■組織改革コンサルティングをうたうコンサルタントは数あれど、
「コンサルティング商品を売りたい」会社なのか、
「クライアントの組織を改革したい」会社なのか、
選択を誤ると、たいへんなことになります。
コンサルティングを売りたい会社と契約してしまうと、
組織改革はできません。
それどころか、無駄な取組に巻き込まれた現場職員からは
組織不信の声が上がることにもなりかねず、
その後の組織運営にとっての大きな後遺症を被ることになるでしょう。
■医療従事者であるみなさんは、
「治したいと思うのが当たり前だ。
治らなくても良いから報酬だけもらえれば良い、などと考えたこともない」
という方々ばかりです。
しかし、コンサルタントは、そうではありません。
コンサルタントの中には、
「クライアントを改革できなくても良い。
改革できなくても報酬だけもらえれば良い」
と考えている会社や人間が少なくありません。
なぜ、そうなるのか?
また、どのように見分ければ良いのか?
について、お伝えしておきたいと思います。
■そもそも、コンサルタント会社は、改めて言うまでもなく、自由価格ですから、
「売るときには、できるだけ高く売りたい」
しかも、
「コストは、できるだけ安く済ませたい」
という力が働きます。
決してコンサルタント業界に限ったことではありませんが。
しかし、コストを安く済ませようとすれば、おのずと、コンサルティングに手間や時間をかけられない、ということになります。
研修のコンテンツを変えようとすれば、それだけコストがかかりますから、
「できるかぎりカスタマイズには応じたくない」
という力が働きます。
たとえば、ある研修を受託した場合、
いつもの講師に行ってもらい、
いつものテキストを使って講義をしてもらえれば、
新たなコストはゼロです。
契約が増えれば、早く安く簡単に講師を増やしたいので、
いつものテキストのいつもの講義に、
新人が見学に来ることになります。
新人は、アシスタントという名目で登場し、
その交通費や日当までクライアントに負担してもらうことが多いでしょう。
テキストはシンプルなものであるほど、
講師の育成に手間がかからないので、
講師を量産しやすくなります。
このように、
出来合いの研修を大量販売できるように血眼になって頑張っているくらいですから、
「カスタマイズなんかもってのほか!
できるかぎりしたくない」
というのが本音であることがお判りでしょう。
生産効率を上げたい大手企業ほど、
内部留保も厚くしたいという経営判断も働き、
その傾向が大きくなる可能性が高いでしょう。
しかし、人であれ組織であれ、
育成とは「対話」なくして、ありえないはずなのですが…。
■ともあれ、
カスタマイズと見せかけて、商売をするコンサルタントもあります。
病院のご担当者が
「このプログラムで、うちも本当に効果が出るの?
うちの実情に合わせてカスタマイズできないのかな?」
と訊くと、
コンサルタントが、
「そうですね。たしかに、不充分かもしれません。
では、このプログラムも合わせて組み込まれてはいかがでしょうか?
不足部分を補強できるコースです」
と言い出す、というケースです。
カスタマイズするどころか、出来合いの商品をもっと売りつけるというわけです。
■そもそも、組織を改革するのは、
モノを加工するのとは異なり、
人間が相手なのですから、
「他でこうだったから、あなたもこうしましょう」
が通用しない領域です。
身体の傷病を治療するのも同じでしょう。
医療現場のみなさんも、
まず、検査が必要であり、
検査結果をもとにして、個別具体的な治療方針が立案され、
その方針に従った治療をしていても、
つねに体調や病状が変化するので、
その変化に応じて対応を臨機応変に変えることで、
最善の治療効果を実現する
・・・ということを普段されていることでしょう。
相手がモノでなく、人間であれば、おのずとそうなるものです。
とすれば同様に、
組織改革においても、
まず、組織の診断を行ない(またはヒアリングによって現状を確認し)、
その結果をもとにして、個別具体的なコンサルティング方針を立案し、
その方針に従ってコンサルティングを実施していても、
組織の状況が一様に進捗するわけではないので、
その状況に応じて対応を臨機応変に変えることで、
最善のコンサルティング効果を実現する
・・・ということになるのです。
こうした個別対応をしたがらないコンサルタントは、
結果を出すことに関心がないと見て間違いないでしょう。
もし結果が出なければ、彼らは次の商品を勧めに来るだけです。
■さて、みなさんが検討しているコンサルタントは、
「コンサルティング商品を売りたい」会社なのか、
「クライアントの組織を改革したい」会社なのか、
どちらでしょうか?
個人で運営しているコンサルタントは、
そのコンサルタントの哲学や美学が色濃く影響する可能性もありますが、
企業体となれば、
営利目的が集団の中でより鮮明となり、
売上アップ・コストダウンが一層徹底されることになるので、
哲学も美学も営利活動の妨げ以外のなにものでもありません。
したがって、
「治します」
という看板で治らないクスリを売る様々な輩が登場するという構造になっているのです。
たとえば、
「当社はアンケートなどで調査いたします。
その後、どのように取り組まれるかは、貴院次第です」
というリサーチするだけのコンサルタントもあります。
分厚いレポートを提出して、何千万円の報酬を受け取ってゆくコンサルタントもあるそうですが、
重要なのは、そこからどのような改善を行なうか、であるはずです。
「当社は、研修を承ります。
その後、効果が持続するように、どのように取り組まれるかは、貴院次第です」
という教えるだけのコンサルタントもあります。
いまどき教えるだけなら、Webでも充分であり、
本当に重要なのは、現場でどれだけ研修で学んだことを活かせるか、であるはずです。
文化講演会のような研修なら、費用の無駄でしかありませんが、そんな知識を伝えるだけの研修も多々、出回っています。
「当社は、クレドづくりをお手伝いします。
その後、クレドが、すでにある理念以上に、現場に浸透するかどうかは、貴院次第です」
というクレドづくりをするだけのコンサルタントもあります。
そもそも、すでにある理念が現場に浸透するための方法がわからないのに、
新たにクレドを作ったからと言って現場に浸透するはずもありません。
にもかかわらず、あたかもクレドが素晴らしく組織を変えるかのように売り込んで来ることがあります。
「当社は管理職を育てます。
その後、貴院の組織運営に合った管理職になるかどうかは、貴院次第です」
という、一般的な管理職教育をするだけのコンサルタントもあります。
コストを抑えたいために、どこの現場にも通用する一般的な内容の、出来合いの管理職研修を販売している研修会社が少なくありません。
そもそも、どんな組織にしたいのか?という経営方針があって初めて、
「ついては、管理職にはこんな役割を担ってもらいたい」
という目指すべき管理職像が定まるものです。
それを聴くこともなしに、
「管理職とはこういうことを求められています。世間では」
という無責任な研修をするコンサルタントも珍しくありません。
その場合、
「だから、あなたがたも現場では、こんなことを求められていると思いますよ。確認していませんが」
というのがコンサルタントの本音というわけです。
■ともあれ、商品を売りたいコンサルタントは、
クライアントを巻き込もうとすることはありません。
なぜなら、商品を引き渡せば責任を果たせるのであって、
結果がどうなろうと、
それ以上の関わりを持つ必要がないからです。
一方、クライアントの求める結果を実現したいコンサルタントは、
クライアントを巻き込もうとすることになります。
なぜなら、組織を変えるためには、
部外者のコンサルタントがどんなに力説しても意味がなく、
その組織のトップが改革の当事者となっていることを表現することが必要不可欠であるため、
クライアントと二人三脚とならざるを得ないからです。
同様に、商品を売りたいコンサルタントは、
効果測定をすることはありません。
次の商品を売り込む口実にするために、診断をしたがることはあっても、
販売した商品の良し悪しを検証するつもりはないのです。
一方、クライアントの求める結果を実現したいコンサルタントは、
効果測定を提案することになります。
どの程度、改革が実現できたのかが最大関心事なので、
当のクライアントがどう言おうと、検証したいと考えることになります。
ぜひ、
「コンサルティング商品を売りたい」会社なのか、
「クライアントの組織を改革したい」会社なのか、
見極めることをお勧めします。