「譲るのもよくない、譲らないのもよくない」では管理職は務まらない

「譲るのもよくない、譲らないのもよくない」では管理職は務まらない

■人を巻き込み、組織を動かすための

ポイントは極めてシンプルです。

 

トップや管理職が、

どこで線引きをし、

毅然とした態度でそれを貫けるか?

 

そこに尽きます。

 

■人は、上司から

「あれもダメ、これもダメ」

と言われれば、面白くないので、

「やりたいことがやれない」

「辞めたい」

と文句を言うことになります。

 

反対に、

「ああしろ、こうしろ」

と言われれば、これも面白くないので、

「負担だ」

「ストレスだ」

「辞めたい」

と文句を言うことになります。

 

現場の職員の文句を、

すべて無視して独裁的な運営をすれば、

辞めてしまうのもわかります。

 

さりとて文句を、

すべて受け入れてばかりいれば、

今度は無法地帯になってしまい、

組織として目指すべき方向へ進むことはできません。

 

では、どこまで応じてどこから拒むのか?

 

その線引きを明確にする、ということです。

 

その線引きが明確でなければ、

恣意的な対応となったり、

場当り的な運営に見えるので、

「上司の勝手に付き合わされるのか?」

という不満から、

やはり部下が辞めてしまうのです。

 

■そこで、

ほどほどに部下の声に耳を傾け、

ほどほどに組織の都合を押し付ける、といった

「バランスが大事」

と言い出す人もいます。

 

江戸時代の

「生かさぬように殺さぬように」

だと。

 

しかし、そんなことで、

職員が生き生きと働き、

組織を成長させてくれることにはなりません。

 

昭和の時代にはそれでもよかったかもしれません。

 

「俺の部署は俺がルールだ」

というリーダー。

 

「もういい加減判れよ」

というリーダー。

 

自分の考えを説明することさえできない上司が、

部下に、

「わかれ」

というのは、横着以外のなにものでもありません。

 

昭和時代は、経済成長に支えられていたので、

それでも部下職員は辞めずに着いてきてくれましたが、

こんにちでは、経済成長がないどころか、

増税や医療保険・介護保険の負担など、

ますます暮らしにくくなる一方なので、

 

そんな中で無理を続ければ、

病んでしまうことにもなりかねません。

 

したがって、

働く人たちの胸には常に、

「辞める」

という選択肢がしまってあるという状態です。

 

そのため、

昭和時代の

「辞めるなど許されない」

という感覚のままの上司が、

「わかれ」

といってみても、それは部下にとっては、

「こんなに理不尽なら辞めたい」

と思うきっかけにしかならないのです。

 

■そのため、上司は、

「ここまでは、意見を聞く。

ここからは、自由にはさせない」

といった線引きを明確にしておくことが大事になります。

 

まず、

「どのような線引きをするのか」

その考え方を、

事前に公言しておくことが必要です。

 

そして、

一貫して自分自身も守って見せることで、

初めて部下も納得して、

着いてきてくれることでしょう

 

それが徹底できれば、部下職員は、

その考え方に沿って考え、

行動してくれるようになります。

 

■では、その線引きはどのようにすれば良いでしょうか?

 

明確に、事前に公言しておきたいところです。

 

それは、

「生産性を上げることにつながる可能性のあることならなんでも採用する」

そして、

「生産性を下げるものであれば、認めない」

という、ごくシンプルなもので良いでしょう。

 

■もし、部下から、

「こんなことをしたい」

といった意見が上がった場合、

「それで、生産性が上がりそうなの?」

と聞き、

「その可能性があるので、やってみたい」

ということであれば、許可すれば良いのです。

 

ただし、これまでに行なっていなかった新しい取組で、

よい成果が上がらないこともあります。

 

しかし、

職員が良かれと思って提案し、行動したことなら、

「チャレンジして成果が上がらないことの方が、

何もしないよりもはるかに価値がある」

ということも明示しておけば、

職員は、萎縮せずにチャレンジしてくれることでしょう。

 

あるいはもし、部下から、

「この作業は、負担が大きいのでやめませんか?

といった意見が上がった場合、

「それで、生産性が上がりそうなの?」

と聞き、

「生産性が上がるとは言えない」

ということであれば、却下すると良いでしょう。

 

職員が楽になり、

仕事のクオリティが下がることこそ、

組織としては最も求めていないことだからです。

 

現場からは、負担がかかることに対しては、とかく

「この方が楽になる」

「たいへんだ」

「ストレスが大きい」

yle=”text-align: left;”>「離職につながる」

などと主張する人も現れます。

 

しかし、経営者・管理職は、そうした声に

揺らいではなりません。

 

負荷がかかることでも、

生産性が上がることならば、

心を鬼にして、実践させることも必要です。

 

負荷が減るとしても、

生産性も下がることであれば、

応じてはならず、実践し続けさせることが必要です。

 

もしそうした非生産的な意見に耳を傾けてしまえば、

業務のクオリティは落ち続け、

職員の技能も下がり、

ひいては、

職員の成長や安定した生活を阻害することにもなるからです。

 

そうなった時に、

「負荷を減らして欲しい」

と訴えていた職員が、

「申し訳ありませんでした」

と改心することはありません。

 

「この職場では成長できなかった」

と組織のせいにしてしまうものです。

 

■そうならないためには、

経営者・管理職は、

毅然として線引きをして見せることが極めて重要です。

 

それは、

好きか嫌いかでもなければ、

正しいか誤っているかでもなく、

うまくいく保証があるか、ないか、でもありません。

 

ただただ

「生産性を上げ、

業務のクオリティを上げることに

つながる可能性のあることならなんでも採用する」

 

その一点だけです。

 

もし現場に伝わりにくいと思うならば、

掲示しておくのも良いかもしれません。