■リーダーシップ論の大家とされているジョン・コッターの
「組織変革の8段階プロセス」
を知っているという方もいるでしょう。
参考になるところがあると考えられますが、
これを現場で実践する上で、
実効性あるものにするためのポイントを明らかにしてゆきます。
その8段階とは、
- ステップ1:危機意識を高める
- ステップ2:変革推進のための連帯チームを作る
- ステップ3:ビジョンと戦略を打ち出す
- ステップ4:変革のためのビジョンを周知徹底する
- ステップ5:従業員の自発を促す
- ステップ6:短期的成果を実現する
- ステップ7:成果を活かして、更なる変革を推進する
- ステップ8:新しい方法を企業文化に定着させる
となっています。
大きな流れは正しいと考えられます。
しかし、
「これをどうやればよいのか?」
「あるいはやってみてもうまくいく気がしない」
「うまくいかなかった」
という人もよくいます。
それは無理もないことです。
そこで、
組織変革が実効するために、
「患者サービス研究所ではこうしてきた」
「患者サービス研究所ならこうする」
という組織開発の実務の観点から
各ステップにおいて重要となるポイントについて述べます
(コッターの理論を解説しなおしたものではありません)。
組織変革は、相手が人間なので、
心理構造を踏まえて進めなければなりません。
つまり、うまくいかないのは、
「相手の顔が見えない」
ことが原因となっているからでしょう。
各段階において懸念されるのは以下のこととなるでしょう。
- ステップ1:危機意識を高める・・誰の、どのような危機意識が必要なのか?なぜ、高まらないのか?
- ステップ2:変革推進のための連帯チームを作る・・編成した連帯チームが動かない場合はどうすればよいのか?
- ステップ3:ビジョンと戦略を打ち出す・・誰がビジョンと戦略を立案するのがよいのか?
- ステップ4:変革のためのビジョンを周知徹底する・・組織全体に発信することはできるが響くのか?
- ステップ5:従業員の自発を促す・・誰がどのように自発を促すのか?往往にして、新しい動きには反発や抵抗が起きることが問題となる
- ステップ6:短期的成果を実現する・・現場からの反発や抵抗がある中で成果の情報は上がってくるのか?(月1回の会議で報告させるのか?レポートか?それ自体に対するやらされ感や反発が生じるのではないか?)
- ステップ7:成果を活かして、更なる変革を推進する・・「成果を活かす」「推進する」とは、具体的にはどのようにすることか?
- ステップ8:新しい方法を企業文化に定着させる・・「文化に定着させる」とはどのような施策か?この重要なステップの具体的な方法がイメージできない
「これらの一つ一つを、
どのように解消し、効果的に進めてゆけばよいか」
といった実践方法がわからなければ、
進めようがないでしょう。
そこで、
何回かに分けて、以上の問題点を解消し、効果的に進めて行けるように、心理構造を踏まえて実践方法を具体的に明確にしてゆきます。
【ステップ1:危機意識を高める】
■これは、厳密に言えば、
「価値観を明確にして共有する」
ということです。
そして、実は組織変革は、この
「価値観を共有すること」
に尽きます。
組織全体がトップと同じ価値観になれば、
最強の組織になるからです。
なので、ステップ1とされていますが、
実は、最初の段階でやるべきことというわけではなく、
組織変革とは、
ステップ1からステップ8まで、
これをやり続けることにほかなりません。
■なお、
「価値観を共有する」
とは、正確にいうと、
「現状を俯瞰すること」
なのですが、
現状を俯瞰しても、想像力が乏しい職員は、
「そこまで危機を感じなくてもよいのではないか」
という反応を示すこともあります。
また、危機意識を共有するよりも、
「こうなったら素晴らしい」
という理想像を明確にした方が夢があり、
組織が活性化するという見方もあるでしょう。
しかし、いずれも限界があるものです。
したがって、
トップはそれらと並行して、
やはり、
「危機意識を明確にする」
と認識しておいた方が良い。
■その際、もっとも重要なことは、
トップ自身が、自分の中で、
「変革の必要性」
を明確にすることです。
「どんな声が聞こえてこようとも、
絶対にここまで辿り着くのだ」
という
「揺るがない目的地」
をまず明確にすることです。
それから、その価値観を徐々に広げてゆく作業が始まるのです。
「できたら変わることが望ましい」
といった緩やかな意見ではなく
「変えなければ病院をやっている意味がない。
これを実現できないなら、病院を閉めてもいい」
というくらいの断固たる意識を持つことから、
組織変革は恥あるということです。
というのも、
それほどの意識がなければ、必ず現場から、
「そこまでして変革しなければいけないのか?」
という反発や抵抗の声が上がってくるからです。
その都度、トップが揺らいでいたら、
組織全体にフラストレーションが蔓延したり、
チームワークが損なわれてゆくだけとなります。
■さらに、ほとんどの組織で見落とされているのが、
「それをいつまでに実現するのか?」
という期限です。
理念がない病院はありませんが、
理念について、期限がある病院は稀です。
期限がなければ、
誰も動かないので、変革は実現しません。
揺るがない理想像を持っていても、
期限のない理想は現場に浸透することは決してなく、
画餅となってしまうのです。
>>>つづく