使用者に都合の良い「前時代の組織論」

使用者に都合の良い「前時代の組織論」

◼️今回は、従来の組織論が、

いかに人間の心理を
経営側・上司側に都合よく解釈して
作られたものか、明らかにしましょう。
まず、
組織においては、以下の2つの理論が、
常識とされています。
「達成感を感じさせればモチベーションが上がる」
と、
「モチベーションを上げるために、競争させることは有効である」
です。
そして、
この典型的な理論が互いに矛盾していることから、
それがわかります。
◼️まず、
「人は達成感を覚えればモチベーションがあがるのでしょうか?」
たとえば、営業職であるあなたが、
ある日突然、上司から
「大事な取引先の方から、
趣味の三味線で使うバチについて、
耳を下ろすという手入れをする際に
使う荒縄は、どこで手に入れた
荒縄が良いか?教えて欲しい、と頼まれた。
調べてくれ」
と言われたとしましょう。
自分自身に三味線に詳しくなりたい気がなければ、
盛り上がらないでしょう。
それでも、いろいろ調べて
最良の荒縄の入手元を見つけたとしましょう。
上司から
「君ならきっとやれると思ったよ」
と褒められます。
しかし、さらに
「次は、皮部分を補強するために
犬皮を貼る時に使う
最も使い勝手の良い接着剤を
突き止めてくれ」
と指示されたら、どうでしょうか?
自分自身が、
その上司・取引先・三味線に興味がなければ、
「もううんざり。
この面白くもない作業から早く解放されたい」
という拒絶反応が強くなるだけではないでしょうか?
つまり、
「達成感を感じさせればモチベーションが上がる」
のは、その仕事に向き合うモチベーションがあるという前提条件が
満たされた時だけなのです。

そして、
現代は、
その仕事や職場にしがみつくつもりがない人も多く、
この理論が役に立ちにくくなっていることは、
ご存知のとおりです。

◼️次に、
私たちには、
たしかに、人と比べて
自分が秀でていると感じられた時には、
さらに頑張ろうという
モチベーションを持つことができる傾向があります。
それは、逆に言えば、
自分には歯が立たない領域で競争させられていては、
モチベーションが下がるばかりだということです。
たまたま、2,3の競争相手の中で
抜きつ抜かれつしている場合にだけ、
競争が良い刺激になるかもしれません。
しかし、
つまるところ、競争させると、
勝った方が、
勝つことに気持ちを向けている場合には、
モチベーションが上がり、
負けた方はその分、
モチベーションが下がる、
ということになります。
もし、勝つことに気持ちが向いていなければ、
勝った方もさして、モチベーションが上がらず、
負けた方は、モチベーションを下げる、
という、
結局何も生まれない結果となってしまうのです。
◼️ここまでで、すでにおわかりの通り、
達成感も競争も、
それ自体に
「人のモチベーションを上げる要素」
があるわけではないのです。
その職場や仕事にコミットしていなければ、
むしろ逆効果を生むだけとなります。
組織の経営者や上司は、
とかく
「職場や仕事にコミットしているはず」
と都合よく決めつけているので、
つい、
さらにモチベーションを上げようとして、
達成感や競争を持ち込もうとします。
しかし、それは、
コミットしていない職員にとっては
苦痛以外のなにものでもありません。
◼️したがって、
達成感や競争を持ち込む前に、
何よりもまず最初に、
職員が職場や仕事にコミットすることが不可欠です。
その上で、達成感や競争を持ち込むことは効果につながりやすいでしょう。
◼️では、
どうすれば、
職員が、
職場や仕事にコミットし、
気持ちを向けて臨んでくれるように
できるのでしょうか?
それは、
逆説的に聞こえますが、
実は、
「コミットさせようとしないこと」
です。
どういうことか、わかりにくいでしょうか?
シンプルにポイントを解説するならば、
「人は、
要求ばかりしてくる相手に対しては、
何かをしてあげたいと思えず、
何かをしてくれる相手には、
その要求に応えてあげたいと思える」
ということです。
「力を貸して欲しければ、
まず相手の力になれ」
という当たり前の原理です。
個人間では実践できていると思いますが、
組織と職員の間で、
実践できていることは稀です。