■みなさんの現場では、
360度評価を実施されたことがあるでしょうか?
この360度評価には、効果が乏しいと同時に、
大いに副作用があります。
広く行なわれているようですが、
みなさんの組織づくりの上で、致命傷にもなりかねません。
その注意点をお伝えしておきます。
■まず第一に、
根拠を示さずに評価をしても良いので、
人気投票になりがちです。
人事評価制度に際して行なわれる考課者訓練では
「くれぐれもハロー効果が起きないように気をつけましょう」
という教育を、
必ず、
これでもかというくらいするのに、
一方で、
360度評価を社員にさせるときには
思いきりハロー効果が発生しやすい状態の中で
実施している組織が多いのが実情でしょう。
360度評価は、原則として、
「誰が何を根拠にどのように評価したか」
を公開しないのが前提なので、
評価者は、
その根拠を提示することはない上、
根拠の有無を第三者が検証することもありません。
したがって、
感覚に任せて
言いたい放題を言えるアンケートとなるため、
評価者は、
無責任に低評価をつけたり、
自分にとって都合の良い相手を褒めたりすることができるのです。
そのため、
360度評価は、
事実上、単なる人気投票となる性質を持っています。
「その時期に、誰が人気があるか、ないか」
を調べたい場合にのみ効果を持つ余地がある調査でしょう。
■また第二に、
「何を根拠にどのような評価がされたのか」
が示されないため、
被評価者としては評価結果をもとにして、
良いところを伸ばすこともできず、
悪いところを改善することもできません。
つまり、
360度評価は、
今後の向上に役立たない調査なのです。
■上層部としては、単純に
「誰が人気があるのか、ないのか」
について、
興味本位で調べたくなることがあるようです。
しかし、その効果しかないのですから、
もはや、
経営者・管理職による自己満足行為でしかないと言っても
過言ではありません。
なお、
どうしても実施したいとしても、
アンケート調査を行なう場合には、
絶対に忘れてはならない落とし穴があります。
ここを踏み外せば、
組織づくりにおける致命傷にもなりかねません。
それは、
アンケート調査とは、
実施することによって、
「経営者や管理者がどのように組織に臨んでいるか」
を、
その組織の社員に対して
強力に露呈してしまうコミュニケーションである
ということです。
つまり、
あえて360度評価を実施することは、
社員に、
「経営者・管理職は単なる人気投票をさせるほど暇なのか?」
「今後の向上に役立たない無駄なことをさせる組織だ」
「現場が多忙なことを全然わかっていない」
「もっと聞いてほしいことには耳を傾けてくれない」
などと感じさせるようアピールしてしまう恐れがあるのです。
もし、
みなさんの目の前のコンサルタントが、
360度評価を勧めたり、
あるいは360度評価をすることを問題視しなかった場合、
そのコンサルタントは、
本当にみなさんの組織を良くする気があるのかどうか、
疑ってみることをお勧めします。