■厚生労働省が
医療勤務環境改善支援を進めてきており、
各都道府県のもとに、
医療勤務環境改善支援センターが設置されています。
医療機関の勤務環境をより良いものにし、
職員の健全で継続的な勤務を確保しようとするものです。
医療従事者が活躍できることや
医療機関の健全に維持・継続できることは、
社会にとっても大きな課題だからです。
その一方で、
いまだに、人事評価を行なっていない医療機関が
少なくないのも事実です。
確かに、歴史的に、
「専門職である医療従事者を評価するべきではない」
と論じられてきたこともあるでしょう。
評価されても、評価されなくても、
最善を尽くしている、というプライドかもしれません。
■しかし、
わたし自身が、
コンサルティングや
医療勤務環境改善支援のために
多くの医療機関に接してみて感じるのは、
やはり
「頑張っている職員が報われなければ、
結局は、
職員のモチベーションも上がらず、
患者さんへの幅広く行き届いた対応もできず、
組織の生産性も上がらない」
ということです。
これは、資格職であろうとなかろうと
変わらないのではないでしょうか?
頑張っている職員ほど、
それが報われなければ、
虚しくなってしまい、やがて辞めてしまいます。
みなさんも、
自分がどんなに強い信念を持って
自分の信じるように行動していても、
それが適正に理解されないために、疲労ばかりが蓄積し、
「もっと、自分を活かせる現場に移ろう」
と考えたご経験もあるのではないでしょうか。
その一方、
頑張らない人だけが残ることになります。
公正な評価がないので、
居心地が良いのですから、必然的にそうなります。
結果、
頑張る人はいなくなり、
頑張らない人だけが残っている、
…という結果になっています。
それでも欠員が生じるので、
募集・採用をしては、
新たに入った職員が、
頑張らない職員が幅を利かせている風土に馴染めず、
また辞めてしまい。
退職→採用→退職→採用→
……という悪循環を繰り返し、
毎年、募集採用日に何千万円も費やしている病院も
少なくありません。
これまで、人材派遣会社・人材紹介業者に、
いったい何億円を支払ってきたでしょうか?
これでは、
「424の病院が、再編を検討するように」
厚生労働省からリストを公表されてしまうことにも
一概に、反対できません。
■そうした無駄な出費を避け、
「頑張っている職員が報われる職場」
をつくるならば、
人事評価制度を整備して、
「良いことは良い、変えるべきことは変える」
組織づくりが、
組織活性化・健全化の初歩の初歩であることが
おわかりでしょう。
「専門職だから」
といって躊躇している場合ではないことが
明らかなのではないでしょうか。
とはいえ、
「人事評価制度を整える」
というと、必ず反発の声が上がります。
従業員は、人事制度を変えることについて、
ほぼ必ずと言っていいほど、
前向きに捉えることはありません。
サラリーマン時代のわたしも軽率で、
とりあえず反発を感じたものです。
しかし、本気で抵抗するのは、
頑張っていない人たちです。
頑張っていないことが
上層部・管理職に掌握されてしまうからです。
そして、頑張っている人たちは、喜びます。
組織が、
「良いことは良い、変えるべきことは変える」
と明言してくれるようになるからです。
さて、みなさんが守ってやりたいのは、どちらでしょうか?
「公正にみて欲しい」
という職員でしょうか?
それとも、
「このままで良い」
という職員でしょうか?
■そうはいっても、
「そんな抵抗がある中で、
人事評価制度を導入することにはためらってしまう」
という経営者・管理職の方々もいるでしょうか?
では、そこで1つ、お勧めの方法があります。
そもそも、
人事評価制度がない今でも、
職員は多かれ少なかれ不満を抱いているものです。
なので、
その声を鮮明化することです。
たとえば、
「現在の、配属・昇格、賞与などの待遇について満足ですか?」
と問いかけることです。
もちろん
「充分」
「申し分なし!」
という職員はいません。
そこで、
「多くの職員の声」
を背景に、
「みんなが納得でき、やりがいと誇りを感じることができる
人事体制を整える」
という建前のもとで、
人事評価制度の整備に進んでゆくようにしましょう。
「みんなが納得して働ける職場づくり」
という大義の後ろ盾があることが、とても重要です。
■ただし、昨今はやっている
人事評価システムは、
単なるアプリケーション・ソフトでしかないので、
安易に導入することは歓迎しません。
重要なのは、アナログであれアプリケーションであれ、
職員が納得して頑張れるようになるかどうか?
です。
したがって、導入のプロセスや、
「評価の判断を誰がどのようにするのか?」
つまり、そのアプリケーションに
適正な数値を入力できるのか?
こそが重要なのです。
それができなければ、
高い費用を支払ってシステムを購入しても
まったく職員の納得感が得られません。
納得できない評価をされることは、
職員の目には
「監視されている」
としか映りませんので、ご注意ください。
■なお、人事評価においては、
「結局、主観評価になり、
公正な評価はできないのではないか?」
という懸念がつきものです。
しかし、
「結局、人が評価するのだから、主観評価しかできない」
という考え自体が間違いです。
「どれだけモチベーションが高いか?」
「どれだけコミュニケーションが活発か?」
「すぐれたリーダーシップを発揮しているか?」
「ホスピタリティをつねに向上しているか?」
「風通しの良い職場を創れているか?」
などの、
マインドや目に見えないことなどの
情意面について、
客観的に定量評価することは可能です。
情意面を定量評価するための最もシンプルな方法
「HIT-Bit」
については、また別の機会に掲載します。