■たとえば、
マンションやアパートの部屋を借りたくて不動産屋さんに行くと、
テレビ・コマーシャルでは感じが良いイメージだったのに、
実際の店員さんは、
「じゃ、これで探してみてください」
物件ファイルの束を数冊デスクに積んで行ってしまう。
自分で探して、
「こことここが気にかかる」
と言うと、
「じゃ、見に行きますか」
内見して気が済むと契約、と相成ります。
コマーシャルでうたっていたような
「お客さんのために!」
じゃないじゃないかと不満に感じさせられます。
しかし、これがマッチングに徹したマッチング・ブローカーです。
もし、
物件情報と探している人の要望を付き合わせて
0.1%の確率で成約するとすれば、
毎日10件成約するためには、
何千という物件データと
何十人というお客さんの要望を
毎日ひたすら照合して、
付き合わせ1万回照合すれば良い、ということになります。
なので、
店員がお客さんの要望をじっくり聴き、
似て非なる物件も含めて一緒に探してくれたり、
大家さんに交渉してみてくれるということは
できるだけしません。
そんなことに時間を割くくらいなら、
ただただ、
ひたすら多くのお客さんに
ひたすら多くの物件を見せるということを
機械のように続ける方が合理的で、
利益生産性が高い。
住んでみて、
お客さんが幸せに暮らせるか、
大家さんが喜ぶか、
などは考えない、
というのが、マッチングに徹したマッチング・ブローカーなのです。
「それじゃ、不動産屋は額に汗して働かないのか?」
と思うかもしれませんが、
その分、
膨大な物件データや
毎日の来店客を集めるために、
莫大な広告費を投下しているのです。
だからこそ、
「質の向上」
などは、できるだけしない、ということになるのです。
プロフェッショナルらしいこだわりはなく、
商品を右・左するのですから、ブローカーと言えるでしょう。
そういうビジネス・モデルなんですね。
■なぜ、こんな話を掲載するかというと、
医療機関にとっても身近なことが、
少なくとも、2つほどあるからです。
タイトルの「60%が無駄」とは
何のコストの話なのか、についても、後半でお伝えしています。
■その1つが、人材紹介会社で、
まったく同じ構造が存在しています。
もし、求人情報と求職者の要望を付き合わせて
0.1%の確率で成約するとすれば、
毎日10件成約するためには、
何千という求人データと
何十人という求職者の要望を
毎日ひたすら照合して、
付き合わせ1万回照合すれば良い、ということになります。
なので、
人材会社社員が求人元病院や求職者の要望をじっくり聴き、
似て非なる条件の病院や求職者も視野に入れて一緒に探してくれたり、
双方に交渉してみてくれるということは
できるだけしません。
そんなことに時間を割くくらいなら、
ただただ、
ひたすら多くの求職者に
ひたすら多くの求人情報を見せるということを
機械のように続ける方が合理的で、
利益生産性が高い、というわけです。
求職者が入職してみて、幸せに、長く働き続けることができるか、
病院が喜ぶか、
などは考えない、
というのが、マッチングに徹したマッチング・ブローカーなのです。
ただし、人材紹介の場合には、
入職者が、就業後、半年以内に退職してしまうと、
紹介会社は、
「ミス・マッチだった」
という理由で、
紹介料金の全部または一部を病院に返却しなければならない、という取決めに大抵なっているので、
半年間は、
紹介会社は、入職者が辞めないように必死でフォローしますが……。
(期間や金額などは会社・案件によって異なります。上記は2020年時点で一般的な例です)
「それじゃ、人材紹介会社は額に汗して働かないのか?」
と思うかもしれませんが、
その分、
膨大な求人案件や
毎日の求職者を集めるために、
莫大な広告費を投下しているのです。
だからこそ、
「質の向上」
などは、できるだけしない、ということになるのです。
人や組織に携わるプロフェッショナルとしてのこだわりなどはなく、
ヒトを右・左するのですから、ブローカーと言えるでしょう。
これも、そういうビジネス・モデルなんですね。
なお、求人ポータルサイトも同じですね。
ただただ、ページ・トップの目立つスペースを
高く売る。
「そのスペースに載せる情報をどんな内容にすると、応募が増えるか?」
「病院が求める良い人が来てくれるか?」
などについては、
サイト業者は、関心がありません。
その代わり、
そのページを多くの人が見てくれるように
SEO対策を一生懸命やるという広告にコストをかけている、というわけです。
■さらに、まったく同じ構造が存在しているもう1つが、研修会社です。
もし、
数多く取り揃えた研修プログラムと病院の研修担当者の要望を付き合わせて
5%の確率で成約するとすれば、
毎日5件成約するためには、
毎日ひたすらプレゼンテーションして、
たとえば、
病院を訪ねている営業マンが、それぞれの訪問先で、
10コースの研修プログラムを、
10人の研修担当者を訪ねて、
計100回の照合をすれば良い、ということになります。
なので、
研修会社が病院の要望をじっくり聴き、
病院向けに抜本的なカスタマイズすることはしません。
人数、時間、講義形式、テキストなど、
できるだけ、要望を聞きたがらず、
「カスタマイズはできませんねー」
とにべもなく拒まれた経験がある方も多いのではないでしょうか。
まして、講師を伴ってまた訪ねてきたり、
講師が現場を見学して当日に備えようとする、などといったことは
ほぼありません。
それどころか、相談の席で、説明に来た営業マンが、
その場で電話をして
担当講師に相談するということさえ、ほぼないでしょう。
(もしわたしなら、自分が営業に行って相談したいところですが)
そんなことに時間を割くくらいなら、
ただただ、
ひたすら多くの病院に
ひたすら出来合いの研修プログラムを見せて回るということを
機械のように続ける方が合理的で、
利益生産性が高い、というわけです。
研修を実施してみて、
「病院や職員の方々がより良く変化したかどうか?」
「どれだけ学んだことが活かされているか?」
などは考えない、
というのが、マッチングに徹したマッチング・ブローカーなのです。
「それじゃ、研修会社は額に汗して働かないのか?」
と思うかもしれませんが、
その分、
ホームページや営業マンの営業活動に
莫大な広告費を投下しているのです。
人材育成のプロフェッショナルだ、といったこだわりはなく、
研修という商材を
大して中身をより良くしようともせず、
単に買ってくれるところに売り歩くのですから、ブローカーと言えるでしょう。
こうした研修会社は、できるだけ、進化しません。
なぜなら、
コンテンツを新しくすることは、
立案構成する講師の人件費や
テキスト作成のためのコストがかかるだけだからです。
さまざまな要望を聞いても、
できるだけ自社のいずれかの研修プログラムに
当てはめようとする、という営業マンにあったことがある方も少なくないのではないでしょうか?
なお、
「アフターコロナ」とか
「感染対策助成金に関する~~」
などといった、旬なテーマについては、
こうした研修会社でも、貪欲にラインナップを増やします。
というのも、
世間の関心が高いテーマは、
内容のクオリティがどうであれ、
旬なうちは、宣伝コストをかけなくてもどんどん売れるからです。
なお、
一説には、
こうしたマッチング・ブローカー型の研修会社においては、
研修費用のうち、
実に60%を、研修会社の取り分(つまり営業広告費および販売利益)とするそうです。
つまり、
「研修講師本人にわたるのは多くて40%」
とも言われているということです。
ということは、
その場合、
研修費用のうちの60%は、
人材育成・組織開発にまったくつながっていない費用だということなのです。
医療現場の皆さんには、くれぐれも
「高かろう悪かろう」
の研修を選ばないよう、見極められることをお勧めします。
本当に意味のある研修を行なうコンサルタントを見抜く方法については、
このブログにおいて、これまでもお伝えして来ましたが、
また別の機会にお伝えすることとしましょう。
■なお、患者サービス研究所が、
不必要に研修をお勧めせず、組織開発プログラムを提唱しているのは、
「病院が求めているのは、研修というセレモニーではなく、現場がより良くなる事実だ」
という結論に至ったからに他なりません。