■職員の離職は
どんな組織においても問題です。
そこで、
どうすれば、離職を防止できるか?
多くの組織がさまざまな施策を講じています。
中には、
「負担を軽くすることが離職を防止する」
と考えているところもあります。
しかし、考えてみれば、
医療機関であれ福祉施設であれ、
日々行なっている業務に大きな差異はないはずです。
にも関わらず、
離職が減らない職場と、そうでない職場があるということは、
ほかに原因があることの現れだと考えられるでしょう。
■わたしたちも、
自分自身を振り返れば見えてくることでしょう。
たいへんな仕事でも、頑張れる職場と、
仕事は楽でも、まったく力を発揮できない職場がある、ということを。
では、それを分けるのは何か?
それは、
「仕事に対する『意味づけ』があるかどうか?」
だと言えるのではないでしょうか?
■意味づけとは言っても、
我が国の従来の社会風土においては、
「働く意味は、給料に現れている」
と考えられてきた節があります。
しかし、これは
仕事そのものの意味づけではありません。
仕事は大変でも、
「仕事なんだから、やって当り前」
と言われており、
報われたと感じることができるかどうかは、
個々の職員がみずから探すもの、という価値観です。
なので、職員も
「働いていて、一番嬉しいのは?」
と聞かれて、
「給料が嬉しい」
「ボーナスが嬉しい」
と答える、ということがありました。
しかし、この価値観に応じようとすれば、
給与・賞与を上げ続けなければなりません。
これでは、
人材の取り合いになっている現状では、
つなぎとめられるかどうかは、
どこまでお金を出せるか?の資力次第、ということになってしまいます。
■しかし、今の時代、
お金がやりがいだという人は少ないでしょう。
では、どんなことが、
「ここで働き続けよう」
と思える「意味づけ」となるのでしょうか?
それは、
「あなたで良かった」
と周囲から認められる「意味づけ」ではないでしょうか。
「承認」
と言っても良いでしょう。
■そして、最も大きな意味づけは
患者さんからの
「あなたで良かった」
ではないでしょうか?
実際、わたしが
「この仕事をしていて良かった!と思ったのはいつですか?」
と、何百人もの医療従事者の方々にお尋ねしたところ、
ほぼすべての方が、
「患者さんから感謝された時」
「患者さんんに喜ばれた時」
と答えました。
二人だけ、
「お金だ」
と答えた人がいましたが(涙)
「患者さんの笑顔で、すべての苦労が吹き飛びます」
という言葉も、しばしばお聞きします。
■次に大きいのは、
職員同士の意味づけでしょう。
「あなたのやったことを誇りに思う」
「あなただから、そこまでやれたのだ」
「あなたがいてくれたから、私も頑張れた」
「きっと患者さんもご家族も、あなたに感謝しているに違いない」
といった、上司や同僚からの意味づけです。
どんなに自分の信じる通りに行動できる人でも、
周囲からのこのような意味づけが全くなければ、
その信念が揺るがない人はいません。
逆に、自分の信念に自信がなくても、
周囲が、日々、このように意味づけしてくれることで、
大きな勇気や元気を与えられ、
とてつもないことを成し遂げることができる、ということもあります。
■したがって、
医療・介護の現場では、こうした
「意味づけ」
の仕組みをどう設計することができるか?
がカギとなってくるということです。
医療介護の現場では、とかく
「業務はきちんとやって当り前」
という風土になっていて、
それをわざわざ承認する、ということに慣れていません。
また、きちんとやってくれている、という情報が
上層部や上司へ上がってくる仕組みもなかなかありません。
管理職が、部下の様子を見にゆき、
意識的に良いところを探し、
承認して見せなければならない、という構造では限界があるでしょう。
■そこで、患者サービス研究所では、
現場の些細なことが、現場職員から日々、どんどん上がってくる仕組みを提唱しています。
1日5分で、職員がお互いの情報を共有する
コミュニケーション・モデルです。
このようにすると、
経営者や管理職が情報を探し続けなければならないという構造から解放され、
日常のなにげない言動について、
職員同士が、お互いに意味づけすることが可能となるのです。
なお、
こうした情報共有や意味づけは、
「業務を完遂することが仕事だ」
と宣言している職場では、決して生まれません。
定時に来て、業務時間中は業務に専念し、定時に帰ることが美徳となるので、
意味づけというコミュニケーションのために
時間を割くことに、価値を認められないからです。
みなさんの現場では、
「仕事に対する意味づけ」
が、業務と同じくらい重要なものであり、
業務の時間を一部割いてでも、コミュニケーションをするべきだ、と
上層部から発信されているでしょうか?
それこそが、
最も効果的な(しかもお金のかからない)
「離職防止策」です。