■あなたは、
「もっと職員が
業務を自分事として捉えて、
自分から考えて行動してほしい」
と思いませんか?
要するに、
「当事者化させるには、どうしたら良いか?」
という課題です。
■そこで、今回も、
わたしの体験をお話ししましょう。
わたしは、2つの
医療事務職員を養成する専門学校で
勤務した経験があります。
そのうちの1つの学校でのことです。
看護師や技師を目指す方々とは異なり、
医療事務の専門学校に入る学生たちは、
「小さな頃から憧れて入学した」
という人は多くなく、
モチベーションが低い傾向があります。
しかし、
現場で必要な知識は教えなければなりません。
ところが、とりわけ学生が
関心を持ちにくいのが、
「公費負担医療費助成制度」
などの、
制度や法律の科目です。
教科書には睡眠薬が染み込んでいるのか
というくらいに
授業開始と同時に
黙想する学生が続出。
授業が楽しくなければ、
学校も楽しくないし、
医療事務の進路も考え直したいと
なるでしょう。
そこを、むりやりに
「起きろ」
「学べ」
と迫れば、
もっと授業が嫌いになり、
教師や学校のことも嫌いになってしまいます。
そこで、どうしたか?
■私は、学校に依頼して、
新しい時間割では、
各クラスに、
毎週1回、連続3コマを
設けてもらいました。
そして、各クラスに行くたびに
窓際のカーテンはすべて締め切り、
プロジェクターを使った大画面と、
持ち込んだスピーカーの大音響で、
毎週毎週、
医療現場のドキュメンタリーや
ドラマ仕立てのストーリーや
医療業界に関する映画を
ひたすら上映したのです。
人間は、理論では動かず、
感情で動くと言われます。
そして、
人間は、
人間が登場するストーリーでしか
感情は動かされません。
なぜなら、
ストーリーに人間が登場して
初めて感情移入することができるからです。
学生たちは、
「この授業が一番楽しみです!」
と喜んで出席していました。
遅刻はほぼゼロ。
上映前に、私が解説したり
上映後には感想を書いてもらったりは
したものの、
学生たちは、
ほぼ観るだけで良いのですから、楽です。
にもかかわらず、
感情が揺さぶられ、
多くが涙を流しながら観ていた、という
日も少なくありませんでした。
■多くの学生たちが、
「この授業を受けて、
本当にこの進路を選んでよかったです」
「就職活動、頑張ります!」
と言ってくれるようになってゆきました。
そうなると、
上映前後の解説も
しっかり聞くようになり、
結果、
関係法規などを学ぶので、
当時の学生たちは、
臓器移植法や、
治験プログラムや
老人保健法などについては、
もしかしたら、
直接関与していない
現場職員の方々よりも
詳しかったかもしれません。
また、ストーリーは、
そうした場面に臨場する
擬似体験ができるため、
患者さん、ご家族、
医療従事者、業者など
その状況に関わる関係者の方々の
心情を想像し、
配慮できる視点を持てるようになりました。
というのも、
多くの感想文に、
「私が患者さんの母親だったら」
「私がこの病院の職員だったら」
といった
当事者視点のものが
非常に多かったからです。
■つまり、
「もっと職員が
業務を自分事として捉えて、
自分から考えて行動してほしい」
「当事者化させるには、どうしたら良いか?」
と思うならば、
「教えない方が良い」
ということなんです。
むりやり教えない方が、
相手から嫌われませんから、
こちらも気が楽です。
しかも、関係も悪くなりません。
代わりに何をすれば良いか?
それは、
できるだけ、
「体験させる」
ということです。
言い換えれば、
「上司バイアスを極力、排除する」
ということです。
具体的には、
GoLDルールをお勧めします。
「Go」はGo。
現地に行く。
「L」はListen。
現場の人の話を聴く。
「D」はDo。
現場の作業を一緒にやってみる。
そうやって現場に飛び込んでみれば、
いっぺんに状況がわかるので、
興味関心も問題意識も持つことができます。
「当事者化」
とは、説明や説得では絶対にできません。
経営陣の講話や研修や合宿は
上司バイアス満載なので、
かえって
効き目がありません。
それでも経営陣や上司は
「何とか伝えよう」
とするから、
お互いが疲弊するだけです。
もうそんな不毛な組織づくりは
卒業してください。
■そのような
組織づくりを
あなたの現場のリーダー・管理職たちが
みずから導き出し、
実践してくれるようになったら、
頼もしくないでしょうか?
もし、あなたが、
「もっと職員を当事者化したい」
と思うならば、
一日も早く
やってみることをお勧めします。
