■先週末、ある病院の事務長をお訪ねしました。
そこで聞いた話。
先般、職員の研修を行なったとのこと。
研修会社の担当者には、何回か足を運んでもらい、
現場に即した研修をしてもらうよう
依頼していました。
ところが、研修が済むと、担当者は、
「受講者の方々が、良かったと言っています」
と言う。
「それより、研修後、現場がどう変わったのか、
効果がわからないけど?」
と聞くと、答えは
「では、次の研修をしましょうか?」
そこで、事務長が
「またお金がかかるのだろう?」
と訊くと、研修担当者は、
「はい」
ちなみに、研修当日、講師として現れたのは、
元航空会社の客室乗務員の方だったとのこと。
ともあれ、これでは、貴重なお金をいくらかけても、
現場を変えることはできません。
こんにち、
国民医療費が抑制され続けている中で、
医療機関のお金は、
患者さんと医療機関のために、
本当に意味のあることにだけ遣われるべきでしょう。
なぜなら、医療機関も、医療機関のお金も、
社会資産でもあるからです。
なので、このような話を聞くたび、残念でなりません。
その上、その研修会社は、
わたしが以前に勤めていた会社が立ち上げた
研修事業部だったと聞き、
さらに申し訳ない気持ちになったのです。
そこで、
このような、無責任なケースに遭わないようにしたいという方々には、
「研修事業に携わる人には3つある」
ということを知っておくことをお勧めします。
■なお、今回は、
現在の研修関係業者に対する批判でもありますので、
ご関心のない方は、恐れ入りますが、無視してください。
■「研修事業に携わる人には3つある」
まず、
「研修屋」
という人たち。
一般的には、
「研修講師」
「研修インストラクター」
と名乗っていることが多いでしょう。
その名の通り、
「研修をすること」
が仕事だと思っている人種です。
研修というショーを演じることにしか関心がないので、
研修後に、
みなさんの現場が変わろうが変わるまいが、
眼中にありません。
■次に、
研修の契約を取ってきて、研修屋を派遣する、
「研修ブローカー」
ともいうべき人たち。
病院から支払われる講演料のうち、
講師やインストラクターに一部を支払って仕事を与えます。
一般的には、講演料の半分以上をブローカーが取ると言われています。
より高く売り、
より安く講師やインストラクターを使う商売です。
なので、研修の内容はもちろん、
研修後の効果に対する関心は、
講師やインストラクター以下です。
冒頭の研修会社の担当者は、この
「研修ブローカー」
に分類されることになるでしょう。
ただし、
「私どもは、研修ブローカーです」
と名乗ることはなく、たいてい
「研修会社です」
「人材育成会社です」
などと名乗っていることでしょう。
厄介なのは、病院側が
「うちの病院の実情に合わせてほしい」
「このように変えてゆきたい」
「きちんと効果の上がる研修をしてほしい」
と要望を伝えても、決して
「そんな約束はできません」
などと、本当のことを言うことはなく、
必ず、
「はい、喜んで」
と、生返事をするので、見抜くことが難しいということです。
また、そうなってしまうのは、
病院側も研修会社側も、
「研修の効果なんて、程度問題」
「効果測定なんかできない」
という前提で相談しているので、
無責任な生返事がまかり通ってしまうからです。
食べ物屋さんが
「うちのはなんでも美味しいよ」
というのと同じで、
「いくらでも逃げられる」
と考えているから、臆面もなく、
「必ず効果的な研修をいたします!」
と、良い返事をしてくる、というわけです。
研修屋にしても、
研修ブローカーにしても、
本当に組織を変えることに関心がないにも関わらず、
本当に組織が変わるかのようなうたい文句で
一時的なイベントを販売しているのが実相です。
■3つ目は、
「組織開発コンサルタント」
に分類される人たちです。
その名の通り、
「組織を変えるのがミッション」
であり、
「その手段として、研修をすることもあれば、しないこともある」
ので、
「研修会社」
「研修講師」
「研修インストラクター」
とは名乗りません。
つまり、
結果を出すことにコミットしている人たちです。
みなさんが、
本当に組織を変えたいのであれば、
この「組織開発コンサルタント」を使うことをお勧めします。
とは言うものの、
「目の前の業者が組織開発コンサルタントなのか?
あるいは研修屋か、研修ブローカーか」
どうすれば見抜くことができるのでしょうか?
誰も、
「弊社は、貴院が変わろうが変わるまいが、
どうなろうと知ったこっちゃございません」
とは言ってくれませんから、困ります。
そこで、
(完璧なフィルターというものはありませんが)
いくつかポイントをご紹介しておきましょう。
■第一に、
「組織開発コンサルタントは、目的を知りたがる傾向」
があります。
終始、
「そもそも、何をどうしたいのですか?」
と確認したがるはずです。
目的によって、
その結果を出すためにどのように手段を設計するか、
すなわち、
研修の回数、態様、対象範囲などが、大いに左右されるからです。
時には、
「必要なのは、研修ではない」
という結論になることもあります。
たとえば、
頼んでもいない研修に参加させられ、
頼んでもいない話を聞かされれば、
受講者はもはや講義を聞く気にすらなっていないので、
講演内容が届かないばかりか、
モチベーションが大いに下がるだけです。
研修を効果的なものにするためには、
事前に受講対象者に研修の意味づけをすることが重要であるため、
患者サービス研究所では、
「研修前の段階で、何をどうするか?」
から設計するようにしています。
そして、もし、本当に意味づけが浸透し、職員一人ひとりが、
「私たちは、こういうことを学ぶべきだ!」
と考えるようになれば、
もしかしたら、
「自分たち職員で、勉強会をしてゆきたい」
というリクエストが上がってくるかもしれません。
その結果、
「外部のコンサルタントによる研修は必要なくなった」
ならば、
そんな自発的で、問題意識や当事者意識が高い組織に変わったという
素晴らしい結果を、
研修をすることなく、生み出したことになります。
コンサルタントを呼んだ時、
みなさんから、
「こんな課題がある。こんな風に組織を変えたい。どんな方法があるか?」
と相談を持ちかけてみることも有効でしょう。
研修にとらわれない提案が上がってくれば、
結果を出すことをミッションとしている組織開発コンサルタントである
可能性が高いでしょう。
ただし、
「合宿をしましょう」
「社員運動会です」
「仮想体験ゲームをしましょう」
という提案をしてくるような業者に振り回されてはいけません。
一時的なイベントで組織体質を変えることは不可能だからです。
■第二に、
「組織開発コンサルタントなら、効果測定を提案する傾向」
があります。
結果を出すことにコミットしているコンサルタントにとっては、
結果が出すことが、自分の存在意義の証明だからです。
したがって、もし目の前のコンサルタントが効果測定の提案をしないならば、
効果を出す自信がないか、
効果測定の方法を持っていないのでしょう。
また、
「職員のアンケートで、効果を測定しましょう」
というコンサルタントもいますが、
これでは、組織を変えることはできません。
たとえば、
アンケートで
「自分のモチベーションが上がったと思う」
という回答が多かったとしても、
自発的な発言や行動、
固定観念や前例にとらわれない問題提起や
これまでになかった改善提案が
増えることとは、必ずしも比例しないことは想像にやすいでしょう。
したがって、コンサルタントが、
「客観的な事実による効果測定」
を提案してきた場合には、実効性があると考えられます。
研修屋や研修ブローカーは、
商談の場では
「効果測定、大事ですね」
と、あたかも効果測定をするかのように話しますが、
ご注意ください。
責任を持って効果測定をするかどうか、
どんな効果測定をするのか、
を、確認することをお勧めします。
■第三に、
「組織開発コンサルタントは、病院の関与を求めてくる傾向」
があります。
組織が本当に変わり、
コンサルタントが関わらなくなった後にも効果が永続するには、
病院の継続的な取組が不可欠だからです。
例えて言えば、
近所の恐いおじさんがどんなに厳しい話や素晴らしい話をしても、
その後、両親がその話題をまったく持ち出さなければ、
子供はおじさんから習った通りに育つことはありません。
同様に、
コンサルタントがどんな施策を講じようとも、
その後、雇用主である病院経営者・上層部・上司がその話題をまったく持ち出さなければ、
現場はコンサルタントが伝えた通りに変わることは絶対にありません。
なので、結果を出したいコンサルタントとしては、
「研修後に、病院組織が、継続してどう取り組むかが重要です」
と、
おのずと、病院の関与を求める傾向になるのです。
逆に、
「研修後、誰が何をすれば良いか」
を話題にしない場合コンサルタントは、
みなさんの現場が変わることについては関心がない、
ということに他なりません。
■もし、結果にこだわらないのであれば、
研修屋や研修ブローカーを使うこともあるかもしれません。
反対に、
「本当に組織を変えたい」
「効果の持続する研修をしたい」
ならば、組織開発コンサルタントを見つけることをお勧めします。