「一貫性」のない組織づくりは成功しない

「一貫性」のない組織づくりは成功しない

■みなさんは、何か新しいことを進めるにあたって、

現場から抵抗感を示されることがあるのではないでしょうか?

 

現場を巻き込んで進めることとなると、

「何ですか?」

「またですか?」

「またやめるんですよね?」

「いつまでですか?」

と反発が起きることも珍しくありません。

 

「みんな、ちょっと聞いてほしい。うちの病院も、これからに向けて……」

「えー、嫌ですぅ〜」

「まだ内容を言ってないけど〜〜」

ということすらあります。

 

しかし、現場職員がそう言いたくなるのも無理もありません。

 

これまで、他の勤務先などで、

経営陣や上司の場当たり的な取り組みに振り回されてきた、という経験のある人も少なくないからです。

 

「組織を良くするため」

といえば、

やれクレドづくりだの、

やれサンキューカードだの、

やれコーチング勉強会だの……。

 

さまざまに、コンサルタントが来ては

講義を聞かされたり、

あれこれやらされたりしたのに、

結局、

一向に離職が減りもせず、

職員の皆さんも幸せになっている実感もない、

ということが世の中で多々起こっているからです。

 

なので、職員が

「またですか?」

と言いたくなるのも当然でしょう。

 

■しかし、それで遠慮していては、何も進みません。

 

必ず実を結ぶ施策を進めることが必要です。

 

そこで、新たな取組を導入するにあたっては、

「新しいことが始まる」

と思われないことが重要です。

 

なぜなら、実は、

現場職員は、

「経営陣や管理職が本気かどうか」

だけを見ているからです。

 

したがって、

「本気でないならやっちゃダメ」

なのです。

 

時々、

「試しにやってみようよ」

と、気軽に現場を巻き込もうとする経営者や管理職もいますが、

現場にとっては、迷惑でしかありません。

 

特に、

自治体の病院経営部門における教育研修担当部署の中には、

「昨年と同じように研修を企画している。

ただし、業者を変えてみたい。

目先を変えてみたいので」

と、目指す方向性を明確にすることなく、

ただ消化試合をこなすごとく、

お膳立てするだけの仕事をしている、

という残念なケースも珍しくありません。

 

「なぜ、そんなことをするのか?」

「ちゃんと続ける根性もないのに!!」

というのが、現場の方々の本音でしょう。

 

ともあれ、現場は、

「経営陣・管理職が本気なのか?」

を見ているものです。

 

本気だと感じられなければ、

「テキトー」

に表面的に応じ、また経営陣・管理職が飽きるのを待つだけ

だからです。

 

では、

「本気」

であることが伝わるにはどうすれば良いか?

 

■それは、

「一貫性」

を示すことに尽きます。

 

換言すれば、経営者・管理職の組織づくりが成功するかどうかは、

「揺るがない姿勢」

つまり

「一貫性」

があることが生命線となる、ということです。

 

職員から

「また、あれこれ言い出した」

と、唐突に感じさせてしまうのは致命的です。

 

なので、まず第一に、

揺るがない大テーマを明示しておき、

新たな取組をする場合には、

「今回の取組は、大テーマを進める上でどうしても必要な、

この一部分だからね」

と伝えた方が良いのです。

 

組織づくりは、例えて言えば、

ちょうど交響曲を演奏するようなものです。

 

そこに登場するすべての楽器、

すべての音が、

最高の交響曲を完成するために必要不可欠なものであり、

どれ一つ欠けても

最高の演奏は実現せず、台無しになってしまいます。

 

現場職員は、新しいことに対しては、常に

「なぜそれをやるの?」

と疑問を感じるのが当り前ですから、

逆に、

いつも掲げられているテーマに沿った一貫したことに対しては、

「なぜそれをやらないの?」

となるのが当り前となります。

 

■大テーマとは、一般には、

「病院の理念」

ということになるでしょう。

 

たとえば、

「どこよりも愛され信頼される病院」

という理念であれば、

 

「今回の患者満足度調査も、

どこよりも愛され信頼されるには、

やらないわけにはいかない」

となるでしょう。

 

「どこよりも愛され信頼される病院になるには、

職員同士がお互いに思いやれなければならないので、

サンキューカードを導入する必要があるのではないか」

 

「どこよりも愛され信頼される病院になるには、

そのための委員会を立ち上げ・・・」

 

「そのための勉強会を・・・」

 

「そのための他病院の方の講演会を・・・」

 

このように、

「二言目にはあの大テーマ」

という一貫性があれば、新しい施策も、

「そのために必要な施策だから」

と、唐突感がなく、

現場職員からの理解を得られやすくなるのです。

 

■そこで、大テーマは、

「たった1つに絞ること」

をお勧めします。

 

1つに絞って、初めて本気が伝わるからです。

 

経営陣や管理職が、

「あれもこれも大事」

と言っているようでは、

部下職員は、

「その2つについて、どの程度のバランスで力を配分すれば良いのか?」

と戸惑ってしまいます。

 

また、さらには、

「3つ目、4つ目の大事なことも登場するのではないか。

いったい、いくつのことを要求されるのやら」

と不安を感じて、

挙げられたすべてのテーマに全力投球することが

できなくなってしまうのです。

 

■もし、経営陣・管理職が

「テーマを1つに絞り切れない」

ならば、それは

そもそも本質が見えていないということを意味します。

 

というのも、もし2つが大事、と思ったとしても、

その2つの間にも、必ず、

原因と結果の関係があるはずだからです。

 

どうしても片方しか選べないとした場合にあなたがどちらを選ぶか?


それが本質です。

 

■現場からは

「うちの経営陣・管理職は、二言目にはあのテーマを言う」

と、ちょっと鬱陶しく思われるくらいに

「一貫性」

を見せることが重要です。

 

そして、新たな取組を進めるにあたっては、

「今回の施策は、いつものあのテーマのうちのこの部分なのだ」

と示すようにしましょう。

 

そのように進めて、

「今回の取組は、

いつものテーマにとって必要不可欠な一部分なのだ」

と映った時、

現場職員からは

「当然、それをやることになるよね」

と理解されるのです。

 

むしろ

「必要ですね、ぜひやりましょう」

とさえなることでしょう。

 

経営陣・管理職の方々には、

新しい施策を進める時、

「今回の施策は、いつものテーマのどの部分なのか?」

を必ず説明できるように考えることをお勧めします。