■介護施設のイベントでは、
みんなで童謡を歌うことがあり、
しばしば涙を浮かべている方があります。
なぜ、最近の流行りの歌ではないのか?
なぜ、最近の流行りの歌では、涙を流さないのでしょうか?
人間の心理構造から考えると見えてきます。
■まず一つ目の心理構造について。
人間の最も根源的な欲求は、
「承認欲求」
だと言われます。
言い換えれば、
「無条件に理解され応援されたい欲求」
です。
この欲求は、
生まれた瞬間からあり、
たとえ認知症や統合失調症になろうとも、
人生の最後の瞬間まで続くものです。
また、承認されていることが感じられない時、
行きて行くことすら困難になる
心の生命線とも言えるでしょう。
したがって、
最も根源的な欲求だと言えるのではないでしょうか。
■次に、二つ目の心理構造について。
人間は、希望が持てる時は、将来ばかりを考え、
希望が持てなければ、過去の良かった時を考える、
という性質です。
希望がが叶うと思える時は、
叶った時のことを考えることで
心が明るくなり、
希望が持てない時は、将来を考えることが
心を苦しくしてしまうので、
おのずと
過去の良かった時のことを思い浮かべることになるからです。
■そこで、介護施設の方々についてですが、
高齢者となれば、
他者から承認されるということがほとんどなくなり、
また今後、承認してくれる人が自分の人生に現れるという
希望を持つことも難しくなって来ます。
すると、おのずと、
過去に、
無条件に愛され、守られ、理解され、応援された頃を
思い浮かべることになるでしょう。
しかも、最も承認された頃、
つまり、物心がついたかつかないかという時期、
両親から溢れるほどの愛情を注がれ、
何の不安もなく過ごすことができた幼い時期を
追体験しようとすることは、
心理構造から考えても、
ごく自然なことかもしれません。
■つまり、介護施設で童謡を歌っている時、
高齢者の方々は、
それぞれに、
幼い頃の、
童謡を歌いながら抱きしめてくれている懐かしい両親の
腕の中に帰り、
溢れる愛情を注いでくれる両親との時間を過ごしているのでは
ないでしょうか。
したがって、
介護施設のみなさんが、
イベントで、
童謡を歌うことを催しに組み込む意味は、
実は、
もう会えないはずの最も大切なご両親に会わせて差し上げている
ということでもあるのしょう。
■そうでなければ、
涙を流す理由の
説明がつかないのではないでしょうか。