■先日、ある自治体病院にお伺いしました。
打ち合わせには、
教育研修センターの責任者という方も同席されました。
自律進化組織づくりについて関心があるというので、
「HIT-Bitプログラム」
について説明したのですが、
その教育研修センターの責任者は、
「で、どんな風に変わるのですか?」
「上司が、指示・命令をしなくても、
現場職員がみずから気づき、考え、行動するようになります」
「それは、何がどうなるのですか?
結果が知りたいんです」
「自律進化の組織体質になるということです。
それによって、
現場に様々な新しいチャレンジや
これまでにない連携、
思いがけない取組が生まれるようになります」
「それで、どうなるのですか?」
そこで、わたしは
「そもそも、どんな組織をつくりたいのですか?」
と訊きました。
すると、
「それは、まだ決まっていません。
それよりも効果的な研修をしたいのです」
ここまでで、みなさんにはすでにお分かりのことと思いますが、
この教育研修センターの責任者は、
目的が定まっていないため、
「何がどうなると良い」
ということがわかっていない、ということです。
■以前にも同じようなことがありました。
北陸の自治体病院で、
接遇委員長となった副院長が
「効果測定できる方法があるなら知りたい」
とのことでしたので、
「HIT-Bitを行うことによって、
現場の接遇への関心がどれだけ向上しているかが、
客観的な数値で定量評価することができます」
と説明しました。
すると、
「どうも、わたしには刺さらないなぁ」
とのこと。
そこで、わたしは、
「ところで、どんな接遇をしてゆきたいのですか?」
と訊くと、その副院長は、
おもむろに腕を組みながら、
「それを、これから考えてゆくところなのだ」
と答えたのです。
このケースも、
目的が定まっていないため、
「何がどうなると良い」
ということがわかっていないので、
「刺さらない」
のです。
■先日、ある健診センターでも、こんなことがありました。
接遇委員会の責任者の方から、
「接遇を向上したい」
との要望があり、訪ねて、
研修や、研修以外のさまざまな施策を紹介しました。
しかし、なかなか
「これを進めよう」
という返事がありませんでしたので、数日後に
「もし、接遇を向上したいのであれば、
職員の接遇に対する意識が確実に向上する施策を
講じた方が良いでしょう。
本気で取り組むならば、ご紹介しましょう」
とお伝えすると、
「役員も呼ぶので、その方法だけ、参考に教えてほしい」
とのこと。
そこで、わたしは、
「その前に、どんな組織にしたいのか、
役員の方々と相談して、明確になっていますか?
それがなければ、
意識を向上する話をしても、参考に聞いただけで、
何も始まらない、ということになり、
お互いに時間の無駄になりませんか?」
と訊きました。
すると、その担当者からは、
「役員と、そのような話をしてこなかった。
だから、どんなことをするかどうかも
どう決めたら良いかわからない」
という返答が返ってきました。
これも、
目的が定まっていないため、
「何がどうなると良い」
ということがわかっていないので、どんな施策を聞いても始められないケースです。
■ここまでで、お分かりのことと思いますが、
「何としても変えたい」
という課題が明確になっていなければ、
どん
なに良い施策の話を聞いても、
心に刺さらず、
行動にも繋がらないので、
当然、良い結果に至ることもない、ということです。
これは、
自覚症状のない患者さんと同じだということにお気づきでしょう。
本人が痛みを感じていなければ、
「この薬は、副作用が一切ありません」
「この手術は、まったく痛みがありません」
というような、どんなに素晴らしい治療方法の話を聞いても、
それは
「面白い話」
「参考に」
と、まるで外国のニュースをただ聞くだけのようなものとなり、
「それをいつ実践するのか」
という行動にはつながらないのです。
なにしろ、
痛みを感じていない人は、
わざわざ時間や労力を割いてまで、
行動する気にならない、
というのは、当然のことでしょう。
組織においても同じで、
課題を明確にできていない人は、
わざわざ組織を巻き込んでまで、
施策を実施するほどの決意を持つことはできない、
というのは、明らかでしょう。
■なので、
組織においては、
トップは課題を明示しなければなりません。
また、プロジェクトを推進する担当者は、
自分のミッションを明確にして、
指標を明示しなければなりません。
目的を明確にせず、施策を講じれば、
現場は混乱してモチベーション下がるだけとなります。
そして、多忙な現場からは、
「これ、何の意味があるんですか?」
「本当に必要なんですか?」
「そこまで無理してでもやらなければいけないんですか?」
といった声が上がった時に、
目的が明確でないトップや担当者は、
「それでも進めるのだ」
と説明することもできないのです。
■「目的が明確でなければ、どんな施策の話も意味がない」
ということは、
医療現場の方々であれば。
「明確な痛みがなければ、どんな治療の話も意味がない」
のと同じだということにお気づきでしょう。