■ひところビジョン経営という言葉が流行り、
「理念を明確にして、職員に浸透させることが大事」
と言われるようになりました。
そこで、登場したのが、
「クレド作成」
のコンサルティングです。
■クレドとは、
リッツ・カールトンが作っている、いわば理念カードです。
リッツ・カールトンの場合は、
20条の信条からなり、
帯状のカードにしたものを折りたためば
名刺大になり、
従業員は肌身離さず携行することになっています。
「あのドラマチックな場面を生み出せるホスピタリティが
組織に浸透するには、
その信条を明確にすることが大事だ」
と、多くの組織が考えたのも不思議ではありません。
■そこで登場したのが
「クレドづくり」
をコンサルティングする研修会社です。
クレドづくりのプロセスはこうです。
各部署から選抜された職員でプロジェクトチームを作り、
毎月のミーティングを重ねます。
各部署で話し合い、
「どんな職場にしたい」
「どんな部署にしたい」
といった現場職員の言葉を持ち寄ります。
そこに挙がった言葉を組み合わせて、
現場職員の想いを汲んで、
クレドをつくります。
丁寧なプログラムの場合には、
クレド案を現場に持ち帰り、
また現場職員で話し合っては、
さらにプロジェクトチームのミーティングで
検討する
・・・ということを繰り返します。
半年なり一年なりをかけて
新しいクレドが出来上がったら、
組織内で、お披露目会を大々的に行います。
お披露目会が、
「このクレドはわたしたちが望むことを
明文化したものなので、喜んで実践します」
と職員全員が宣言する場でもあるという意味を持ち、
そのまま、
職員全員への意識づけともなります。
■しかし、
あるクレドづくりコンサルタントが言いました。
「実は、クレドを作った後が問題なんですよ」
と。
たしかに、
クレドづくりに関与したプロジェクトチームの職員は、
理念や信条について話し合うプロセスを体験するので
意識が高くなるでしょう。
しかし、それ以外の職員が
同じ当事者意識を持つことは困難です。
また、職員の年月とともに入れ替わってしまいます。
そのクレドが、
「いかに現場に浸透しているか」
を検証したり、
「もっと浸透させる」
ための方法が講じられていなければ、
どんどん風化してゆくことは目に見えているでしょう。
■お察しの通り、
大抵の病院には、すでに理念があります。
過不足なく信条がうたわれていることでしょう。
それが充分に現場に浸透して、
理想が実現できる職場になり、
職員がモチベーションがを高くしている
・・・という状況にないのに、
いくつ新しいクレドをつくっても、
それが現場に浸透し、
職員のモチベーションが高くなることはありません。
ある病院では、理念をカードに印刷したものを、
職員のネームカード入れに入れさせて、
携帯することを義務づけていましたが、
その病院の職員の一人は、
「ネームカード入れの中なんて、一番見ないところだよね」
と話していました。
■本当に重要なのは、
新しいクレドをつくることでもなく、
ましてカードにして携帯させることでもありません。
「理念や信条を浸透する方法」
を知ることです。
理念や信条を浸透させる方法を知らずに、
いくら立派なクレドを作っても、
理念もどきが増える馬嵬で、
一向に根本的には変わらないのです。
このようなクレドづくりに
多額の費用や労力や時間を割くよりも、
大切なのは、
理念を日々の、職員の発言や行動に浸透させることです。
そのためには、
浸透させる方法と、
浸透度を検証してさらに維持向上する方法が必要です。