仕事ありきの「旧・組織論」では、もう通用しない時代

仕事ありきの「旧・組織論」では、もう通用しない時代

■こんにちの組織論の多くは、

古典組織論から生まれているので、

現在の組織を変えることができずにいます。

 

たとえば、「ハーズバーグの2要因理論」を

お聞きになったことがあるでしょうか?

 

職場環境や福利厚生などは衛生要因といって、

改善しても、

職員の不満を解消することはあっても、

モチベーションを上げることにはつながらない。

 

一方、仕事の達成感や、仕事の技能を習得することは、

動機付け要因といって、

職員のモチベーションをあげることにつながる。

 

……という理論です。

 

みなさんも、それらしい話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

しかし、人によっては、

仕事の達成感を得ても、

「では、これを区切りにに卒業したい」

という心理もあります。

 

また技能を習得しなさいと、研修の受講を義務付けられると、

「それが鬱陶しいです」

と辞めることにつながるというケースもあります。

 

つまり、

「仕事の達成感や技能の習得が、仕事に臨む動機になる」

というのは、もはや現代では通用しない理論なのです。

 

正確に言えば、

「仕事の内容によります」

というのが社員の本音ではないでしょうか。

 

■また、「マクレガーのX理論、Y理論」をお聞きになったことがあるでしょうか?

 

人間は、もともと怠け者で、アメとムチで強制されなければ働く意欲を持たない、というのがX理論。

 

魅力的な目標と、報酬を与えれば、みずから意欲的に働くようになるタイプの人間もいる、というのがY理論。

 

しかし、日本でいちばんのシェアを獲得しよう、それができたら全国統括責任者のイスを与えよう、というダイナミックな目標と報酬を用意されても、

それが、特殊詐欺集団でのお仕事だったら、意欲が湧くでしょうか?

 

あるいは、もし、三味線の猫皮を護るために皮革を貼り付けるための接着剤の販売会社でのお仕事だったら、みなさんの全員が、必ずしも意欲が湧くでしょうか?

 

つまり、目標と報酬によって、人は前向きになる、という考えは、もはや現代では通用しない、ということです。

 

正確に言えば、

「仕事の内容によります」

というのが社員の本音ではないでしょうか。

 

■なぜ、以前は、ハーズバーグやマクレガーなどの理論が

通用していたのか?というと、

昔は、生活がいまほど便利ではなく、

「生きることは働くこと」

であったため、

「働きがいがないことは、生きがいがないこと」

つまり、

「働きがいがない人生など考えられない」

時代だったのです。

 

そのため、

どんな価値観の人に対しても、

「働くことありき」

の理論が通用したのです。

 

■しかし、現代は、豊かになり、

働かないという選択肢がある時代になりました。

 

なので、

「働きがいがなくても、生きている人」

がたくさんいる状況となったのです。

 

そんな人たちに対して、

ハーズバーグが言うように、

課題を与えて達成させたり、技能を習得させても、

相手は、

「やれやれ、疲れました。もう勘弁してもらえますか?」

と、かえって拒否反応だけが強くなってしまうのです。

 

あるいはまた、

そんな人たちに対して、

マクレガーが言うように、

魅力的な目標と報酬を与えても、

「別に、そこまでやりたくもないし、

別に、そこまでして報酬をほしくもない。

どうしてもというなら、辞めたいです」

という返事が返ってくるのです。

 

■もちろん、

達成感や技能習得、目標や報酬がモチベーションにつながることはあります。

 

それは仕事ではなく、たとえばオンラインゲームなどで、でしょう。

 

つまり、現代では、

「仕事などしなくても、ほかに面白いことがたくさんある」

ので、

達成感や技能習得、目標や報酬がモチベーションになるのは、

必ずしも仕事においてではない。

 

むしろ、仕事においてではないことの方が、圧倒的に多い、というわけです。

 

その証拠に、昨今は、

「管理職になって責任が重くなるなら、昇給も要りません」

という人種が増えている、ということを

みなさんも実感されていることでしょう。

 

ちょうど、

「結婚すれば幸せになるのではなく、

幸せの中には、結婚で得られる幸せもある。

それを選ぶかどうかは、人それぞれ」

というのと同じでしょう。

 

「達成感・技能習得・目標・報酬を与えればモチベーションが上がるのではなく、

モチベーションが上がることを、仕事に見出すこともある。

それを選ぶかどうかは、人それぞれ」

ということです。

 

■「人は働くものだ、という前提」

「仕事ありき」

というハーズバーグやマクレガーといった古典組織論が

通用せず、

達成感・技能習得・目標・報酬が、仕事に対するモチベーションに寄与しないとすれば、

組織を運営する経営者・上層部としては、

いったい何を与えれば、職員はモチベーションを上げるのでしょうか?

 

それは、

「この仕事には、理屈じゃない魅力がある」

「この職場、お金じゃ買えない体験がある」

という瞬間です。

 

みなさんも

「これだから、この仕事は辞められない!」

と、すべての苦労が吹き飛んだ、という体験が

1度や2度、あったのではないでしょうか?

 

本当にモチベーションが高い状態とは、

寝食忘れるのではないかというほど「熱中」している状態でしょう。

 

そんな時、

目標は必要でしょうか?

達成感が必要でしょうか?

技能は提供されなくてもみずから習得したくなります。

報酬など要らないとさえ思えることすらあります。

 

■どこかで必ず働くという足枷をつけていない

現代人にも通用する組織づくりや

モチベーション・アップを実現したいなら、

「仕事ありき」の「旧・組織論」を卒業
して、

 

「この仕事には、理屈じゃない魅力がある」

「この職場、お金じゃ買えない体験がある」

という本当のモチベーションを探究する「新・組織論」に切り替えなければならないでしょう。

 

そして、実は医療福祉の現場は、

他のどんな現場よりも、

「この仕事には、理屈じゃない魅力がある」

「この職場、お金じゃ買えない体験がある」

の無数のチャンスに満ちているということを、

みなさんも感じていることでしょう。

 

 そして、この

「理屈じゃない」

「お金じゃない」

というモチベーションを喚起することこそ、本当の組織論の役割ではないでしょうか。

そして、それを実現している病院・組織が、現に存在している、ということです。