負責病の事例(9) 「グループ・ディスカッション」

負責病の事例(9) 「グループ・ディスカッション」

■なぜ、自律進化しないのか?

 

それは、上層部・上司が、

部下職員がするべきところを、わざわざみずから責任を引き受けてしまう

「負責病」

になっており、その結果、部下職員が

「依存病」

になっているから、にほかなりません。

 

■その顕著な例が、職員研修でよく行われる

「グループ・ディスカッション」

です。

 

職員本人たちが頼んでもいないのに集められ、

グループに分けられ、

自己紹介ゲームで仲良くなった気にさせられ、

さして関心がないのに与えられたテーマで話し合うよう命じられ、

グループごとに前に出て発表させられ、

「自分たちで考えて発表したことなんだから、実践できるでしょう?」と言われて

たいしてその気もなかったのに、発表した通りに実践するように言われる、

・・・という研修、誰にとっても、

受講したのは、一度や二度ではないでしょう。

 

組織側の、

「この価値観をわかって欲しい」

というIN-Putしたい気まんまんの研修ですから、

職員が心から燃えることがないのは、必然でしょう。

 

しかし、

「話し合う」

「結論を出す」

「発表する」

といった

身体だけは自発的な行動をしているように見えるために、

あたかも

「自分たちで考えたんだから、やる気が出たはず!」

と、研修コンサルタントも、研修担当者も、経営者・上層部も

こぞって錯覚しているというわけです。

 

しかし、受講者した職員たちから聞けば、

「はぁ、まぁ、話し合って宣言しろって言われましたので」

というのが本音でしょう。

 

これもまさに、

「大事なことは上が決めて、下は従うべき」

という指示命令体質の現れであり、

「話し合わせて考えさせるのは組織や上司の仕事」

という負責病の一つに他なりません。

 

自律進化体質であれば、

部下たちは、

「ああでもない、こうでもない」

と話しあうのが当たり前です。

 

実は、自律進化組織でなくても、

同僚同士、終業後に居酒屋に寄って、

「今回のあれ、うまくいくには、タイミングだ大事ですよね!」

「主任があの部分をカバーしてくれたら安心なんですけどね」

などと、あれこれ言いたいことをぶつけ合って帰る、ということは

多々あるはずで、

こうしたみずから気づき考え意見交換することの方が、

誘導尋問的なグループ・ディスカッションをさせる研修の

何倍も健全で生産的ではないでしょうか。

 

■さて、本題ですが、

グループ・ディスカッションをして、

各グループからの発表となると、

時間が足りなくなることがしばしばあります。

 

その場合、みなさんの現場ではどうするでしょうか?

 

「せっかくなので、時間を延長して、全グループの発表を聞こう」

というパターンもよく見ます。

 

「どうしても延長できないので、改めて別日に時間を設けて続きをしよう」

というパターンも中にはありました。

 

しかし、この親切な方法が、まさに

「負責病」

です。

 

世の中には時間切れになってしまうことなどいくらでもあります。

 

それなのに、わざわざ全グループに発表のチャンスを平等に与えることは、

過保護以外の何ものでもありません。

 

上層部・研修担当者が

「全グループに機会を与える」

という責任を、わざわざ負ってしまっているので、

職員側は依存病となり、

「自分をアピールさせてもらえるのが当たり前」

と勘違いして、受け身体質になってしまうわけです。

 

こうなると、

時間切れで順番が回らず、ついに別にも機会を与えられなかったりすると、

「せっかく話し合ったのに、発表できないなんてひどい」

と文句を言うことに疑問も感じない、という始末です。

 

■日頃、このように

「黙っていても順番が回ってくる」

というお膳立てをしてしまっていることが、

着実に、職員を依存病にし、

指示命令体質を助長しているのです。