判らせるためには、いかに教えないか

判らせるためには、いかに教えないか

 昨今、教育業界では、

「アクティブ・ラーニング」

という言葉が聞かれるようになっています。

 

座学で情報を詰め込むのではなく、

自分たちで考え取り組み学ばせる手法です。

 

たしかに、この方が、はるかに身につきます。

 

しかしながら、社員教育の世界では、

まだまだ座学が幅を利かせているのが現状です。

 

やはり、研修会社やコンサルタントは、

より身につく研修を実現することよりも、

お金と手間がかからないコンテンツの方が、

儲けになるからです。

 

また、治らない薬の方が、

ずっと買い続けてもらえるから治さない方が良い、と考えているコンサルタントも

少なくありません。

 

しかし、

研修会社がどうあれ、現場としては、

やはり職員を啓発するには、

「教える」よりも、

「体験させる」方が良い、ということについては、

みなさんも心当たりがあるでしょう。

 

■数年前、ある健診センターから

「職員の接遇を強化したい」

とのご相談を受けました。

 

ついては、

「全員参加の研修をしたい」

とのこと。

 

しかし、よく聞くと、

それ以外にも、職員をそれぞれ様々な外部研修に

行かせようと考えているとのことでした。

 

「なぜ、現場から離れて学ぼうとするのか?」

「なぜ、クライアントから離れて学ぼうとするのか?」

みなさんも、不思議に感じたことでしょう。

 

みなさんが、

そうした違和感を抱かれたなら、

そのセンスが素晴らしい正解です。

 

■どんなに研修会社で学んでも、

「それを現場でぜひ活かしたい」

という意識がなければ、

学んだ知識は無用の長物でしかありません。

 

逆に、

「ぜひクライアントの役に立ちたい」

という意識さえあれば、

本や講演、知人、前職場などへ、

有益な情報を求めて、みずから学びにゆくでしょう。

 

したがって、最も重要で、かつ唯一必要なのは、

「本人たちが希望してもいない研修に行かせること」

ではなく、

「本人たちが希望するようにさせること」

なのです。

 

したがって、

もし職員をそれぞれ研修に行かせるだけの

予算や時間を取れるのであれば、

その代わりに、するべきことがあるはずです。

 

■それは、今回の健診センターの場合ならば、

「営業に同行してもらうこと」

です。

 

営業担当者がどんなに苦労をして

契約をとってきているのかを目の当たりにすれば、

「受診者一人ひとりを心から大事にしたい」

と思わない人はいないでしょう。

 

まずは、師長、技師長、事務課長、

次に主任クラスだけ

からでもよいでしょう。

 

それ以降、スタッフが入れ替わり立ち替わり、

月に4〜5人ずつでも、

それぞれが半日だけでも。

営業に同行したスタッフは

確実に姿勢が変わり、

現場の空気が確実に変わります。

 

酷暑の日や雪の日に同行してみることも効果的です。

 

また、クライアント先で、

「今日は医療職も一緒に伺っておりますので、

何か、ご要望やご質問などがあれば、

おっしゃってください」

とすれば、

クライアントからの信頼を厚くすることにもつながります。

 

さらには、

クライアントから直接頼りにされることで、

医療職が

「これまでにないやりがいと誇りを感じた」

ということもあります。

 

その日以降、

医療職までが

「このクライアントはわたしのお客さんでもある」

と自覚することが、

いかにクライアント対応と現場での接遇応対を良いものにしてくれるか、

明らかでしょう。

 

■実効性のあやしい研修会社の研修にお金をかける位なら

このように現場のみなさん同士の協力で

できることがあり、

こうした方法のほうが、

断然、有意義な学びにすることができるはずです。

 

クライアントや受診者にふだん会ってもいない

研修コンサルタントから学ぶことなど、

大してないでしょう。

 

ゲーム・ワークであれ、

グループ・ディスカッションであれ、

その多くは研修会社が商品として開発したものであり、

「お勉強ごっこ」

の域を出ません。

 

どんな理論やテクニックの裏付けがある研修であろうと、

職員の魂が目を覚まさなければ、

その時間は、

明日からの現場を変えることにはつながらず、

その時間は著名人の文化講演会と大して変わるところがありません。

 

では、どうすれば、職員の方々の意識を

覚醒することができるのか?

 

それは、実にシンプルな公式です。

 

その公式に当てはめて考えれば、

様々な方法が出て来ます。

 

■ともあれ、

みなさんのような経営者・上層部・管理職の方々は、

部下職員に何かを学ばせたい時には、

 

「まず研修会社の研修を考える」

のではなく、

 

何よりも、

部下職員が心から

「ぜひ役に立ちたい」

「もっと出来ることがないか探したい」

と思えるようにするには、

「どんな体験をさせたら良いか?」

を探されることをお勧めします。

 

あるいは、

「どんな体験をさせたら良いか?」

を一緒に考えてくれるコンサルタントを

選ばれることをお勧めします。