■管理職には、
「業務マネジメント」と「組織マネジメント」の
2つのミッションがあることを伝えなければならない
と、言われています。
「業務マネジメント」とは、
業務が、安全・正確・迅速に行なわれているか?を管理することです。
これは、昭和の時代から、
組織論においても、リーダーシップ論においても、
当然の大前提だったことでしょう。
一方、
「組織マネジメント」は、
部下を育て、組織を活性化することです。
これも、昭和の時代から大事だとは言われてきましたが、
実は、言われているだけで、
本気で取り組むことはまずありませんでした。
その証拠に、昭和の時代は、
今では許されないパワハラ・セクハラも横行していました。
メンタル疾患を予防しようというどころか、
メンタルが強いことが美徳だ!とされていました。
部下が何人も退職するような部署の管理職でも、
業務ができていれば、
全く問題にならず、
それどころか、
部下の犠牲のもとに成績を上げて出世するということも
よくある話でした。
つまり、
口では
「組織マネジメントも大事」
と言いつつ、現実には
「部下の成長や組織の活性化」
など、できてもできなくても良い、というのが、
実情だったのです。
■ところが、
昨今、ようやく
「メンタル疾患が生じることは、企業・組織にとっても損失になる」
ということがわかり、
にわかに、「健康な組織を経営しましょう」という話が
とってつけたように交わされるようになってきました。
併せて、ハラスメントに対する問題意識も一部で高まってきまし
た。
とはいうものの、
「そうはいうけど、そんなに問題なの?」
という、頭を切り替えられていない人も少なくなく、
まだまだポーズで取り組んでいる企業・組織も多いことでしょう。
■しかし、とりわけ医療業界では、
そんなにのんびりもしていられないことは、
みなさんもすでにご存知の通りでしょう。
働き方改革のあおりを受け、勤務環境も整備しなければなりません。
その一方で、医療の質も低下しないように、現場主体のボトムアップを機能させなければなりません。
地域連携も、職員一人一人が当事者意識を持って、来院者・地域・連携先などに向き合わなければ、
いくら院長先生が外回りをしても、
一向に、良い連携関係が築けず、経営を揺るがすことにもなりかねません。
そのためには、
職員がモチベーションを高め、
職員同士が風通しの良い関係性を築き、
組織全体を活性化することが必要となります。
それは、ちょうど、
メンタル疾患の最大の予防策でもあり、
セクハラ・パワハラを根絶する最良の取組でもあります。
■では、お尋ねします。
みなさんの現場では、
それほど、組織の死活・存亡のカギとなっている
「組織マネジメント」について、
誰が専門的に探究し、総指揮を執っているのでしょうか?
昨今では、企業には、
CEO(最高経営責任者 = Chief Excutive Officer)というポストを置いているところがあります。
その他、
COO(最高執行責任者 = Chief Operation Officer)
CFO(最高財務責任者 = Chief Finacial Officer)
なども、聞くようになりました。
医療機関の場合には、本当は、
CRO(最高リスク責任者 = Chief Risk Officer)
CQO(最高品質責任者 = Chief Quality Officer)
のほか、
CCO(最高コンプライアンス責任者 = Chief Conpliance Officer)
CSO(最高安全責任者 = Chief Safety Officer)
なども配置した方が良いかもしれません。
この発想は、別に新しい特別なことではありません。
職員のハード面の労働環境については、
「衛生管理者」
という担当者を置くことが法律でも定められており、
従業員50人以上の職場であれば、
みなさんの職場にも必ず一人以上配置されていることでしょう。
それぞれ大事なテーマであり、
専門の人間を置かなければ、
きちんとした取組ができないことから、
プロモーターを配置してゆこう、という発想です。
というわけで、
「組織マネジメント」
についても、当然、片手間でできるものではなく、
プロモーターを配置した方が良いのではないでしょうか。
さしづめ
CGO(最高組織開発責任者 = Chief Growth Officer)
といったところでしょうか。
みなさんの現場で、
CGOに任命するとすれば、どなたか、
顔が浮かびますでしょうか?
■CGOのミッションは、まず
病院が、
「どのような病院になりたいのか?」
を明確化することから、となります。
というのも、それが明確になって初めて、
「どのような組織を創らなければならないのか?」
が決まり、
そんな組織にするために、
「どのような管理職を創らなければならないのか?」
が決まるからです。
そして、もし、
精神論や上意下達の組織風土が美徳とされるような組織体質を変えて、
やりがいや誇りに満ちた、
職員同士がなんでも話し合え、協力し合えるような
風通しの良い組織体質を創りたいならば、
CGOは、
これまでと180度異なる組織づくりを探究されることをお勧めします。
それは、
「どんな教育をすれば良いのか?」
「そのためには、どんな研修を行なえば良いのか?」
「それが持続するには、どんな意識づけをすれば良いのか?」
といった、
これまでは当たり前とされてきた組織論を排除することでもあります。
なぜなら、教育・研修・意識づけは、
いずれも、「型にはめる」組織づくりであり、
「職員を成長させ、組織を活性化する」こととは
180度異なる発想だからです。
教育をせず、
研修をせず、
意識づけをせず、
部下職員が、
上司が予期しなかった問題提起や改善提案をし、
思いがけない成長を遂げる組織体質をつくるためには、
昭和の時代の組織論とは180度異なる、
新しい組織づくりを探究する必要があるからです。
ぜひ、1日も早く
みなさんの現場のCGOと相談され、
新しい組織づくりを始められることをお勧めします。
組織体質をつくる取組を行なえば、
パワハラもセクハラも、メンタル疾患も予防できるばかりか、
本当に働きやすい環境が実現することで、
精神衛生面が向上することから、
組織としての生産性も大幅に向上します。
魅力的な職場環境は、
募集・採用にも強力な強みにもなります。
「いつか首脳部がやってくれる」
と思っていても、何も変わりません。
■ついては・・・
「さて、誰をCGOにするべきか」
が、組織の死活・存亡を分ける、
新しい組織づくりの第一歩となることでしょう。