■さまざまな現場で、
「やっているけれど、形骸化している」
ということを、しばしば聞きます。
▶︎たとえば、目標管理制度。
「半期ごとに目標シートを提出させたり、
上司との面談をさせているけれど、
職員も活性化していないし、
組織の生産性が上がっているとも言えない」
と。
そもそも、
「目標なんて、そんなにないので、
シートに書く目標が浮かばないんです」
という声も多々あるそうです。
面接を終えた部下が
やる気に満ち、目を輝かせて部屋から出てくる、ということも
ほぼ聞きません。
しかし、やらなければ、
その対話すらなくなってしまうので、
やめる決心もつかないそうです。
▶︎たとえば、TQC活動。
「半期に一度、各部署から、
改善事例を発表してもらっていて、
それなりに良い発表もあるが、
これが半年がかり?という残念な発表もある」
しかし、現場からは
「やっているのは、発表会まえの1ヶ月だけ」
「やっているのは、先輩から押し付けられた一部の若手だけ」
という声もしばしば聞きます。
本来、
一部の職員が一時期だけ改善してもらいたいのではなく、
全職員が日々、改善の意識を持って欲しかったはずで、
まさに典型的な形骸化となっています。
▶︎たとえば、接遇向上。
毎月、接遇委員会が開かれ、
さまざまな取組をしているとのことですが、
具体的に聞くと、
「接遇標語を募集する」
「優秀作を表彰する」
「ポスターにして掲示する」
「患者満足度調査を行なう」
「集計してグラフにして掲示する」
「院長賞を表彰する」
「意見箱に入れられた意見を回収する」
「お褒めの投書はそのまま掲示し、
ご要望やお叱りには返答を書いて一緒に掲示する」
しかし、それによって、
患者さんから選ばれる病院になったのか?と言えば、
「それはわからない」
とのこと。
ただ、決められているからやるという、
まさに形骸化です。
▶︎その他にも、
「なぜ、この記録を書かなければいけないのか?」
と聞けば
「いままでそうだったから」
「なぜ、この会議をするのか?」
「毎月、やることになっているから」
「この集計、誰か見ているの?」
「提出することになっているので」
といった形骸化の事例が、
洗い出せば、いくらでも出てきます。
この形骸化体質は、
いったいなぜ生まれるのでしょうか?
■現場では、
他にも、悩ましいことがあるでしょう。
「せっかく良い講師を見つけて、
研修制度を構築しても、職員が参加しない」
「せっかく会議を行なっても、
呼ばれた職員が、積極的に意見を言わない」
「職員を補充したのに、
これまでと同じ業務しかこなさず、
言われたことにしか、取り組まない」
「せっかく研修をしても、
学んだことが現場で活かされず、
効果が持続しない」
こうした、
思うように職員の意識が上がらないパターンのうちの、
いくつかが該当するという病院も
多いのではないでしょうか?
■形骸化することも、
職員の意識が上がらないことも、
実は、
原因は同じ、たった一つです。
ということは、
そのたった一つを攻略できれば、
すべてを改善できる、ということにほかなりません。
それはなにか?
人間には、いとも簡単に
「目先のことにとらわれ、目的を見失う」
という心理構造です。
だから、世の中のあちこちで、
企業・病院・組織のあちこちで、
昔からこんにちまで、
いたるところで形骸化が起こり、
職員の意識が高まらないのは、当然なのです。
なるべくしてなっているだけです。
考
えてみれば、
「目的なき言動」
こそが、
「魂なき亡骸」
すなわち文字通り、
「形骸化」
なのです。
つまり、
たった一つの攻略方法は、
「つねに目的をリマインドすること」
に尽きます。
ただし、我が国では、
トップ・ダウンの文化の時代が長かったために、
「すぐには切り替えられない」
という人がほとんどでしょう。
■しかし、攻略の具体的な方法は、極めてシンプルです。
あとは、わたしたち一人ひとりが、
やるかやらないか?
それだけです。
その方法は、ただ一つ。
「つねに、目的から話す」
それだけです。
▶︎「目標管理シートを書きなさい」
「上司との面談をしなさい」
と言うのではなく、
「一人ひとりがやりがいと誇りをもち、
活き活きのびのびと働く組織を実現しよう。
そのために、
あなたの思いをシートに自由に書いて欲しい」
「あなたの思いを面談にすべて話して欲しい」
……というように。
難しくないでしょう。
あとは、あなたがこの習慣を、
来週も、
来月も、
来年も続けているかどうか?
それだけです。