこれやらされてはたまらない」
と思えば、どうしても、
受け身に徹してしまうのも無理ありません。

■こうして、お互いに遠慮し、
お互いに研修が効果につながることの責任を負わず、
年間スケジュールをこなすだけになってしまう構造なのです。

改善するとしても、
「ここ数年、同じ講師に頼んでいたので、
そろそろ目先を変えて、別の講師にしてみようか」
という程度の話をよく聞きます。

「現場で活かされているかどうか?」
を、誰も検証していないのですから、
当然というほかないでしょう。

■そんな構造になっているので、
誰も言い出しませんが、
「そんな研修なら、やらなくても良い」のではないか?」
と感じている方も、実は少なくないのではないでしょうか?

これも、元を辿れば、
「知識や技術をIN-Putすることが成長だ」
と考える、従来型組織論の発想をきりかえられずにいるからこその
産物なのです。

「IN-Putした後に、どれだけ・どのようにOUT-Putするか?」
を設計できなければ、成長することはありません。

そうしたOUT-Putまで設計し、
成長を検証したり、効果測定しなければ、
消化試合や文化講演会でしかなく、
もはや、
セレモニーであり、
研修でもなんでもないのです。

すべてとは言いませんが、
「本部が企画した研修に効果なし」
という前提から考えて、見直すことが必要ではないでしょうか?

■こうした非生産的な構造は、
もちろん、公的機関にも見受けられますが、

残念ながら、
医療業界においても、まだまだ見受けられます。

再編検討すべき424病院のリストが発表されたり、
働き方改革が叫ばれ、
新型コロナの影響を受け、
医療機関は、本当に必要なことだけをしなければならない時代になりました。

みなさんの現場では、いかがでしょうか?

もし、
「本部機構がある」
という方は、
この記事を、ぜひ本部機構の方々と共有されることをお勧めします。

そして、

  • 組織全体の方向性に添いつつも、現場に即した研修を構成する
  • 現場を巻き込んで、研修で学んだことが必ず現場に浸透する方法を設計する
  • 効果測定をする

……といった、意味のある研修を実施されることをお勧めします。

あるいは、そのように提案して、意味のある研修を企画・実施するコンサルタントだけを選ぶことをお勧めします。