■以前、勤務していた職場では、
年一回の健康診断が近づくと、
先輩社員たちが、
1ヶ月ほど前から、
昼食でごはんを少しだけ残したり、
食後のタバコを控えたりしては、
健康診断が終わると
「やっと済んだー!」
と、また気兼ねなく不摂生な生活に戻る、
ということがありました。
「それじゃ、意味がないでしょう!」
と言うと、
先輩社員たちは、
「1年のうち、1ヶ月でも節制した生活をするだけでも、
意味があるのだ」
と胸を張っていました。
大人の社会においても、
本人の意思を尊重することが、
良くないことも、たくさんあるのです。
人は、自覚症状がなければ、
わざわざ健康診断を受けたり、
まして治療を受けることはないのかもしれません。
しかし、
自覚症状がないからと言って、
これまでと同じ生活をし続けて入れば、
生活習慣病は足音も立てずに忍び寄り、
気が付いた時には、
もう元に戻らない事態になっていた、ということになることは、
みなさんには、まさに釈迦に説法でしょう。
会社勤めの人でなければ、
健康診断すら受けずに、
だましだましの生活を続けてしまい、
永年の不摂生の結果、
取り返しのつかない事態に至っていた、ということがあります。
医療・福祉従事者のみなさんであれば、
このような人に、
「いったい、
どうすれば手遅れにならないうちに、
治療を受けてもらえるのだろうか?」
と、気を揉んだご経験がきっとあるのではないでしょうか?
■こうした体質の問題は、
生活習慣病のように、
徐々に身体の奥で静かに悪化して、
手遅れになってしまう傾向があります。
もちろん、
「どうも疲れがとれない」
「どうも眠りが浅い」
といった鈍い症状はあるのですが、
打撲や切創のような、
「痛い!」
と感じる鋭い痛みではないために、
体質改善をせずに、
放置しがちになってしまうのでしょう。
そして、ここからが本題です。
同じことが、組織においても起きています。
「どうも新しいことへの現場の腰が重い」
「どうも職員の離職が目立つ気がする」
「現場で防げるはずのミスが減らない」
といった鈍い症状はあるのですが、
訴訟や大量退職のような
「これは大事故だ!」
と感じる鋭い痛みではないために、
体質改善をせずに、
放置しがちになってしまっている傾向を、しばしば見かけます。
むしろ、
緊急の課題がなくても
「体質改善に取り組んでいる」
という賢明な組織は、実に稀です。
その結果、
医師・看護師の紹介会社や派遣会社に、
毎年、何千万円も支払っている、ということはないでしょうか?
毎年、二百万円弱の奨学金を出して
看護師を養成しているのに、
みな、きっちり3年で辞めていってしまう、ということはないでしょうか?
ベテラン職員だけがのびのびとやっていて、
その下に入ってくる若手職員が、
入っては辞め、入っては辞めてゆく、ということはないでしょうか?
そして、そんなベテラン職員ほど、
自分にしか判らない業務をつくり、
自分の立ち位置を確保しているので、
辞められては困るために、
院長も事務長も、注意もできない、ということはないでしょうか?
その管理職しかできない領域があるために、
その部署そのものが聖域となってしまい、
部下職員の人事評価は、
その管理職の好き嫌い次第になっていて、
その上の二次評価者が口出しできない、という事態になっているということはないでしょうか?
良いことは良い、悪いことは悪い、と
言える人がなく、
頑張っている人が頑張っているなりの評価をされず、
真面目で有能な職員ほど、
報われないために辞めてゆく、という傾向はないでしょうか?
■すでに、症状が現れているにも関わらず、
直視したくないために、
放置している患者さんと、
病院組織が、同じことになっている、
ということはないでしょうか?
11月4日に公表された424の自治体病院・公的病院だけが
再編の検討を促されているのではありません。
一日も早く、組織の体質改善を始めることが望ましいでしょう。
どんな体質を目指すべきか?
それは、組織としての全力を出し切ることができる組織、
つまり、
「職員が全員参加する総力経営」
ができる組織体質ではないでしょうか?
それは、
「経営者・管理職が指示・命令をしなくても、
部下職員がみずから気づき、考え、話し合い、
行動し続ける
『自律進化組織』体質」
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