職員のモチベーションを自在に上げる経営者は、つまり何をしているのか?

職員のモチベーションを自在に上げる経営者は、つまり何をしているのか?

■研修会社が、

「職員のモチベーションをもっと上げたいなら」

と、さまざまな研修を売り込んできますが、

効果が上がったためしがありません。

 

「経営がわかる体験ゲーム」

といったボードゲームをやらせる研修までありますが、

会社でお金を払って人生ゲームをやるのと

さして変わりはないでしょう。

 

「知っているとできるは違う」

と言う人がいますが、同じです。

 

重要なのは、

「できるとやりたいは違う」

ということです。

 

「やりたい」

と思わせるにはどうすればよいか?

 

モチベーションを上げる方法について、

強烈な具体策を、後半で述べています。

 

なお、医療現場に導入するか?は、一定の工夫が必要です。

(どう工夫するか?は、また別の機会に述べますので、

ぜひ、一度、どうにかやれる方法はないか?

検討してみてください)

 

■一般に、企業においては、自分の給与の3倍を稼げ、と言われる。

それは、

会社負担の健康保険料・年金保険料・失業保険料はもとより、

賞与引当金や退職金引当金に充当されるほか、

人材育成費や有給休暇などのコストにも充てられるのですが、

 

もっと大きいのは、

施設設備費や募集広告費といった自分の担当業務と

直接関係のない費用に回されたり、

 

さらには、

何をしているかもわからない、まして会ったこともない、

管理職や役員の報酬になっているので、

 

職員にとっては、

「3倍働かされている」

という徒労感を覚えることになるのです。

 

■ところで、

自分から、この仕事やこの職場を選んで入ってきて、

自分から、毎日出勤してきているにも関わらず、

職員のモチベーションが上がらないのはなぜでしょうか?

 

なぜ、「やりがい」を感じることができないのか?

 

人間のおかしくも滑稽な心理構造がここにあります。

 

それは、

自分のしていることと結果の因果関係を

見失ってしまっているからです。

 

「やりがいがある」

とは、読んで字のごとく、

「やったかいがあったと感じられる」

ということで、

わたしたちの普段の表現にすれば

「やってよかった!と思える」

ということです。

 

「やってよかった!」

と思えるには、

自分がやったことが、

どのような結果につながっているのか?

の因果関係が見えていなければなりません。

 

もっとも職員のモチベーションが上がる方法は、

働きと報酬の因果関係を明確にすること、なのです。

 

■ということは、

人がモチベーションを上げることができるためには、

本人がやっていることと、

その結果との

「因果関係を見えるようにすること」

に尽きるということです。

 

たとえば、メーカーにおいて、

製造部門からは、

「営業は、なぜ無理な納期を指示してくるのだ」

という不満が上がることが珍しくありません。

 

そこで、ある時、わたしが、

「製造スタッフも、2、3日、

営業スタッフと一緒に回ってみるように」

と提案しました。

 

すると、

その製造スタッフは、

大いにモチベーションを上げて、

同行訪問から帰ってきてくれた、ということが

あります。

 

クライアントにはクライアントの事情があり、

「いつも、おたくの会社には

無理をかけて、申し訳なく思っているが、

そこを助けていただいているので、

当社もなんとか生き残ることができているのです」

と、

クライアントの役員まで出てきて、

感謝されたとのことでした。

 

それ以来、その製造スタッフは、

「無理な納期ほど、

俺たちの出番だ」

と張り切って営業の要望に応えるようになりました。

 

■ここからは、一つの発想ですが・・・。

 

そこで、

「職員がやっていることと、

その結果との

因果関係を見えるようにする」

施策の一つとして、

 

たとえば、1年のうち、2週間だけ、

「その期間に、ある職員が生み出した粗利益は、

すべて、その職員に特別報酬として支給する」

としてみるのはどうでしょうか?

 

組織全体で、

「その期間に、組織全体で生み出した粗利益は、

すべて、職員全員に特別報酬として支給する」

とするのも良いでしょう。

 

こうすると、職員の目の色が変わるはずです。

 

その2週間だけ、やる気が出る

げんきんな職員もいるでしょう。

 

しかし、

「やったらやっただけ入る」

と思えば、人間は、

ありとあらゆる方法や段取りを考えるでしょう。

 

その中で、

「本気を出せばこんな方法があった!」

と、おのずと視野が広がるはずです。

 

「考えてみれば、自分の親戚に相談すれば、

大きなマーケットにアプローチすることができた!」

とか、

 

「考えてみれば、いきつけのお店に、

モニターになってもらって、

サンプルを置かせてもらえば、

リサーチ会社に外注する何百万円が節約できた」

とか、

 

「考えてみれば、自分の夫(妻)が務めている医療機関と

連携すれば、

これまでにない協力体制が作れるかもしれない」

などなど……。

 

そのようにして、グッと広がった視野や発想は、

それ以外の50週間にも大いに活かせることでしょう。

 

まるで、自営業者のような2週間を体験することによって、

自分が経営者になったような視野や発想で

業務に取り組むことができるはずです。

 

■研修会社が、

「経営センスを学べるボードゲーム」

などを持ち込んでくることがありますが、

 

会社の費用で人生ゲームをして遊んで、

得るものがあろうはずもありません。

 

本当に自律的な思考を学ばせたければ、

「本人がやっていることと、

その結果との

因果関係を見えるようにすること」

 

これを体験させるに尽きるのではないでしょうか。

 

■また、医療現場では、

「金銭的報酬を働きにひもづけたり、

職員個人の貢献にひもづけることは、なじまない」

ということであれば、

 

「患者さん・ご家族からの感謝や敬意、労いの声」や

「地域住民や連携先の方々の声」

「他の職員からの声」

を、きちんと職員一人ひとりに還元すること、

となります。

 

組織として、それらの声を細大漏らさず把握して、

きちんと、当事者である職員に綿密にレスポンスすること、

と置き換えて考えることができます。

 

これはできるでしょう。

 

■2週間が良いのか・どうか、

職員個人が良いのか・組織全体が良いのか、

粗利益のどこまで支給するのが良いのか

……などは、

組織や現場によって異なるでしょう。

 

いずれにしろ、

経営者の方は、

「本人がやっていることと、

その結果との因果関係を見えるようにする」

という強烈な企画を、

ぜひ勇気を持ってやってみることをお勧めします。

 

体験ボードゲームや、

座学とディスカッションのような

研修ごっこよりも、

「体験」

の方が、はるかに職員の目の色が変わります。

 

そして、その効果が確実に持続します。