■もしみなさんの現場の管理職が、
「どんどん変えてゆきましょうよ!」
という人たちばかりになったら、心強いでしょう。
「変えたいことなら山ほどありますよ」
という管理職ばかりになったら本当にすごいことです。
しかし、現実は、そうなる気配はほとんどありません。
それを指してか、
『なぜ、組織は変われないのか?』
という本があったような気もします。
では、なぜ組織は変われないのでしょうか?
■実は、その問い自体が間違いと言えるでしょう。
むしろ、組織を構成する職員の視点は、その逆で、
「なぜ変わるのか?
変わる理由を感じないのに」
なのですから。
このように、
そもそも
人を巻き込み、組織を動かすには
「人間観」
を誤っていては一歩も進みません。
身体を知らずに治療はできないのと同じで、
人間の心理構造を知らなければ、
人を巻き込むことも組織を動かすこともできません。
では、人間の心理構造は?というと、
「なぜ変わるのか?
変わる理由を感じないのに」
と思っているのです。
だから、
「組織は変わらない」
のは当然なのです。
■では、
なぜ、変わる理由を感じないのでしょうか?
そこには、こんな声があることでしょう。
「生き残れなくても良い」
「この病院が潰れても転職先がある」
「先のことは先送りしたいからいま考えたくない」
「昨日までこれでやってきたのだから」
「少しくらい環境が変化していても気にならない」
「そんなことより早く帰りたい」
「帰ってビールが飲みたい」
「というより、もう眠い」
実は、わたしたちの心の中も、およそ
こうではないしょうか?
■たしかにそうだけれど、
「ポジティブな職員もいるじゃないか」
と思うでしょうか?
たしかに、時には、
「より良くしよう」
というポジティブな職員もいます。
それは、
わたしたちの心にも、
時にはそんな想いが生まれることもあるのと同じです。
しかし、
そうしたポジティブな想いほど、続かないものです。
というのも、
家族のこと、
お金のこと、
恋愛問題、
新しい資格をとりたい……など、
別の用事が登場すると、いとも簡単に、
「今それどころじゃない」
というモードに陥ってしまうからです。
そもそも、ポジティブな方向で変わることは、
ほぼすべて、
負荷がかかることです。
というのも、
生産性を上げるには、
これまでやっていなかったことをすることが必要なのですから。
みずからポジティブな気持ちを持つことは、
かなり奇特なことと考えて良いのではないでしょうか。
こんな風に、
わたしたち一人ひとりは、おおむね、
「ネガティブな気持ち90、ポジティブな気持ち10」
を抱いている、
というくらいに考えてよいのではないでしょうか?
■これが、わたしたちの心理構造だとすれば、
一人ひとりが、胸の内に、
ネガティブな気持ち90、ポジティブな気持ち10を抱いている
人たちが集まればどうなるか
想像に易いでしょう。
負荷を負いたくないという人が9人いるところに、
「いや、あなたがたも負荷を負ってでも、絶対やるべきだ」
と1人で貫ける人は少ないでしょう。
■では、一体どうすれば、
負荷を負ってでも、
生産性を上げる方向へと人を巻き込み、、
組織をポジティブに変えるにはどうすればよいでしょうか?
実は、
みなさんが
「どうしても変えなければならない」
と感じているということは、
「変わろうよ」
「いや、今のままでいこうよ」
と、変わる・変わらないを議論している段階に
いてはいけないということです。
選択できると思って、
牧歌的に話し合っていられるような、
そんな悠長な場合じゃない、
という認識を持つことが重要です。
■つまり、
「組織を変えようとする」
のではありません。
「変わらなきゃ、と感じさせる」
ことに力を尽くすのです。
「ポジティブな気持ち90、ネガティブな気持ち10」
というように、
職員みんなが
「変化することが当り前」
の組織にすることを目指されることをお勧めします。
■「変わらないのが当り前」
の組織を、どんなに変えようとしても、
永遠に、変わりません。
一時的に変わることがあっても、
その変化が続くことはなく、すぐに元に戻ります。
また何かをする場合にも、
内容はお粗末なものになっているものです。
そもそも、
新しいことをするつもりがないのですから。
この手の組織を牽引してゆくことは、
導く方にも、
牽引される方にも、膨大なストレスがかかり、
お互いの関係性が悪くなるばかりか、
パフォーマンスも上がりません。
そこで、重要なのは、まず、
「変わることが当り前」
の組織にすることです。
そうなれば、
もはや、みなさんが、
個別具体的にあれこれ指示をしてやらせたり、
その進捗や成果を報告させたり、
それに応じてさらに指導するなどといったことが
必要なくなります。
■いまの職員が、
「変わることが当り前」
になることなどあるのか?と思うでしょうか?
いまの業界に、
「今のままで良い」
という情報など、あるでしょうか?
業界を取り巻く全ての環境が、
「今のままでは生き残れない」
ということを示しているのではないでしょうか。
これまでは、
周囲の競合相手を見ながら、
「困った、困った」
と言っていてもお互いに、どうにかなってきた
でしょう。
これからは、
周囲の競合相手を出し抜いて、
生き残らなければ、
こっちが競合相手に出し抜かれてしまう時代です。
再編検討を求められているのは、
昨年に公表された424の自治体病院・公的病院だけでは
ありません。
民間病院にも、形は異なるものの、
その波はすでに音もなく襲いかかってきています。
■みなさんが、
全職員へ訴えることは、困難でしょう。
では、どう進めるか?
まずは管理職から
目を覚ましてもらいます。
そして、
「変えたいことなら山ほどありますよ!」
となってもらうことです。
もし、みなさんの現場の管理職が、
「どんどん変えてゆきましょうよ!」
という人たちばかりになったら、心強いでしょう。
……と、冒頭で申し上げたのは、
「それが組織を変える第一歩」
だからです。
■具体的には、
いくつかの手順が必要となります。
と言っても、基本構造は、
「目的の明示と結果の検証」
に尽きます。
まず、
▶︎管理職のミッションの明確化
これができていない組織が非常に多いのが実情です。
さらに、
▶︎管理職のミッションが実現しているか?定量評価
および
▶︎管理職のミッションに即した評価報酬
これができているところはさらに稀です。
こう伝えると、
「そこまでしなければいけないのですか?」
と質問されることがあります。
「ここまでやってほしい」
と目的を明示することもせず、
「やってくれてありがとう」
「もう少し足りなかったね」
と結果を検証することすらせずに、
人を巻き込み組織を動かすことなどできようはずがありません。
なお、上記のほか、
▶︎「いまのままでは生き残れない」
と感じさせるためには、
ポイントがあります。
・いつ、
・どこで、
・誰が、
・どのように
伝えるか、を設計しなければ、
「いまのままでは生き残れない」
と痛感させることはできません。
そのポイントについては、
またいずれここでお伝えします。