■セミナーでは、いつもお伝えしていることですが、
人や組織を動かすには、
「目的」
の共有から始めなければ、絶対にうまくいきません。
しかし、何か新しい取組を始めようという時、
わたしたちには、つい
「来週から、〇〇を、〇〇することにします」
と、その行動について伝えてしまいがちではないでしょうか。
それはつまり、
「手段」
の話です。
「〇〇を〇〇してもらう」
と手段を端的に伝えてしまうのは、
紛れもなく、
昭和の大量生産の時代に育まれた
「指示命令体質」
の顕著な現れにほかなりません。
日本が工業立国だった時代には、
「コミュニケーションといえば上意下達」
でした。
また、職員を一堂に集めて、
「〇〇を〇〇しなさい」
と結論だけを伝えたり、
プリントを配ったりすることが、
最も正確かつ迅速で効率的・効果的な伝達だったからです。
こうした、
昭和の大量生産の時代が
長く続き、
指示命令体質が、
わたしたちには、自分たちでびっくりするほど
染み付いているのです。
そのため、ごく自然に
「〇〇を〇〇してください」
と手段の話をしてしまうのです。
■ところが、聞く側に立ってみればどうでしょうか?
「〇〇を〇〇しなさい」
と頭ごなしに言われた時、
真っ先に頭に浮かぶのは、
「新しいことは嫌だ。
そもそも、なぜ?」
ということではないでしょうか。
つまり、「手段」の話は、
聴く側からすれば、作業が増える話のなにものでもないのです。
当然、拒絶反応を示すことになります。
そもそも、
「目的」
がわからないことは、たとえ小さな行動であっても、
苦痛以外のなにものでもないでしょう。
もしそれでも押し付けるならば、
それはまさに
「指示命令体質」
そのものであり、
「自律進化体質」
とは対極にある組織文化と言わざるを得ません。
というわけで、
もし、みなさんが、人や組織を巻き込みたいならば、
「手段」
の話からするのではなく、
「目的」
の話からすることを大原則にした方が良いでしょう。
■そもそも、心理構造から考えればそれは当り前のことで、
目的つまり
「課題がなければ、人は動かない」
ものだということを忘れてはなりません。
仮面ライダーのテーマソングも、
「迫る〜、ショッカー〜♩」
から始まる通り、
敵がいたからこそ、
仮面ライダーも毎週全力で戦い続けたのです。
もし敵がいなかったら、
仮面ライダーは、
ただの、
「世の中で最も怒らせちゃいけないヒト」
に過ぎなくなってしまいます。
(ご機嫌を損ねないよう、気を遣うなぁ〜)
敵がいなければ、戦う必要がありませんから、
メタボリック体型になってしまった仮面ライダーが、
焼き鳥屋さんから自転車で帰るのを
みなさんも栄町商店街でよく見かけていることでしょう。
目的がなければ、
人は、前向きな(建設的・生産的・貢献的)行動を
することはなく、
たとえしても続けることはまず無いものなのです。
■職場においても、
(命がけではないまでも)
つねに時間と労力を割いて、仕事に取り組むのですから、
考えてみれば、
「目的」
なしに指示・命令が下りてくることが、
職員のモチベーションを大いに損ない、
組織の生産性の向上を著しく妨げてしまうのは、
当然といえば当然ではないでしょうか?
■では、どのように
「目的」
を共有すれば良いでしょうか?
目的を伝えても、人が動いてくれるとは限りません。
というより、
目的を伝えたからといって、
人が動くという簡単なことではありません。
たとえ動いてくれても、
動いてみてから、思いの外たいへんだと感じて、
「そこまでしてやらなければいけないのですか?」
と文句を言い出して、やめてしまうということも多々あります。
言葉に出して反対しないだけで、
蓋を開けてみたら、
ちゃんとやってくれていなかった、というパターンもあるでしょう。
そもそも、データを示し詳しく説明しても、
部下の方は、
みなさんほどの問題意識がありませんから、
目的を理解できない部下たちを
「どうしたら良いのか?」
困ることもあるでしょう。
そこで、
「どうすれば、しっかりと目的を共有できるか?」
が、最も重要なテーマとなりますが、
この点は、また別の機会に、ここで詳説したいと思っています。