■これまで、院長・事務長・看護部長が、
ほとんど組織づくりに着手してこれなかった病院でしたが、
このたび、
「労働組合が、もっと自分たちで意見を出していこう、と話し合ってくれた」
とのこと。

院長・事務長・看護部長は、どうすれば良いでしょうか?

  1. 労働組合のせっかくの活動を後方支援する
  2. 労働組合のせっかくの活動をきちんと評価する
  3. 労働組合がせっかく頑張っているので困ったらサポートする
  4. 労働組合よりも良い施策を打ち出す

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■先日、こんなことがありました。

ある病院の事務長、看護部長と
「なんとか、良い組織にしたい」
という相談をしていました。

というのも、
「現場の職員が、自分の仕事はここまで」
と言って、
新たなことに協力的でない」
というのです。

そこで、わたしが、
「ということは、
上層部が業務改善したいと思っても、
なかなかできないのではありませんか?」
と聞くと、
「そうなんですー」

そして、
「新たに入ってくる職員の離職が多いのではありませんか?」

「そうなんですー」

さらに、
「施設基準の変更に応じて、
組織変更や人事異動をしようとしても、
思うように応じてもらえないのではありませんか?」

さらにさらに、
「ヒヤリハットも、
義務的なものしか上がってこないのではありませんか?」

「そうなんです、そうなんですー」

思い切って、
「離職を減らしたいと思っていても、
現場の職員からの、
もっと良い人材を入れてくれないからだ、という
反発がありませんか?」

「ローカル・ルールがあって、
異動したスタッフから、
病棟によって、安全性に関する意識にも大きな差があって、
働くのが安心して働けない、といった声が
ありませんか?」

「もしかしたら、看護師長などの管理職が、
業務量が多かったり、
部下に気を遣ったりで疲弊して、
実は辞めたいという声がありませんか?」

すると、
「あります、あります、ありますー!!!
なぜわかるのですかー?」

■なぜわかるか?

みなさんも、すでにお察しのことでしょう。

このケースは、
「なるべくしてなっている典型事例」
だからです。

重要なことが欠けていると
このような症状のほぼすべてが現れます。

反対に、
これらの症状のうちの一つが見受けられれば、
他のすべての症状も現れている可能性が高いと言えます。

■例えが好ましくないかもしれませんが、
昔の不良ならば、
バイク、タバコ、襟の高い学ラン、薄いカバン、リーゼント
といった症状のほぼすべてが現れます。

反対に、
襟の高い学ランを着ていれば、
たいていバイク、タバコにも関心があり、
鞄も薄く、リーゼントが好き、と想像がついたものです。

襟の高い学ランを着ているのに、
自転車好き、タバコは吸わず野菜好きの健康志向で
鞄は教科書参考書でまるまると太っていて、
髪型はサスーンクオリティの横分け、
ということは、まずいなかったでしょう。

それと同じです(同じか?)。

上述の病院で、
事務長・看護部長が
このように困っている原因の本質は、実はたった一つ。

その「欠けている重要なこと」とは何か?
明確です。

その点を変えなければ、
組織は変わりません。

また、その点を変えれば、
これらの問題がすべて解消します。

■ところで、
この病院の事務長から、こんな連絡がありました。

「従業員の労働組合が、話し合って、
もっと自分たちの意見を出していこう、
という方針になった。
まさに、自律進化組織ですよ!」
という、喜びの声でした。

こうしたことが起こらないよりは、
起こった方が、
はるかに良いのはいうまでもありません。

しかし、その副作用もあるため、
実に危険な展開になってきたとも言えます。

というのも、
労働組合が自発的に活動したことは、
労働組合の方針によって、
舵が切られるからです。

自主的な取組は、
「有志の運動」の域を出ないので、
活動が下火になることもあります。

しかし、
あくまで労働組合が自主的に始めてくれたことなので、
院長・事務長・看護部長は、
感謝することはできても、
たとえ不足を感じた場合でも、
「なぜ、もっとやらないのだ?」
「なぜ、方向がずれているのだ?」
と管理したり、軌道修正することはできません。

自主的に始めてくれたことである以上、
もし活動が停止したとしても、
「なぜ、やめたのだ?再開しろ」
と指摘する資格もないのです。

■要するに、
病院首脳部が主体となって始めたことではないため、
はじまった後から、
あれこれ口出しできないということです。

コントロールができていない以上、
「自然発生したものは、自然消滅する」
と考えておかなければなりません。

むしろ、主体的に取り組んだ労働組合の方が、
発言権を持つのは当然です。

そして、組合からは
「ここまで進めてきたのだから、
病院としても応えて欲しい」
という要求を掲げてくることにもなる可能性があります。

主体的に行動してもらうということは、
首脳部としては、
「借りを作ること」と考えておかなければなりません。

労働組合のその活動によって成果が上がれば、
さらに大きな借りとなり、
首脳部は肩身が狭くなってしまうのです。

■では、本来はどうすれば良かったか?

本来は、首脳部が、
労働組合よりも大所高所に立って検討し、
労働組合よりも早く施策を提案しなければ
ならなかったのです。

そうすれば、
その施策の主体は首脳部であり、
首脳部の目指す取組を展開することができ、

もし、労働組合と意見が異なっても、
「もともとのコンセプトは首脳部が作ったものだ。
労働組合は後から加わってくれたのだから、
首脳部のコンセプトに添ってほしい」
と主張することができるのです。

また、取組が下火になっても、
「本来のコンセプトの通り、
結果が出るまで続けよう」
と主張することもできます。

■重要なのは、
「ドライブしているのは誰か?」
です。

「ドライブしている」
とは、
その施策の目的地つまりゴール設定者です。

他人のゴールや他人のルールに乗っていては、
自分の目指すゴールに、
自分の意図する期限までに辿り着くことはできません。

「なんとしても、
いつまでに、
どこまで、
辿り着きたい」
・・・首脳部は、誰よりもこのゴール像を明確に描き、
執念を持って実現に向かわなければなりません。

それをせずに、
「現場がやってくれた」
「やってくれる職員がいる」
「そんな傾向が出てきた」
と喜んでいても、
それはすべて、
「たまたまやってくれる人がいたからできた」
だけです。

こうした、誰かの言動によって、
結果的に行なわれている運営を、
「属人経営」
と言います。

そして、それは
やってくれている人への依存でしかありません。

マネジメントでもなんでもないのです。

「労働組合が良い意見を出してくれた」
と喜んでいる場合ではないのです。

労働組合に負けないよう、
イニシアティブを取り返さなければならないのです。

したがって、冒頭のクイズの
自律進化組織研究所の答案は、
「4」の「労働組合よりも良い施策を打ち出す」
となります。