424ショックを、活かすか殺すか

424ショックを、活かすか殺すか

■2019年9月26日に、厚労省から、

再編検討を勧める自治体病院・公的病院の計424病院について、

突然、

リストが公表されました。

 

再編ということは、

閉院か、統廃合か、身売りか……、

ともあれ、

いまの状態で運営することは必要ないのではないか、

という意思表示です。

 

しかも、

全1455病院のうちの424病院なので、

実に29.1%にのぼります。

 

いずれ、民間病院にも、

リストを公表しないまでも、

同じような投げかけが行なわれるのではないか、とも考えられます。

 

公表はひどい気もしますが、

これまで、予兆がなかったわけでもないでしょう。

 

■ところで、

『7つの習慣』という名著の中で、

第3の習慣は、

「重要事項を優先する」

というポリシーがあります。

 

人は、とかく

重要でない緊急なことをしているために、

その結果、やがて

重要で緊急なことに追われることになり、

良い結果を得られなくなってしまう傾向があります。

 

そこで、フランクリン・コビー氏は、

「重要なことを、緊急でないうちに片付ければ、

重要なことでクオリティの高い成果を出すことができる」

と唱えています。

 

そして、このことを

「大事だ、大事だ」

という人がたくさんいます。

 

しかし、このポリシーを体得した、という人は、

なかなかいません。

 

なぜか?

 

それは、人間のある心理構造を見失っているからです。

 

その心理構造とは、

「人間は、緊急にならなければ、重要に感じない」

という性質です。

 

重要なことでも、眼前に迫ってくるまでは、

重要に感じられず、

目先のつまらないことを優先してしまうので、

 

頭では、

「重要なことを、緊急でないうちに片付ければ、

重要なことでクオリティの高い成果を出すことができる」

と、理解していても、

心の底では、

「先に片付けるもなにも、

緊急になっていないのに重要なことなどない」

と思っているのです。

 

多くの人が、なかなか

「重要なことを、緊急でないうちに片付ける」

ということが、いつまでも習慣化できないのは

この心理構造のためです。

 

■しかし、424病院も、

「重要なことを、緊急でないうちに片付ける」

ことができていれば、

もっと打てる手があり、

リストにされることもなかったのかもしれません。

 

厚労省が荒療治に出たのも、

「手を打ってこなかった病院に原因がある」

という考えがあったからではないでしょうか。

 

■では、どんな手を打つことができたでしょうか?

 

たとえば、

2025年問題について、院内で何度も研修会をして、

意識を高めようとしたでしょうか?

 

診療報酬点数の動向から、

厚労省が医療行政についてどのような方向性で考えているのか、

の勉強会をしたでしょうか?

 

そうした勉強会が、

最も診療報酬点数の動向に影響を受け、

最も敏感であるはずの、

医事課主導で行なわれていたでしょうか?

 

医事課長は、そんな時、院内を啓発することについて、

どう考えていたでしょう?

 

あるいは、

昨今、診療報酬点数の影響を大きく受ける

医療連携室が勉強会を主催しても良いでしょう。

 

日頃の、連携先との関係性づくりの苦労やポイントと共に、

連携の重要性を訴えれば、

より説得力が増したことでしょう。

 

その時、医療連携担当者は、どう考えていたでしょう?

 

これまでそうした勉強会をしていなかったとしても、

424病院の公表を受けて、

院内で、

これまでとこれからのことについての勉強会を

したでしょうか?

 

何事も、

  • ショックがあった時、
  • 驚いた時、
  • 話題に上っている間、
  • 世間が騒いでいる間、

に、取り上げるという「タイミング」が重要です。

 

現場職員みんなが話題にしているうちに、

タイムリーに勉強会なり、

コミュニケーションを設けていたでしょうか?

 

さらに言えば、

話し合うだけとか、

勉強会で話を聞くだけよりも、

当事者と接する方が、はるかにリアリティとインパクトがある

学びとなります。

 

ということは、

自治体病院・公的病院で、

経営改善に必死に取り組んでこられて、

すでに大きく改善している病院を訪ねるとか、

その病院の方に話を聞かせていただく、といったことを、

2019年9月26日から今日に至るまでの間に

したでしょうか?

 

あるいはその反対に、

経営が行き詰まった事例を

当事者から聞かせていただく、といったことを、

今日に至るまでの間に、したでしょうか?

 

自治体病院・公的病院の協力が得られなければ、

同じように取り組んでいる民間病院や

同じように困っている民間病院の実態を

当事者から聞かせていただく、といったことを

したでしょうか?

 

病院という建物の中で蛸壺化していれば、

日常の登場人物は同僚ばかりとなりますが、

いまの医療機関は、

そんな壺の中で、

同僚と喧嘩をしたり、

勝手にやって迷惑をかけたり、

離職者を出している場合ではないのです。

 

再編検討が遠い話のうちに、

「緊急でないけれど重要なこと」

だと認識することをお勧めします。

 

そして、今のうちから、

遠い将来の危機のために、

打てる手を打ってゆくことが望まれるでしょう。

 

もし

「緊急で重要なこと」

になってから、現場で話し合ってみても、

唐突に感じられてしまい、

職員の協力は得られません。

 

もしくは、

ステージが進行しているという宣告となれば、

危機感を通り越して、

悲壮感や諦めをもたらしたり、

組織の空中分解を起こすだけにもなりかねません。

 

■この424ショックを

「該当しなかったから良かった」

という世間話にしてはならないでしょう。

 

「だからこそ、いまうちの病院が何をできるのか?」

職員全員が目を覚まし、

組織全体を巻き込んで改革してゆくための格好のチャンスに

することができているでしょうか?

 

■ところで、

「組織改革は、タイミングが大事」

と伝えた通りです。

 

きっかけをどれだけ活かせるか?

が、センスです。

 

424ショックという衝撃的なきっかけを、

「今からでも、どう活かすか?」

と考えることができるかどうか?

 

組織マネジメントのセンスがあるかどうか?が

明らかに現れます。