■「人間関係を良くしたい」
「そのためにコミュニケーションを向上したい」
と思わない人はいないでしょう。
そこで、つい対話のテクニックを学ぶことを思い浮かべがちです。
コーチング、
アサーション、
アンガーマネジメント、
ファシリテーション、
言葉遣い、
アナウンサーに学ぶ話し方教室・・・。
しかし、
患者応対を振り返ればわかりますが、
現実には、
対話のテクニックによって、
相手を思うように誘導できるということはありません。
教科書通りの言葉遣いをしても、
クレームが収まらないケースを、
山ほどご覧になってきたことでしょう。
また、認知症の患者さんが最も心を許し嬉しそうに笑って話す職員が、
職員の中で、もっとも言葉遣いがなっていない、という
ケースも珍しくありません。
重要なのは、
「どのようなテクニックが使えるか?」
ではなく、
それまでに築かれた相手との
「関係性」
だと言えるのではないでしょうか。
■また、たとえば、
正しいと思って提案したことが
会議で通らないという経験はないでしょうか?
上手な会議の進め方、
A4一枚で伝わるプレゼンテーション資料の作り方、
デキる!パワーポイント資料のコツ・・・。
さまざまな会議におけるプレゼンテーションのテクニックを
学んでも、
話が上滑りして、
みんなが着いてこない、
ということがあります。
これも、テクニック以前に、
その会議の参加者の方々との
「関係性」
ができているか、いないかで、
むまったくその場の空気が異なってくるでしょう。
■例えば、
アーティストのコンサートでは、
高いお金を払ってきたファンばかりなので、
アーティストが登場しただけで、
会場にどよめきが起こり、
途中のMCが対して面白くなくても、
だれも文句を言いません。
アーティストが呼びかければ、観客は叫んで応え、
アーティストが立つように促せば、観客は喜んで立って踊り、
マイクを向けられれば、合わせて大合唱し、
もはや何でも言うことを聞く状況です。
これは、
「関係性が作られているから、何でもうまくいく」
構造になっている、ということではないでしょうか。
■つまり、
人間関係で良いコミュニケーションをとるにしても、
会議において参加者の賛同を得て良い結果を得るにしても、
その場の表面上の対話のテクニックで
何とかしようと横着するのではなく、
それに至る前の段階で、
「関係性」
を築くことに心を砕いた方が良い、と言えるのではないでしょうか。
「あなたの言うことなら、賛成するよ」
「あなたが会議に上げることなら力になるよ」
という関係性です。
この関係性が築かれていないのに、
どんなに卒のない、行儀のよい、教科書通りの表現をしても、
相手の心に刺さることはありません。
■では、どうすれば、
「あなたの言うことなら、賛成するよ」
「あなたが会議に上げることなら力になるよ」
と思ってもらえる関係性を築くことができるでしょうか?
それは、いつも自分自身が、
「あなたの言うことなら、賛成するよ」
「あなたが会議に上げることなら力になるよ」
と言い、実践する、ということに尽きるのではないでしょうか。