スキルアップから関係性構築へ-大切なものは目に見えない

スキルアップから関係性構築へ-大切なものは目に見えない

■こんな文章を、見たことがあるでしょうか?

It is only with the heart that one can see rightly,
what is essential is invisible to the eye.

サンテグジュペリ作『星の王子様』に登場する言葉です。

その訳は、有名な
『心で見なければ、ものごとはよく見えない。
大切なことは、目に見えないんだ』
です。

■シンプルなことだけに、このことはだれもが判っているようで、
判っていません。

というのも、
組織マネジメントにおいても、
いたるところで、
目に見えることばかりを追いかけている傾向があるからです。

たとえば、
部署間の連携を向上しようとして、
合同の親睦会をしたり、
一緒に研修を受けさせるということがありますが、
それで、大して連携が良くなることはありません。

本当に大切なのは、行事のような目に見えることではないのです。

■さらに判っていないのは、
「組織を柔軟で強い、生産性の高いものにするために何が必要か?」
という点です。

多くの経営者・管理職は、
「スキルアップだ」
と答えている傾向が見受けられます。

しかし、
本当に大切なのは、スキルのような目で見えることではありません。

大切なのは、目に見えない
「関係性」
なのです。

なぜ、そんな履き違えが起き、
その履き違えが世間に浸透しているのか?

そのコントラストを、表にまとめました。

■これまでの歴史を見ると、
我が国における昭和の時代は、
永い間、
高度経済成長に裏づけられた安定の時代でした。

そのため、現場で起きる大抵のことには、
「こうすれば大丈夫」
という正解があるのが当り前でした。

したがって、
現場で考えをまとめたり工夫するよりも、
「この正解に沿って対処するように」
とトップ・ダウンする方が、合理的でした。

同様に、
普段の業務についても、
「どの業務はだれに」
とトップ・ダウンで指示命令が降りてくる縦割組織となり、

おのずと、
「割り当てられた担当業務は責任をもってこなすべき」
という文化となったのです。

トップ・ダウンということは、
「現場では、与えられた業務をこなすのが当り前」
ですので、

より良い手段があれば、
「だれが、何を、どのようにするべき」
といった指示命令が降りてくるということです。

経営者が、組織を強化したいと考えれば、
「社員を教育してスキルアップする」
という発想になります。

テクニックを向上させる教育や
マニュアルの作成によるレベルの向上、
すなわち、
「スキルアップ」
が重要だという思考になるのです。

ただし、
(これはみなさんにも心当たりがあるかも知れませんが)
この組織マネジメントは、
「責任をもって担当業務をこなす職人タイプ」
を育成することとなる傾向があります。

そのように育てられた社員は、
いずれも変化を好まず、
内向性組織になってゆく傾向
つまり、進化を好まない組織になってしまう傾向がある
という副作用があります。

まさに、
安定の時代だから通用した組織マネジメントだと言えるでしょう。

■一方、
これからの未来を見ると、
昭和の時代とは打って変わって、
いつ何が起きるか判らない激変の時代であることは、
改めて言うまでもないでしょう。

正解がないどころか、
いつ、どこに、どんな問題が生じるか、誰にも判りません。

したがって、
誰かが正解を与えてくれるのを待っているような組織では、
たちまち滅んでしまいます。

むしろ、
すべての社員が、
常に問題を察知しようとアンテナを高くして
みずから気づき考え話し合い行動できる
ボトム・アップが最善策を導き出せる唯一の道です。

つまり、
組織の運営には、全員が参加し、
担当かどうかに関わらず、相互重層的に助け合える
全員が横軸となった横軸組織でなければならないでしょう。

おのずと、
「どこに新たな課題が眠っているのか、
全員がつねに課題すなわち行動の目的を発掘するべき」
という文化となります。

ボトム・アップということは、
「現場では、つねにアンテナを高くするよう呼び掛け合い、
理解しあい、応援し合う」
といった、
社員同士が良い意味で干渉し合う水平関係が前提となります。

経営者が、組織を強化したいと考えるならば、
「コミュニケーションを設計して、社員同士の関係性を構築する」
という発想になります。

社員同士が、
課題である確証なければ
適切な対処法である確証もないことについても、

気軽に自由に口にできる
「関係性構築」
がなにより重要だという思考になるのです。

そして、
この組織マネジメントを行なうと、
「確証はないけれど、言ってみる。
考えてみる。
やってみる。
・・・と果敢にトライできる冒険家タイプ」
がおのずと増えます。

冒険家のようになった社員は、
いつも新しいものに触れ、進化しようとするので、
外向性組織になってゆく傾向

つまり、
つねに
「もっと何かできることはないか?」
と進化しようとする組織となるのです。

■さて、
みなさんは、
組織を柔軟で強い、生産性の高いものにするために
どんな施策をイメージしているでしょうか?

目に見える
スキルアップのための「スキルアップ教育」でしょうか?

それとも、
目に見えないコミュニケーションを通じた
「関係性構築」でしょうか?