職員のモチベーションを上げる「褒める」と、職員を追い詰める「褒める」

職員のモチベーションを上げる「褒める」と、職員を追い詰める「褒める」

■多くの現場において、

職員の離職が大きな課題となっています。

 

そこで、職員のモチベーションを上げて、

定着率を上げるためには、

「職員を褒めることが大事」

と、多くのメディアに書かれています。

 

たしかに、人には

「自己肯定感」

がなければ、周囲に受け入れてもらえるかどうかが気になるあまり、

自分らしく振る舞うこともできず、

自分の信念に従って心から患者さんに向き合うこともできません。

 

これでは、やりがいや誇りを感じて働くことなど

できようはずもないのは明らかでしょう。

 

また、自分が役に立っているという実感

すなわち、

「効果感」

が大事とも言われます。

 

自分の言動が価値あることだと認めてもらえることで

この職場にいて良いのだという

自己肯定感が支えられる、ということです。

 

■職員が、モチベーションを上げるためには、

「褒める」

ことが大事だ、と言われています。

 

しかし、この「褒める」には、2つあることに気をつけなければなりません。

 

その2つとは、

「評価」と「承認」です。

 

まず、

「評価」

とは、

「組織や上司のものさしに照らして、良い・悪いを判断すること」

です。

 

職場においては、

「成果を上げた」

「知識・技術がある」

といったことです。

 

一般に、職場で「褒める」と言えば、

ほぼ、この「評価」のことを言っているのではないでしょうか。

 

一方、

「承認」

とは、言い換えれば、

「無条件に理解し、応援する」

ということです。

 

いわゆる

「承認欲求」

という言葉の「承認」のことであり、

母親が赤ちゃんに無償の愛情を注ぐことも

「承認」

と言われています。

 

■職場では(特に医療現場では)、

つい評価をしがちですが、

注意しなければならないのは、

「評価だけしかない現場では、職員のモチベーションは上がらない」

ということです。

 

なぜなら、評価しかない現場とは、

「良い結果」

が出た時だけ褒められるということなので、

「組織の求めに応えなければならない」

だけの職場となってしまい、

職員は疲弊してしまうからです。

 

これからの医療現場では、

一人一人の職員が、

みずから気づき考え話し合い行動することが

組織としても重要な時代となってきます。

 

すると、

良い結果につながろうと、つながらなかろうと、

「結果にかかわらず」

みずから気づき考え話し合い行動したことに

「価値があるよ」

と褒めること、すなわち

「承認」

することが極めて重要になってきます。

 

良い結果が出ても出なくても、

問題提起することや改善提案することに対して、

きめ細かく、

感謝や敬意、賞賛を示して「承認」することが、

職員のモチベーションを上げ、

そうしたチャレンジングな組織体質を創るうえで、必要不可欠となるのです。

 

■みなさんは、この

「評価」と「承認」を

意識的に使い分けているでしょうか?

 

無意識に、つい

「評価」

ばかりをしてしまいがちですが、

「評価」

とは、組織や上司といった他者の価値観を基準とするので、

職員本人からすれば、

「価値観の抑制」

を強いられているため、心理的には窮屈そのものです。

 

したがって、

「しなければならない」

という義務感こそ喚起されても、

心からのモチベーションが湧き上がることはありません。

 

評価には、他者のものさしに照らして良くなければ、

「マイナス評価」

されるということがありますから、

職員を萎縮させることにもつながるのです。

 

一方、

「承認」

とは、職員本人がみずから気づき考え話し合い行動するといった

本人の価値観を尊重するので、

「価値観の解放」

が行われるので、

大きな勇気と元気を得られます。

 

人はそもそも、価値観が解放された時にこそ、

大きなエネルギーを得ることができるものです。

 

承認されることによって、

「もっと言おう、もっと行動しよう」

という心からのモチベーションが生まれます。

 

■ここで重要なのが、

業務の話しかされない現場では、

「ああすべき、こうすべき」

といった

「評価」

しか交わされない、ということです。

 

これでモチベーションが上がるはずはありません。

 

反対に、

業務以外の話をすることができる現場であれば、

「本当は、こうしたい」

「本当は嬉しい」

「本当は残念だった」

「本当は、もっと変えてゆきたい」

など、結果にかかわらず、

職員個々の価値観を出し合うことができるので、

「承認」

しあうことが可能な職場となるのです。

 

では、みなさんの職場では、

業務以外の話をする場面はあるでしょうか?

 

昨今の働き方改革の影響で、

「余計な話をする時間があるならば、早く帰りましょう」

という考えが正しいとされる傾向があり、

業務以外の話をする機会は儲けにくくなっているかもしれません。

 

また、職員においても、

「わざわざ業務以外の話をする」

ということに慣れていないということもあるでしょう。

 

これでは、

「承認」

が交わされる職場になることはあり
ません。

 

もしみなさんが、

モチベーションが高く、

問題提起や改善提案がどんどん上がってくるチャレンジングな組織を目指されるならば、

 

日常的に

「承認」

が交わされ、お互いに大きな元気と勇気を与えあう現場を

意図的・作為的に創ってゆくことが必要不可欠となります。