■医療現場では、
「できる限り、患者さんの声に耳を傾けよう」
という意識が大事だとされていることでしょう。
患者対応の教科書にも
「傾聴」
が必ず挙げられていると思います。
それは、
「患者さんにきちんと向き合わなければいけない」
という意識があるからでしょう。
そもそも、
「人を理解する」
ということは、
「その人の、価値観を理解すること」
です。
その人の経歴や住所や家族構成、趣味特技を理解しても、
大して意味がありません。
というのも、わたしたち自身も、
経歴や住所や家族構成、趣味特技を理解してもらえたからといって、
「自分をわかってもらえて良かった」
と感じることはないからです。
そして、わたしたちも、
自分自身が、とても大切にしていることを理解してもらえた時、
「この人に話して良かった」
と安心し、信頼できそうだと感じるのではないでしょうか。
なので、
履歴書などの書類を見ればわかるようなことを理解しても
その人を理解したとは言えません。
その人の価値観を理解することが必要なのです。
そのためには、
その人の言葉を聴くことに尽きる。
だから、傾聴が何よりも大事、ということになりますす。
■ところで、
職員もまた大切な存在です。
人は、自分の言葉に耳を傾けてもらえなければ、
閉塞していってしまいます。
聞いてもらえなければ、
聞いてもらうことを諦めてしまい、
話をすることへの関心がなくなってしまい、
すると、
みずから考えたり行動したりすることへの関心までもが
なくなってしまい、
閉鎖的になり、
ついには、
活き活きとした人間ではなくなってゆくものです。
■このように、
判ってもらえれば活き活きとし、
判ってもらえなければ死んだようになってしまうのは、
どんな人間にも当てはまることで、
実は、
患者さんも職員も、変わりません。
それなのに、多くの職場で、
職員一人ひとりから
わざわざ言葉を聴く、ということは行なわれていません。
半期に一回、
とってつけたように面談を行うことはありますが…、
そんな場で、部下が自分の大事な大事な本心を打ち明けることはない、
ということは、
自分が上司から面談に呼ばれた場面を思い浮かべれば
わかるでしょう。
また、面談をしたとしても、
たとえば、上司と部下の会話で、
主に話しているのはどちらでしょうか?
思いの丈を吐き出し、
スッキリしているのは上司の方だけ、
ということが珍しくないでしょう。
これでは、職員が活き活きとしないのは当り前です。
このような職場環境では、
職員がモチベーションが低く、
「言われたことしかしない」
のも、
「やりがいを感じられず辞めてしまう」
のも、必然です。
部下職員が、自分の価値観を話し、
活き活きとできるかどうかは、
そんな環境を創ることができているかどうか?に尽きます。
すなわち、
組織や上司のせいであることはあきらかでしょう。
■では、どうすれば良いのでしょうか?
もちろん、にわかに
「話せ」
と言ったところで、
すでに閉鎖的で、視野も発想も狭くなっている職員は、
自分を表現することに慣れていないので、
ストレスを覚えてしまい、
すぐには話せません。
また、上司との間に、
なんでも打ち明けたくなる関係性が築かれていないので、
本心を話すこともありません。
そんな反応を見て、上司が
「部下を尊重した方がよい」
とか
「部下から嫌われたくない」
などと言って、遠慮してしまうと、
結局、
部下職員から本心を話してもらうことは永遠にできません。
どんなに部下職員を尊重するとしても、
上司という立場であれば、
関係性づくりだけはしなければならず、
そのためには、コミュニケーションだけは遠慮してはいけません。
上司が部下に遠慮して
コミュニケーションをとることをやめてしまえば、
まして組織が変わることもないからです。
■では、どうやって徐々に話せる関係を築くことができるか?
どんなことでも良いので、
毎日一言発言してもらう場を設ける、ということです。
定常的にすることで、
聴くことも聞かれて話すことも、習慣にすることができるからです。
習慣になれば、
最初はぎこちなくても、
徐々に馴れ、
話しても大丈夫なのだということが判り、
だんだんと本心を打ち明けることもできるようになるからです。
この「毎日一言ずつ発言する」
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