■よく、研修講師が、
「知っているのとできるのでは違うんです!」
と言います。
そして、
「できるのと、しているのでは違うんです!」
とも。
しかし、
「知っている」でも
「できる」でも、
「している」でもない、
最も重要なことが挙げられていません。
まさに、指示命令体質の発想を出ていないからです。
■では、最も大事なのは、何でしょうか?
それは、
「したい」
です。
どんなに知っていて、できて、やっていても、
それが他者からの価値観の強要であれば、
それは、
上司から言われた範囲を出ることはありません。
上司の目が行き届かず、誰も見ていないところでまで、
その実践が続くことはありません。
まして、上司が指示命令していないことにまで、
みずから気づき考え行動することもありません。
つまり、
思考は消極的、
行動は制限的となるのです。
これでは、
「教わったことを現場で活かしたい」
という動機がないのですから、
いくら教育しても、現場は変わることがありません。
■一方、
「したい」
という価値観があれば、
「教わったことを現場で活かしたい」
という意思をもって業務に望むので、
思考は積極的、
行動は拡張的です。
すなわち、誰かの指示や監視がなくても、
「より良くできないか」
「もっとできることはないか」
と量的にも質的にも、向上し続けます。
そして、何よりも、
しかるべき技能を、
知らなければ「知りたい」とみずから学び、
できなければ「できるようになりたい」とみずから習得し、
実践していなければ「実践したい」とみずから実践の場を求めたり設けたりします。
■こうしてみると、すべての職員育成において、
知らないことを教えたり、
できないことを習得させたり
実践していないことを実践できる場を与えることよりも、
「したい」
という動機を持たせることが何よりも重要であり、
合理的であることがわかるでしょう。
「知る」「できる」「実践する」といった表面しか見ていないことは、
いわば、
受験するつもりのない子どもに、
参考書を買い与えたり、
家庭教師をつけたりするようなもので、
効果が上がらないばかりか、上司部下の関係も悪くなってしまうのです。
逆に、
「実践したい」という動機を持つようにすることができれば、
みずから「知りたい」「できるようになりたい」「実践したい」という本人を
上司がバックアップすれば良いので、
部下からは感謝され、生産性も向上します。
■研修を行なう場合に最も重要なことは、
知識や技術を学ばせたり、実践するよう促すことではありません。
研修が終わった時に、受講者がみずから
「もっと学びたい、できるようになりたい、実践する場を得たい」
と、
「したい」という思いを、心から感じるようにすることです。
むしろ、研修を行なう時には、
そこだけに注力しても良いくらいです。
参加者が
「実践したい」
と感じるに至っていなければ、
学ばされたことは、間も無く風化してしまい、
時間と費用と労力の無駄を生み、
上司部下の関係を悪くしてしまうだけです。
みなさんの現場では、
受講者がみずから
「もっと学びたい、できるようになりたい、実践する場を得たい」
と、
「したい」という思いを、心から感じるような研修を目指しているでしょうか?