■「箱もの行政」という言葉があります。
お金をかけて立派な施設ばかりを作るが、
有効活用せずに、無意味となってしまうケースです。
いわゆる、
「仏造って魂入れず」というパターンです。
マネジメントにおいても、同じく
「箱ものマネジメント」があります。
■たとえば、
社員を覚醒し、組織を活性化するには、
「そういう環境を与えれば良い」
という経営者がいます。
- プロジェクトを立ち上げ社員をチームに組み込む
- 委員会を立ち上げ社員に活動させる
- 役職を与える
- イベント開催をさせ社員たちに取り組ませる
- 新しい人事評価制度に変更する
- 目標管理制度を導入する
・・・などなど、
「制度設計で組織を変えようとする」
視点です。
しかし、たいていの場合、
「社員が、経営者の企画に付き合ってくれた」
結果、
期待したほどの変化は起きることにはつながりません。
それは当然。
なぜなら、
温室を作って栽培するような、いわば「グリーンハウス型環境づくり」だから、
予定調和的になるばかりとなるのです。
「箱ものを造って、社員を放り込めば変わるはず」
という発想によって、社員が目を輝かせ心明るく元気に動き出すということはありません。
まさに、制度という箱ものを造って、魂入れず、です。
■反対に、
もし、
経営者も予期しない成長、思いがけない成果を生み出す、
躍動的で足腰の強い組織にしたいならば、
プロジェクトや委員会や、役職、イベント、評価報酬制度といった環境を、
経営者が与えてはなりません。
それらを、社員たちがみずから創り出すようにすることが要件となります。
というのも、
環境づくりまで社員たちの自由にまかせれば、
- 関心を持った社員がみずから環境をつくる
- 関心あることにだけのびのびと取り組む
- 社員起点なので、経営者が予期しない成長、思いがけない成長が生まれる
・・・と、みずからの行動の原点が自分自身の関心や問題意識があるので、
これ以上、目が輝くことはないからです。
世間では、この
「すべての土台から、社員の関心を起点にする」
ということをせず、
「これが気になるだろう」
「これをやってみたいだろう」
「こんなルールにしてみたが、どうだ?」
と、経営者・管理職の関心を起点にして
環境という箱ものを造り、社員をそこに放り込むような真似をしているので、
社員は、みな、
「言われたから参加する。こんな成果をだせば上司は気が済むのだろうか?」
と傍観者的な立ち位置に立たされてしまっているのです。
■というわけで、
「グリーンハウス型組織づくり」によって、
温室を用意してやっても、行儀の良い組織にしかなりません。
反対に、
経営者の介入を受けつけないほどの
「ジャングル型環境づくり」にすることが必要なのです。
箱ものを用意してやるのではなく、
社員たち自身が作りたいように箱を作る方が、
社員が経営者視点を持った、はるかに強い組織が実現するのです。