■いわゆる接遇マナー研修を受けたことがあるでしょうか?
言葉遣いは大切なので、
たとえば、
ラ抜き言葉や敬語についても、
研修では大抵教えられていますが、
なかなか身につくことはないことは、みなさんも
ご存知のことでしょう。
語学の勉強も同じで、
学んだだけでは、使いこなせるようにはなりません。
この「表現力」という能力は、
日々の実践の中でしか習得できないものなのでしょう。
■ところが、昨今、
人々の表現力は、ますます落ちていることも
痛感されているでしょう。
職場においては、部下職員の行動について聞いても、
「なぜそうしたのか」
を言えない、ということも珍しくありません。
事実を話すこともできないくらいなので、
まして、
自分の微妙な気持ちを表現することもできない人が
たくさんいます。
以前は、
「話せばわかる」
と言われていましたが、
これからは、話してもわからない時代になってきました。
これは組織運営上もとても困った時代ですが、
そもそも、
表現できない人は、その本人たちが不幸になるのです。
なぜなら、人間は、
わかって欲しい生き物だからです。
もし、自分の子どもに、
「多くの人にわかってもらえる人間になって欲しい」
と願うなら、
幼い頃から多くの書物に親しみ、
機微な心情を伝えることができる表現力を身につけさせることを
お勧めします。
人の気持ちのわかる人間にもなってもらいたいものですが、
それはその後のことです。
まず自分の心を言語化できなければ、
他人の心を理解することも難しいからです。
■ところで、組織経営者にとっても、
これまで以上に
職員の表現力が必要な時代になりました。
▶︎まず、昭和の製造立国だった時代には、
夕方に積み上がったモノや、お金の集計を見れば、
仕事の成果がすぐにわかりました。
しかし、こんにちのように複雑・多様化し、
変化の激しい時代には、
職員一人ひとりからの情報が必要です。
職員が状況を理解し、判断し、説明をしてくれなければ、
上層部に必要な情報が上がってきません。
「患者さん、大丈夫でした」
という説明だけでは、
本当に納得して帰ってゆかれたのか、
時間がないから引き上げただけなのかも、わかりません。
その温度を感知し、伝えてくれる能力が、
職員に求められる時代なのです。
▶︎また、職員が自分をきちんと組織から評価されたいのは、
今も昔も変わりありません。
しかし、そのためには、
職員が自分から仕事ぶりや思いを表現できる力が必要です。
職員が自分の心や立場を守るためにも、
表現できなければなりません。
人間は、言語化できない概念は、理解できません。
自分の感情も、患者さんの感情も、
言語化できなければ、
心に寄り添うと言うこともできないのです。
▶︎組織の上層部・管理職にも表現力が必要です。
これまでは、
「なんでわからないんだ!」
と上司が部下に無茶を言う光景も、ごく当り前でした。
いまでは、そんな理不尽なことを言えば
パワー・ハラスメントになってしまいます。
▶︎部下を納得させてやれないならば、
辞めてしまうだけで済むかもしれませんが、
今の時代は、世間も黙ってはいません。
個人が容易に社会に発信できる時代になったので、
うかつな対応をすれば、
社会から想像を超えた非難を受けることにもなりかねません。
それなりの根拠があって寄せられる不満に対しては、
「門前払いをすれば済む」
という時代ではなくなりなったのです。
にも関わらず、いまだに
「取り合わない」
で押し切ろうとする古い感覚の人種がたくさんいます。
このところの総理大臣や財務大臣が
「再調査をしない」
と言い張ったり、
諮問機関からの都合の悪い答申は
「受け取らない」
と言ったり、
「責任は私にある」
と言いながら、一切まともに対応しないなどの態度は、
「門前払いで済む」
という昭和の時代の感覚を丸出しにしていると
いうよりほかありません。
門前払いで乗り切ろうとする雑な態度が
自治体や大手企業などよく見られるのは、
これまで、それでやってこれた体験によって、
その感覚が染み付いているからでしょう。
しかし、
昨今は、そうもいかなくなってきましたから、
組織の経営陣・管理職も、
理解を得られるように釈明できる表現力を
身につけなければならない時代になったことを
自覚した方が良いでしょう。
大のおとなが、自分が退職するときに、
安易に退職代行業者を使っていては、
ますます表現力が損なわれる一方です。
■さて、本題です。
表現力は、
日々の実践の中でしか習得できません。
とはいうものの、
経営陣・管理職が、
「最近の人間は」
と嘆いているだけで、なるように任せていては、
組織は成長できないばかりか、
職員が病んだり辞めたりして、
組織の生産性も落ちる一方となってしまいます。
ということは、
意図的・作為的に
コミュニケーションの機会を設けなければならない、
ということです。
昨今の働き方改革のあおりで、
必要以上のコミュニケーションはしない、という
流れになってきていますから、
経営陣のトップ・ダウンで、
コミュニケーションを設けなければならないことになります。
そのための
1日5分だけのコミュニケーション・モデルが
患者サービス研究所の提唱する
「HIT-Bit」
です。
職員のコミュニケーション能力を高めて
柔軟で強い組
織を創るためには、
日々の表現を実践する場を設けることが不可欠でしょう。
日常のコミュニケーション・モデル
「HIT-Bit」
の具体的な内容については、
また別の機会にご紹介します。