■ビジネスや医療の現場で、
「これ意味ある?」という会議が毎月行なわれている、ということが多々あります。
このような「形骸化」が起きないようにするには、どうすれば良いでしょうか?
- 議題を絞る
- 事前に議題を共有しておいて全員が意見を持ち寄る
- 課題共有、提案、討議、採決など、会議の着地点を決めておく
- 議事録を残し、意味がある会議だったか検証する
- 議題以上に、重要なことを確認する。
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■毎月の会議が、
いつの間にか義務化している、ということがよくあります。
法律やISO、病院機能評価の要件を満たすためもあって
毎月会議を開催しているものの、
当人たちは、
「今月の会議は何をしようか?」
と話し合っている、という場面を
みなさんもしばしば見受けるのではないでしょうか。
そこで話し合われるのは、
「昨年はどうでしたっけ?」
「議事録では、こうでした」
「そういえば、去年はそうだった」
「今年は、コロナの影響もあるので、そこまでやらなくて良いのでは』
「そうですね、みんな他にもいろいろと忙しいので、簡略化しましょう」
といった、
寂しい限りの話し合いになっていることが多いでしょう。
結果、
せっかくみんなで集まっているにも関わらず、
場当たり的に話し合ってしまい、
大して実のある会議になっていない、ということです。
これこそ、
「形骸化」
そのものです。
こうした形骸化は、
世の中のそこここで起きています。
「なぜ、形骸化が起きるのか?」
と思うでしょうか?
その発想を切り替えなければなりません。
■すなわち、
「なぜ、形骸化が起きるのか?」
とは、
「本来は、形骸化しないはずだ」
という認識が原則になっているからです。
人間の心理構造を考えればわかると思いますが、
人間は、もともと、
つねに目の前のことにとらわれる傾向があるのです。
それが防衛本能であり、
生命活動にとって必要なのですから、
目の前のことに集中しがちになるのは、
むしろ当然です。
なので、
「人間は、原則として、目の前のことにとらわれる性質がある」
という前提に立つことが自然だということです。
■一方で、
目の前のことにとらわれ、
何をしても形骸化しやすい性質があるものの、
そのために、
「大局的な視点を忘れ、
本当に意味のある施策ができていないゆえに、
実のある話ができていないなどの無駄を生んでいる」
という問題を感じている人も少なくありません。
では、「形骸化」が起きないようにするには、
どうすればよいでしょうか?
形骸化を防ぐ方法は、実はシンプルです。
そもそも「形骸化」とは
「心を忘れて、形にとらわれている」
「魂を忘れて、骸にとらわれている」
それは、
「価値観を忘れて、行動にとらわれている」
ということであり、
本質を言い換えれば、ズバリ、
「目的を忘れて、手段にとらわれている」
ということにほかなりません。
要するに、
「形骸化とは目的を忘れること」
そのものなのです。
■ということは、
形骸化しないためには、
つねに目的を忘れない、ということに尽きます。
したがって、対策もまたシンプルであり、
「常に目的を振り返ればよい」
ということです。
毎月の会議の際にも、
毎回、冒頭で目的を確認して、
「どんな長期計画があり、
そのもとに、どんな中期計画があり、
そのもとに、今年はどこを目指していて、
その中で、このチームが何をしようとしていて、
その流れにおいて、今日何を話し合うのか?」
を、きちっと提示し直して、
最も高い視座でマクロを俯瞰するところから、
おりてゆき、
最も目の前のミクロな話題へと移るようにするのです。
そして、
会議が終わる際にも、
もう一度、
「今日の会議で話し合ったことは、
このチームのミッション、
今年の方向性、
中期計画、
長期計画の中の、
どの部分について、どこまでゴールに向けて前進した」
と確認します。
そして、
「次回も、このチームが各論を話し合うのは、
これらの長期・中期・今年の文脈の中でする活動なのだ」
という念を押して解散するのです。
■なので、冒頭のクイズにおいて、
[1]の、「議題を絞る」
[2]の、「事前に議題を共有しておいて全員が意見を持ち寄る」
[3]の、「課題共有、提案、討議、採決など、会議の着地点を決めておく」
[4]の、「議事録を残し、意味がある会議だったか検証する」
・・・は、いずれも、
「その議題ありき」
のミクロな視点から脱却できていないことから、
形骸化、または形骸化する恐れを内包しています。
そして、マクロな視点を持ち、
「そもそも、その議題でよかったのか?」
と俯瞰することが重要なので、
[5]の、「議題以上に、重要なことを確認する」
が、正答となります。
多くの組織の現場においては、
毎月の活動をとりあえず行なえば、
今年の計画も進んだはず、ということにしてしまっているのも
実は、ロスやストレスの温床となっていますが、
そのことに気づかずに、
「つつがなく行なわれていればよい」
という運営をしているところがたくさんあるので、
注意した方が良いでしょう。
■このように話すと、
「そんなことをしなくても、分かりきっている」
「それは、年度初にトップから宣言されているから大丈夫」
「毎回の会議で、そんなことをする必要があるのか」
といった声が上がります。
しかし、
それが本当にできていれば、
世の中で、
形骸化など起こっていないはずです。
「そんなことをしなくても、自分は大丈夫」
と考えるのは、
重症の思い上がりと言わざるを得ないでしょう。
頭でわかっていても、つい目の前のことにとらわれてしまうのが、人間です。
それは、上述したように、
生理的・防衛本能的、生命活動的に、
「人間は、原則として、目の前のことにとらわれる性質がある」
からにほかなりません。
それが人間だということを知っている以上、
「自分は大丈夫」
という非科学的で思い上がった自信によらず、
その性質を織り込んだルーティンを設計してしまうことが
最も確実な解消策だと言えるでしょう。