「表彰すれば職員のモチベーションが上がる」の間違い

「表彰すれば職員のモチベーションが上がる」の間違い

■以前、ある病院でのこと。

 

院長付役員が、

病院全体の職員のモチベーションを高めたいという目的から、

業務改善の意見箱を設置しました。

 

なかなか投稿がなく、

管理職会議で意見箱を設けたことをアピールしたり、

各部署では上司が部下に声をかけたりと、

働きかけました。

 

その結果、数ヶ月の間に、

ようやく職員からいくつかのアイディアが投稿されました。

 

そこで、その役員は、

投稿された意見やアイディアの内容を吟味して

良い意見を表彰することにしました。

 

しかし、表彰する際のメッセージは、

「有用な意見と考え、表彰します。病院として、参考にします」

でした。

 

■みなさんもお気づきのことでしょう。

 

これでは、病院全体の職員のモチベーションが上がることはありません。

 

というのも、

意見箱を設置してもすぐに投稿がなかったことは、

「ぜひ投稿したい」

と思って投稿した職員が多かったわけではないことが伺われます。

 

おそらく、上司から

「うちからも何か投票しなければ」

と言われて、

忙しい中、頭をひねってなんとか投稿した職員も少なくなかったことでしょう。

 

■もちろん、優秀なアイディアの投稿者を表彰することも悪いことではありません。

 

しかし、

表彰されるような良いアイディアを投稿した職員には、

そのアイディアを採用して現場で活用することで、

たとえ表彰されなくても、

充分なフィードバックとなります。

 

それより、

それ以外の大多数の職員に対して、

フィードッバックしなければ、

その職員たちは、どう感じるでしょうか?

 

「忙しい中、せっかく無理をして知恵を出して投稿したのに、

投稿が優れた意見ではなかったので、

自分には何の反応もない」

という思いになるのではないでしょうか。

 

大多数の職員がそのような気持ちになれば、

来年、病院が、また意見箱への投稿を募っても、

もう投稿しなくなってしまうことは、想像にやすいでしょう。

 

しかも、この病院の場合には、職員は

「投稿するように言われて投稿してやったのに、

なんで上から目線やねん」

という思いだったことでしょう。

この感情は、意見箱への投稿だけにとどまりません。

 

多くの職員が、

今後、病院から発信される様々な呼びかけに対して

「応えても、応え甲斐がない」

と、学習してしまうのです。

 

これでは、

病院全体の職員のモチベーションを高めたかったにも関わらず、

大多数の職員のモチベーションを損なってしまうだけです。

 

■企業でも病院でも、

「なにかをさせては、優秀者を表彰する」

という発想になりがちで、珍しくないようにも感じられますが、

それは、

「職員が望んで参加したのか、望んでいなかったのか」

という

「心」

を見ていない証拠です。

 

自分から望んで出場した大会であれば、

大会主催者が優秀者だけを表彰しても、

それ以外のプレイヤーは、

「ぜひ自分も表彰されるように、次はもっと頑張ろう」

と思うことでしょう。

 

しかし、もともと望んでもいないのに

忙しい中、募集に応じて投稿したにも関わらず、

病院側が、優秀な意見だけを表彰し、

その他の大多数の職員に対して、相応のフィードバックがなければ、

「次はもっと頑張ろう」

と思うことはありません。

 

「心」

を見ていなければ、

「心」

を動かしモチベーションを高めることはできないということです。

 

■もうお判りでしょう。

 

モチベーションを上げたければ、

良い結果を「評価」することに主眼を置くのではなく、

トライしてくれたことに

感謝・敬意・賞賛の意を表し、「承認」することこそが重要なのです。

 

■この

「評価」

「承認」

の違いを意識せずに、使い方を間違うと、

上記の例のように、

かえって、土台からモチベーションを損なってしまいます。

 

したがって、

「評価」

「承認」

の違いを明確にしておくことは、

モチベーションを高める上では極めて重要であり、

これからの組織論の大原則の一つなので、

また別の機会に詳説したいと思います。