■なぜ、自律進化しないのか?
それは、上層部・上司が、
部下職員がするべきところを、わざわざみずから責任を引き受けてしまう
「負責病」
になっており、その結果、部下職員が
「依存病」
になっているから、にほかなりません。
■その顕著な例が、職員研修でよく行われる
「グループ・ディスカッション」
です。
職員本人たちが頼んでもいないのに集められ、
グループに分けられ、
自己紹介ゲームで仲良くなった気にさせられ、
さして関心がないのに与えられたテーマで話し合うよう命じられ、
グループごとに前に出て発表させられ、
「自分たちで考えて発表したことなんだから、実践できるでしょう?」と言われて
たいしてその気もなかったのに、発表した通りに実践するように言われる、
・・・という研修、誰にとっても、
受講したのは、一度や二度ではないでしょう。
組織側の、
「この価値観をわかって欲しい」
というIN-Putしたい気まんまんの研修ですから、
職員が心から燃えることがないのは、必然でしょう。
しかし、
「話し合う」
「結論を出す」
「発表する」
といった
身体だけは自発的な行動をしているように見えるために、
あたかも
「自分たちで考えたんだから、やる気が出たはず!」
と、研修コンサルタントも、研修担当者も、経営者・上層部も
こぞって錯覚しているというわけです。
しかし、受講者した職員たちから聞けば、
「はぁ、まぁ、話し合って宣言しろって言われましたので」
というのが本音でしょう。
これもまさに、
「大事なことは上が決めて、下は従うべき」
という指示命令体質の現れであり、
「話し合わせて考えさせるのは組織や上司の仕事」
という負責病の一つに他なりません。
自律進化体質であれば、
部下たちは、
「ああでもない、こうでもない」
と話しあうのが当たり前です。
実は、自律進化組織でなくても、
同僚同士、終業後に居酒屋に寄って、
「今回のあれ、うまくいくには、タイミングだ大事ですよね!」
「主任があの部分をカバーしてくれたら安心なんですけどね」
などと、あれこれ言いたいことをぶつけ合って帰る、ということは
多々あるはずで、
こうしたみずから気づき考え意見交換することの方が、
誘導尋問的なグループ・ディスカッションをさせる研修の
何倍も健全で生産的ではないでしょうか。
■さて、本題ですが、
グループ・ディスカッションをして、
各グループからの発表となると、
時間が足りなくなることがしばしばあります。
その場合、みなさんの現場ではどうするでしょうか?
「せっかくなので、時間を延長して、全グループの発表を聞こう」
というパターンもよく見ます。
「どうしても延長できないので、改めて別日に時間を設けて続きをしよう」
というパターンも中にはありました。
しかし、この親切な方法が、まさに
「負責病」
です。
世の中には時間切れになってしまうことなどいくらでもあります。
それなのに、わざわざ全グループに発表のチャンスを平等に与えることは、
過保護以外の何ものでもありません。
上層部・研修担当者が
「全グループに機会を与える」
という責任を、わざわざ負ってしまっているので、
職員側は依存病となり、
「自分をアピールさせてもらえるのが当たり前」
と勘違いして、受け身体質になってしまうわけです。
こうなると、
時間切れで順番が回らず、ついに別にも機会を与えられなかったりすると、
「せっかく話し合ったのに、発表できないなんてひどい」
と文句を言うことに疑問も感じない、という始末です。
■日頃、このように
「黙っていても順番が回ってくる」
というお膳立てをしてしまっていることが、
着実に、職員を依存病にし、
指示命令体質を助長しているのです。