「コッターの組織変革の8段階」が実効するためのポイント集 (3) 管理職のコミットメント

「コッターの組織変革の8段階」が実効するためのポイント集 (3) 管理職のコミットメント

組織変革についての論説

「ジョン・コッターの変革の8段階」

 

それが、現実に実践され、効果を生み出すための

ポイントについて、

組織開発の実務の観点からポイントを解説しています。

 

>>>前回からのつづき

 

なお、本記事は、

組織変革が実効するために、

「患者サービス研究所ではこうしてきた」

「患者サービス研究所ならこうする」

という組織開発の実務の観点から

各ステップにおいて重要となるポイントについて述べたものであり、

コッターの理論を解説しなおしたものではありません。

【ステップ4:ビジョンを周知徹底する】

 

■あらゆる書籍やセミナーで、

「トップは、みずからビジョンをはっきりと発信すること」

と言われており、

たしかに、それは大事なのですが……、

 

とくに専門職集団であり、

売り手市場でもある医療業界においては、

気にかかることが、

 

「発信するのはやろうと思えばできるが、

職員に響くのか?」

ということでしょう。

 

とりわけ新しいことを歓迎しない傾向がある

医療現場においては、こうしたアナウンスの結果、

かえって拒絶反応が起きるのではないか、

と心配になることでしょう。

 

どんな反応があるかわからないのに

アナウンスするのは、得策ではありません。

 

当たって砕けていては、良い施策も始まらないのです。

 

そこで踏まえておかなければいけないのは、

組織づくりは、仲間づくりである

ということです。

 

大学のサークルや地域のコミュニティをつくる場合と同じです。

 

つまり、仲間の輪を

トップから首脳部へ、

さらにコア・マインド・メンバーへ、

そして各部署の管理職へ、

そのうえで組織全体へ

……と段階的に広げてゆくことになる構造を

知っておかなければなりません。

 

全員を一堂に集めて、社長が訓示を述べていればよかったのは、

昭和の、日本全体が工場文化に使っていた時のことです。

 

それは、

職員がどんな気持ちかを考える必要がなかった頃の

発想です。

 

いまは、そうはいきません。

 

職員一人ひとりに関心を持ってもらい、

みずから気づき、考え、話し合い、行動してもらうためには、

流れてくる箱にスタンプを押すような横着な方法で、

組織づくりが実現できると思ったら大間違いなのです。

 

そして、さらに、トップから現場職員へと

仲間づくりの輪を広げてゆく際、

それぞれのプロセスにおいて、

拡散する人の役割を明示することが大切です。

 

コア・マインド・メンバーは

「なんとしても組織を変革していこう」

というコア・マインドをもった職員の集まりなので、

一枚岩を形成しやすい傾向がありますが、

 

その次の段階である

「管理職を巻き込む」

ステップには、注意が必要となります。

 

なぜなら、たいてい、管理職は、

「ビジョンを実現するために部下職員を巻き込む」

というミッションについて、

まったくコミットしていないことが多いからです。

 

特に医療現場では、

業務が適正に行われるように監視する

「業務マネジメント」

だけを管理職の役割だと認識している人が圧倒的に多いのが

実状です。

 

それは本人のせいではなく、

管理職に登用する際に、そのようにコミットメントを

とらない組織がそれだけ多いという事実があるからです。

 

そうした社会・業界の中で生きてきた職員が多いだけに、

組織側は、意識的に、

管理職に対しては、その役割を明示しなければなりません。

 

こんにちの管理職のミッションは

もはや業務マネジメントだけでなはなく、

むしろ、組織を変える

組織マネジメントこそが管理職の主なミッションであること」

を管理職に自覚させることが初歩です。

 

なお、コア・マインド・メンバーは、

その管理職をプロモートするのが役割となります。

 

全体にビジョンを周知するのはそれからでなければなりません。

間違っても

こうしたプロセスを無視して、

全体にビジョンを
周知してはなりません。

 

心配している通り、

現場からは反発と抵抗の大合唱が起こることでしょう。

 

■では、

コア・マインド・メンバーによる連帯チームが編成され、

管理職にミッションを理解してもらったら、

ビジョンを周知徹底しても良いのでしょうか?

 

正確には、

ミッションを周知徹底する前に、

先にやることがあります。

 

それは、管理職を通じて、職員全体に、先に

「危機意識」

を浸透させることです。

 

危機意識が全く浸透していないところに

ビジョンを発信しても響きません。

 

「良い話だけれど、そこまでやる必要ありますか?」

と反発や抵抗が起きるのはそのためです。

 

なので、それ以上に、まず、管理職を通じて、

「危機意識」

を浸透させることが必要です。

 

危機意識が浸透したかどうかの目安は、

「具体的な対策は浮かばないけれど、

なにかしなければいけない」

「このままじゃ、まずい」

と考え、

「変化することが当り前だ」

と考える職員が各部署に一人以上現れていることです。

 

なぜか?

 

管理職がビジョンを発信して、

「変えてゆこう」

と呼びかけた時、

部下職員の中に一人以上、

「何かしなければいけない。

だから変わるのが当り前だ」

と考えている職員が存在していることで、

 

部署の空気が大きく前向きになるからです。

 

もし、そのような賛同者が一人もいなければ、

その部署では、

ビジョンを発信した管理職が、

危機意識のない部下職員全員との対立構造をつくって

孤立してしまいます。

 

管理職が孤立すると、その部署は膠着してしまうことが

想像に易いでしょう。

 

「呼びかける人が、その他の人たちから孤立しないこと」

は組織づくりの鉄則の一つです。

 

>>>つづく