改善体質になりたければ、現場から心理的ブレーキを取り除け!

改善体質になりたければ、現場から心理的ブレーキを取り除け!

■「職員一人ひとりが、

みずから気づき考え自発的に行動する、

そんな組織になってほしい」

 

と、多くの経営者・管理職の方々が言います。

 

それは、まさに「自律進化組織」です。

 

昭和の工業立国だった時代には、

決められたことを忠実に果たしてくれる

指示命令組織で充分だったでしょう。

 

しかし、

こんにちのように、

世の中の流れが早く、

複雑化し、

事業が多面的になっている時代には、

「自律進化できるか、どうか?」

が、病院も企業も、生命線となるからです。

 

ところが、

そんな職員ばかりになることは稀で、

大抵の組織は、

そうでない職員の方が圧倒的に多い、というのが

実状でしょう。

 

なぜか?

 

■職員も、さまざまなはずです。

 

確かに、一部には、

「そういうことには関心がない」

という人もいますが、

 

一方、話してみると、

「あれはおかしいと思う」

 

「あんな施策は無駄ではないか」

 

「もっと情報を知りたい」

 

……などなど、

みなさんが部下職員の立場だった時にも、

さまざまな考えを持っていたことを、

覚えておられることでしょう。

 

そこには、

素晴らしい意見が眠っていることもあれば、

組織が孕んでいるリスクを指摘してくれるなどの

重要な提言もあります。

全員参加の総力経営が実現することを通じて、

職員自身のモチベーションも上がり、

組織の生産性も向上するためにも、

ぜひ、職員の方々には、

積極的にそうした発言をし、

また、行動してほしいところです。

 

そこで、みなさんも組織も、

職員からの意見箱を設置したり、

会議の場でも積極的な発言を促したりしていることでしょう。

 

しかし、

会議で激論が交わされることは、まずありません。

 

いつも行儀の良い、反省会のような会議をするよりは、

たまには、

朝まで生テレビのような激しい議論をしてもらった方が、

健全なのではないか、

とさえ感じるものです。

 

また、

職員間の風通しをよくするために、

ディスカッションを多く取り入れた研修を行なってみると、

職員から、

「ふだん話すことのない他職種の職員と

対話できる機会があって良かった」

といった感想が聞かれることもあるのではないでしょうか。

 

しかし、新鮮味はあっても、

一時的な研修では、組織の風土を変えるには至らないことは

ご存知の通りです。

 

■このように、

職員にも胸に秘めた考えや思いがあり、

経営者も管理職も、組織としても、

さまざまに発言することを勧奨しているにも関わらず、

なぜ、

発言が増えないのでしょうか?

 

なぜかみんなが発言しない、

という状態が続き、

その様子を見て、

「みんなが発言しないから」

と、発言を差し控える人が増えます。

 

みんなも自分も発言しないことで、

「発言しないのが普通」

「意見をぶつけ合って不快な思いをしたくない」

という心理が働き、

そもそも問題意識そのものが無くなってしまうこともあります。

 

課題や違和感に対して職員が無関心になることが、

こんにちのような

世の中の流れが早く、

複雑化し、

事業が多面的になっている時代には、

組織にとっての

「命とり」

となってしまうことは、言うまでもないでしょう。

 

■なぜ、発言しないのか?

 

端的に言えば、それは

「言うのが恐いから」

に他なりません。

 

改善するということは、

ある意味において、現状を否定することでもあるため、

他の人に不快感をもたらすのではないか、という

ためらいを伴うこともあるでしょう。

 

また、生産性を上げたり、

患者さんへの対応をより充実したものにするには、

組織として前進したり

職員が成長するためには、

他の人に負荷がかかることを提案することになる、という

気兼ねが大きなブレーキになる傾向もあります。

 

かといって、

その提案に、どんなに信念を持っていようと、

匿名で提案しても

真意は伝わりません。

 

それどころか、

誰の提案か、判らなければ

上層部や上司に取り合ってももらえないでしょう。

 

実名では、

自分が不利益を被る可能性もあります。

 

しかも、シビアな指摘、

ドラスティックな改革ほど、

組織にとっては重要であるにも関わらず、

反発や非難を招く可能性が高いものです。

 

■シンプルに言えば、

「組織に対する心理的安全性がない」

ことに問題があるということなのです。

 

つまり、

いつもこの記事でお伝えしているように、

「なんでも話し合える風通しの良い組織」

とならなければならない、ということです

 

それは、職員同士が

「なんでも話し合える関係性」

を築かなければならない、ということを意味しています。

 

なんでも話し合えるようになるためには、

「お互いに、なんでも話そう」

という意識になってはなりません。

 

「この人たちには話せる」

という環境がなければ、

「話そう」

と言っても話せないからです。

 

ではどうするか?

 

なんでも話し合えるようになるためには、

「お互いに、なんでも聞こう」

という意識になることです。

 

「お互いに、応援し合う、味方になろう」

と言い換えても良いでしょう。

 

何を言ってもとりあえず聞いてくれ、受け止めてくれる、

という体験が日々あれば、

やがて、

「どうやら、この人たちなら話しやすい」

と、警戒心が氷解してゆくからです。

 

そのため、

患者サービス研究所のコンサルティングにおいて、

なによりも最初に、職員の方々にお勧めしているのは

このフレーズを口癖にすることです。

 

「なんでも言ってみて。

できる・できないは、後で決めれば良いのだから」

 

■ただし、職員一人ひとりが、

風通しの良い関係性づくりを意識しても、

多忙な現場でそれを維持し継続することは、至難の業です。

 

重要なのは、

「組織的に組織づくりをする」

ことが、必要不可欠だと言うことです。

 

つまり、

意図的・作為的に、心理的安全性を築くことです。

 

▶︎すなわち、

組織上層部として、第一には、

「なんでも言ってみて。

できる・できないは、後で決めれば良いのだから」

という言葉が飛び交う組織をつくる」

と宣言することです。

 

さらに

「なんでも言ってみて。

できる・できないは、後で決めれば良いのだから」

と率先して、日々職員に発信することが不可欠です。

 

▶︎第二に、

シビアな指摘が上がってきたときに、

その姿勢を積極的に評価してみせることです。

 

「手厳しい指摘には、結局回答もない」

となれば、

職員はみな萎縮して、

「やっぱり下手なことは言えない」

と、発言を差し控えるようになってしまうからです。

 

なので、その逆に意識的に、

耳の痛い指摘があったときにも、

「何も言わないよりも、はるかに意味がある。

組織として、発言してくれたことに感謝している」

という意思表示を、細やかにしてみせることです。

 

▶︎第三に、

「前向きな意見や提案をした職員が、

そのことによって不利益を被らないように組織が守る」

と宣言しておくことが、きわめて効果的です。

 

意見や提案をこころよく思っていない職員から

嫌がらせを受けるようなことがあっては、

いくら表面的に正論が伝えられていても、

陰で職員が萎縮させられることになってしまいます。

 

「そんなことは許さない」

という組織としての毅然とした態度を示しておきましょう。

 

自律進化組織になることは、

組織の維持・存続の生命線であり、

それを阻害することは、

決して許されないことだ、と意思表示することです。

 

前向きな意見や提案をした人を

「組織は守ってくれるのだ」

と感じられるようにすることも、

そうした場をつくる側が、

心理的安全性をつくる上で知っておかなければならない

初歩的事項なのです。

 

このようにして、日々、

「なんでも言ってみて」

と宣言し続け、

職員からの前向きな指摘や提案に対して、

組織が、細やかに敬意と感謝を示してゆく。

 

これによって、職員は、

「この組織が自律進化組織を目指しているのは、本気だ」

と理解することができ、

「では、自分もみずから気づき考え話し合い行動してみよう」

と思えるようになるはずです。

 

反対に、こうした組織の姿勢がなければ、

永遠に職員の心理的安全性は築かれないので、

新たな意見や提案が上がらず、

必然的に

自律進化が始まることはありません。